Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 681 週間リポート 阪急ブレーブス編

2021年03月31日 | 1977 年 



内野はそのまま、外野を一変
本拠地・西宮球場の人工芝への変更が検討されている。新大阪駅北側に阪急電鉄が所有する土地があり、そこに国産メーカー2社・海外メーカー1社の人工芝が敷かれ耐久テストが実施されている。過日、上田監督が訪れて球の反発具合や品質を確認した。設計図によれば西宮球場の内野は従来通り黒土で外野を人工芝にする予定である。同球場は組み立て式競輪場と併用され、左翼から中堅にかけて自転車が走行するバンク部分の天然芝が削り取られており守備の面では勿論、美観上もマイナスである。

採用品が決定しても製品納品に3ヶ月、改修工事に1ヶ月以上かかる為、新生・西宮球場がファンの前にお披露目できるのは1年以上先の昭和53年春以降となる。「現場の立場から言わせてもらえば、選手にとって人工芝は疲れやすく怪我のリスクもあり全面的に賛成は出来ないが、お客さんの目を楽しませるスタジアムになって欲しいし、痛し痒しだね」と上田監督も複雑な心境のようだ。



ナ~ニ、1週間もあればベスト
いつやって来るのかと周囲をヤキモキさせていたマルカーノ選手がようやく来日した。当初の予定では高知キャンプ終盤の2月20日頃には合流する予定だった。ところが2月中旬になっても消息不明で国際電話をかけても不在、手紙を出しても返信なし。どうやら本人は休暇と洒落込んでいた。実は昨年の暮れから南米のウインターリーグに「ラグワイラ」の一員として参加し、チームの地区優勝に貢献した。チームはプレーオフで敗退したが最終試合が2月2日だった為に先送りしていた休暇を過ごしていたのだ。

「プレーオフが終わったら直ぐに日本に行こうと思ったけど疲れもあったし風邪気味だったので静養していた。開幕は4月でしょ?充分間に合うよ」とマルカーノ本人は涼しい顔。上田監督ら首脳陣は新加入の島谷選手との連携プレーなどチームプレーの確認を急ぎたかったが、「そんなのは1週間もあればOKよ」と意に介せず、心配するなと余裕の表情。なにはともあれこれでV2メンバーが勢揃いし「よっしゃ、これで三連覇の役者は揃った」と上田監督。ちなみにウインターリーグでの成績は45試合・打率 .275・3本塁打・16打点だった。



山口、モーガンの二人三脚
剛腕・山口投手が20勝投手への道を着実に歩んでいる。高知キャンプでの山口の課題は2つ。正しい投球フォームの確立とチェンジアップの習得だ。特に主眼を置いたのが投球フォーム。昨年の日本シリーズでも露呈した突如として制球を乱す悪い癖はプロ入り以来直っていない。その原因は左肩の開き。梶本・植村両投手コーチだけでなく、キャンプに招聘されているモーガン臨時投手コーチも同様の意見。なぜ左肩が開くと制球が乱れるのか?上半身が打者に正対する際に左肩が開くと球のリリースポイントがズレて狙った所に球が行かなくなる。

プロ1年目が12勝、昨季も同じく12勝とあれだけの豪速球がありながら勝ち星を伸ばせなかったのは春先の怪我も理由の一つだが、煎じ詰めれば制球力不足が主たる原因だ。「3年目の今年こそ20勝投手の仲間入りをしたい。その為にもキャンプで修正して開幕を迎えたい」と山口も意気込む。一方でチェンジアップの習得にも熱心だ。「打者はタイミングで打ってくる。だったらそのタイミングを外せば打たれない」がモーガン投手コーチの持論。「チェンジアップといっても投げ方は何十種類とある。ヤマグチに合った投げ方を教えたい」とモーガン投手コーチ。「いい感じです。オープン戦で披露しますよ(山口)」と手応え充分のようだ。

効果は直ぐに現れた。阪神とのオープン戦に先発した山口は当初の5回までの予定を6回まで投げ好投した。先ず立ち上がり、先頭の中村勝選手をカーブで空振り三振。二番・藤田選手は左打者の泣き所であるヒザ元を突いてボテボテの二ゴロ。バットを折られた藤田は「チェンジアップがいいね。遅い球を見せられた後の直球は当てるのが精一杯」とお手上げ状態。売り出し中の三番・掛布選手も赤子の手をひねるが如く抑えた。明らかな高目のボール球が減った。投球数78球のうち4球投げたチェンジアップの成果も上々で、「エエでぇ、20勝いけるでぇ」と上田監督も御満悦。


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# 680 ニューフェイス ④

2021年03月24日 | 1977 年 



セ・リーグ ➋:中日が万全の補強、ヤクルト梶間に注目
◆中日:戸田、森本でバッチリ
【新人】…投 手:都裕次郎、高元勝彦、生田裕之、今岡均
     捕 手:中原勇一
     内野手:宇野勝、柳沢高雄
【移籍】…投 手:戸田善紀、大石弥太郎、芝池博明、松林茂
     内野手:森本潔
     外野手:小松健二

移籍組が中々の充実ぶりだ。特に阪急から移籍の戸田、大石、森本に関しては与那嶺監督が「優勝する為に来てもらった」と発言するほどだ。中山投手コーチが右のエースにと期待する戸田は昨シーズンは12勝5敗1Sで、5月11日の南海戦でノーヒットノーランを達成している。丁寧に球を低目に集める投球スタイルで大崩れせず、確実に勝てる投手である。6日の南海戦は打ち込まれたが直ぐに修正して次の日ハム戦で4イニングをきっちり抑えたのは流石である。「僕は数多く投げ込んで仕上げるタイプなのでオープン戦終盤にはベストの状態に持っていける(戸田)」と調整は順調のようだ。

大石も仕上がりは順調だ。16日の日ハム戦が早くもオープン戦四度目の登板で通算10イニング・自責点0。与那嶺監督の構想では「先発・リリーフどちらにも使いたい」と。残る阪急からの移籍組の森本に関しては「森本の加入で下位打線が引き締まった」と杉山打撃コーチが言うように首脳陣の評価は高く、12日の日ハム戦ではレフトスタンドに本塁打を放ち存在感を示した。現状では大島と三塁のレギュラー争いを展開中だが、一歩リードしている。

デービス、マーチン、谷沢のクリーンアップトリオは全員左打ちなので与那嶺監督は森本を絡めてジグザグ打線にしたいと考えているという。「三塁のレギュラーは監督が決めること。自分は内容のあるヒットを打って結果を待つ覚悟(森本)」と14年目のベテランは泰然としている。残念ながら直ぐに一軍の戦力になりそうなルーキーは見当たらない。ドラフト1位指名の都は先ずは体力作りが課題。また都以上の逸材と評価されているのが高元。189㌢・85㌔と恵まれた体格から投じられる直球は威力充分で、一軍デビューは都より早いだろうと言われている。



◆ヤクルト:槌田のトップ決定?
【新人】…投 手:酒井圭一、梶間健一、黒坂幸夫、川畑盛幸
     捕 手:高橋寛
     内野手:松崎泰治
     外野手:吉川盛男
【移籍】…投 手:瀬戸和則、倉田誠、西岡三四郎
     内野手:伊勢孝夫
     外野手:槌田誠

怪物・酒井に世間の注目が集まる中、「これは使えますよ」と広岡監督が珍しく即戦力になると公言したのが左腕の梶間。13日のロッテ戦まで計3試合を好投した。投球スタイルは力投型ではなく変化球をコーナーに投げ分ける技巧派で打たせて取るタイプ。上手、横手、時にはアンダースローと変幻自在な投法で「球種は今のところ6種類です。内訳?それは企業秘密です(笑)。1人の打者に全球ちがう球種でアウトに出来ます(梶間)」とルーキーとは思えぬ貫禄を見せ、チーム内外から安田二世と評されている。

キャンプでもその安田と同室で、王や張本などセ・リーグの並み居る打者の傾向と対策をたっぷり教え込まれた。オープン戦の好投で一気に新人王レースのトップに躍り出た。さすが昨年の都市対抗野球で準優勝した実績は伊達ではない。話題性で梶間の上を行くのがご存じ怪物・サッシーこと酒井。直球が一級品なのは間違いないが、如何せんプロの投手としてのスタミナやプレートさばきは身についていない。それでも広岡監督は「球に力がある。これだけは教えられても投げられない生まれ持った天性のモノ。一軍で投げるのは時間の問題」と言っているので早ければ球宴明けのデビューも有り得る。

移籍組で注目は槌田だ。5日の大洋戦から一番・サードで先発するようになり、本塁打や二塁打を放ちリードオフマンの役割を十二分に果たしている。三塁は本職ではないので少々心もとないが、その必死さが逆に広岡監督の目には新鮮に映って高評価を得ている。巨人時代はV9メンバーの壁が厚く控えに甘んじていただけに「このチャンスを絶対に掴む(槌田)」とプロ11年目に訪れた春に我武者羅に突進している。槌田と共に移籍して来た倉田は「リリーフの切り札で使う」と広岡監督が明言しており期待は大きい。



◆大洋:斎藤が一軍入り
【新人】…投 手:斎藤明雄、柴田民男、安田尚弘
     捕 手:浅利光博
     外野手:森浩一
【移籍】…投 手:関本充宏
     捕 手:魚満芳

投手陣の顔ぶれに大きな変化は見られないがルーキーの斎藤の一軍入りは確実で、先発ローテーション入りの可能性がある。8日の広島戦に先発した斎藤は4回・被安打9・失点3と今一つの内容だったが、時折見せる小気味よい速球に別当監督は「ひょっとしたら先発で使えるかもしれない」と評価し、残されたオープン戦の成績次第では先発ローテーション入りも有り得る。移籍組ではクラウンから来た関本が故障さえ癒えれば中継ぎ・抑えで使えそうだ。
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# 679 ニューフェイス ③

2021年03月17日 | 1977 年 



セ・リーグ ➊:巨人ほぼ目的達成、阪神の補強は不充分
◆巨人:浅野最高のヒット
【新人】…投 手:藤城和明、赤嶺賢勇、吉沢克美
     捕 手:笠間雄二
     内野手:松本匡史
【移籍】…投 手:浅野啓司、辻上修

「戦力になるのは絶対に間違いない」と長嶋監督が太鼓判を押すのがヤクルトから移籍した浅野。かつての巨人キラーが巨人の救世主になるとは誰が想像しただろうか。オープン戦では投げる度に好投した。二度目の登板となった15日の近鉄戦は先発して5回・被安打4・三振5・四球1・失点1。特に近鉄期待の新外人・バティを2打席連続三振に斬ってとった投球は圧巻だった。「ストレートが良かったですね。内外角のコントロールも安定してきたし順調に開幕を迎えられそうです(浅野)」と表情は明るい。

ヤクルト時代は毎年のように腰痛に悩まされてきたが、今年は全くないそうだ。往年の快速球は望めないにしても、かなりの活躍は期待できそうだ。キャンプ中から巨人に張り付いている中日の江藤スコアラーも「浅野の好調時は左打者の内角にシュートを投げ込んでいた。左打者がストレートが自分に向かって来ると感じて腰を引くとシュートしてストライクになる球が厄介だった。今年はそのシュートが復活している。要注意だね」と警戒を強める。中日以外の他球団も浅野を再チェックする必要がありそうだ。

ルーキーの松本は長嶋監督に「脚力には絶対の自信を持っていて、足だけでプロの世界で食べていける」とまで言わしめベンチ入りどころか土井との二塁併用案まで出ている。初盗塁は12日の南海戦で9回表に代走に起用されるとあっさりと二盗を決めた。翌13日の阪急戦では2つの盗塁に成功している。また捕手の笠間も評価が高い。打撃に関してはまだまだ未熟だが強肩は先輩捕手の上を行き、矢沢を二軍へと追いやった。既に2人の子持ちで文字通り「生活がかかっている」だけに必死だ。尚、ドラフト1位指名の藤城は二段モーションの投球フォームを直す為にデビューには時間がかかりそうだ。



◆阪神:益山にチャンス
【新人】…投 手:深沢恵雄、益山性旭、青雲光夫、土谷賢一
     捕 手:続木敏之、小倉泰男
     内野手:渡辺純志
     外野手:峯本達雄

皆川投手コーチが惚れ込んでいるのがドラフト1位ルーキーの益山である。10日の日ハム戦に先発し、5回・被安打3・失点0で見事初勝利を飾った。評論家の青田昇氏によると「右と左の違いはあるが、小山(正明)みたいな腕の使い方をする。スタミナ次第ではかなり勝てるのではないか」と評価は急上昇。今シーズンもセ・リーグは相変わらず左打者全盛で、とりわけライバルの巨人は王・張本が健在でどうしても「左腕が勝敗の決め手となる(吉田監督)」だけに益山が使えると心強い。一方でキャンプで話題となった青雲は時間がかかりそうで、むしろ内野手の渡辺の方がデビューは早そうだ。尚、今オフに阪神に移籍入団した選手はいない。


◆広島:思い切りの良さで成功
【新人】…投 手:土居正史、平田英之、山根和夫、小林一史
     捕 手:山本穣
     内野手:山崎隆造
     外野手:小川達明
【移籍】…投 手:鵜飼克雄、門田純良、皆川康夫、松原明夫、新美敏、榎本直樹
     外野手:正垣宏倫、内田順三

投手の補強がドラフト、トレードで10人を超える。「優勝するには投手陣の強化が何より優先する」と古葉監督。中でも注目は日ハムから移籍した新美だ。何しろ10勝が確実視されていた佐伯との交換だけにトレード失敗は許されない。16日のロッテ戦では抑え役で登板しセーブを記録した。通算四度の登板で9イニング・自責点0で首脳陣を安心させた。「同期の池谷には負けたくない(新美)」とかつての新人王は口数こそ少ないがやる気を充分に漂わせている。

南海から移籍した松原はキャンプ中盤に足を故障して出遅れた。その為にオープン戦の登板も現在までないが、足が治れば持ち前の速球を武器に戦力になるだろう。ルーキーでは土居が期待されている。16日のロッテ戦に二度目の登板をして3回 2/3 イニング・無失点と好投。同じくルーキーの山根も9日の大洋戦で勝ち投手になり、2試合に登板して1勝1Sと結果を出している。その他の皆川、榎本、野手陣の正垣や内田らは一軍経験者なので心配はない。特に正垣は阪急で何度も優勝を経験しているだけに、精神的な面でも広島には欠かせない存在となりそうだ。ドラフト1位指名の山崎は即戦力ではなく将来性に期待だ。
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# 678 ニューフェイス ②

2021年03月10日 | 1977 年 



パ・リーグ ➋:虎視眈々とAクラス入りを狙う3チーム
◆近鉄:新人久保に大器の芽
【新人】…投 手:久保康夫、山本和範
     内野手:石原修治
【移籍】…内野手:益川満育
     外野手:白滝政孝

少々寂しい話だが新加入した選手で今シーズン一軍の試合に出場できそうなのはヤクルトから移籍した益川ぐらいだろう。中日とのオープン戦ではマルチ安打を放ち目立っていた。課題の守備面も西本監督のシゴキで克服しつつある。守備は元々センスがあり、ヤクルト時代に当時の広岡守備コーチから「守りのコツを知っている。鍛えれば必ず上手くなる」とお墨付きを得ていただけのことはある。投手では高卒ルーキー・久保の評価が高い。10日のクラウン戦に早くも登板し、2回を無安打に抑えた。普段あまり選手を褒めない西本監督が珍しく褒めたルーキーで将来有望である。


◆日本ハム:効率高い補強ぶり
【新人】…投 手:岡部憲章、下田充利、石井博明
     捕 手:大宮龍男、坂神隆広
     外野手:島田誠、大西正裕
【移籍】…投 手:宮本幸信、谷山高明、佐伯和司
     内野手:久保俊己、山下司

最大の補強は広島から移籍した佐伯。確実に10勝は計算できる投手だ。「間違いなく働いてくれるだろう。両高橋、野村と共に4本柱として計算している。これでパ・リーグに旋風を起こしてみせるぜ」と大沢監督は怪気炎を上げる。佐伯の初登板は6日の広島戦で古巣を相手に3回・被安打3・無失点に抑えた。二度目は12日の中日戦で先発して5回・被安打2・自責点1と安定した投球を見せて首脳陣を喜ばせた。「調整は順調だ。なんとか日ハムを優勝させたい(佐伯)」と力強い。広島時代の昭和50年に赤ヘル投手陣の主力としてリーグ初優勝を経験しているのも心強い。

同じ広島から来たリリーフ役の宮本もいい。佐伯と同様に初優勝の時は右の抑え役で活躍し、昨年は4勝3敗7Sと一昨年を下回ったが持ち味の速球の威力は健在で日ハムでも活躍は期待できる。内野手の山下は自分から巨人に自由契約を申し出て移籍して来ただけに意気込みは凄い。ルーキーで目立っているのは捕手の大宮。オープン戦でも数多く起用されて8日の阪神戦では12球団のルーキーで第1号となる本塁打を放った。大学時代(駒大)には全日本にも選抜された逸材で球団としても即戦力として期待している。



◆クラウン:移籍組にヒット
【新人】…投 手:吉田隆史、池田弘、米沢馨
     外野手:徳山文宗、立花義家、山村勝彦
【移籍】…投 手:高垣義広、竹田和史、山下律夫、倉持明
     外野手:長谷川一夫、島津佳一

移籍組が充実していて、ほとんどが戦力として計算できる。なかでも大洋から来た山下への期待は大きく、鬼頭監督は「先発はもちろんリリーフ役もやってもらう」と惚れ込んでいる。その山下は10日の近鉄戦に先発して5回を被安打4・無失点と好投し首脳陣を喜ばせた。「チームの勝利により多く貢献できるように頑張る(山下)」とプロ11年目のベテランは静かに燃えている。中日から来た左腕の竹田は球威があり、ロッテから来た倉持はクセ球が持ち味で両者ともにリリーフ役に適した投手だ。

打撃陣では長谷川の加入が大きく、今年の補強では最大のヒットである。長谷川はロッテでも打つことにかけては五本の指に入る巧打者で有藤や弘田にも引けを取らない。ライオンズでは指名打者や左の代打の切り札として期待している。ドラフト1位指名の立花には大きな期待が寄せられているが、一軍の戦力としてはまだまだ時間を要する。それでも浪商から東映に入団した張本の育ての親でもある松木臨時打撃コーチが「張本が入団した時より上」と断言するほどだから間違いなく将来有望なルーキーである。
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# 677 ニューフェイス ①

2021年03月03日 | 1977 年 



そのチームの動向を伺うには新人やトレードの顔を見ればいい。どんなチームを目指しているのか、どんなスターを育てようとするか。またそれがシーズンの戦力をも決定するひとつの目安にもなる。さて、スタートを前にして12球団の主な補強選手を総括してみよう。

パ・リーグ ➊:ここでも王者は阪急、追うは日ハム
阪急:島谷で日本一の守りへ
【新人】…投 手:佐藤義則、三枝規悦、平山正人、山本良材、夏目隆司、小川忠幸
     内野手:田中彰、今井茂
     外野手:吉沢俊幸
【移籍】…投 手:永本裕章、水谷孝、稲葉光雄、川畑和人
     内野手:島谷金二
     外野手:藤井栄治、大隈正人

「いやぁ阪急はよく練習するね。中日の2倍はするよ」中日からトレードでやって来た島谷のセリフである。高知キャンプでの猛練習が効いたのか島谷は随分と体が引き締まって見える。島谷の加入で適任者が不在だった三塁手が決まり、あの厳しい上田監督が笑顔で「これで日本一の内野陣が完成する」とブチ上げたのだ。島谷の守備力は堅実で前任者の森本より遥かに安定しており、投手陣も「大橋との三遊間は鉄壁」と大喜びする。打撃もいい。5日の阪神とのオープン戦で移籍第1号を放つと12日の同じく阪神戦では4打数4安打と大当たり。昨シーズンの打率.278・21本塁打を上回る活躍が見込まれている。

移籍組でもう一人目立っているのがクラウンから来たプロ16年目の藤井だ。鋭いスイングは健在で相変わらずの好打を見せている。5日の阪神戦、10日の中日戦で本塁打を放った。阪急は左の代打不足だったが藤井の加入で解消されそうだ。逆に投手陣は永本や稲葉の加入では十分とは言えず、新人の佐藤に期待せざるを得ない。その佐藤の評判はすこぶる良い。6日の阪神戦に初登板、10日の中日戦では負けはしたが12球団で完投一番乗りを演じた。直球もキャンプ当初よりスピードが増して「もちろん先発ローテーションに入りたい。プロは勝ってナンボの世界ですから(佐藤)」とプロの世界でやっていける自信が出てきたようだ。



◆南海:金城に10勝期待
【新人】…投 手:山本和樹
     捕 手:相方裕二、竹原比呂志
     内野手:久保寺雄二
     外野手:上野克二
【移籍】…投 手:金城基泰

広島からトレードで入団した金城が戦力になるのは間違いない。金城のオープン戦の初登板は14日の阪神戦だった。5回表一死満塁の場面でリリーフ登板し何とか1失点で切り抜けた。当初はイニングの頭から行くという予定だったが先発の村上が突然崩れた為に急遽の登板となった。野村監督は「予定外の登板だったがよう投げてくれた。ワシの構えた所にサイン通りの球を投げたのは流石や」と喜んだ。かつての20勝投手の金城だが自動車事故の影響で視力が低下し、昨年ようやくカムバックしたばかり。「調整は順調。この分ならやれそう」と金城本人も手応えを掴んだようだ。


◆ロッテ:白のパンチが頼り
【新人】…投 手:仁科時成、伊藤浩
     内野手:坂川重樹
【移籍】…投 手:大本則夫、安木祥二
     捕 手:高橋博士
     内野手:末永吉幸
     外野手:白仁天

あの強気の金田監督が「ロッテを頼むでぇ」と懇願する相手がクラウンから来た白である。それほど今年のロッテ打線は他球団と比べると貧弱であるのだ。打線の中心である有藤が古傷の手首を痛め、山崎裕の調子も今一つ上がらない。頼りになるのは弘田くらいという惨状だ。それだけにカネやんならずとも白に賭ける期待が大きくなる。白は一昨年の首位打者で昨年も打率.288・17本塁打・59打点と結果を残した。投手陣ではかつてのエース・木樽の背番号「20」を受け継いだルーキーの仁科が面白い。アンダースローから繰り出す癖球は先発ローテーションでも通用しそうだ。
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