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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 571 ペナントレース総括・ヤクルトスワローズ

2019年02月20日 | 1985 年 



打てず走れずの体質は今季も…
外人枠2人を生かせず1年を無為に
今にして思うと3月8日の近鉄とのオープン戦に8対3で勝利したのは、とんだヤブ蛇だった。この試合で二番を打っていたスミス選手は3連発を含む4安打と大爆発。来日1年目の昨季は52試合・打率.214・5本塁打と本来なら戦力外でもおかしくない成績だったが、1年目で日本の野球に慣れていないという理由で今季も首が繋がったのだ。そしてこの試合の活躍を見せつけられた首脳陣は今季こそはと期待したのだが、16試合出場して僅か6安打・0本塁打でシーズン途中で退団となった。もう1人の助っ人・マルカーノ選手も阪急時代の雄姿からは程遠く12本塁打に終わった。またスミスに代わって途中入団したビーン投手も8試合・2勝・防御率 7.25 でこれまたシーズン終了を待たずに退団してしまった。

チーム盗塁数が高橋慶(広島)の4割にも満たない
チーム打率・防御率ともにリーグ最下位とあっては5位中日にすら11.5ゲーム差でブッチギリの最下位になるのも当然といえば当然。加えて走る方も全く意欲を欠いていた。チーム盗塁数は29個。これは盗塁王・高橋慶選手(広島)の73個の半分はもとより40%にも満たなかった。走塁にスランプは無い、が球界の常識だが今季のヤクルトは当てはまらない。2年前の昭和58年はリーグ3位の90盗塁を記録したが、翌年は49盗塁とほぼ半減。とうとう今年は29盗塁に。水谷選手の10盗塁がチーム最多で次が岩下選手の5盗塁では話にならない。

後半戦にチームを立て直した荒木の快投
ヤクルトは開幕から5連敗、1つ勝った後にまた5連敗。オールスター戦を前にして勝率は3割を僅かに越えたくらい。それが後半戦は4割5分9厘と悪いながらも上昇した。そのヤクルトを象徴しているのが荒木投手である。鳴り物入りで早実からプロ入りしながら昨季までの2年間では通算1勝5敗だったが、今季は8月に一軍復帰を果たすと9日の巨人戦で完投勝利。シーズン終了までに6勝を上げた。後半戦での6勝はヤクルト投手陣では高野投手、梶間投手と並ぶ最多勝利数だった。9月23日の巨人戦では3安打完封勝利。ヤクルトの投手が巨人戦で完封したのは昭和54年9月2日の松岡投手以来の出来事だった。

番記者が選ぶベストゲーム
8月9日、対巨人18回戦(後楽園)は先発した荒木投手の奮闘で4対3の辛勝だった。荒木は被安打8・奪三振5で完投勝利。打線は広沢選手の本塁打などで江川投手を攻略した。開幕以降、一度も最下位から浮上することなく、巨人にもなかなか勝てずヤ党はヤキモキしたが荒木の溢れる闘志、広沢のケタ外れのパワーなど若手選手の活躍で溜飲を下げる思いだった。ヤクルトの主力選手は平均年齢が高く若手の台頭を願っていたヤ党にとって荒木や広沢は来季に向けての希望の光だ。2人の活躍に度肝を抜かれたような目をしていた王監督の姿が忘れられない。

荒木を奮闘させたのは交通事故の示談金200万円だった !?
本誌6月頃の『12球団 Topic Box 』のコーナーで荒木投手が「ボク、秋頃に結婚するんです」と " ジョーク " を掲載したところ、合宿所の電話はファンからの問い合わせで鳴りっぱなし状態に。「友人・知人からの連絡が絶えなくて、もう否定するのに大変な思いをしました。冗談を冗談と取ってくれなくて…(荒木)」と改めて自分の人気にビックリ仰天した荒木だった。ただ荒木にガールフレンドがいたのは事実で、しかも彼女を車に乗せてドライブ中にオートバイと接触事故まで起こしていた。この事故で免許証は寮長に取り上げられた上に示談金も払う目に遭ってしまった。その後は彼女とは自然消滅したようで今は休みの日でも出かけることなく埼玉県戸田市の合宿所で過ごしている。

冷暖房完備で新築して1年のピカピカで3階の6畳間が荒木の城だ。ところが荒木は大の掃除嫌いでお世辞にも綺麗な部屋とは言えない。更に洗濯も嫌いで「ベッドのシーツなんか1ヶ月近くは洗いませんよ。汚い?他人が使う訳じゃないし気になりません(荒木)」と顔に似合わずバンカラ男だ。昨秋の浜松キャンプでは入団5年目以下の若手は3日に一度交代で、先輩のアンダーシャツを洗濯する役目があった。新人の広沢選手や秦選手は丁寧に時間をかけて洗うのだが、荒木は洗剤を使わず濯ぎだけで済ませてしまった。「だってユニフォームみたいに泥で汚れてるわけじゃないし水だけで充分でしょ(荒木)」とアッケラカン。

現在、荒木の部屋はテレビ、ビデオ、ステレオ、そしてファンから贈られたぬいぐるみなどが置かれ少々手狭になっている。「僕の希望としては近い将来、合宿所を出て実家(東京・調布市)の近くに部屋を借りて独り暮らしをするのが夢(荒木)」と笑った。今季後半戦の活躍でシーズンオフはテレビの出演依頼や取材の申し込みで引っ張りだこ。更に製薬会社からCMの話が来るなど球団の広報担当は荒木本人以上に連日大忙しである。人気沸騰で球団としては嬉しい悲鳴だが「浮かれ過ぎになるのも本人の為に良くないからテレビ出演は極力避けたい(広報担当)」と本音を漏らす。荒木本人も「歌番組やクイズに出たりするのは苦手。ですから自分としては球団の方針をありがたく思っています。顔見せが出来ない分は来季ローテーションに入ってファンの皆さんに恩返ししたいです」と話す。
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