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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 852 カネやんロッテ

2024年07月10日 | 1977 年 



あの前期のだらしなさがウソのようにカネやんロッテの躍進は素晴らしい。首位街道を突っ走って意気軒昂と思ったらそうでもなかった。意外にオトナシク静かなのだ。どうやらカネやんの変貌なのか、強くなったこととカンケイあるのかな…

夏に強い秘密と再生屋の真骨頂
なんとも鮮やかなロッテの変わり身である。オールスター戦前まで5勝6敗1分けと相変わらず不振をかこっていたが、球宴明けの16試合を10勝3敗3分けと蘇った。昭和49年のリーグ優勝以来の7連勝などで一気に首位に躍り出た。思い返せば前期シーズンは散々の成績でパ・リーグではロッテ以外の球団が観客動員数を伸ばす中、唯一前年同時期と比較し減少した。当然ロッテファンからの風当たりは強かった。それがアッという間にパ・リーグの主役になった。8月9日に首位に立つとカネやんは「ロッテの夏がやって来たんや。これからもドンドン行くで」と怪気炎をぶち上げた。

翌10日、宿敵の阪急戦で1点リードを許した9回二死一塁から登板した速球王・山口投手を攻め満塁とし、新井選手の右前打で逆転サヨナラ勝ちを収めた。スタンドを歓喜の渦に巻き込む快進撃の秘密はどこにあるのだろうか?確かにロッテは人々が暑さでウンザリする夏場になると強さを発揮する。日本一になった昭和49年も、前・後期シーズンともに3位で優勝を逃した昨年も8月の声を聞くと勝ちまくった。「ロッテ名物の死のランニングは何の為やと思う?伊達や酔狂で走っているわけじゃないんやで。夏の暑さに負けないスタミナを養う為に走っとるんや」とカネやんは胸を張る。

戦力面では投手陣の再整備、特に三井・成田投手の立ち直りが大きい。両投手はキャンプの時点で右肩痛を発症し出遅れが必至だった。それを見込んだカネやんは勝負所は後期シーズと設定し、前期シーズンではエース・村田投手を酷使せず温存した。オールスター期間中の休みに三井投手をマンツーマン指導し、自らの目で回復ぶりをチェックして三井投手の復活を確信した。「完投してくれとは言わん。2イニングでエエからピタッと抑えてくれるリリーフの切り札になって欲しかった。三井にはそれが出来ると思った」とカネやん。

前期シーズンの死んだふりは後期シーズンを前にしての作戦だったのだろうか。三井・成田投手が戦列に復帰すると戦い方が変わった。好例が8月4日の対クラウン5回戦だ。5人の投手を惜しげもなく継ぎ込んで珍しい5投手による完封劇を果たした。後期シーズンに入り好回転しだした中で移籍選手の活躍も目立った。クラウンから来た白選手は指名打者をガッチリ掴み、実績が乏しかった安木投手は中継ぎ投手どころか先発ローテーション入りしそうな勢いだ。中日を自由契約となりテスト入団した末永選手も持ち味を発揮している。「再生屋はノム(南海・野村監督)ばかりやない。どんな選手もワシの言う事ことを聞けば蘇るで」とカネやんは得意顔。


いい意味でのカネやん離れ
ともすれば余りにパーフェクトを求める監督に対し距離を置く " カネやん離れ " がチーム内で起きていた。またカネやん自ら文字通り陣頭指揮によるムード野球に慣れが生じていた。どの世界でも慣れは怖い。慣れることで思わぬところで墓穴を掘ってしまうケースが多々ある。気性の激しいカネやんが檄を飛ばしても慢性から選手たちは踊らなくなっていた。加えて報道陣の前でミスをした選手をヤリ玉に挙げる回数が増えたことでチーム内にシラケたムードが漂うようになった。こうなるとチーム力は自ずと減じていくものである。前期シーズンではカネやんが雷を落とせば落とすほど勝てなくなった。

チームのカネやん離れが後期シーズンでは好結果に結びついている。監督就任5年目にして「ようやく選手自身がプロフェッショナルとして自立し始めた」というのが外部の声だ。選手が自分のするべきことは何かということを割り切っているのがこれまでと異なる点。各自が己の立場で持てる力を出せば良い、というムードが漂い始めている。それがバラバラのものではなくチームの勝利に向けて結束している。このままいけば後期シーズン優勝も不可能ではない。まさに選手が大人になったことでチーム力が急上昇したのだ。誰かれとなしに優勝という2文字に向かって動き出した気配が濃厚となった。


監督のジンクス打破実現へ
かつてのようにラッパを吹かなくなったカネやんだが、それは計算してのことだ。「ムード野球じゃ勝てん」と監督就任時のムード野球を自ら否定し地道な野球に変わりつつある。タレント監督として前面に出るよりあくまでロッテナインの自主性を重んじる効果に勝負をかけている。チーム内からは「監督がこれまでと全く変わったとは思わないが、それでいて勝負への気持ちはこれまで以上に伝わってくる」という声が聞こえてくるのはカネやんの変身が成功した裏付けだろう。社長業やタレント業を放棄したわけではないが、それ以上に野球に対する熱量が上回った結果だろう。

カネやんは「ワシは何もせんでええのや。コーチ陣が全てやってくれている」と軽くいなすがナインに向ける視線は強烈だ。何もせんでええ、は大袈裟だがその姿勢こそカネやんの視野を広げる一因になろう。信頼関係を構築し自主性がチーム力を後押しすることになる。5年前の監督就任会見での第一声「 " 名選手必ずしも名監督にあらず " などというジンクスは信用せんでくれ!」を実証する絶好のチャンスであることは間違いない。ロッテファンならずともそのジンクス打破に大きな期待を寄せているのだから。

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