はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1212 ~ 記憶にございません(CS)

2024-09-22 | 映画評
今回は「記憶にございません(CS)」です。

三谷幸喜の長編映画監督8作目で、記憶をなくした総理大臣が主人公の政界コメディ。史上最低の支持率を叩き出した総理大臣を中井貴一が演じるほか、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市ら豪華キャストが顔をそろえる。

主演:中井貴一
共演:ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃
その他:吉田羊、山口崇、田中圭、梶原善、寺島進、藤本隆宏、迫田孝也、ROLLY、後藤淳平、宮澤エマ、濱田龍臣、有働由美子、飯尾和樹、小林隆、市川男女蔵、小澤雄太、近藤芳正、阿南健治、栗原英雄、川平慈英など


<ストーリー>
国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれた総理大臣の黒田啓介は、演説中に一般市民の投げた石が頭にあたり、一切の記憶をなくしてしまう。各大臣の顔や名前はもちろん、国会議事堂の本会議室の場所、自分の息子の名前すらもわからなくなってしまった啓介は、金と権力に目がくらんだ悪徳政治家から善良な普通のおじさんに変貌してしまった。国政の混乱を避けるため、啓介が記憶を失ったことは国民には隠され、啓介は秘書官たちのサポートにより、なんとか日々の公務をこなしていった。結果的にあらゆるしがらみから解放されて、真摯に政治と向き合うこととなった啓介は、本気でこの国を変えたいと思いはじめようになり・・・


2019年の作品である。

劇場で公開されていたのは知っていたが、もともと三谷幸喜の「笑い」があまり好きではないので、これまでに見たのは「清須会議」だけだった。

「THE 有頂天ホテル」も「ザ・マジックアワー」も「ステキな金縛り」も、あらすじを見て、どう見てもツマんなそうだったので見ていないのだが、さすがに時代劇となると、そこまで話をぐちゃぐちゃにすることはないだろうと思って見たのである。

今作は現代劇であるので、当然期待はしていなかったのだが、何せ時間は大量にあるので、ヒマつぶしに見てみたわけだ。

そして・・・案の定序盤のシーンを見て「しまった!」と思って、見るのをやめようかと思った!?

それくらい、しょうもなかったのである。

いきなり主人公が記憶をなくして病院にいるシーンから始まるのだけど、目を覚ました途端にベッドを抜け出して、パジャマのまま街へ出ていった場面で、「そんなヤツいるかよ」と思ったわけだ。

たとえ記憶をなくしたとしても、現在ベッドの上にいるということは、何らかの事故か病気で入院していることは明らかであり、「なんでオレはここにいるの?」とは思うだろうけど、なぜか「ここはどこだ?そうだ、逃げなければ」という描写になるのが理解できない。

つまり、そういう展開にする三谷幸喜の「笑い」が理解できないのである。

しかも、現職の総理大臣なので、すぐにSPに捕まって官邸に戻らされるのだけど、本人にまったく記憶がないというのに、いきなり「さあ、明日は閣議ですからね」とか言って、自宅に連れていってそのまま放置する展開には、さらに驚いた。

普通であれば、入院を長引かせるなどある程度の時間を置いて、その間にいろいろレクチャーをして対策を練ったりするはずなのに、そういうのは一切なし。

「それによって起こる笑い」をテーマにしているのだろうけど、笑いどころか、すぐにバレてしまってかえって大混乱なのではなかろうか。

だいたい、主人公はもともと態度が非常に悪くて、国民からはまったく支持されていない「史上最悪のダメ総理」である。

たとえ記憶をなくしたとしても、その性格まで劇的に変わることなどないと思うのだが。

もちろん「えっ、オレは総理大臣なの?」と思うだろうけど、あそこまで卑屈で腰の低い男に変わってしまう理由がよくわからない。

というか、そもそも「史上最悪」と言われている姿がまったく描かれていない(途中で、議会で「記憶にねえんだよ」とか、大衆に向かって「うるせえんだよ!」とか暴言を吐くシーンの一部が出てはくるが・・・)ので、記憶を失う前と後の落差がまったくわからない。

これでは、「主人公は、もともとはいい人なんだ」と思ってしまうので、ダメなんじゃないの?

さらには、記憶がない主人公に対して、これまで通りに仕事をさせるという展開は、あまりにも無理筋なので、滑稽というより、ただただ唖然として見ているしかなかった。

途中で、小池栄子演じる秘書が「記憶を失った総理にしかできないことがあります」と言うシーンが出てくるのだけど、思わず画面に向かって「そんなもんあるか!!」と叫んだほどだ!?

コントによくある「すれ違い」の笑いを狙っているのだろうけど、そこまで作り込んでいるわけでもなく、主人公と相対する人のほとんどが、何の疑問も抱かない展開には違和感しかない。

そして、終盤で主人公に記憶が戻っていた、というシーンがある。

たぶん、自宅の食堂で斉藤由貴演じる家政婦に泥棒と間違えられてフライパンで頭を殴られた時がそうなのだろうけど、記憶が戻ったのに、性格は記憶を失った時のまま、という展開にもまた違和感があった。

記憶を取り戻したら、元の最悪男に戻るはずだろうに、いつの間にか「いい人」のままでエンディングを迎えるのだけど、記憶を失う前の状態がまったく描かれていないせいで、ここは逆に違和感がない。

ただただ、もともと性格のいい主人公が記憶を失ってしまったけど、また記憶を取り戻して「よかった、よかった!」というだけの内容になっているわけだ。

これは、映画としてはどうなんだろう。

コメディとして見た場合、あちこちで間違っているような気がする。

これ以外にも、明らかに笑わせようと思って作っているわざとらしいシーンが随所に出てくるが、まったく食指が動かなかった。

現役アナウンサーの有働由美子が異常にケバいメイクをしているとか、何故か半ズボンの大臣がいるとか、ずん・飯尾が変な耳をしているとか、草刈正雄演じる官房長官がラフな格好で辞任会見をするとか、SPがつけ髭とサングラスで変な変装をしているとか、実に幼稚なシーンが続出するのだけど、こんなのはギャグとしてもコメディとしても論外じゃないかと思う。

ということで、冒頭で見るのをやめようと思ったくらいだし、最初は「D」にしようかと思ったのだけど、途中でそんな展開にも慣れてしまったこともあり、「もう、どうでもいいや」と思ったので、評価は「C」にとどめておきます。

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