はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1218 ~ 室井慎次 敗れざる者

2024-10-12 | 映画評
今回は「室井慎次 敗れざる者」

1997年に放送開始され映画版も大ヒットを記録したテレビドラマ「踊る大捜査線」シリーズで柳葉敏郎が演じる人気キャラクター、室井慎次を主人公に描く映画2部作の前編。
室井役の柳葉敏郎、新城賢太郎役の筧利夫、沖田仁美役の真矢ミキらおなじみのキャストに加え、日向杏を演じる福本莉子や、齋藤潤、松下洸平ら新たなキャストも出演。スタッフ陣もプロデュースの亀山千広、脚本の君塚良一、監督の本広克行ら「踊る大捜査線」シリーズを支えてきたメンバーが再結集した。

主演:柳葉敏郎
共演:福本莉子、齋藤潤、前山くうが、前山こうが、松下洸平、矢本悠馬、生駒里奈、丹生明里
その他:松本岳、佐々木希、筧利夫、甲本雅裕、遠山俊也、西村直人、赤ペン瀧川、升毅、真矢ミキ、飯島直子、小沢仁志、木場勝己、稲森いずみ、いしだあゆみなど

<ストーリー>
これまで現場の捜査員のために戦い続け、警察の組織改革に挑むなど波乱に満ちた警察人生を歩んできた室井慎次。27年前に青島と交わした約束を果たせなかったことを悔やむ彼は、警察を辞めて故郷・秋田へ帰り、「事件の被害者家族・加害者家族を支援したい」との思いから、少年たちと穏やかに暮らしていた。ある日、室井の前に謎の少女が現れる。彼女の来訪とともに他殺と思われる死体が見つかり、室井はその第一発見者となってしまう。その少女・日向杏は、かつて湾岸署が逮捕した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だった。


久しぶりの映画館での鑑賞である。

「踊る大捜査線」は、珍しくドラマも見ている(と言っても、最初の映画が面白かったので、遡ってビデオで見たものだけど)のだが、前作「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」で完結かと思っていた。

ところが、「スターウォーズ」みたいに「〇〇年後」という形で新たに作品が作られた。

となると、「スターウォーズ エピソード7~9」みたいに、「何でこんなのわざわざ作ったの?」という感じにならなきゃいいが、という不安の方が先にきていた。

しかも、脚本は引き続き君塚良一である。

ネットで有名な映画評論家・ライムスター宇多丸氏をして「脚本の君塚さんには、二度と映画に携わってほしくない」という旨の辛辣な言葉を投げつけられた御仁である。

どういうことかと言うと、とにかくストーリーが安易というか、犯人はいずれも当時問題となっていた人たち(引きこもり、リストラされたビジネスマン、おたく)を充ててはいるものの、その犯行内容はほぼ同じ(実に計画的で、組織としての結束は固く、殺人も平気でする等々)という、後で考えたら「そんなわけないだろう」という展開ばかりだった。

中でも、ほとんど自宅に引き籠っている連中が、計画的・組織的に警視庁副総監を身代金目的で誘拐する、というのは、後で振り返ったら「ありえね~!!」というトンデモない設定だった。

でも、当時を振り返っても、映画評としては「面白かった」と書いているように、全体的にはよくできていた・・・はずだった。

ところが、第2作・第3作と続くにつれて、プロットはともかく、犯人の正体が変わっただけ、というその内容について批判が高まり、あのライムスター宇多丸氏の発言につながったわけである。

そういう不安を持って映画に臨んだのだけど、結論から言うと、本作では何も解決しないので何とも言えない。

室井が住み始めた家の近くで死体が発見されたり、かつての猟奇殺人犯・日向真奈美の娘が登場したりはするものの、途中で終わってしまい、後編の予告編が少し流れるだけで終わる。

何のためにわざわざ2部作にしたのかはわからないが、少々時間を延長してでも、前半は簡単に物語をまとめて、中盤から事件の解決に向けての展開にすればよかったような気がする。

いちおう、所々にドラマや映画版のシーンが出てくるので、長年のファンからすれば「おお~!」となるのだろうけど、それがかえって物語をダラダラと進めているという印象を強めていたように思う。

それ以外で言うと、所々で笑わせようとしているのか、とにかく随所にその場にそぐわないやり取りが出てきて、見ていてイタい。

冒頭に出てきた警察官なんて、室井が終始ムスっとしているのに、調子に乗って一方的におちゃらけている、という展開がしばらく続く、という苦痛なシーンだった。

里親として引き取っている子供たちのうち、兄貴分にあたる貴仁の学校でのほのぼのとした青春話は、その後大きく展開するのならともかく、事件とはほぼ関係がない(もしかして、後編で何か出てくるのか?)ので、少なくとも「踊る大捜査線」を見にきている人にとってはムダなシーンだと思うのだが・・・

そこへ、あの日向真奈美の娘・杏が登場するのだけど、この場面もずいぶんと唐突で違和感があった。

この娘が室井に家の様子をうかがっているところを、貴仁が「あっ、誰かいる」といって、見つけるのだけど、どこの誰で、何をしにきたのかもわからないのに、いきなり追いかけるという展開は、君塚のおっさんはいったいどういうつもりでこんなシーンを入れたんだろう。

しかも、その後室井家の隣にある小屋の中で見つかったのは、あれから1か月後だという。

どこでどうやって過ごしていたのかはわからないが、痩せた様子もまったくなく、病気にかかっているというわけでもなかったのに、意識を失っていたという謎の状況だった。

しかもこの場面、貴仁は家の外の方から走ってきて「室井さん、大変だ」と言っていたように記憶しているが、杏がいたのは家のすぐ隣にある小屋の中なのに、どうしてあんなに走っていたのか、ということが気になっていた。(もしかして記憶違いかも?)

いずれにしても、杏の登場のし方に違和感があったのは事実だ。

また、貴仁の母親を殺した容疑者を弁護する生駒里奈演じる弁護士とのやり取りも変だった。

容疑者が反省しているという言質を取りたいがために、容疑者に手紙を書かせて、それを貴仁に読ませようとするという戦略はともかく、とにかく言い方が横柄で、とても貴仁の心を動かそうとする人間のそれではない。

しかも、実際に容疑者と面会した時、その容疑者が「お前、誰だよ」と言っていたのには驚いた。

このバカ弁護士は、容疑者と何の打ち合わせもしていなかったのか?

少なくとも手紙を書かせたわけだから、この容疑者が貴仁のことを知らないはずがない。
しかも、面会を設定したのはこの弁護士だから、貴仁の顔を知らないにしても、その日に会う相手が誰であるのか知らないわけがない。

ということは、これまた君塚が、何も考えずにいいかげんな脚本を書いたのに違いない。

あと、終盤で室井が元同僚である筧利夫演じる新庄と再会する時にも、「えっ?」という描写があった。

秋田県警本部長となった新庄は、室井を呼び出すのに警察官を派遣し、「任意同行」ではなく、強制ということで新庄のいる日本料理屋に連れていき、室井に事件の捜査に協力してくれるよう要請する。

ところが、室井は「もう警察官ではない」と拒否するのだが、この時に新庄は「あなたは今回発見された死体の第一発見者だ。第一発見者を疑えというのが捜査の基本だ」と言って、部下に対して「室井を逮捕できるか」と聞き、部下も「できます」と答えて室井を牽制する。

これはおかしいだろう。
いくら第一発見者が怪しいと言っても、この時点ではまだ何もわかっていないのだから、逮捕なんかできるはずもなく、せいぜい事情聴取のために任意同行をお願いするくらいだろう。

このあたりの描写は、警視庁の警部であるくせに全国どこへでも自由に飛び回る、西村京太郎の十津川警部みたいないいかげんな展開がほとんどなく、警視庁と警察庁の違いをきちんと描くなど、割としっかりとした構成となっている「踊る大捜査線」らしくないシーンだった。

これまた、君塚が「別にそんなの気が付くヤツなんていいよ。こっちの方が面白いじゃん」とか言って、いいかげんに描いているわけではなかろうな。

ただ、細かい部分での描写はともかく、本作では物語自体何も進展していないので、この後何が起こるのか今の時点では何もわからない。

なので、内容についての感想はこれくらいにしておく。

主演の柳葉敏郎は、私よりも少し年下なのだが、相変わらずセリフ回しは下手ではあるものの、だいぶ貫録の方は出てきた感じがする。

ヒロイン役の福本莉子は「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、TOHOシネマズではお馴染みの顔となっているが、前任者の山崎紘菜や先輩である長澤まさみや上白石萌歌と比べても、今いちぱっとせず、見た目もスタイルもちょっと貧相だ。
今作でも、そういう役柄であることはわかってはいるが、とても人気女優には見えない。

まあ、これ以外にも懐かしい面々が少しずつ登場しているので、そういう点では楽しむことはできました。

とは言え、今作に限って言えば、いろいろと肩透かしを食うだけだったので、評価はいちおう「C」にしておきます。



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