年末に近づき、少しは落ち着いたかもだが、クリスマスの時季までは、我々もよく世話になる、宅配便業界も多忙だった様だ。拙居所のある建物にも、少なくとも日に数回は、日本郵便JPを含む複数の業者が出入りして、頻繁に配送を行っている。又、たまに出向く、近所の業者集配所には、出荷待ちの荷物が多くあり、特に今月は多忙を極めたと思われる。
傍目にも、余裕のなさそうな仕事ぶりが窺えるが、先日、遂にその不安が的中する出来事があった。発生場所は明かされていないが、我国有数の宅配業者の従業員が配送中、大変に輻輳(ふくそう)する業務に耐えかねてか、預かり荷物を路上に放り出し、或いは荷役台車を路上に叩きつけ、などの暴挙に出たと言うのだ。既に、ネット上にも動画が出回り、事態を把握した会社側は、顧客への謝罪と破損などの被害状況調査などに乗り出し、当該従業員の処分も行う由。まずは、プロ失格とも言える所業であり、それは大いに糾されるべきだろう。
その事を踏まえた上で、今の物流業界の大変さ、余裕のなさも顧慮されるべきと愚考する。昭和末期の1970年代後半に始められたとされる宅配便は、小回りの利く個人・企業向けのサービスの強みが奏功し、これまで概ね順調に推移して来たのはご存じの通り。ただ、平成期に入っての通販の隆盛や、今世紀に入ってからの、ネット通販の台頭、更に新参多数による競争激化などで、トラック配送を初めとする労務面の余裕がなく、しばしば輸送事故やトラブルが頻発する事が問題視されて来たのも事実。今回の事件は、その象徴的なケースではないだろうか。
思い返すと、拙自身も、若き日に電機関連企業の物流部門に奉職した事があり、内部共々、宅配業界の大変さが少しは理解できるかと心得るので、不祥事に関わった人物を過分に弁護する意思はないが、少し所感を述べたく思う。
これは恐らく、当該人物個人の余裕のなさも相当にありはするが、やはり会社レベルの業務の組み立てに問題があったと捉えざるを得ない。配送を担う、営業ドライバーの各位は、それぞれに担当エリアを持つが、ある特定の箇所で、業務や連絡が集中したりした場合のフォロー・アップの方法や態勢が十分できる状況だったか、会社側は、当該人物の処分だけで終わらせず、事件の発生や背景を詳細に把握し、再発を起こさない堅固な態勢作りを、謙虚な姿勢で強く進めてもらいたいもの。又、某広告企業で大問題になった、過重労働の実態が、宅配などの運輸業界にも多くある、との指摘も付き纏う。全部は期待できないかもだが、そうした実態をも少しでも明るみに出し、膿を出すつもりでしっかりとした改善を願いたい。交通事故に代表される輸送事故が多発しては、仕事にならない事は、論を待たないはずだから。
同時に、輸送を任せる、我々を含めたユーザー・サイドでも、何ができるかを考える時期に来ているのではないか。最近は、激増するネット通販などの影響で、宅配便業界は、単価の低い煩雑な業務に囚われ、効率良い業務運営ができ難くなっていると聞く。特に多そうなのが、再配達問題。これは個人、特に日中に居所を空けがちな独身者達が、特に自覚すべき事共だろう。商品の注文は良いが、二度三度、配達しても受領されないケースも多く、その為に余分な労力とエネルギーが費やされ、これ又余分な排ガスの発生にも繋がっているのだ。通販側も、ユーザーとの契約時に、必ず、無理ない所で納期の指定ができるかを審査し、誠実な受領を徹底して頂く位の理解と協力を取り付けても良い。一度注文したら、受け取りはその時の都合次第では、泣かされたり危険に晒される人々を増やす事になってしまう。便利な通販も、一定の節度とモラルをもって利用する方が、むしろ企業や社会の損失も抑えられるのではないか。
今回画像は、当地の北郊 稲沢市を発って、首都圏へ向かうJRコンテナ便の様子。高速道利用の、長距離トラック輸送も曲がり角に来ており、ドライバー不足とトラック燃料節減の見地から、できる所で鉄道便を使う「モーダル・シフト」が継続して取り組み中。この日は、編成の前から5両目に、トラック多数を擁する陸運会社の専用コンテナが見られます。ここJR清洲駅は、かつての織田軍・清洲城址にも近く、又、列車写真の好適地としても知られ、愛好者の来訪も多い所です。