昭和末期、経営危機に瀕した旧国鉄の改革を主導した JRの重鎮、葛西敬之(かさい・よしゆき)さんが逝去された。旧国鉄➡ JR各社への改革道筋をつけ、当地とも縁の深い JR東海の興隆と東海道・山陽新幹線の体質強化、それに幾つかの問題を孕みながらも進行中の リニア中央新幹線計画への道を開いた功は大きいものと心得る。信念ある保守思考と 強い決断力で、拙者の最も敬愛する鉄道マンのお一人だった。謹んでの弔意を申したい。
さて、その葛西さんのご理解も得ていたであろう 有事の際の国民保護を図った公的な緊急避難施設指定の方針が、東京都より表明された様だ。法的根拠たる 国民保護法は、正式には「武力攻撃事態等における 国民の保護のための措置に関する法律」といい、あらましを末尾にリンク致すが その趣旨に基づいた指定という事だろう。これで決して万全という訳ではないが、以下 昨日の共同通信ネット記事を引用して、みて参りたい。
「地下鉄駅を避難施設に指定 東京、ミサイル攻撃を想定」
東京都は 5/27、北朝鮮のミサイル発射や ロシアによるウクライナ侵攻を受け、都営地下鉄と東京メトロの地下鉄駅計 105カ所と 都が管理する地下道 4カ所を、国民保護法に基づく緊急避難一時避難施設に指定したと発表した。
施設は ミサイル攻撃の爆風などによる被害を軽減するのが目的で、今回の指定で計 3001カ所となる。これまでは 学校や公民館が主で、地下鉄駅の指定は初めて。小池百合子・東京都知事は 同日の定例記者会見で「ウクライナの状況を見ても 地下施設をいかに有効に生かすかがポイントになってくる」と述べ、さらに拡充する意向を示した。(引用ここまで)
2004=平成 16年初夏に成立、同年秋に施行された 国民保護法の趣旨による、東京都の緊急一時避難施設の指定は理解する。その上で、少なくとも二つの改善もしくは強化の余地がありはしないだろうか。
一つは、東京都に留まらず 少なくとも全国の主要都市全てが、こうした緊急一時避難所複数の指定に動く事。対日ミサイル攻撃は、具体的な国名には踏み込まずも 何も特定の一国だけからではない可能性もある。その様な場合、狙われるのは何も東京都だけではないだろう。これも具体的な地域名は伏せるが、当地名古屋を含め 攻撃を図る某国にとり、首都圏並みに重要な都市などは少なくない事だろう。都市や地域など 国民市民が暮らす基盤を守る為にも、平時の普段から全国レベルで避難施設の段取りを決めておく事の大切さは 拙者も痛感する所だ。
もう一つは その緊急避難施設自体とも関連する事だが、やはり外からの攻撃を想定するからには、万一にも「核兵器のリスク」を織り込んでおく必要があるのではないか。具体的には、全国主要カ所で指定の 国民市民保護の為の緊急避難施設を、核兵器が行使された場合も耐えられるレベルにすべきではないかという事だ。
複数機関の調査によると、人口当たりの核シェルター普及率は スイス・イスラエル両国が 100%で、ノルウェー国が 98%で追っている。比較的進んでいないシンガポール国でさえ 54%、北鮮の核リスクと対峙の大韓民国は、首都ソウル市で 300%超で世界一の由だが、国レベルでも 50%超とか。核保有国では 米合衆国が 82%、露国が 78%、英国 67%と続くが、唯一の原爆被曝国の我国は 僅か 0.02%の低さ。幾ら何でも危機感がなさ過ぎるのではないだろうか。戦後長らく続いた「平和ボケ」の弊害とする指摘も聞く者だ。
先日の日米主脳会談にて、岸田総理はバイデン米大統領に対し 我国の防衛費大幅増を表明。昨今の我国周辺の安保情勢峻険化と 日米同盟進化の為にも一定必要は認めるも、一方で こうした有事の際の国民保護を図る防御の策への投資も又、重要な事柄ではないのか。現状国内総生産 GDP比 1%程度を目安とする我国防衛費。これを数年内に 北大西洋条約機構 NATO加盟国平均並み 2%への引き上げを目指すという。
勿論それを全否定する者ではないが、岸田政権がこうした方向を目指す根拠とする平和安全保障法制と共に、国民保護法に基づく措置も同様に重視願いたいものだ。高橋洋一・嘉悦大教授らによれば、我国防衛予算は GDP比 2%でも尚不足で、同比 3%レベルが望ましい値とか。
よろしい。法的、科学的根拠が明確なら そうした防衛費増額も吝(やぶさ)かではないが、それにしても国民市民保護の為の策とのバランス良い実施を強く求めたい。GDP比 0.5%分でも良いから、それを公的緊急避難施設の核攻撃対応への強化と、一般向け核シェルター普及の為の 補助金などへの充当を望みたい。一歩間違えばバラマキともなりかねず「又補助金か?」の疑念を招く負の面もないとはいえない所も理解するが、それにしても 我国内での核シェルター是非についての議論さえないというのは問題だ。
国民市民レベルの 核の防衛認識が高まれば、状況は少しでも改善できよう。せめてシンガポール国に続く、核シェルター普及率 50%の線位は目標にすべき。今回画像は先月捕捉の JR名古屋駅北詰にての、列車が往来する直下にて進む リニア中央新幹線関連工事の様子を。同線の発着プラット・フォームは JR名古屋駅の最深部に設置される予定だけに、有事の際には名古屋市民他多数の 緊急避難場所としても機能願いたい所ですが。以下に、国民保護法の関連記事をリンク致します。(コトバンク様) 国民保護法とは - コトバンク (kotobank.jp)
地下シェルターについては、日本政府の関心の低さに、いつも疑問を持っていました。
貴方が数字を上げて説明されたので、一層疑問が高まりました。政府を突き上げる野党も、平和ボケという点では、同じ穴の狢でした。
「人命を守る、共産党」というスローガンは、やはり単なるスローガンでしたね。
本当に仰る通りで、有事の為の 核を含む地下シェル
ター整備には、国民も政府も無関心過ぎました。
「人命を守る」が特定野党のスローガンに留まっていた
感があるのもご指摘の通りです。
国防安保の趣が強い 核を含む地下シェルター整備
ですが、全国レベルの問題である以上、新しい公共
事業と位置付けるべきと拙者などは思います。
新しい月となりましたが、引き続きどうか宜しくお
願い致します。まずは お礼まで。