岸田政権の目指す、英・伊両国との共同開発による次期空自戦闘機の条件付きでの第三国輸出を可能にする自民・公明両党協議が一時停滞も 再び進展しそうな気配ではある。
「所謂正面装備なだけに、輸出に際しての厳格な歯止めを要す」との公明主張も一定は分るが、全面輸出不可のままでは 共同開発国に対する信頼を損ねる事もなりかねず、ひいては我国の防衛策を大きく支障する懸念もあろう。安全に留意の上、今月中にも始まる英・伊両国との開発協議開始に間に合わせるべく 少しでも望ましい与党姿勢が示せる様努めて頂きたい。
さて、次期戦闘機国際共同開発を含む 我国防衛政策強化の政府方針だが、何も武器や兵力など正面装備だけの問題ではない。ネット・ワークに対するサイバー攻撃からの防衛策も重要だろう。これにつき、今日の日本経済新聞ネット記事を少し引用して みて参る事に。
「アジアでサイバー攻撃の懸念強まる」
足元では アジアでのサイバー攻撃の懸念は高まっている。警察庁は 2023=令和 5年 9月に 米国家安全保障局(NSA) などと連名で、中国(大陸) とつながりを持つハッカー集団「ブラックテック」が 日本を含む東アジアや米国で、情報窃取(せっしゅ)を目的としたサイバー攻撃をしていると警告した。
脅威分析大手の 米レコーデッド・フューチャーによると、北朝鮮の政府系ハッカー集団「ラザルス」の攻撃の約 8割はアジアで発生している。台湾のサイバーセキュリティ TeamT5も 2024=令和 6年 1月、中国(大陸)系の高度で持続的な攻撃をしかける「APTグループ」が日韓や台湾、東南アジア各国を標的にしていると報告した。
イスラエルのセキュリティ企業 チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズによると、2023=令和 5年にランサムウェア(身代金要求型ウィルス)攻撃を受けた組織の割合は アジア太平洋地域が(約)11%で、米国の(同)9%、EMEA(欧州・中東・アフリカ)の(同)10%上回る。
「日本のサイバー防衛人材、11万人不足」
アジアで高まるサイバー攻撃への懸念に対応するには、サイバー防衛の専門人材の厚みを増す必要がある。日本のサイバー防衛の研究には一定の評価があるものの、日本国内ではサイバー防衛の人材不足が指摘されている。
サイバーセキュリティの世界最大の資格団体「ISC2」が2023=令和 5年 11月に公表した調査では、日本の人材数は必要数より(約) 11万人少なく、ギャップは 2022=令和 4年からほぼ倍増した。
米ハーバード大ベルファー科学国際問題センターが 各国の法律の技術などの公開情報から推計する「国家サイバー・パワー・インデックス」調査では、日本の順位は 2020=令和 2年の 9位から 2022=同 4年に 16位に下がった。
日本政府は 2022=同 4年に国家安全保障戦略で、サイバー防衛の対応能力を「欧米主要国と同等以上に向上させる」と掲げる。自衛隊などサイバー防衛の専門要員を 2027=令和 9年度までに 現在の 4倍超の 4000人に、基礎知識を持つ自衛官を 2万人ほどに増やす計画だ。2023=同 5年 12月には NTTや NEC、政府幹部経験者らが参加する サイバー防衛人材の育成団体が発足した。
慶応大 SFC研究所の 小宮山功一朗・上席所員は「多くの国際調査で共通する日本の課題は、官民のサイバー防衛人材の確保と育成の不足だ」と指摘する。
グーグルが収集する脅威データを基に多国間の情報連携を構築できれば、国内の人材育成に加え、インテリジェンス能力の向上も期待できる。グーグルの アトキンス氏は「人工知能(AI) の活用が進み、サイバー攻撃は高度化している。消費者が日常生活で安全にテクノロジーを使うため、長年 サイバー攻撃に対応してきたグーグルの知見を生かしてほしい」とした。(引用ここまで)
他報道などから、米通信大手・グーグル社は今後我国・東京都内にサイバー防衛拠点を設ける計画がある由。同社と我国の主要企業や団体との連携が強まる一方、我国の特に防衛面でのセキュリティの甘さが指摘されるのも事実。
先年 我国防衛省のネット・ワークが非友好側のサイバー攻撃を受け、機密分野を含む相当の情報流出を生じた旨、米国の情報当局から複数回の警告・注意を受けたとの話も聞く。放置していては、やがて日米の同盟関係にもひびが入りかねない状況ではないか。又 複数回の注意にも関わらず、直ちの善処を怠った我国政府の不良姿勢も糾されるべきだろう。
我国野党各党は、目下の所は先年来の 与党旧有力派閥による政治資金問題についての追及が主で、こうしたサイバー防衛についての言及がほぼない様だ。むしろ こうした所をこそ厳しく糾し、誠実な善処を強く求めるのが野党の使命ではないか。
復習にもなるが、岸田総理も主張の 今後の防衛力強化自体は理解する。ただそれは 戦車や戦闘機、護衛艦などの正面装備や人員面の強化に留まらず、武器を持たずとも行える ネット・ワークに向けた「サイバー攻撃」なる 形の異なる戦争に対するそれも同様に強化されるべきという事だろう。今回画像は、昨年捉えた 当地北郊の一宮市内にて、岐阜県下の砕石施設から名古屋港近くまでセメント原料の輸送に当たる専用貨物便の様子を。