10月13日某新聞より
桃太郎は正義のヒーローではなく悪者であった、ということが書いてあった。
なるほど、確かにそうかもしれない。
むかしむかし、ある山里におじいさんとおばあさんが住んでいた。
おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川で洗濯しているとき桃が流れてきたところからはじまる。
ドンブラコドンブラコと川を流れてきて、桃太郎は桃の中にいた。
桃太郎が入っている桃なんだから相当重いだろうな。
老人二人で家まで持って帰るのは大変だ。
包丁で真っ二つに切るにはおじいさんとおばあさん二人がかりでも大変だ。
老人だからバランスを崩し、いきおい余って中の桃太郎を真っ二つにしてしまったとさ、というのも面白そうだがダメなんだろうな。
しかしこれ、普通に考えると怖いではないか。
どうして桃の中に人間がいるのだ。
普通ならすぐに奉行所に申し届けなければのだが、住んでいるところが山里だ。
奉行所までは遠いということで勘弁しましょう。
桃から生まれたから桃太郎。
大変わかりやすい。
そうして食欲旺盛な桃太郎はぐんぐん育ち、やがて立派な少年になっていく。
そうしてある日、桃太郎は鬼退治を決心するのである。
里山の下には海がひろがっていて、その先に鬼ヶ島が見える。
そこには赤鬼、青鬼がいて時々村にやってきて村人を苦しめる。
桃太郎はとくに誰かに頼まれた訳でもないのに、この鬼たちを成敗してくれようと、おばあさんに作ってもらったキビダンゴを腰にぶら下げ出かけるのだった。
すると犬がやってきて「そのキビダンゴを貰えるなら家来になりましょう」と言ってくる。
以下、猿とキジが同じように家来になる。
こういう話の展開はみんな知っている。
そのときの桃太郎のいでたちは日の丸のハチマキをしめ、犬、猿、キジたちの家来を従えて、今日の選挙候補者の基本スタイルとなった。
そしてまだ行ってもいない鬼ヶ島の鬼退治へとつづく。
しかしなぜ直接なんの被害を受けていない桃太郎が(たぶん)目撃もしていないだろう村での鬼の狼藉に対して「征伐、退治」に行くのか。
ここのところにまったく説得力がない。
桃太郎が赤鬼、青鬼の「言い分」を聞いている、という記述もまったくない。
桃太郎の疑問は山積みである。
1 桃太郎の実力はどれほどのものか
2 桃太郎の敵成敗出兵の動機、及び勝算はどんなものか
3 悪いといわれる鬼たちの罪状は
4 犬と猿とキジが加勢してどれほどの戦力強化になるのか
5 成敗して何がどうなる
いやはやキリがないのでこのへんでやめておこう。