幾千年の時を経て、目覚める。
夢を見た
秋風が吹いてくると、温泉が恋しくなる。
楽に行ける大温泉より、不便な場所にある秘湯のような温泉のほうがいい。
そのような温泉の夜は本当に真っ暗で、灯りといってもランプくらいしかない、それもまた風情があっていい。
こじんまりとした一軒宿の温泉に入ると、体中の疲れがすっーと抜けていく。
市販の温泉の素を入れた風呂に入っても、さら湯よりは気分がいいが、やはりそれとは違う。
壁にある効能書きを見ると、温泉に入ったらすぐ健康になれそうな気がする。
お湯につかっていなければ「本当かいな」と疑いたくなるが、お湯の中でじわっと体が気持ちよく暖まってくると、ただならぬ力が温泉にはあるように思える。
「よおし」と元気も出てくるのである。
温泉から連想する言葉は、人さまざまである。
ある人は温泉芸者、ある人は不倫といった。
たしかに秘湯には「何かが起こりそうな雰囲気」が漂っている。
わけありの男女が集まるような気がする。
「やっと二人きりになれたね」などというような状況にあこがれるのだが、実際には何も起きない。
飲んで騒いで、終わりの見えない宴会しかなかったりするのであった。