フキの花
今を盛りに、あちらこちらで咲いています。
ところで、今の人はマッチ棒を知らないということを聞いてビックリした。
そうか、いつの間にかそういう時代になっているのに気がつかないでいた。
確かに今の人たちはマッチを使わない。
家の中のどこを探してもマッチ箱は見つからないに違いない。
逆に自分たちの世代は、あまりにもマッチに依存した日々だった。
マッチなくしては一日が始まらなかった。
当時の主婦は朝起きるとまず台所に行ってガスコンロに火をつける。
何で火をつけるかというとマッチだった。
今のガスコンロは「パッチン」で火がつくが、昔のは複雑だった。
ガスはゴムホースで送られてきて、ガスが噴出するところは円形で、そこのところに無数の穴が開いていた。
ガスコンロを使うときはまず元栓を開けてガスを噴出させ、大急ぎでマッチを摺ってマッチ棒に火をつけ、それを大急ぎでガスコンロの穴の一つに近づける。
ボッという大きな音がして、穴という穴に火がまわるという、実にもう説明するのに時間がかかる器具であった。
やたらに大急ぎだったのは、急がないとガスが周辺に立ち込めてしまうからである。
ああしかし、何ということだ。
そのマッチを見たことも聞いたこともないという人たちで、世の中は動いているのだ。
そんなことも知らずに我々の世代はボーッと生きていたのだ。
世の中に取り残されたいるのも知らずに…
浦島太郎の心境だ。
ふと、そういえば、と思い出した。
缶詰を開ける缶切りは大丈夫か?
団扇(うちわ)は大丈夫か?
蝿たたきは大丈夫か?
亀の子だわしは大丈夫か?
団扇はかつて大活躍した。
朝顔や桔梗の絵が描かれている平べったいものを、ただ単に手に取って眺める夏の風物詩の一つとして認識されるのではないか。
まさかこれを動かして風を作り出す?
エ?、どうやって動かすの?、ということになる恐れはないのか。
蝿たたきはどうか。
何しろたたく相手が今はいない。
自分たちの世代には、たたく相手がいくらでもいた。
毎日が蝿との闘いだった。
つい一昔前の出来事だった。
今は蝿がいなくなったので、ゴキブリがその跡を継いで健闘しているらしい。
亀の子だわしに至っては、どう見ても「ナニコレ?」になる。
これらの道具を実際に使っていた我々は、まさに時代から取り残された民族扱いされる日が近いに違いない。
つまり早い話が、フキの花とは全然関係ない話になってしまいました。
すまんすまん。