これから大孤独の時代がやってくる。
人類はこれまで大航海の時代を経験した。
活気ある時代だった。
希望にあふれる時代だった。
それゆえ人々は、航海の上に大の字をつけて大航海の時代と呼んだ。
これからやってくる孤独の時代もまた、あまりに大きな孤独ゆえに、これを大孤独の時代と名づけざるを得なかったのだ。
「2025年問題」というのがある。
この年、団塊の世代がすべて75歳以上になる。
75歳は、いきなりという言い方はヘンだが、いきなり後期高齢者である。
日本では65歳から74歳までを前期高齢者と呼ぶ慣わしがある。
そういう手順になっている。
なにしろ75歳であるから、ドドッというような勢いのある動きではなく、ヨロヨロというか、ヘナヘナと押し寄せてくる。
押し寄せてくるヨロヨロヘナヘナ軍団の大半は元サラリーマンである。
サラリーマンというのは一つの群れで、群れで決断し、群れで行動する。
群れの中にいると安心し、群れから離れると不安になる。
一人で決断し、一人で行動することに慣れていない。
22歳でサラリーマンとなったとして、そのあとおよそ40年間群れの中で生きてきた。
それが突然、定年制度によって群れから追い払われる。
会社一筋でやってきた人生を、これから、今日、今から自分一筋に切り換えなければならない。
周辺を見渡せば、子供たちはすでに独立して家にいない。
家にいるのは妻一人。
テレビをつけてみる。
ドラマをやっている。
サラリーマンの主人公が、定年になったとたん妻から離婚届を突きつけられるというドラマである。
お~、早くも孤独に突き当たったではないか。
これまでずっと孤独と隣り合わせで生きてきてたんだ。
そのことに気がつかなかっただけだったんだ。
う~ん、孤独ねぇ…
孤独死ってのもあるしなぁ。
あれだけは何とかして避けたいなぁ。
人間、生まれてくるときも一人。
死ぬときも一人。
そりゃあ死ぬとき、一緒に死んでくれる人がいれば少しは心強いかもしれないが、どう考えてもそれは無理。
孤独ってとかく嫌われがちだけど、早くから孤独に慣れておくのも大切なのかな…
なんてくだらないことを考える、じじであった。