はなこのアンテナ@無知の知

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このままで良いのか?

2012年07月27日 | 日々のよしなしごと
「いじめに関しては、いじめられる側にも問題がある」

昨日、知人数人と話している中であった発言だが、残念ながら、これも社会の中で大多数の合意を得ている考え方であり、社会の中から「いじめ」がなくならない原因のひとつなのだろう。

私自身は、この考え方に同意できない。なぜなら、私自身、子どもの頃にいじめられた経験があり、息子も小学生の時に、ある子どもから執拗な嫌がらせを受けたことがあるからだ。以前も書いたが、いじめの現場を見かけた友人がいじめっ子に問い質したら、「いつもニコニコ笑いやがって気に入らない」と答えたそうだ。その言葉を字面通りに受け取るのはあまりにも安易だとは思うが、その精神の幼さ、稚拙さ故に、いじめる側の論理は大抵乱暴なものだと思う。


人間も所詮動物だから、本能的には弱肉強食。他の種と比べてほんの少しばかり脳みそが大きいから、秩序だった社会を形成し、普段の生活では理性で本能を抑えてはいるけれど、何かの拍子で本能が表に顔を出す。

ある集団の中で少しでも弱みを見せた人間は、容赦なく攻撃の対象になり、強者の格好の餌食になる。たまたま攻撃を逃れた弱者も、理性より本能が勝れば保身の為に「寄らば大樹の陰」で強者側に付く。

とかく人間は社会の中で序列を作りたがり、強者は弱者を支配したがる。強者とて安泰ではなく、常に競争に晒され、上からはより強い者に抑え込まれ、下からは突き上げられ、常に自分のポジションが脅かされる。そこから来るストレスの捌け口に、より弱い人間を攻撃する。

理性では「弱い者いじめは良くない」と分かっていながら、冒頭の言葉に代表されるように、社会の中で「強者が弱者を攻撃するのは必然の理」と是認する空気がある限り、いじめはなくならない。その前提に立てば、何らかの弱みを持った人間は、その程度の差こそあれ、「いじめ」からは逃れられない(しかも、「いじめる側」は無自覚であることも少なくない。意識下にある相手への思いや評価が、婉曲的に差別や侮蔑や排除を意味する言い回しで表出することがあり、それが言われる側の自尊心を傷つけるのだ。大人の世界では、それが顕著である)

しかし、人間が他の種との違いを示したいのなら、現実的に「いじめ」の根絶が無理だとしても、あえて「理想」を掲げて、自らの人生を幸福に全うしたいと願う誰もが、尊厳を持って生きることができる社会を目指すべきだと思う。

昨日は、児童虐待の数も過去最高を記録したとの報道があった。それはあくまでも行政が把握している件数で、実態はもっと深刻なのだろう。

つまり少なからぬ子どもが、同世代からも、子どもを保護すべき身近な大人からも、攻撃を受け、その存在が脅かされている、と言うことなのか。

「子ども社会」は「大人社会」の反映に過ぎない。より弱い者に攻撃が向けられる、と言う原理からは、社会の中で追い詰められた大人が、より弱い存在である子どもを攻撃している図式が浮かび上がる。対子どもでは加害者である大人も、階層社会と言う枠組みの中では被害者(愛情も教育も不十分な中で育ち、精神的にも幼く、生活能力も著しく低い故に、社会の貧困化の影響をモロに受けてしまう)である可能性が高い

実際、普段生活していても、近年は何かに苛立っている大人の姿が多く目に付く。先日も大型書店のレジで、店員を怒鳴りつけている私と同世代の女性がいた。たとえ店員に何か不手際があったとしても、人前で畳みかけるように怒鳴りつける必要はないだろうと、たまたま隣のレジにいた私でさえ不快に思った。怒鳴りつけている時の自分の顔を鏡で見てみたら良い。自分でも目を背けたくなるような鬼の形相だから。

その女性も、苛立っているのは、単に店員の不手際だけが原因なのではないのかもしれない。何か別の理由で元々苛立っていて、それが店員の不手際で爆発しただけなのかもしれない。とにかく、この頃は人々の心から余裕が確実に失われている。多くの人間が苛立っていて、社会全体がゆとりを失い、ギスギスしている。そうした社会の歪みを一身に受けているのが、抵抗する術を持たない子ども達なのだと思う。

いい加減、社会を根本から立て直さないと、この国はどうにかなってしまいそうだ。このままでは、一部の強者を除く多くの国民が不幸になってしまうだろう。

さまざまな問題が噴出する現状は、「それでも構わないのか?」と日本人ひとりひとりにイエローカードを突きつけ、改革を迫っているような気がする。
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