はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

嫌われ松子の一生

2006年06月22日 | 映画(2005-06年公開)


そもそもタイトルになかなかインパクトがありますが、
公開前の数ヶ月間、映画館で上映された予告編の、
極彩色でミュージカル仕立ての華やかな映像もまた、
インパクトがありました。
さらに、”タイトル”と”予告編が醸し出すイメージ”
のギャップも。
日本CM界屈指の才能による、
こうした二重三重の仕掛けに絡め取られるように、
まんまとその罠に嵌って(笑)、思わずこの作品を
見てしまった人も少なくないのでは?と思う。

すでに前作『下妻物語』で周知の、
独特かつ卓越した映像センスを持つ中島哲也監督が、
「これまで誰も見たことのないような映画」を目指し、
徹底的に作り込んだ映像は必見です。

愛されたい、幸せになりたい、と切望する松子が、
その思いとは裏腹に悲惨な転落の人生を歩んで行く。

ところが、中島監督の手になるその描写は
あくまでも明るく華やか。
往年のブロードウェイ・グランド・ミュージカルを
彷彿させる豪華な仕立てで、楽しげに踊り歌う松子。
まるでかつての少女漫画のようなノリで、
画面には色とりどりの花も咲き乱れている。
監督曰く「手垢のついていない」多彩な出演者達の
パフォーマンスのアンサンブルも、本作を盛り立てている。

末路は住んでいるアパートの住民に
「嫌われ松子」と呼ばれるほど悲惨な松子ですが、
彼女の甥と共に、彼女と関わった人々の話を聞きながら
彼女の人生を辿ってみれば、
やることなすことが裏目に出た松子の、
哀れなほど不器用だけど、
懸命で直(ひた)向きな生き様が見えて来る。
そんな生き様を嗤えない自分がいます。
愛おしくさえ思う。

人間の価値とは、”人に何をしてもらったか”ではなく、
”人に何をしてあげたか”で決まるんじゃないか。

登場人物の口を借りて語られるメッセージが耳に残ります。

松子ほど波瀾万丈ではなくとも、
松子並みに不器用で、なかなか思うようには行かない
人生を歩んでいるであろう世の大多数の人々への
応援歌のような作品なのかな。
だからでしょうか?描かれた物語は悲惨でも、
夜空の月を見上げる明るさが、この作品にはあります
(人間ウツむいてばかりいると、心もウツウツしてくるものです)。

【追記】
これもまたベストセラー小説の映画化らしいですが、
私は山田宗樹の原作を知りませんでした(^_^;)。
私ってベストセラーに疎いのかしら?
本屋には毎週のように行っているんですけど…
これだけ映画が面白いと、その元となった原作も
読みたくなるものですよね。
かくして読書待ちリストは増えて行く。アセアセ…
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベッカムに恋して(Bend it l... | トップ | FIFAワールドカップを巡... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。