はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

ブロークバック・マウンテン

2006年06月06日 | 映画(2005-06年公開)


”カウボーイ”の”同性愛”と、
一見相容れないような組み合わせが俄然注目を浴びた本作。
それが、保守的なアカデミー賞では敬遠されたのか、
主要な受賞は監督賞のみにとどまった。

禁断の愛を覗き見る、と言った興味本位な視点で見ると、
肩すかしを喰らうのは間違いない。
あくまでも映像は詩的で美しく、
描かれた愛は切なく哀しいものだから。

短編小説を、アン・リー監督の豊かなイマジネーションで
見事に加筆した、と言っても良いだろうか?
監督賞受賞に甚だ納得の1本です。

実際のロケはワイオミングのブロークバック・マウンテン
ではなく、カナダのロッキー山脈等で行われたようですが、
風景描写がとても美しく詩的。
何気ない田舎道と乾いた街並み、低い地平に大きな空。
真っ青な空に白い雲。緑の牧草地に無数の白い点を描く羊達。
風景は、この作品のもうひとつの主役なんですね。
無言でいて、饒舌と言うか…
そんな中で人間が愛し愛され、悩み苦しみながら、
日々を生きている。
雄大な自然の中の、ちっぽけな人間の営みという対照が、
何とも滋味深く、深く余韻を残す。

始まりは今から40年前のこと。それから20年間に渡る
二人の男性の物語を淡々と綴っている。
世間的には許されない二人の関係を、
大自然の懐が温かく包み込む。
逃れられない生活苦と、自尊心が傷つけられ続ける生活と…
ブロークバック・マウンテンは、
過酷な現実から二人が唯一解き放たれる場所。

以下は少々ネタバレにつき、未見の方はご注意ください。



歳月の流れは、二人の置かれた状況を否応なく変えて行く。
彼らはそれぞれ異性の伴侶を見つけ、家庭を築く。
それでも年の数日間ブローク・バックマウンテンで逢瀬を
重ね続ける二人。それぞれの家族には残酷な仕打ちだ。
惹かれ合う思いとは裏腹に、共に過ごすことで
二人は互いを傷つけ合い、苦悩を深めて行く。

そして皮肉にも、現世での永遠の別れが、
再び二人の心を固く結びつけることになろうとは…

かつてキリスト教会で聞いた説教に
「神の国はあなたの心の中にある」
と言う一節があった。
ジャックの死によって、二度と行くことのなくなったであろう
ブロークバック・マウンテンは、
その時点で、イニスとジャックの心の中に永遠に在り続ける
真の安らぎの場所となったのだろうか?
映画の最後にフォーカスされる
壁に掛けられたジャックの形見の服と
ブロークバック・マウンテンの写真に、
私の中で哀しみや切なさと共に安堵の思いが広がった。

もう誰も二人の仲を裂くことはできない…





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