はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

子供は皮膚で吸収する

2005年12月19日 | ボランティア活動のこと

05年12月18日(日)の空

一昨日、昨日と、ボランティア先の美術館では、
「美術館のクリスマス」と銘打って、親子向け
ワークショップ(以下WS)や本館ロビーでの東京芸大
有志によるクリスマス・キャロル等の催しが行われた。
私は美術館スタッフや他のボランティア・スタッフと共に
ワークショップを担当した。

WSは、土、日の午前・午後と計4回実施される。
それも毎月、毎週実施というわけではなく、
不定期なので、参加を希望される方は、美術館の
HPをこまめにチェックすることをお薦めする。
(なお、準備の都合上、事前に申し込みが必要)
ボランティア・スタッフは各自の都合に応じて、
その内の1回を担当する。

ボランティア先の美術館は西洋美術を扱うので、
特に中世から近世にかけては、宗教画が多数を占める。
そういったコレクションを生かして、今回はイエス・
キリストの生誕日であるクリスマスに因んだ
プログラムだった。

まず6~9歳の児童とその親を対象に、ロビーで
クリスマスの由来を語った絵本の読み聞かせを行う。
次に常設展示室に移動し、全員で《キリスト降誕》を
鑑賞した後は、家族毎に違う宗教画を鑑賞する。
時間の許す限り他の宗教画を鑑賞するのもOKだ。
その後WS室に移動し、各々鑑賞した絵について
感じたことを述べあい、最後に本館ロビーに設置
されているクリスマス・ツリー用のオーナメントを
制作する、といった内容で、時間にして2時間余り。

常設展示室で各家族が宗教画を鑑賞中の時のこと。
一組の母子連れの参加者の娘さんの方が早々と
鑑賞を終えて、ひとり展示室内のイスに腰掛け、
美術館の常設コレクション・カタログを眺めていた。
別に美術館側としては、それでも構わない。
しかし、お母さんの方は少しバツの悪そうな表情で、
私に話しかけて来られた。

「いつも、ああなんですよ。私が絵を見るのが好き
なものですから、あの子が小さい頃から連れ歩いて
いるのですが、いつもああして早々と絵は見終わって
しまって・・・」それに対して私はこう応えた。
「大丈夫ですよ。私の息子は今中学生ですが、
やはり私も彼を背中に負ぶって美術館に連れて
行ったものです。子供は見ていないようで、
実はしっかり見ているのですよ。息子が長年
通う絵画教室の先生も仰っていました。
『子供は皮膚から吸収する』と。つまり、
美術館に身を置くだけで、子供達は何かを
吸収しているんです。何かを学び、得ている
んですよ。それに数多く見れば見るほど、
審美眼は磨かれて行きますから、お嬢さんは
お母さんが思っておられる以上にきちんと
育っておいでですよ」「そうなんですか」
お母さんは安堵したような表情で頷かれた。

果たして、WS室で各々の家族が鑑賞作品について
の感想を述べた際、先程のお母さんの心配をよそに
件の娘さんは、大人も驚くような洞察力と表現力で、
絵について語ってみせたのである。
絵画教室の先生が言われた通り、
子供は皮膚で吸収しているのだ。しかも
大人の何倍も、驚くような深さで。
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