以前WOWOWで放映されたのを録画していたのだが、ずっと見ないままになっていた。先の連休中にやっと見た。1986年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。
18世紀半ばの南米が舞台。イエズス会宣教活動にまつわる悲劇を描いた作品。まず、南米奥地のイグアスの滝上流にあるインディオの村にも、イエズス会の宣教師が布教に訪れていたとは驚き。宣教師らはそこで苦心惨憺の末、インディオらと共に理想郷を築いたのだが、その平安も束の間、当地を巡るスペイン・ポルトガル両国の領有権争いに巻き込まれてしまう。
そもそもヨーロッパのキリスト教勢力が、遠い南米まで赴いて土着のインディオ達をキリスト教に改宗しようとしたことに彼らの傲慢さを感じる。インディオ達は彼らなりのルールと智慧でジャングル生活を生き抜いていたのだから。劇中、インディオが3人目の子供を殺すことをヨーロッパ人が「野蛮極まりない」と断罪するシーンがあるが、これは危険が迫った時に両親で抱きかかえて助けることのできる子供の数、ということから編み出された彼らの智慧であって、けっして部外者になじられるようなことではない。彼らインディオの平和を乱したのは、他ならぬ外部(ヨソ)から来た侵略者なのだ。徒に流されたインディオらの血が気の毒でならない。
末端の宣教師らは信仰に殉じる覚悟で布教に真摯に取り組むが、組織の上層のローマカトリックは国家権力と分かち難く結びついている。宣教師らは結果的に侵略者の先兵としての役割を担わされているに過ぎない。そう言った非情な事実を今更のように突きつけられて、見終わった後には暗澹たる気持ちになった。
映像的にはイグアスの滝が圧巻。登場人物らは、その上流に向かって時には絶壁を滑り墜ちそうになりながら、山肌を泥まみれになりながら、そして激流に流されそうになりながら上って行く。撮影は出演者、スタッフ共にさぞかし大変だったことだろう。
キャスティングも見応えがある。ロバート・デ・ニーロにジェレミー・アイアンズ、そしてリーアム・ニーソン。彼らの熱演は時間を追うごとに輝きを増して行く。
苦い後味を残す作品だが、素晴らしい作品だと思う。
◆映画『ミッション』データ(allcinema onlineより)