はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

子供達の学びの場としての美術館

2006年09月15日 | ボランティア活動のこと
昨日は午後から美術館のボランティアで、
小学生と2時間半ばかり一緒に過ごしました。
通常は、常設展示室で対話型ハイライトツアーを行うのですが、
今回は企画展が開催されていることもあり、
前半40分を企画展の見学、
後半40分を通常のツアーに当てました。
私が担当したのは6年生の男女7人でしたが、
仲良し同士でつるんだグループということもあってか、
良い意味でも悪い意味でも仲が良過ぎると言いましょうか。
男女関係なく、ケンカしたりくっついたりを繰り返します。
それに、イレギュラーな企画展の見学です。
気分がハイになるのも無理はない。
引率の私の役割は自ずと、
ややもすると暴走しがちな彼らの手綱を
どう締めるかになります。

彼らにすれば、別に悪ふざけをやっているつもりはなくて、
見学に夢中になるあまり、ついつい作品に近付きすぎてしまう。
入場前も、会場でも、度々注意していたのですが、
とうとう監視員の女性に、停止線から体がはみ出した男の子が
注意されてしまいました。私が駆け寄って注意をしようとした
矢先のことでした。注意されることはやぶさかでないのですが、
その注意の言葉が、私としてはショックでした。

「見ないなら、もうここにはいなくていいです」

こ、これは退場勧告でしょうか?!
これまでにも子供が注意されることは度々ありましたが、
こんなに強い口調の言葉は初めてです。
注意を受けた男の子も一瞬固まったように見えました。
後でその子に「次からは気を付けようね」とフォローしましたが、
彼の心中はどうだったんだろう?
企画展見学の付き添いは、
私にとっても初めての経験だったこともあり、
私の事前の指導、会場内での目配りに
不十分な点があったのかもしれません。

企画展の展示作品は海外の美術館からお借りしているもので、
その保護には美術館の収蔵品以上に細心の注意が必要です。
そういうこともあって、あの監視員の方も普段以上に
ピリピリしていて、ついあのような言い方をしてしまったのかも。
返す返す、私の配慮の足らなさから、児童にも監視員にも
嫌な思いをさせてしまったのかなあと反省しきりです。

ただ、美術館を訪れる大人の方々に
理解していただきたいこともあります。
ツアーをしていると、たまに年配の方で
「なんで、美術館に子供がいるんだ」と
不快感を露わにされる方がいます。
しかし、美術館は大人が考えているほど、
かしこまった所でもなければ、敷居が高い所でもありません。
年齢、性別、職業、国籍を問わず、
すべての人に対して開かれた場所です。

(そういう意味でも、世のお父さん、お母さん、
美術館に家族で来てください。子供達を連れて来てください)


日本では、教育現場での鑑賞教育はつい最近始まったばかり。
受け入れる美術館も、訪れる学校も、
現在は互いに試行錯誤の段階です。
これまで美術教育では実技教育に時間が割かれて来ましたが、
多くの子供達が将来的には「美術作品を作る側」より、
「鑑賞して愉しむ側」に立つことを鑑みて、
鑑賞教育の重要性が認識された結果です。
特に、美術や音楽などの芸術に幼い頃から触れることは、
情操教育の面からも大きな意味を持つものです。
豊かな感性、想像力、イメージを言語に置き換える表現力等、
芸術作品の鑑賞を通して培われるものは少なくありません。

欧米の美術館を訪ねられた方ならご存じだと思いますが、
欧米の美術館では、それこそ保育園児、幼稚園児達が、
先生の引率で美術館を訪ねています。
もちろん小中高大の児童生徒、学生の姿も多く見受けられます。
その土地を代表する美術館なら、多くの見学者で溢れ
館内がシーンと静まりかえっていることはあまりありません。

美術館初体験の子供達は弥が上にも気分が高揚しがちですが、
場数を踏めば、次第に美術館での振る舞いがどうであるべきか、
経験的に学んで行きます。

美術館と教育現場を中心に進められているそうした鑑賞教育の
お手伝いを、私のようなボランティアはさせていただいています。

美術館で子供の姿を見かけられ際には、以上のことをご理解の上
彼らの学びを、温かい目で見守っていただけたらと思います。
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