未曾有の消費不況と言われる中、大手企業が大幅減益等を理由に、次々と大規模な人員削減を行っている一方で、増収増益を続けている企業もある。真っ先に浮かぶのは「任天堂」だが、ここでは靴小売業「ABC MART」について取り上げたい。この企業は最近NHKで2度取り上げられた。今朝も「経済羅針盤」と言う番組で、野口実社長(43歳)を迎えて、その躍進の秘密がレポートされた。以下は、その番組から。
企業業績の浮沈を握るのは店員力
ABC MARTは7年前に株式上場を果たしたばかりの、伸び盛りの企業だ。その成長を支えているのは、店員から社長にまで上り詰めた野口社長の、積極的な店舗拡大策に代表される攻めの経営姿勢と、各店舗に配置された店員ひとりひとりの高い販売能力である。それが、商機を逃さない→好業績に繋がっている。
◆積極的な店舗拡大策
野口社長は就任以来、店舗拡大を積極的に進め、現在ABC MARTは全国に450店舗を構える。こうした拡大路線は以下のことを可能にした。
■店舗間で在庫を融通しあう
地域によって売れ筋商品には大きな違いが見られる。
→気候風土による需要の違い、消費者の色やデザインの好みの違い
全国規模のネットワーキングで、地域特性を考慮した在庫調整を行い、在庫商品を減らす。
■大量一括仕入れで、仕入れ価格を引き下げる
スケールメリットを生かして一括して大量に仕入れることで、一般メーカー品だけでなく、ブランド品のコストダウンも可能に。
◆店員の高い販売能力
意外にも、ABC MARTは同業他社の店舗に比べ、店員の配置率が40%高い。しかも正社員である。
「個々の販売能力が高ければ、高い人件費を補って余るほどの収益を上げることができる。」と社長。
■マニュアルに依存しない
マニュアルで細かく規定すると、通り一遍の接客しかできなくなる恐れがあるからだ。必要最低限の技術、マナーは押さえた上で、個々の店員が自分の頭で考えて接客にあたるよう促している。
→店員ごとの売り上げデータはこまめに更新するようにし、それを随時店員が意識することで競争意識を高める。
■現場第一主義
かき入れ時の週末は人事や仕入れ担当など、本社の管理部門の社員も店舗に動員して、接客に当たらせる。その為、会社の定休日は金曜日。社長自ら店頭に立つことも珍しくない。
→仕入れ担当者は「今、市場ではどんな商品が求められているのか?」、人事担当者は「今、店員に必要なスキルは何か?どのような店員が求められているか?」を知る絶好の機会に。
(消費者の)買いたい時が、(商品の)売り時=商機
【商機を逃さない接客の裏技?】
1)客の来店時には「いらっしゃいませ」と明るく声かけ
店の活況を印象づけると共に、店員は「自分の手が空いていますよ」と言うアピールにもなる。
→客の立場から言えば、気に入った商品があっても、近くに店員がいなくて困ることがままある。すぐに接客して貰えるのは嬉しい。
2)作業をしながらの声かけ
押しつけがましくない接客態度を心がけて、客に快く買い物をしてもらうような店内の雰囲気作り。
3)店員自身の体験談を交えて接客する
実際に商品を使っての使用感や、使用する際の注意点などを具体的に述べて、客の購買意欲を高める
4)客が靴のサイズに迷った時には、まず大きめのサイズから薦める
→最初に小さい方を薦めると、きつかった場合に商品自体の使用感、イメージを損ねてしまう恐れがある。
5)レジでは精算時、靴だけでなく、最後の一押しでもう一品(手入れ用品等)薦める。
不況下では、客は「自分にとって、この商品は本当に必要なのか」と、いつも以上に吟味して商品を買い求める。その購買意欲をいかにして高めるかが店員の力量の見せ所である。
【感想】
店での店員の様子を見ると、とにかく走る、走る。店頭に客の求める商品のサイズがないと分かれば、倉庫へ走って取りに行く。客の求める商品がないと分かれば、近隣の店舗に在庫を問い合わせ、走って取りに行く。その一生懸命さが、客を逃がさないのだと思う。その直向きさは清々しい。それは人材を蔑ろにしない企業トップの経営姿勢が可能にしているのだろう。顧客重視の姿勢も、確実に消費者の心を掴んでいるように見える。
最近、雇用の調整弁とも言われる派遣を容赦なく解雇する風潮が見られるが、目先の利益に汲々として、人材育成を正面から否定し、人間を人間として真っ当に扱わない雇用形態の非情さが、ここに来て露わになっていると言えるだろうか。もちろん、個人の努力(自ら高めようとする意識、向上心)の有無も問われるべきだが、その為の環境作りは、企業や社会の責任だと思う。天然資源に乏しいこの国で、最も価値のある資源は人材だ。それを大事にせずして、この国の未来はないと思う。
◆ABC MART公式HP
企業業績の浮沈を握るのは店員力
ABC MARTは7年前に株式上場を果たしたばかりの、伸び盛りの企業だ。その成長を支えているのは、店員から社長にまで上り詰めた野口社長の、積極的な店舗拡大策に代表される攻めの経営姿勢と、各店舗に配置された店員ひとりひとりの高い販売能力である。それが、商機を逃さない→好業績に繋がっている。
◆積極的な店舗拡大策
野口社長は就任以来、店舗拡大を積極的に進め、現在ABC MARTは全国に450店舗を構える。こうした拡大路線は以下のことを可能にした。
■店舗間で在庫を融通しあう
地域によって売れ筋商品には大きな違いが見られる。
→気候風土による需要の違い、消費者の色やデザインの好みの違い
全国規模のネットワーキングで、地域特性を考慮した在庫調整を行い、在庫商品を減らす。
■大量一括仕入れで、仕入れ価格を引き下げる
スケールメリットを生かして一括して大量に仕入れることで、一般メーカー品だけでなく、ブランド品のコストダウンも可能に。
◆店員の高い販売能力
意外にも、ABC MARTは同業他社の店舗に比べ、店員の配置率が40%高い。しかも正社員である。
「個々の販売能力が高ければ、高い人件費を補って余るほどの収益を上げることができる。」と社長。
■マニュアルに依存しない
マニュアルで細かく規定すると、通り一遍の接客しかできなくなる恐れがあるからだ。必要最低限の技術、マナーは押さえた上で、個々の店員が自分の頭で考えて接客にあたるよう促している。
→店員ごとの売り上げデータはこまめに更新するようにし、それを随時店員が意識することで競争意識を高める。
■現場第一主義
かき入れ時の週末は人事や仕入れ担当など、本社の管理部門の社員も店舗に動員して、接客に当たらせる。その為、会社の定休日は金曜日。社長自ら店頭に立つことも珍しくない。
→仕入れ担当者は「今、市場ではどんな商品が求められているのか?」、人事担当者は「今、店員に必要なスキルは何か?どのような店員が求められているか?」を知る絶好の機会に。
(消費者の)買いたい時が、(商品の)売り時=商機
【商機を逃さない接客の裏技?】
1)客の来店時には「いらっしゃいませ」と明るく声かけ
店の活況を印象づけると共に、店員は「自分の手が空いていますよ」と言うアピールにもなる。
→客の立場から言えば、気に入った商品があっても、近くに店員がいなくて困ることがままある。すぐに接客して貰えるのは嬉しい。
2)作業をしながらの声かけ
押しつけがましくない接客態度を心がけて、客に快く買い物をしてもらうような店内の雰囲気作り。
3)店員自身の体験談を交えて接客する
実際に商品を使っての使用感や、使用する際の注意点などを具体的に述べて、客の購買意欲を高める
4)客が靴のサイズに迷った時には、まず大きめのサイズから薦める
→最初に小さい方を薦めると、きつかった場合に商品自体の使用感、イメージを損ねてしまう恐れがある。
5)レジでは精算時、靴だけでなく、最後の一押しでもう一品(手入れ用品等)薦める。
不況下では、客は「自分にとって、この商品は本当に必要なのか」と、いつも以上に吟味して商品を買い求める。その購買意欲をいかにして高めるかが店員の力量の見せ所である。
【感想】
店での店員の様子を見ると、とにかく走る、走る。店頭に客の求める商品のサイズがないと分かれば、倉庫へ走って取りに行く。客の求める商品がないと分かれば、近隣の店舗に在庫を問い合わせ、走って取りに行く。その一生懸命さが、客を逃がさないのだと思う。その直向きさは清々しい。それは人材を蔑ろにしない企業トップの経営姿勢が可能にしているのだろう。顧客重視の姿勢も、確実に消費者の心を掴んでいるように見える。
最近、雇用の調整弁とも言われる派遣を容赦なく解雇する風潮が見られるが、目先の利益に汲々として、人材育成を正面から否定し、人間を人間として真っ当に扱わない雇用形態の非情さが、ここに来て露わになっていると言えるだろうか。もちろん、個人の努力(自ら高めようとする意識、向上心)の有無も問われるべきだが、その為の環境作りは、企業や社会の責任だと思う。天然資源に乏しいこの国で、最も価値のある資源は人材だ。それを大事にせずして、この国の未来はないと思う。
◆ABC MART公式HP