はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

LIMIT OF LOVE 海猿

2006年07月03日 | 映画(2005-06年公開)


映画関連サイトで評価の高いこの作品。
前作は映画館で見てそれなりに面白いと思ったものの、
その後のテレビシリーズは見ておらず、
本作の映画館での鑑賞は見送るつもりでした。
しかし、今月の映画の日がちょうど土曜日に当たっており、
しかも本作の上映館がプレミアスクリーンだったので、
遅ればせながら夫と見ることになったのです。
以下ネタバレなので、これからご覧になる予定の方は
遠慮された方が賢明かも。結構辛口評です。

見ての感想は「お涙頂戴物語はやっぱりイヤだ」。
制作サイドの「泣かせてやろう」「感動させてやろう」
という演出がミエミエで、それが鼻につきました。
こういうのを、良く言えば”ツボを押さえた演出”
と言うのかもしれませんが、
映画を何百本何千本と見て来た大人には、
子供だましにしか見えません。
前作に続いてテレビシリーズを見た人なら、
あるいは主人公と同世代なら、
出演陣にも親近感があり、一種の共感・連帯感を持って、
温かな眼差しで、本作を見ることができたのでしょうか?

しかし、ただ数多(あまた)ある中の1本として見た者には、
生きるか死ぬかという時に、何グズグズしているんだ、
何ふざけているんだ、長々とプロポーズする余裕なんて
ないだろうと、見ながら憤懣やる方なかった。
正直なところ、そんな感じです。

もちろん、見るべき点はありました。
元より資金力では圧倒的な差のあるハリウッドに、
スペクタクルのスケール感で対抗することは難しい。
しかし同時期に公開された米リメイク映画『ポセイドン』
に比べたら、人間ドラマとしては勝っていたかも。
いざという時の人間のジタバタする様子、呻吟しながら
決断する様子は、登場人物に「より人間味があった」。
少なくとも『ポセイドン』のような弱肉強食な冷酷さよりも
好感が持てた。これは国民性の違いなのかもしれないけど。

途中多少のことには目をつぶることができました。
ホテルのロビーで周りの迷惑も考えずに大声を出すとか、
いい大人がロビーのソファーに行儀悪く寝そべるとか、
妊婦なのに一切夫の話は出ないとか、生きるか死ぬかの
瀬戸際なのに、あまりにあっけらかんとし過ぎているとか、
e.t.c.~細かいところで気になることはあっても、
途中まではまだ緊迫感があって良かった…けど、

あの生死の分かれ目での10分以上はあろうかという
プロポーズ。あれで一気に興ざめしてしまいました。
あれがね。彼ひとりならまだわかるんですよ。
でも要救助者がいた。妊婦とケガ人の二人も!
ああいう緊迫した状況で、公私混同はいかんですよ。
しかも刻一刻と迫る沈没の危機を忘れたかのような
長い長いプロポーズを終えた彼に、ケガ人と妊婦は
信じられないような軽口を叩いています。
あまりにもリアリティがなさ過ぎる。

たぶん、海上保安庁の職員に、あんなふざけた人は
いないと思うのですよ。
皆使命感を持って、自らの命を賭して、
日々仕事に励んでいるはず。
でもあのプロポーズのシーンの主人公は、あの時点に
その使命感を捨てていた。それまでの勇気も行動力も
判断力もかなぐり捨てて…

とは言え、あのシーンで目を潤ませた人も少なくないので
しょうねえ…
だとしたら、まだまだ生き方も、映画の見方も甘いっ!
と、現実主義のおばちゃんは思うのでした。

それにしても、同時期に似たような海難事故スペクタクル。
人が考えることは同じなんでしょうか?
あるいは、34年前の『ポセイドン・アドベンチャー』が
それだけ偉大だったってことでしょうか?

【追記】7月3日付AOLニュースによれば、
この作品のハリウッド・リメイク話も出ているとか。
素材としては魅力でしょう。『炎のメモリアル』路線で、
行くのでしょうか?大味にならなければ良いけど…
それにしても、ハリウッドはリメイクと続編流行り…
よほどシナリオが枯渇しているのね。

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