はなこのアンテナ@無知の知

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入院の記録⑤~病院で考えたこと(2)

2008年05月05日 | 日々のよしなしごと
 あなたはご自分の体臭がどんなものか知っていますか?意識したことはありますか?
 術後2日間は絶食で、点滴だけが頼りだった。しばらくは38度前後の発熱が続いたので、体は常に汗ばんでいた。救命救急室で胃の内容物はあらかた吐き出してしまっていたので、出てくる汗は純度の高い点滴液と言ってよく、実際汗の臭いをかぐと、薬品臭が鼻をついた。その汗が流動食、通常食を摂るに従い、摂取食物を反映した臭いに変化して来るのがハッキリと分かった。「うわぁ、こんなに食事で体臭って変わるんだ!」―鋭く鼻の利く人なら、体臭で人の食べ物の嗜好も分かってしまうのでは?なんて思うほどだ。

 おもしろい偶然はあるものだ。病院の談話室の隅に、患者や様々な人々の寄贈によるミニ文庫がある。そこでグルメ漫画『美味しんぼ』を2冊見つけた。その内の一冊に、食品会社で香料の調合を担当していたと言う、天才的に鼻の利く男性のエピソードがあった。その物語はこうである。

 男性は会社をリストラされ、困窮の挙げ句主人公の花岡宅へ強盗に入るのだが元々気弱な善人なので未遂に終わる。そして花岡にその希有な嗅覚を見込まれ、その特殊な才能を生かす場として、開店間近の洋食レストランを紹介される。そこへ開店直前に飛び込んで来た2人の中年男女の客。早速男性の嗅覚が試されることとなった。男性がそれぞれの客の体臭、口臭、使用している香水等から、食の好みや体調、今何を食べたがっているかを推量する。それに合わせて、食材、香味野菜、調理法、付け合わせのワインを選び、オーナーシェフに用意してもらう。果たして男性の推理は見事に的中し、2人の客を大いに満足させたのである。そして謎の飛び込み客の正体が明かされ、2人がグルメ・ガイド誌の審査員であったというオチまで付く。

 この漫画は綿密な取材をもとに描いていると思うのだが、もしこうした天才的な嗅覚の持ち主が活躍するレストランが実在するなら驚きだ。一度は行ってみたい気もするが、その人に私の日頃の食生活がばれてしまいそうでチョットこわい(笑)。何より食の好みを知られるのは、素っ裸にされるのと同じくらい、自分という人間の実像を見られるような気恥ずかしさがある。

 あなたはご自分の体臭を知っていますか?体臭に自信はありますか?
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