はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

今になって分かること~キプロスのロシア人

2013年03月25日 | 海外旅行(旅の記録と話題)
昔、中東に駐在していた時に、短い休暇でキプロス共和国を2度訪ねたことがある。当時の私達家族にとって、キプロスは空路1時間半程で行けるヨーロッパのリゾート地であった。娯楽の乏しいイスラム圏の閉塞感から、しばし解放される場所だった。

キプロスはギリシャ神話で、美の女神アフロディーテが生まれた島とされる。

キプロスでは、首都ニコシアから少し離れた、リマソールと言う海浜リゾート地の、海に面したホテルに3泊4日の日程で滞在した。バケーションは最低でも2週間以上の長期滞在が当たり前の現地の人々からすれば、たった3泊のリゾート客は奇異に映ったようだ。

島を観光するには欠かせないレンタカーを借りるのも一苦労だった。たった3日間など貸せられないと言うのだ。最低でも1週間のレンタルだと言う。そこを食い下がって、どうにか3日間レンタルさせて貰った。

しかし、ここでまた、私にとっては難問が…bomb2レンタカーは全てマニュアル車らしい。かなり年季の入ったイタリアの小型車。運転免許を取って以来、私はオートマ車しか運転したことがない。しかも、1回目のキプロス訪問では、夫はまだ運転免許を持っておらず、運転手は私しか務められない。

「仕方がない。なるようになれ」と蛮勇を奮ってマニュアル車に乗ってはみたものの、いざホテルを出発すると、いきなりヘアピンカーブばりの蛇行した道が続いた。かなり…冷や汗ものだったase大の苦手の坂道発進ではエンストが続く。今、思い出しただけでも自分のあまりの無謀さにゾッとして、よく生きて帰って来られたものだと思う。

目の前に紺碧の地中海がありながら海には人影はなく、砂浜を散歩する人ばかりで、泳ぐのは専らホテル内のプールだった。そこで、まだ1、2歳になったばかりの幼い息子とよく遊んだ。

プールには常に、四肢がスラリと伸びた、抜けるような白肌に金髪の少女達が数人いた。こちらが幼児連れの東洋人なのがもの珍しいのか、少女達の方から話かけて来た(小・中学生だったが、皆英語を話せた)。話してみると、少女達は姉妹でロシア人だった。モスクワから家族でバケーションに来ていると言う。しかもキプロスへは頻繁に来ているらしい。なぜはるばるロシアから、このキプロスへ来ているのだろうと、当時は不思議で仕方がなかった。

今は何か知らないことがあれば、すぐさまネットでググッて調べられる。興味を持った事柄についても、ネットで容易く芋づる式に大量の情報を入手できる。しかし、当時は自宅にネット環境がなく、旅行ガイドブックすら持っておらず、キプロスについて何ら知る術がなかった(キプロスがギリシャ正教のイコン(聖画)の宝庫であることを知ったのも随分後のことだ)

だから、最近になって初めて、連日のキプロスを巡る金融危機の報道を通して、キプロスとロシアの経済的な結びつきの深さを知った。

私達家族が泊まったホテルは、ロビーに映画の世界から抜け出たような、黒いつば広帽子に黒のパンツスーツでキメた八頭身美人が佇んでいるような、レストランやルーム・サービス、そして娯楽施設も充実した、それなりのグレードのホテルだった(もちろん、当時から現地には小さなキッチンを備えたフラット・タイプのホテルもあった)。少なくとも20年以上も前から、そんなホテルで頻繁にロング・バケーションを過ごすロシア人の富裕層がキプロスには数多く訪れ、キプロスに投資していたのだ。

一昨年訪ねたトルコでも、近年はロシア人が海浜リゾートに大挙して訪れ、そこを拠点に各地を観光しているらしい。寒冷地出身の彼らは、南国の陽の光を貪るように求め、その白肌を焼き焦がすことに夢中だ。

百聞は一見にしかず。実際に足を運び、自分の目で見たもの、耳にしたもの、口にしたもの、体験したことの印象は鮮烈に残る。旅先でやらかしたとんでもない失敗でさえ、歳月が「忘れ難い旅の思い出」に変えてくれる。国内外を問わず旅の醍醐味は、正にそこにあるのだと思う。

同時に旅は、貴重な学びの機会でもある。1度訪ねた国・地域のことは、以降、何かに付け気になるものだ。訪ねたことがきっかけで、当地をより深く理解したい思いが強くなるのだろう。報道でその名が挙がれば、耳をそばだてずにはいられない。

キプロスのロシア人の件は、キプロスを訪ねてからかなりの年月を経て、今回の一連の報道で事情を理解したわけだが、それまで記憶の片隅に残っていた霧が、一気に晴れたような爽快感があった。同時にキプロスの旅の思い出も蘇って来て、(キプロスの金融危機問題は甚だ深刻だけれど)個人的には懐かしく、嬉しい。




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