最近、沖縄県うるま市で、元米兵(海兵隊員)による「女性拉致・暴行・殺害事件」が発生した。その内容を知れば知るほど、鬼畜の所業としか思えない。
亡くなられた女性には、心からご冥福をお祈りいたします。
これから、楽しいことがいっぱいあっただろうに…テレビニュースで映し出される、被害者女性の愛くるしい笑顔を見ると、胸が張り裂けんばかりに痛む。同じ親として、大切なお嬢さんを失ったご両親の悲しみを思うと、本当にやりきれない。
この事件の一報を受けて、ある政府関係者は「最悪のタイミング」と言ったそうである。間近に迫った伊勢志摩サミットとオバマ米大統領の広島訪問を念頭に置いての発言だとは思うが、あまりにも国民の命を蔑ろにした発言である。こんな凶悪事件に「良いタイミング」などあるものか?いつ何時であっても、あるまじき事件である。
政治家が、米軍関係者(現役軍人とその家族、元軍人)による凶悪事件に対して、このように自国の被害者よりも米国の事情を慮る受け止め方しかしないから、日本の国土のわずか0.6%に過ぎない離島県なのに、日米安全保障条約に基づく在日米軍基地の75%が集中する沖縄で、米軍人や米軍属による犯罪がいつまで経っても減らないのである。
在日米軍裁判権放棄密約事件:これだから、「日本はアメリカの犬」と他国から揶揄されても仕方がない。
沖縄県警のまとめによると、1972年の本土復帰から2014年までの米軍人・軍属とその家族による刑法犯罪の検挙件数は5,862件。うち、殺人、強盗、放火、強姦の凶悪事件は571件で737人(集団でのケースも少なくない)が検挙されたと言う。
しかも、これはあくまでも表に出た数字のみである。親告罪であるレイプ事件など、警察にも訴えず泣き寝入りのケースも多々あるだろう。復帰後でさえそうなのだから、占領期がどんなに悲惨な状態だったのか、想像に難くない。そもそも沖縄に米軍基地がなければ、起きなかった事件の数々である(ウィキペディアで在日米軍の犯罪リストの項を見れば、復帰前に起きた「由美子ちゃん事件」等、その残忍さに誰しも驚くと思う)。
今回起きた事件の経緯は以下の通りである。
4月28日(木):うるま市在住の20歳の会社員女性(1月に成人式を迎えたばかり)が、午後8時頃ウォーキングに出かけた後、行方不明となる。
同29日(金):親族が警察に捜索願を出す。警察が捜索に乗り出す。
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5月12日(木):警察は女性の行方不明事件を公開捜査に切り替え。
同16日(月):警察が防犯カメラから割り出された米軍関係者に任意で事情聴取。
同17(火)、18(水)、事情聴取を受けた男、自宅で多量の睡眠薬服用や飲酒で、2度自殺を図る。
同19日(木):男の供述通り、うるま市から北におよそ16キロ離れた恩納村の雑木林で、警察が遺体を発見。元米兵で現在は民間企業からの派遣で嘉手納基地に勤務する(軍属)男ケネス・フランクリン・シンザト(32)を、「死体遺棄」容疑で逮捕。
同20日(金):遺体を司法解剖。遺体は歯型も取れないほど損傷が激しく、さらに亜熱帯の沖縄で約3週間野ざらしにされた結果、腐敗もかなり進んでいた為、死因の特定困難。同日午後に、容疑者は那覇地検に送検される。
その後の容疑者の供述によれば、容疑者は事件の発生した4月28日(木)、強姦目的で拉致現場周辺を2~3時間車で周回し、ターゲットになる女性を物色。
そして、たまたま拉致現場付近を歩いていた被害者の頭部を背後から棒で殴打し、車に連れ込み、別の場所で乱暴し、抵抗された為、首を絞め、ナイフで刺し、死に至らしめ、その後、土地勘のあった、自身がかつて所属していた海兵隊基地キャンプ・ハンセン近くの雑木林に遺体を遺棄したらしい。
同23日(月):被害者の父親や親族が、遺体発見現場を事件後初めて訪れ、花を手向けた。父親は「家に一緒に帰ろう」と、娘の魂に呼びかけた。その悲痛な叫びが、人々の涙を誘った。
同24日(火):被害者女性のスマホの通信記録が途絶えた場所付近にある水路を県警が40人を動員して捜索した結果、被害者が外出時に持っていた鍵と、容疑者が被害者を殴打した凶器と見られる棒が見つかった。被害者のスマホは未だ発見されていない。
当初供述していた容疑者は、弁護士との接見以降、黙秘を続けている(←反省の色が全く見られない)。
6月9日(木):県警は容疑者を「殺人罪」で再逮捕(懸命に捜索するも、未だ凶器は発見されず)。一方、那覇地検は容疑者を「死体遺棄容疑」で起訴。
ネットで収集した情報をまとめると、以下の通りである。
被害者女性は名護市出身。事件当時はショッピングセンターの化粧品売り場に勤務し、化粧品販売に関する専門資格を取得しようと勉強していた。
結婚を前提とした付き合いの男性と同居しており、事件当日も8時頃スマホのSNSで「ウォーキングに行って来る」と恋人男性には連絡をしてから外出。午前2時頃帰宅した男性が、彼女が帰宅していないのを心配し、すぐさま親族に連絡。翌日、親族が警察に捜索願を提出。
被害者女性は週に2~3回、自宅周辺の比較的人通りの多い場所でウォーキングをしていた。この時期の沖縄の日の入りは午後7時半であり、彼女が家を出た8時と言う時間帯はけっして遅いものではない。現地の人々は、比較的安全な場所で今回の事件が起きたことに、衝撃を受けている。
両親にとっては最愛の一人娘で、両親が最後に彼女に会ったのは、1月の成人式の時だった。両親と同居の祖母も、彼女の無事を祈っていたが、結局、叶わなかった。
警察によるスマホの位置情報調査で示された場所が、普段の彼女のウォーキングコースから離れた場所であることに、恋人男性も不審に思ったらしい。
沖縄ではこんな噂もあると言う。
"5月初め"に"県警"が"政府に"、「アメリカ政府と米軍に対して『容疑者の身辺調査をしたい』と申し入れて欲しい」と要請したが、「サミット前」を理由に政府は要請を「保留」。県警側が公開捜査に踏み切ったことで政府が重い腰を上げたので、急転直下、逮捕出来た。
↑もし、これが事実ならば、県警の英断がなければ、この事件は未だに被害者(遺体)の所在も分からず、犯人逮捕に至っていなかったかもしれないのだ。政府側から「最悪のタイミング」と言う言葉が飛び出したところからして、「不都合な真実」としてサミット終了まで、事件のことがひた隠しされた可能性がある。もし、そこまで公開捜査が引き伸ばされでもしたら、果たして犯人逮捕に至ったかどうか?(過去にも米軍人被疑者が米国に逃亡したケースがある)
被害者には何の落ち度もない、容疑者の目に留まったことが不運であったとしか言いようのない事件である。
世論の中には、「今回の容疑者はあくまでも「元軍人」であり、現在は民間人として基地内で働いているに過ぎないから、米軍と今回の事件は切り離して考えるべき」との意見も散見されるが、容疑者の「元軍人」しかも「海兵隊員」と言うキャリアが、今回の事件と無関係とは言えないと思う。少なくとも軍隊で学んだ攻撃スキルは、犯罪の遂行を容易にしたはずだ。
よく、「日本には沖縄だけでなく、各地に米軍基地が点在しているのに、なぜこうも沖縄で突出して米軍人による犯罪が多いのか?」と言われるが、それは沖縄にのみと山口県岩国基地に駐留している海兵隊員による犯罪が多いからである(岩国基地でも凶悪犯罪は過去に何度も発生しているが、基地問題に毅然とした報道姿勢を取る地元紙が2紙もある沖縄と違い、全国紙でもあまり大きく取り上げられていないようだ)。下記の表を見れば、一目瞭然であろう。
在日米軍は陸・海・空軍と海兵隊で構成されている。主だったものでも座間基地(神奈川県)が陸軍、三沢基地(青森県)、横田基地(東京都)、嘉手納基地、普天間基地(いずれも沖縄県)は空軍、厚木基地、横須賀基地(いずれも神奈川県)、佐世保基地(長崎県)は海軍所轄で、海兵隊基地(司令部は沖縄)は岩国基地(山口県)と沖縄本島中部に幾つか点在している。
各軍ごとの隊員数は陸軍が約2,000人、空軍が約13,000人、海軍が約19,000人、そして海兵隊が約16,000人の計約50,000人となっている(在日米軍のHPより)。
全隊員の30%を占める海兵隊員による犯罪が突出して多いのは、海兵隊員の軍における位置づけも原因のひとつであろう。海兵隊員について、こんな記述がある。
「海兵隊員は最初に敵地に乗り込んで戦う勇敢な兵隊だ。裏を返せば、最も戦死者が多く、最も敵を倒して来た、「死と殺しのプロ」だ。(その意味で)無数の海兵隊基地がある沖縄は、「殺しのプロ」が大勢いる。殆どの人は民間人を殺すような人ではないが、(戦場で)何十人も殺して来て、心が麻痺した人も中にはいるのだろう。基地の隣に住むということは、「殺しのプロ」と暮らすということだ。」
今回の事件の容疑者も、32歳と言う年齢からイラクやアフガニスタン等に派遣された可能性があり、戦地で戦闘を経験し、精神に何らかの異常を来した可能性も否定できない(だからと言って、彼が犯した罪は到底許されるべきものではない)。ウィキペディアで「アメリカ軍」を見ると、アメリカ軍がこれまでに参加した戦争の一覧があって、その夥しい数に圧倒される。
また、特に下級兵士に至っては、「米国の街のゴロツキが減刑を条件に、辺境の島である沖縄の基地に派遣されるので、海兵隊員の中でも質が低い」と言う噂もあって、同じ米軍人でも沖縄駐留の海兵隊員のことをよく思わない人もいるらしい。米軍の中でも最強の軍隊と自負する海兵隊からすれば、これはかなり不名誉なことではないか?
今回の事件もそうだったが、米兵とレイプの問題には根深いものがあって、「イラク戦争に参加した女性兵士の3人に1人が同僚兵士にレイプされた」との話もある中、国防総省の推計によれば、米軍内だけで年間19,000件ものレイプ事件が発生していると見られている(←上官による部下へのレイプ等、被害届が出されず、統計データに含まれないケースが多い)。しかも被害者は女性に限らず、(同性愛者ではない加害者による)脅しや支配を目的とした男性に対するレイプも少なくないらしい。斯様に米軍内でのレイプ事件は、パワハラとセクハラの両方を内包しているようだ。
レイプ事件の動機には「抑えられない性衝動」だけでなく、より弱い存在に対する暴力(征服欲、支配欲)によって、加害者自身の抑圧された自我の解放と言う意味合いもある、との説もある。つまり、加害者自身が社会の中で、(人間関係にも、教育機会にも、仕事にも恵まれず)自身の承認欲求が満たされなかったり、何らかの形で受けた抑圧によって生じたストレスが引き金となって、より非力な他者への暴力に向かうと言うものだ。そう、レイプは強者が弱者に牙を剥く「暴力のひとつの形」なのである。
加えて、海外で展開する部隊の兵士には、現地の人間に対する謂れなき差別感情もあるのではないか?所謂「強者の論理」「支配者の論理」とも言うべきもの。そうでなければ、これまでの沖縄県民に対する、米兵及びその家族や軍属による数多くの凶悪事件の説明がつかない(実際、海兵隊の沖縄派遣隊員に配布されるマニュアルには、県民を馬鹿にした記述があるらしい)。
特に今回の犯人は、報道によれば、現地日本人女性と結婚し、娘が生まれ、娘の誕生に合わせて妻の実家の援助により家も改築したばかりらしい。さらに妻の姓を名乗っていることから推察するに、妻にも妻の両親にも頭が上がらない状態だった可能性が高い。失業率の高い沖縄で元米兵が就職しようにも、基地内で軍属として働くぐらいしか当てはないだろう。さらに雇い主が沖縄の民間企業とあれば、給料も知れたものだ。
テレビのニュース番組に、米国在住の弱々しく老いた実母の姿も映し出されていたが、彼女の発言には被害者やその遺族に対する詫びは一言もなく、「なぜ、こんなことが起きてしまったのか?」「できるだけ早く(刑務所から)出て来て欲しい」と言う、息子の身に起きたことに対する嘆きだけだった。容疑者とは2年前に会ったきりで、11歳から離れて暮らしている、とも言っていた。そういう実母の出で立ちや発言から、彼がこれまでどのような人生を辿って来たのか、何となく想像できるような気がした。
士官学校でエリートとして養成される軍人がいる一方で、米国社会の底辺層で行き場のない青年が、軍の誘いを受けて下級兵士として入隊する。どれだけ戦地で多くの人を殺し、破壊の限りを尽くしたかが軍功の証となれば、たとえ兵士としてのし上がっても人間性は壊れるだけだ。
1995年に小学生が3人の米兵により輪姦された事件では、米兵3人が「次に目の前に現れた女をレイプしよう」とゲーム感覚でレイプに及んだとの話もあり、人権感覚の麻痺した米兵の精神の崩壊ぶりは明らか。たまたま目の前を通ったが為に被害に遭った女の子が気の毒で、犯人達は許しがたい。それなのに、この事件では日米地位協定を盾に、犯人達は県警に引き渡されなかったと言うから、日本政府の弱腰姿勢は糾弾されても仕方あるまい。
ネットでは、こんな記事も紹介されていた。
「在日米軍だけ処分が甘い? 性犯罪の3分の2が不起訴とAP報道 2014年2月10日
防衛省の内部文書によると、2005~2013年前半に在日米軍基地で性犯罪を起こした244人の軍人の3分の2が不起訴。罰金、降格、外出禁止、軍除外の処分だったことがわかった。約30例では戒告状のみだったという。同文書は、AP通信が情報公開法を使い入手した。YURI KAGEYAMA記者と、RICHARD LARDNER記者が報じた。
この調査報道を、USAトゥデイ、英ガーディアン紙、ロシア・トゥデイなど各国の大手メディアが続々と転載している。
文書には、第1海兵隊航空団の矛盾する2つの事例が示されていたという。両事例とも、原告(米兵)が夜、大量に飲酒した後、強姦されたと証言しており、DNA鑑定という動かぬ証拠もあった。だが、1例は懲役6年の判決、もう1例は降格と30日間の外出禁止処分で収監されなかったのだという」
そこには、「本国から遠く離れた極東での事件なので、多少のことは大目に見よう」との軍の規律の緩みがあるのではないか?
代々職業軍人の家庭出身者と言う以外にも、移民が市民権を早期に得る為とか、進学志望者が軍の就学援助システムを利用する為とか、軍隊入隊にもいろいろな動機があるようだが、今回の容疑者は何れにも当てはまらないような気がする。
彼の心には深い闇を感じる。
今回ナイフやスーツケースも準備して、仕事帰りに自宅から離れた場所で2~3時間もターゲットを求めて徘徊し、凶行に及んでいることから、計画的で手慣れた犯行に見える。他にも余罪があるのではないか?
加害者の妻は、わずか生後3カ月にして「残忍な殺人者の子」の烙印を押された(しかも一見してハーフと分かる)幼子を抱え、今後は多難な人生が予想されるが、どうしてよりによって、こんな男を配偶者に選んだのだろう?男の何を見ていたのだろう?
事件が起きる度に、日本政府は米政府(大使)に対して型どおりの抗議(まさに茶番)をし、それを受けて在日米軍は軍内の綱紀粛正を誓うが、どれもポーズに過ぎず、本気で現状を改善しようなんて気はさらさらないに決まっている。自分達から遠く離れた辺境の島での出来事だから、殆ど気にもかけていないのだろう。日本政府の意識は、去る大戦時に沖縄県を「本土防衛の為の捨石」にした当時と何ら変わっていない。
そもそも一般人の私でさえ、軍人や元軍人による犯罪の廃絶なんて無理だと思っている。軍隊の存在そのものが、非人間性と隣合わせなのだから。
現役軍人なら、誰かが言うように夜間外出禁止令でも出して、基地内に閉じ込めれば良いが、今回のように除隊した「隠れ凶悪犯予備軍」に関しては対処のしようがない。一度軍人になって戦地に赴いた者には、定期的に心理カウセリングを受けることを義務づけ、所属中に何らかの問題を起こした者は即刻国外退去か、日本に留まる条件として(人権問題として議論を呼びそうだが)GPSを体内に埋め込んで常に動向を監視するくらいのことはしないと、犯罪抑止は難しいと思う。現実的に直近の基地の撤退、縮小が無理ならば、せめて、沖縄県内だけでも実施してみてはどうかと思う。
加えて、米兵が公務中、公務外に関わらず、地元民に危害を加えるような事件・事故を起こした場合は、「政府を通して在日米軍に捜査協力を"要請"し、基地内立ち入りを"許可"して貰う」と言った、迅速な捜査の妨げとなる"手続き"を経ることなく、発生後すぐに地元の警察が主体的に基地内に立ち入り、捜査権や逮捕権を行使できるよう、日米地位協定を改定すべきだと思う(→23日(月)、米国防総省は沖縄県の改定要請に対し、「従来通り運用方法の改善で対処」と、改定を拒否。日本政府もそれを是認の意向。日米地位協定に関しては、外務省HPで内容を確認することが出来る。日米地位協定に関するQ&Aを読むと、外務省の役人が協定の不平等性を指摘されないよう回答をまとめた苦心惨憺の跡が見て取れる)。
とりあえず、すぐにでも可能な対処法としては、英国並みに夥しい数の監視カメラを基地周辺はもちろんのこと市街地に設置し、人通りの少ない場所にはドローンでも飛ばして常時監視する体制を早急に整えてみてはどうか?今回も直接的に犯人逮捕に繋がったのは監視カメラの映像であったと聞く。
県警や各警察署に特別監視室でも設けて(監視は警備会社に委託でも可)、常に複数の目で基地周辺部や市街地、郊外の様子をカメラを通して監視する。同時に警察によるパトロールをこまめに行ない、不審な動きを監視室が察知したなら、すぐにパトロールの警察官が現場に急行する。その為の特別予算を国に組んで貰えば良いのではないか?米軍の縮小・撤退が現実的でないのなら、それぐらいのことはすべきだと思う。これで、米軍関係者だけでなく、地元民による犯罪への抑止効果も期待できるかもしれない。
そもそも沖縄の基地問題は米兵による犯罪被害だけでなく、軍用地として接収されている土地が他県の土地と違って、大半が個人の所有であることから、毎年「思いやり予算」によって支払われる土地賃貸料収入が、同じ沖縄県民であっても土地を持つ者と持たざる者の間で、大きな経済格差を生んでいる点も無視できない。
以前、読んだ本にも、高額納税者数のベスト10に、地方からは唯一沖縄県がランクインしているとあった。これは軍用地を貸し出している富裕層が、それを担保に不動産をはじめとして幅広く事業を展開しているかららしい。沖縄県は厳然たる階級社会のようである。「貧乏県」の割に海外留学が盛んなのも、そのことと無縁ではあるまい。基地問題でも県民が一枚岩になれないのは、県民の中にも米軍利権で甘い汁を吸っている人がいるからか。米軍占領によって、沖縄県はさまざまな形で社会に歪みを抱えてしまったようだ。
亡くなられた女性には、心からご冥福をお祈りいたします。
これから、楽しいことがいっぱいあっただろうに…テレビニュースで映し出される、被害者女性の愛くるしい笑顔を見ると、胸が張り裂けんばかりに痛む。同じ親として、大切なお嬢さんを失ったご両親の悲しみを思うと、本当にやりきれない。
この事件の一報を受けて、ある政府関係者は「最悪のタイミング」と言ったそうである。間近に迫った伊勢志摩サミットとオバマ米大統領の広島訪問を念頭に置いての発言だとは思うが、あまりにも国民の命を蔑ろにした発言である。こんな凶悪事件に「良いタイミング」などあるものか?いつ何時であっても、あるまじき事件である。
政治家が、米軍関係者(現役軍人とその家族、元軍人)による凶悪事件に対して、このように自国の被害者よりも米国の事情を慮る受け止め方しかしないから、日本の国土のわずか0.6%に過ぎない離島県なのに、日米安全保障条約に基づく在日米軍基地の75%が集中する沖縄で、米軍人や米軍属による犯罪がいつまで経っても減らないのである。
在日米軍裁判権放棄密約事件:これだから、「日本はアメリカの犬」と他国から揶揄されても仕方がない。
沖縄県警のまとめによると、1972年の本土復帰から2014年までの米軍人・軍属とその家族による刑法犯罪の検挙件数は5,862件。うち、殺人、強盗、放火、強姦の凶悪事件は571件で737人(集団でのケースも少なくない)が検挙されたと言う。
しかも、これはあくまでも表に出た数字のみである。親告罪であるレイプ事件など、警察にも訴えず泣き寝入りのケースも多々あるだろう。復帰後でさえそうなのだから、占領期がどんなに悲惨な状態だったのか、想像に難くない。そもそも沖縄に米軍基地がなければ、起きなかった事件の数々である(ウィキペディアで在日米軍の犯罪リストの項を見れば、復帰前に起きた「由美子ちゃん事件」等、その残忍さに誰しも驚くと思う)。
今回起きた事件の経緯は以下の通りである。
4月28日(木):うるま市在住の20歳の会社員女性(1月に成人式を迎えたばかり)が、午後8時頃ウォーキングに出かけた後、行方不明となる。
同29日(金):親族が警察に捜索願を出す。警察が捜索に乗り出す。
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5月12日(木):警察は女性の行方不明事件を公開捜査に切り替え。
同16日(月):警察が防犯カメラから割り出された米軍関係者に任意で事情聴取。
同17(火)、18(水)、事情聴取を受けた男、自宅で多量の睡眠薬服用や飲酒で、2度自殺を図る。
同19日(木):男の供述通り、うるま市から北におよそ16キロ離れた恩納村の雑木林で、警察が遺体を発見。元米兵で現在は民間企業からの派遣で嘉手納基地に勤務する(軍属)男ケネス・フランクリン・シンザト(32)を、「死体遺棄」容疑で逮捕。
同20日(金):遺体を司法解剖。遺体は歯型も取れないほど損傷が激しく、さらに亜熱帯の沖縄で約3週間野ざらしにされた結果、腐敗もかなり進んでいた為、死因の特定困難。同日午後に、容疑者は那覇地検に送検される。
その後の容疑者の供述によれば、容疑者は事件の発生した4月28日(木)、強姦目的で拉致現場周辺を2~3時間車で周回し、ターゲットになる女性を物色。
そして、たまたま拉致現場付近を歩いていた被害者の頭部を背後から棒で殴打し、車に連れ込み、別の場所で乱暴し、抵抗された為、首を絞め、ナイフで刺し、死に至らしめ、その後、土地勘のあった、自身がかつて所属していた海兵隊基地キャンプ・ハンセン近くの雑木林に遺体を遺棄したらしい。
同23日(月):被害者の父親や親族が、遺体発見現場を事件後初めて訪れ、花を手向けた。父親は「家に一緒に帰ろう」と、娘の魂に呼びかけた。その悲痛な叫びが、人々の涙を誘った。
同24日(火):被害者女性のスマホの通信記録が途絶えた場所付近にある水路を県警が40人を動員して捜索した結果、被害者が外出時に持っていた鍵と、容疑者が被害者を殴打した凶器と見られる棒が見つかった。被害者のスマホは未だ発見されていない。
当初供述していた容疑者は、弁護士との接見以降、黙秘を続けている(←反省の色が全く見られない)。
6月9日(木):県警は容疑者を「殺人罪」で再逮捕(懸命に捜索するも、未だ凶器は発見されず)。一方、那覇地検は容疑者を「死体遺棄容疑」で起訴。
ネットで収集した情報をまとめると、以下の通りである。
被害者女性は名護市出身。事件当時はショッピングセンターの化粧品売り場に勤務し、化粧品販売に関する専門資格を取得しようと勉強していた。
結婚を前提とした付き合いの男性と同居しており、事件当日も8時頃スマホのSNSで「ウォーキングに行って来る」と恋人男性には連絡をしてから外出。午前2時頃帰宅した男性が、彼女が帰宅していないのを心配し、すぐさま親族に連絡。翌日、親族が警察に捜索願を提出。
被害者女性は週に2~3回、自宅周辺の比較的人通りの多い場所でウォーキングをしていた。この時期の沖縄の日の入りは午後7時半であり、彼女が家を出た8時と言う時間帯はけっして遅いものではない。現地の人々は、比較的安全な場所で今回の事件が起きたことに、衝撃を受けている。
両親にとっては最愛の一人娘で、両親が最後に彼女に会ったのは、1月の成人式の時だった。両親と同居の祖母も、彼女の無事を祈っていたが、結局、叶わなかった。
警察によるスマホの位置情報調査で示された場所が、普段の彼女のウォーキングコースから離れた場所であることに、恋人男性も不審に思ったらしい。
沖縄ではこんな噂もあると言う。
"5月初め"に"県警"が"政府に"、「アメリカ政府と米軍に対して『容疑者の身辺調査をしたい』と申し入れて欲しい」と要請したが、「サミット前」を理由に政府は要請を「保留」。県警側が公開捜査に踏み切ったことで政府が重い腰を上げたので、急転直下、逮捕出来た。
↑もし、これが事実ならば、県警の英断がなければ、この事件は未だに被害者(遺体)の所在も分からず、犯人逮捕に至っていなかったかもしれないのだ。政府側から「最悪のタイミング」と言う言葉が飛び出したところからして、「不都合な真実」としてサミット終了まで、事件のことがひた隠しされた可能性がある。もし、そこまで公開捜査が引き伸ばされでもしたら、果たして犯人逮捕に至ったかどうか?(過去にも米軍人被疑者が米国に逃亡したケースがある)
被害者には何の落ち度もない、容疑者の目に留まったことが不運であったとしか言いようのない事件である。
世論の中には、「今回の容疑者はあくまでも「元軍人」であり、現在は民間人として基地内で働いているに過ぎないから、米軍と今回の事件は切り離して考えるべき」との意見も散見されるが、容疑者の「元軍人」しかも「海兵隊員」と言うキャリアが、今回の事件と無関係とは言えないと思う。少なくとも軍隊で学んだ攻撃スキルは、犯罪の遂行を容易にしたはずだ。
よく、「日本には沖縄だけでなく、各地に米軍基地が点在しているのに、なぜこうも沖縄で突出して米軍人による犯罪が多いのか?」と言われるが、それは沖縄にのみと山口県岩国基地に駐留している海兵隊員による犯罪が多いからである(岩国基地でも凶悪犯罪は過去に何度も発生しているが、基地問題に毅然とした報道姿勢を取る地元紙が2紙もある沖縄と違い、全国紙でもあまり大きく取り上げられていないようだ)。下記の表を見れば、一目瞭然であろう。
在日米軍は陸・海・空軍と海兵隊で構成されている。主だったものでも座間基地(神奈川県)が陸軍、三沢基地(青森県)、横田基地(東京都)、嘉手納基地、普天間基地(いずれも沖縄県)は空軍、厚木基地、横須賀基地(いずれも神奈川県)、佐世保基地(長崎県)は海軍所轄で、海兵隊基地(司令部は沖縄)は岩国基地(山口県)と沖縄本島中部に幾つか点在している。
各軍ごとの隊員数は陸軍が約2,000人、空軍が約13,000人、海軍が約19,000人、そして海兵隊が約16,000人の計約50,000人となっている(在日米軍のHPより)。
全隊員の30%を占める海兵隊員による犯罪が突出して多いのは、海兵隊員の軍における位置づけも原因のひとつであろう。海兵隊員について、こんな記述がある。
「海兵隊員は最初に敵地に乗り込んで戦う勇敢な兵隊だ。裏を返せば、最も戦死者が多く、最も敵を倒して来た、「死と殺しのプロ」だ。(その意味で)無数の海兵隊基地がある沖縄は、「殺しのプロ」が大勢いる。殆どの人は民間人を殺すような人ではないが、(戦場で)何十人も殺して来て、心が麻痺した人も中にはいるのだろう。基地の隣に住むということは、「殺しのプロ」と暮らすということだ。」
今回の事件の容疑者も、32歳と言う年齢からイラクやアフガニスタン等に派遣された可能性があり、戦地で戦闘を経験し、精神に何らかの異常を来した可能性も否定できない(だからと言って、彼が犯した罪は到底許されるべきものではない)。ウィキペディアで「アメリカ軍」を見ると、アメリカ軍がこれまでに参加した戦争の一覧があって、その夥しい数に圧倒される。
また、特に下級兵士に至っては、「米国の街のゴロツキが減刑を条件に、辺境の島である沖縄の基地に派遣されるので、海兵隊員の中でも質が低い」と言う噂もあって、同じ米軍人でも沖縄駐留の海兵隊員のことをよく思わない人もいるらしい。米軍の中でも最強の軍隊と自負する海兵隊からすれば、これはかなり不名誉なことではないか?
今回の事件もそうだったが、米兵とレイプの問題には根深いものがあって、「イラク戦争に参加した女性兵士の3人に1人が同僚兵士にレイプされた」との話もある中、国防総省の推計によれば、米軍内だけで年間19,000件ものレイプ事件が発生していると見られている(←上官による部下へのレイプ等、被害届が出されず、統計データに含まれないケースが多い)。しかも被害者は女性に限らず、(同性愛者ではない加害者による)脅しや支配を目的とした男性に対するレイプも少なくないらしい。斯様に米軍内でのレイプ事件は、パワハラとセクハラの両方を内包しているようだ。
レイプ事件の動機には「抑えられない性衝動」だけでなく、より弱い存在に対する暴力(征服欲、支配欲)によって、加害者自身の抑圧された自我の解放と言う意味合いもある、との説もある。つまり、加害者自身が社会の中で、(人間関係にも、教育機会にも、仕事にも恵まれず)自身の承認欲求が満たされなかったり、何らかの形で受けた抑圧によって生じたストレスが引き金となって、より非力な他者への暴力に向かうと言うものだ。そう、レイプは強者が弱者に牙を剥く「暴力のひとつの形」なのである。
加えて、海外で展開する部隊の兵士には、現地の人間に対する謂れなき差別感情もあるのではないか?所謂「強者の論理」「支配者の論理」とも言うべきもの。そうでなければ、これまでの沖縄県民に対する、米兵及びその家族や軍属による数多くの凶悪事件の説明がつかない(実際、海兵隊の沖縄派遣隊員に配布されるマニュアルには、県民を馬鹿にした記述があるらしい)。
特に今回の犯人は、報道によれば、現地日本人女性と結婚し、娘が生まれ、娘の誕生に合わせて妻の実家の援助により家も改築したばかりらしい。さらに妻の姓を名乗っていることから推察するに、妻にも妻の両親にも頭が上がらない状態だった可能性が高い。失業率の高い沖縄で元米兵が就職しようにも、基地内で軍属として働くぐらいしか当てはないだろう。さらに雇い主が沖縄の民間企業とあれば、給料も知れたものだ。
テレビのニュース番組に、米国在住の弱々しく老いた実母の姿も映し出されていたが、彼女の発言には被害者やその遺族に対する詫びは一言もなく、「なぜ、こんなことが起きてしまったのか?」「できるだけ早く(刑務所から)出て来て欲しい」と言う、息子の身に起きたことに対する嘆きだけだった。容疑者とは2年前に会ったきりで、11歳から離れて暮らしている、とも言っていた。そういう実母の出で立ちや発言から、彼がこれまでどのような人生を辿って来たのか、何となく想像できるような気がした。
士官学校でエリートとして養成される軍人がいる一方で、米国社会の底辺層で行き場のない青年が、軍の誘いを受けて下級兵士として入隊する。どれだけ戦地で多くの人を殺し、破壊の限りを尽くしたかが軍功の証となれば、たとえ兵士としてのし上がっても人間性は壊れるだけだ。
1995年に小学生が3人の米兵により輪姦された事件では、米兵3人が「次に目の前に現れた女をレイプしよう」とゲーム感覚でレイプに及んだとの話もあり、人権感覚の麻痺した米兵の精神の崩壊ぶりは明らか。たまたま目の前を通ったが為に被害に遭った女の子が気の毒で、犯人達は許しがたい。それなのに、この事件では日米地位協定を盾に、犯人達は県警に引き渡されなかったと言うから、日本政府の弱腰姿勢は糾弾されても仕方あるまい。
ネットでは、こんな記事も紹介されていた。
「在日米軍だけ処分が甘い? 性犯罪の3分の2が不起訴とAP報道 2014年2月10日
防衛省の内部文書によると、2005~2013年前半に在日米軍基地で性犯罪を起こした244人の軍人の3分の2が不起訴。罰金、降格、外出禁止、軍除外の処分だったことがわかった。約30例では戒告状のみだったという。同文書は、AP通信が情報公開法を使い入手した。YURI KAGEYAMA記者と、RICHARD LARDNER記者が報じた。
この調査報道を、USAトゥデイ、英ガーディアン紙、ロシア・トゥデイなど各国の大手メディアが続々と転載している。
文書には、第1海兵隊航空団の矛盾する2つの事例が示されていたという。両事例とも、原告(米兵)が夜、大量に飲酒した後、強姦されたと証言しており、DNA鑑定という動かぬ証拠もあった。だが、1例は懲役6年の判決、もう1例は降格と30日間の外出禁止処分で収監されなかったのだという」
そこには、「本国から遠く離れた極東での事件なので、多少のことは大目に見よう」との軍の規律の緩みがあるのではないか?
代々職業軍人の家庭出身者と言う以外にも、移民が市民権を早期に得る為とか、進学志望者が軍の就学援助システムを利用する為とか、軍隊入隊にもいろいろな動機があるようだが、今回の容疑者は何れにも当てはまらないような気がする。
彼の心には深い闇を感じる。
今回ナイフやスーツケースも準備して、仕事帰りに自宅から離れた場所で2~3時間もターゲットを求めて徘徊し、凶行に及んでいることから、計画的で手慣れた犯行に見える。他にも余罪があるのではないか?
加害者の妻は、わずか生後3カ月にして「残忍な殺人者の子」の烙印を押された(しかも一見してハーフと分かる)幼子を抱え、今後は多難な人生が予想されるが、どうしてよりによって、こんな男を配偶者に選んだのだろう?男の何を見ていたのだろう?
事件が起きる度に、日本政府は米政府(大使)に対して型どおりの抗議(まさに茶番)をし、それを受けて在日米軍は軍内の綱紀粛正を誓うが、どれもポーズに過ぎず、本気で現状を改善しようなんて気はさらさらないに決まっている。自分達から遠く離れた辺境の島での出来事だから、殆ど気にもかけていないのだろう。日本政府の意識は、去る大戦時に沖縄県を「本土防衛の為の捨石」にした当時と何ら変わっていない。
そもそも一般人の私でさえ、軍人や元軍人による犯罪の廃絶なんて無理だと思っている。軍隊の存在そのものが、非人間性と隣合わせなのだから。
現役軍人なら、誰かが言うように夜間外出禁止令でも出して、基地内に閉じ込めれば良いが、今回のように除隊した「隠れ凶悪犯予備軍」に関しては対処のしようがない。一度軍人になって戦地に赴いた者には、定期的に心理カウセリングを受けることを義務づけ、所属中に何らかの問題を起こした者は即刻国外退去か、日本に留まる条件として(人権問題として議論を呼びそうだが)GPSを体内に埋め込んで常に動向を監視するくらいのことはしないと、犯罪抑止は難しいと思う。現実的に直近の基地の撤退、縮小が無理ならば、せめて、沖縄県内だけでも実施してみてはどうかと思う。
加えて、米兵が公務中、公務外に関わらず、地元民に危害を加えるような事件・事故を起こした場合は、「政府を通して在日米軍に捜査協力を"要請"し、基地内立ち入りを"許可"して貰う」と言った、迅速な捜査の妨げとなる"手続き"を経ることなく、発生後すぐに地元の警察が主体的に基地内に立ち入り、捜査権や逮捕権を行使できるよう、日米地位協定を改定すべきだと思う(→23日(月)、米国防総省は沖縄県の改定要請に対し、「従来通り運用方法の改善で対処」と、改定を拒否。日本政府もそれを是認の意向。日米地位協定に関しては、外務省HPで内容を確認することが出来る。日米地位協定に関するQ&Aを読むと、外務省の役人が協定の不平等性を指摘されないよう回答をまとめた苦心惨憺の跡が見て取れる)。
とりあえず、すぐにでも可能な対処法としては、英国並みに夥しい数の監視カメラを基地周辺はもちろんのこと市街地に設置し、人通りの少ない場所にはドローンでも飛ばして常時監視する体制を早急に整えてみてはどうか?今回も直接的に犯人逮捕に繋がったのは監視カメラの映像であったと聞く。
県警や各警察署に特別監視室でも設けて(監視は警備会社に委託でも可)、常に複数の目で基地周辺部や市街地、郊外の様子をカメラを通して監視する。同時に警察によるパトロールをこまめに行ない、不審な動きを監視室が察知したなら、すぐにパトロールの警察官が現場に急行する。その為の特別予算を国に組んで貰えば良いのではないか?米軍の縮小・撤退が現実的でないのなら、それぐらいのことはすべきだと思う。これで、米軍関係者だけでなく、地元民による犯罪への抑止効果も期待できるかもしれない。
そもそも沖縄の基地問題は米兵による犯罪被害だけでなく、軍用地として接収されている土地が他県の土地と違って、大半が個人の所有であることから、毎年「思いやり予算」によって支払われる土地賃貸料収入が、同じ沖縄県民であっても土地を持つ者と持たざる者の間で、大きな経済格差を生んでいる点も無視できない。
以前、読んだ本にも、高額納税者数のベスト10に、地方からは唯一沖縄県がランクインしているとあった。これは軍用地を貸し出している富裕層が、それを担保に不動産をはじめとして幅広く事業を展開しているかららしい。沖縄県は厳然たる階級社会のようである。「貧乏県」の割に海外留学が盛んなのも、そのことと無縁ではあるまい。基地問題でも県民が一枚岩になれないのは、県民の中にも米軍利権で甘い汁を吸っている人がいるからか。米軍占領によって、沖縄県はさまざまな形で社会に歪みを抱えてしまったようだ。