NHKの震災関連の番組の内容が興味深いものだったのでメモ。
東日本大震災後に、特に高齢者の間で重症の肺炎患者が急増したことに疑問を持った気仙沼市内の病院に勤務する呼吸器科のD医師。彼はその原因を探るべく、震災直後の混乱の最中、被災した市内の病院を訪ね歩き、過去のデータを収集した。過去のデータと震災後のデータを比較する為である。
医師の間では当初、津波に襲われた際に多量の水を飲み込んだことや震災直後に空中を舞っていた粉塵(気仙沼では火災も発生)を吸い込んだことが原因ではないかと見られていた。
しかし、肺の中の細菌を調査すると、大多数の肺炎の直接的な原因とは言えないことが分かった。
D医師が単独で地道な調査を重ねるうちに意外なことが判明する。それは口腔衛生の分野から糸口が見つかった。
震災直後、避難所生活を続ける中で、水不足は深刻だった。そうなると「歯磨き」などで口中の清潔を保つことが難しくなる。また、「飲料水」の制限は唾液の分泌量の減少にも繋がり、それが細菌の繁殖を促す結果となる。特に高齢者は、震災後ずっと入れ歯を装着したままの人が多かった。
さらに、避難所生活では身体を動かすこともままならず、横になっていることが多かった為、それが誤嚥(ごえん)を誘発させたらしい(熊本・大分の震災では、「エコノミークラス症候群」の問題が新たに浮上)。
被災者の口中は、全国各地から駆けつけたボランティアの歯科医師も絶句するほどの深刻な衛生状況であったと言う。入れ歯を外すと、口中の皮膚が赤くただれ、カビが原因のカンジダ症を発症している人が多数いたらしい。
口中には通常の生活の中でも多数の常在菌がいる。肺炎球菌もそのひとつだが、これは通常の口中の衛生状態と体調ならば、特に悪さをするものではない。しかし、震災直後の口中衛生に構っていられない状況で、その菌がもの凄い数までに増殖し、肺炎を引き起こしたと言うのが、D医師が調査して突き止めた肺炎急増の原因だった。
口中を清潔に保つと言うことは、肺炎だけでなく、糖尿病等の生活習慣病や心疾患等、さまざまな疾患の原因となる歯周病予防に繋がると、今、注目されている。歯の表面のエナメル質を傷めないよう"力を入れ過ぎない"丁寧に時間をかけた歯磨きだけでなく、歯間ブラシや舌ブラシ(←歯間や舌は菌の温床になりやすい)の活用も推奨されている。
8020キャンペーン(80歳の時点で20本の自前の歯をキープしよう)にも象徴されるように、高齢化社会の現代では、高齢になっても自分の歯をどれだけ維持するかが、健康寿命を延ばす鍵とも言われている。歯を失うことで咀嚼力が失われ、それが胃腸に負担をかけたり、意外なところでは認知症発症の引き金にもなるらしい。
今回の番組では、震災直後に過酷な環境の中、臨床で多忙にも関わらず、医師としての使命感で肺炎急増の原因究明に奔走したD医師の実直さに感銘を受け、震災に際して口中の清潔を保ち、身体を動かすことの大切さを改めて認識した次第。
この社会が多くの人々の地道な働きによって支えられていること、そして、人間の身体は複雑なメカニズムで健康を保っていることに、改めて驚かされたと言っていい。
自分は本当に無知だ。だからこそ、世の中のことに無関心であってはならないと思った。
東日本大震災後に、特に高齢者の間で重症の肺炎患者が急増したことに疑問を持った気仙沼市内の病院に勤務する呼吸器科のD医師。彼はその原因を探るべく、震災直後の混乱の最中、被災した市内の病院を訪ね歩き、過去のデータを収集した。過去のデータと震災後のデータを比較する為である。
医師の間では当初、津波に襲われた際に多量の水を飲み込んだことや震災直後に空中を舞っていた粉塵(気仙沼では火災も発生)を吸い込んだことが原因ではないかと見られていた。
しかし、肺の中の細菌を調査すると、大多数の肺炎の直接的な原因とは言えないことが分かった。
D医師が単独で地道な調査を重ねるうちに意外なことが判明する。それは口腔衛生の分野から糸口が見つかった。
震災直後、避難所生活を続ける中で、水不足は深刻だった。そうなると「歯磨き」などで口中の清潔を保つことが難しくなる。また、「飲料水」の制限は唾液の分泌量の減少にも繋がり、それが細菌の繁殖を促す結果となる。特に高齢者は、震災後ずっと入れ歯を装着したままの人が多かった。
さらに、避難所生活では身体を動かすこともままならず、横になっていることが多かった為、それが誤嚥(ごえん)を誘発させたらしい(熊本・大分の震災では、「エコノミークラス症候群」の問題が新たに浮上)。
被災者の口中は、全国各地から駆けつけたボランティアの歯科医師も絶句するほどの深刻な衛生状況であったと言う。入れ歯を外すと、口中の皮膚が赤くただれ、カビが原因のカンジダ症を発症している人が多数いたらしい。
口中には通常の生活の中でも多数の常在菌がいる。肺炎球菌もそのひとつだが、これは通常の口中の衛生状態と体調ならば、特に悪さをするものではない。しかし、震災直後の口中衛生に構っていられない状況で、その菌がもの凄い数までに増殖し、肺炎を引き起こしたと言うのが、D医師が調査して突き止めた肺炎急増の原因だった。
口中を清潔に保つと言うことは、肺炎だけでなく、糖尿病等の生活習慣病や心疾患等、さまざまな疾患の原因となる歯周病予防に繋がると、今、注目されている。歯の表面のエナメル質を傷めないよう"力を入れ過ぎない"丁寧に時間をかけた歯磨きだけでなく、歯間ブラシや舌ブラシ(←歯間や舌は菌の温床になりやすい)の活用も推奨されている。
8020キャンペーン(80歳の時点で20本の自前の歯をキープしよう)にも象徴されるように、高齢化社会の現代では、高齢になっても自分の歯をどれだけ維持するかが、健康寿命を延ばす鍵とも言われている。歯を失うことで咀嚼力が失われ、それが胃腸に負担をかけたり、意外なところでは認知症発症の引き金にもなるらしい。
今回の番組では、震災直後に過酷な環境の中、臨床で多忙にも関わらず、医師としての使命感で肺炎急増の原因究明に奔走したD医師の実直さに感銘を受け、震災に際して口中の清潔を保ち、身体を動かすことの大切さを改めて認識した次第。
この社会が多くの人々の地道な働きによって支えられていること、そして、人間の身体は複雑なメカニズムで健康を保っていることに、改めて驚かされたと言っていい。
自分は本当に無知だ。だからこそ、世の中のことに無関心であってはならないと思った。