はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

いつまで続く「世界遺産」狂騒曲

2016年09月08日 | 日々のよしなしごと
 上野の国立西洋美術館が世界遺産登録されて以来、ほぼ連日朝から館内混雑が続いているようだ。
 
 世界遺産登録に伴う午後の混雑を見越して、今年から午後のスクールギャラリートークがなくなったが、開館前から50人前後の長蛇の列が出来ており、開館と同時に雪崩をうって団体ツアーも入館して来るので、午前中だけの実施となったスクールギャラリートークも、最近はまさに芋を洗うような混雑の中での実施を余儀なくされている。

 1コース3作品をグループで鑑賞するコースだが、まず対象作品の前に既に人だかりが出来ていて、なかなか鑑賞をスタートすることが出来ない。仕方なく、他の作品を見ながら待ったりするのだが、鑑賞が始まったら始まったで、大勢のギャラリーに囲まれるのもしばしばで、どうにも落ち着かない。子どもによっては集中力が途切れてしまうだろう。
 
 前回のトークでは、作品のトークを終えて、次の場所へ移動しようと身体の向きを変えたら、子どもの頭越しに写真を撮ろうとしていた人にぶつかった。トークに集中していたので、まさか背後にカメラを構えた人が立っていたとは気付かなかった。 

 今日はトーク中に、絵の写真を撮りたがっている女性に「あなた、チョットどいて」と言われた。別に館内に展示されている作品は寄託品(所有者が別にいて館内に特別展示されている作品)以外は撮影OKだし、声をかけた女性もれっきとしたお客様だから、私が場所を譲るのも当然ではあるが、頼み方がぞんざいなのが少し気になった。

 いずれも以前にはなかったことなので、正直戸惑っている。
 
 世界遺産登録直後から、都内の観光資源に飢えていたツアー会社は、早速「世界遺産登録記念」と銘打って、都内の名所と国立西洋美術館を組み合わせたツアーを企画し、集客しているようだ。
 
 ツアーでは最低限の鑑賞マナーさえ指導していないのか、作品の彫刻に触ったり、作品と鑑賞者を隔てる結界線を越えて作品に近づきすぎて、監視員から注意を受ける人が続出している。

 私自身、国内外のツアーに参加して美術館に行く機会も多いけれど、ここまで鑑賞マナーの悪い人達を見たことがない。しかし、それが目立つ理由は、美術館の狭さにあると思う。美術館のキャパシティを越えて、大勢の人が押し寄せているから問題なのだ。

 美術館関係者は、何れ混雑も落ち着くだろうとの見方をしているが、一体いつまでこの状態が続くのだろう?現在のような落ち着かない鑑賞環境では、来年度(私にとってはボランティアとしての最終年度)のスクールギャラリートークの参加校数にも、影響が出るのではと心配している。 

 国立西洋美術館(本館と前庭)の世界遺産登録は、台東区長年の夢?であったし、1年間の集客実績によって美術館に対する国からの交付金額も決まるので、ボランティア如きが苦言を呈する立場にないのは重々承知ではあるが、今の状態は明らかに異常だ。台東区も美術館も、今のような状況を望んでいたのだろうか?

 監視スタッフはもちろんのこと、「建物」も、展示されている「作品」も、尋常ならざる連日の混雑に、おそらく疲れていると思う。動物園の動物達が閉園後にグッタリするように、モノだって疲れるのだ。真面目な話、ちょっとした湿度と温度の変化も、作品の劣化を速めてしまう恐れがある。

 地味でコンパクトながらも、静かな雰囲気の中で、ゆったりと泰西名画と彫刻を見ることが出来たかつての西洋美術館。その当時からのファンは、今の状況をどんな思いで見ているのだろう?
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