はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

知ってて当然と思うのは大間違い、と言う話

2008年09月19日 | ボランティア活動のこと
ここ最近のボランティア活動で、ハッとさせられたこと。

■ある都立高校の美術コースの生徒さんとの対話型トークで

対話型トークと言えども、相手が高校生ともなれば、やはり小中学生とは違った対応をします。より一般成人向けトークに近い形で、解説を多めに。

さて、ギャラリートークを終えて最後に質疑応答の時間となりました。
「最後に何か質問があれば、どうぞ。答えられる範囲でお答えしますよ」と私。
するとひとりの女子生徒がおそるおそる聞いてきました。
「あの…ここの美術館には本物がどれくらいあるのですか?」

な、なんと…!彼女は美術館にある作品は殆どが複製画と思っていたらしいのです。こんなに沢山の西洋の美術作品が、日本の美術館にあるはずがない。そう思いこんでいたらしいのです。

そこで私はどう答えたか。

この美術館にあるのはすべて本物であること。油彩画は世界でここにしかないもの(1点物)ばかりであること。この美術館のコレクションの核となっているのは、明治・大正期に活躍した実業家が「日本の人々に優れた西洋の美術を見せてあげたい」と私財を投じて、直接ヨーロッパにまで出向いて買い集めた作品であること。例えば、今では時価80億円の価値はあると言われているクロード・モネの《睡蓮》は、画家との親交の証として、画家のアトリエにあったものを特別に譲り受けたこと。現在の美術館の買い付け予算額では到底購入不可能な作品が、この明治の篤志家のおかげで、数多くコレクションとしてこの美術館にあるのだということ…と言うようなことを話しました。

質問の少女は最初は驚いた様子で辺りを見回し、次の瞬間、心なしか眼の輝きが増したようでした。この後、20分程度の自由鑑賞の時間でしたから、彼女は先ほどとはまた違った感慨で、美術館の作品を見てくれたはずです。

■ファミリー向けワークショップでの、彫刻を前にしたギャラリートークで

ワークショップは毎回新しいプログラムに挑戦中。実施前に企画者によるトライアルでプログラムの流れ、具体的な作業内容は学ぶものの、実施と言う意味では一回目の担当はぶっつけ本番と言ってもよく、当然緊張もしますし、実際にやってみて気づく改善点も出て来ます。ワークショップ終了後のミーティングでは、参加者アンケートも参考に、美術館スタッフと担当ボランティアで改善点について話し合い、2回目以降はそれを踏まえて修正を図ります。

1回目で父兄から「彫刻のギャラリートークなのに彫刻についての説明が殆どない」とのコメントがあったので、2回目では図版も使って、彫刻とは何か、彫刻の種類、ギャラリートークで取り上げるブロンズ彫刻の簡単な制作プロセスの解説などを行いました。そこで
「この展示室にあるブロンズ彫刻作品の殆どはフランスの彫刻家ロダンと言う人が作ったものです」
と解説しながら、私がロダンの制作風景をとらえた写真を見せたところ、ひとりの少女から驚きの声が上がりました。
「え~、ロダンって、彫刻を作った人だったの?《ロダンの考える人》のロダンは人の名前だったの?」

そう、彼女は今まで「ロダン(作)の《考える人》」ではなく、「《ロダンの考える人》」と言うタイトルだと思いこんでいたらしいのです。


以上のように、私たち美術館側が当然子供達が知っていると思いこんでいることは、必ずしも周知されていないことが多いのですね。こうして子供達とのやりとりを通して、子供達の認識度を知ることは私たちにとって大事なことだし、また意外に楽しいことでもあります。一方子供達にとっても、このような形で美術について知る機会を得たことは、美術館体験として印象深く、後々プラスに作用するのではないでしょうか?

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