今日はICOM(国際博物館会議)が定めた「国際博物館の日」です。これを記念して、世界各地でさまざまなイベントが開催されます。
日本でも例年、幾つもの博物館施設(博物館法では文化遺産を保存する施設として、博物館・美術館だけでなく、動物園、水族館、図書館も、その法の下で管理する施設と定めています)が点在する上野恩賜公園では、「上野ミュージアムウィーク」と題して、約2週間に渡ってさまざまなイベントが開催されています。
今日は博物館・美術館の多くが常設展示室など無料開放となっていますので、この機会に是非、足を運んでみてはいかがでしょうか?
国立西洋美術館でも、以前私も担当しましたが、同僚ボランティア2人によるギャラリートークが午後に実施される予定です。今回はエース級の方が担当するので、興味のある方は是非、足を運んでいただければと思います。
上野ミュージアムウィーク 2017
今日の「国際博物館の日」に因み、今朝のNHK「おはよう日本」でも、日本の博物館の現状を伝えるレポートがありました。
今回のレポートにあたってNHK取材班は全国の国公立・私立博物館にアンケートを実施し、186の博物館(美術館含む)から回答を得ました。
そこで浮かび上がったのは、「保存と活用に苦悩する」博物館・美術館の姿でした。
近年は観光資源としても注目される博物館ですが(最近、博物館の窮状も知らずに、学芸員を批判した大臣がいましたね)、財政難による交付金の減少などで、人手と予算の不足が年々深刻化しています。
アンケートでも、収蔵品の劣化を防止する為の保存・修復作業が十分に行えないだけでなく、年々増加する収蔵品の数の把握もままならない博物館が全体の3分の2にも上っていることが明らかになりました。
今回のレポートでは具体的に3つの博物館を取り上げ、博物館が抱える問題点とその対策について(あくまでも朝のニュース番組の一特集なので)短く伝えていました。
上野恩賜公園の奥に堂々たる姿を見せているのは東京国立博物館(以下、東博)。ここは日本の博物館の元祖とも言うべき存在であり、11万点ものコレクションを抱える、名実共に日本を代表する博物館のひとつです。
その東博でさえ、保存修復を担当する常勤の職員はわずか6人。大型の収蔵品となれば修復作業は数人がかりで担当します。これでは圧倒的に人手が足りないので、非常勤の職員でどうにか凌いでいるそうです(因みに、ルーヴル美術館は全ての部門の常勤職員だけで2,000人らしい。日本は全国に5つある国立美術館すべてを合計しても常勤職員はわずか125人前後<前・青柳独立行政法人国立美術館理事長談>。この彼我の違いをどう見ますか?)。
来館者からは「もっと名作を展示して欲しい」との要望が絶えないそうですが、例えば、掛け軸の場合、絹本と呼ばれる絹地に描かれている作品が多く、長期間吊るすとその絹目が伸びてしまう恐れがあるので、どうしても一定期間のサイクルで展示換えをせざるを得ないとのこと。
東博のケースからも、博物館が、収蔵品の適正な「保存」と市民の福祉に寄与する「展示公開」の両立に苦慮しているのが明確に見てとれます。
さらに地方の博物館は、平成以降の市町村合併による博物館の統廃合で、増大する収蔵品の保存方法に頭を抱えているようです。
浜松市立博物館は16万点もの収蔵品を擁し、本館だけでは収蔵しきれない為、市内の16か所に分散して保管しているそうです。
しかし、場所によっては移動に車で2時間近くかかったり、廃校した小学校の校舎を使用するなど、学芸員はそれらの保管場所を巡回して保管状況を確認することに忙殺され、研究する時間が十分に取れないことや、万全とは言えない保管環境を嘆いていました。
こうした学芸員の苦悩の解消の手立てのひとつが、市民ボランティアの活用です。
北九州市のいのちのたび博物館は年間50万人の人々が訪れる人気の博物館。ここでは66人の市民ボランティアが活躍しているそうです。
市民ボランティアが普及活動の支援を行ってくれるおかげで、学芸員は「資料(史料)を収集し、データベース化し、研究し、展示する」本来の業務に専念できると喜んでいました。
少子高齢化と言う社会構造の変化は否応なく社会保障費を増大させ、国家の財政難に拍車をかけていますが、「人はパンのみにて生くるに非ず」。
「文化財(収蔵品)は市民共有の財産」である。
この認識の下、収蔵品の保存と活用のバランスを取りながら文化遺産の大切さを市民に伝える博物館の役割は今後重みを増して行く一方です。
それならばなおのこと、博物館を国家や市民が支えて行くと言う意識を、市民の間で高めて行く必要があると思います。
日本でも例年、幾つもの博物館施設(博物館法では文化遺産を保存する施設として、博物館・美術館だけでなく、動物園、水族館、図書館も、その法の下で管理する施設と定めています)が点在する上野恩賜公園では、「上野ミュージアムウィーク」と題して、約2週間に渡ってさまざまなイベントが開催されています。
今日は博物館・美術館の多くが常設展示室など無料開放となっていますので、この機会に是非、足を運んでみてはいかがでしょうか?
国立西洋美術館でも、以前私も担当しましたが、同僚ボランティア2人によるギャラリートークが午後に実施される予定です。今回はエース級の方が担当するので、興味のある方は是非、足を運んでいただければと思います。
上野ミュージアムウィーク 2017
今日の「国際博物館の日」に因み、今朝のNHK「おはよう日本」でも、日本の博物館の現状を伝えるレポートがありました。
今回のレポートにあたってNHK取材班は全国の国公立・私立博物館にアンケートを実施し、186の博物館(美術館含む)から回答を得ました。
そこで浮かび上がったのは、「保存と活用に苦悩する」博物館・美術館の姿でした。
近年は観光資源としても注目される博物館ですが(最近、博物館の窮状も知らずに、学芸員を批判した大臣がいましたね)、財政難による交付金の減少などで、人手と予算の不足が年々深刻化しています。
アンケートでも、収蔵品の劣化を防止する為の保存・修復作業が十分に行えないだけでなく、年々増加する収蔵品の数の把握もままならない博物館が全体の3分の2にも上っていることが明らかになりました。
今回のレポートでは具体的に3つの博物館を取り上げ、博物館が抱える問題点とその対策について(あくまでも朝のニュース番組の一特集なので)短く伝えていました。
上野恩賜公園の奥に堂々たる姿を見せているのは東京国立博物館(以下、東博)。ここは日本の博物館の元祖とも言うべき存在であり、11万点ものコレクションを抱える、名実共に日本を代表する博物館のひとつです。
その東博でさえ、保存修復を担当する常勤の職員はわずか6人。大型の収蔵品となれば修復作業は数人がかりで担当します。これでは圧倒的に人手が足りないので、非常勤の職員でどうにか凌いでいるそうです(因みに、ルーヴル美術館は全ての部門の常勤職員だけで2,000人らしい。日本は全国に5つある国立美術館すべてを合計しても常勤職員はわずか125人前後<前・青柳独立行政法人国立美術館理事長談>。この彼我の違いをどう見ますか?)。
来館者からは「もっと名作を展示して欲しい」との要望が絶えないそうですが、例えば、掛け軸の場合、絹本と呼ばれる絹地に描かれている作品が多く、長期間吊るすとその絹目が伸びてしまう恐れがあるので、どうしても一定期間のサイクルで展示換えをせざるを得ないとのこと。
東博のケースからも、博物館が、収蔵品の適正な「保存」と市民の福祉に寄与する「展示公開」の両立に苦慮しているのが明確に見てとれます。
さらに地方の博物館は、平成以降の市町村合併による博物館の統廃合で、増大する収蔵品の保存方法に頭を抱えているようです。
浜松市立博物館は16万点もの収蔵品を擁し、本館だけでは収蔵しきれない為、市内の16か所に分散して保管しているそうです。
しかし、場所によっては移動に車で2時間近くかかったり、廃校した小学校の校舎を使用するなど、学芸員はそれらの保管場所を巡回して保管状況を確認することに忙殺され、研究する時間が十分に取れないことや、万全とは言えない保管環境を嘆いていました。
こうした学芸員の苦悩の解消の手立てのひとつが、市民ボランティアの活用です。
北九州市のいのちのたび博物館は年間50万人の人々が訪れる人気の博物館。ここでは66人の市民ボランティアが活躍しているそうです。
市民ボランティアが普及活動の支援を行ってくれるおかげで、学芸員は「資料(史料)を収集し、データベース化し、研究し、展示する」本来の業務に専念できると喜んでいました。
少子高齢化と言う社会構造の変化は否応なく社会保障費を増大させ、国家の財政難に拍車をかけていますが、「人はパンのみにて生くるに非ず」。
「文化財(収蔵品)は市民共有の財産」である。
この認識の下、収蔵品の保存と活用のバランスを取りながら文化遺産の大切さを市民に伝える博物館の役割は今後重みを増して行く一方です。
それならばなおのこと、博物館を国家や市民が支えて行くと言う意識を、市民の間で高めて行く必要があると思います。