はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

「バレル・コレクション展」

2019年05月08日 | 文化・芸術(展覧会&講演会)



GW最終日の6日(月)は夫婦で、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」展を見て来ました。

 この展覧会は、産業革命期に英国随一の港湾都市グラスゴーで海運王として名を馳せたウィリアム・バレル(1861-1958)が蒐集した8,000点にも及ぶ古今東西の美術工芸品の中から、西洋近代絵画80点を紹介するものです(一部、別の美術館からの特別公開作品も有り)。

 バレル氏はそのコレクションの多くを生前、出身地であるグラスゴー市に寄贈しており、1983年には「大気汚染から作品を守る」と言うバレル氏の遺言に従い、グラスゴー市郊外に美術館が建設されています。

 私は1993年に家族でグラスゴー市を訪れていますが、当時はインターネットも使えない中東からの旅行で、情報不足の為この美術館の存在を知りませんでした。展示会場でその外観や内部の写真を見るにつけ、知っていたら、きっと訪ねていただろうと思うと残念です。

 寄贈の条件には「コレクションを英国国外に出さないこと」と言う条項もありましたが、今回は2020年までの美術館の大改修に伴い、特別に日本国内4か所で巡回展が許されています。つまり、今回来日中の作品が日本で公開されるのは、これが最初で最後なのです。

 グラスゴー市のあるスコットランドは16世紀のメアリー・スチュワート女王以来、フランスとのゆかりが深い土地柄です。

 バレル氏もフランスの芸術に深い関心を寄せ、グラスゴー出身の画商でフランスのパリを拠点に活躍したアレクサンダー・リード(1854-1928)を通じて、数多くのフランス近代絵画を蒐集しました。リード氏はゴッホやその弟テオとも親交のあった画商で、今回はゴッホが描いた彼の肖像画も出品されています。

 既に目の肥えた日本の美術ファンからは「今さら印象派?」と言う声も聞こえてきそうですが、今回の展覧会は海運王自身の趣味が色濃く反映された比較的サイズの小さな佳作揃いで、作品に関する丁寧な解説も数多く添えられ、より親密な形で作品を楽しめる構成になっています。

 「自分ならどの絵を自宅に飾ろうかしら?」なんて考えながら見ると、ホント楽しそう…

 印象派の前段としての、19世紀に起きた「17世紀オランダ絵画リバイバル」とも言うべき静物画や風俗画の数々は気軽に楽しめますね。水彩画も素敵です。

 出品作家はマネ、セザンヌ、ルノアール、クールベ、ドガ、ブーダン、オランダのゴッホやマリス兄弟、英国のペプロー、メルヴィル、クロホールなど多彩です。地元出身の画家への目配りも欠かさなかったと言う意味で、バレル氏は本当に素晴らしいパトロンだったのかもしれません。

 今回見た中で夫婦共に最も気に入ったのは、エドゥアール・マネ≪シャンパングラスのバラ≫(1882)。当時流行った細身のシャンパングラスに無造作に挿された黄色とピンクの2輪のバラ。ブルーグレイの背景がバラの色を鮮やかに引き立て、小品ながら全体的に艶やかな色合いが目を引く作品です。

  バレル氏お気に入りの画家だったのか、クロード・モネを絵画の世界へと導いた、フランスの港町ル・アーヴル出身のウジェーヌ・ブーダンの作品も数多く展示されていました。

 バレル氏が海運業で大成功を収めたと言うことで、ブーダンの海景画を特に好んだのかもしれません。

 ちなみにブーダンの作品は、上野の国立西洋美術館の常設展示室でも見ることが出来ます。

 最近はSNSによる情報発信を期待してなのか、展示室の一部が撮影可になっているケースが増えて来ていますね。今回の展覧会でも出口付近の一角の作品群が撮影可能となっていました。

 作品解説が作品を見る際に大変参考になったので、最近には珍しく今回は展覧会カタログも購入しました。色の再現性は今一つですが、大きさもB5版程度のコンパクトな物で、気軽にページをめくれるので気に入っています。

chainバレル・コレクション展公式サイト





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