「隣、
あいとるかいの?」
「ああ、
どうぞ」
幸平は
尻をちょっとずらして
空きスペースを広げた。
「おおけに。
カート押しといても、
しんどいわ。
あんた見かけん顔やのう」
辻本は気さくに
幸平の世界に
踏み込んできた。
幸平は抵抗なく
彼との会話に入った。
「どや、
食品売り場に
行ってみぃーへんか?」
辻本はスマートフォンで
時間を確かめると
誘った。
「四時になったら、
弁当が半額になりよる」
ひょこひょこ
カートを押し歩く
辻本を追った。
半額弁当が気になる。
これまで
買う機会はなかった。
どういうものなのだろう?
「あちゃ!
ちょっと早かったわ。
まだシール貼ってないのう」
辻本が
のぞき込む弁当の陳列棚に、
二十パーセントの
値引きシールが貼られた
とんかつ弁当が五個ある。
「早い時もあるねんけど、
今日は遅れとるわ」
「へえ?」
すべてが目新しかった。
働き蜂だった幸平に、
スーパーの買い物など
殆ど縁はなかった。
食品売り場は
男が
足を踏み入れるところではないと
固く信じていた。
その封建的な思考は、
田舎で育った団塊世代に
多くみられる。
幸平も例外ではなかった。
「ちょっと
時間待ちしょうか」
辻本が向かったのは
レジ前の休憩コーナー。
そんなコーナーを、
幸平は知らなかった。
「半額の弁当買い始めたら、
もう辞められん。
味もなんも
変わらんのに、
半額やど、
半額」
独断的な辻本の
アピールに頷いた。
他人の意見に逆らいがちな
幸平の珍しい反応だった。
「惣菜かて
半額やったら、
タダみたいなもんやがな」
タダではない。
それでも納得はできる。
あいとるかいの?」
「ああ、
どうぞ」
幸平は
尻をちょっとずらして
空きスペースを広げた。
「おおけに。
カート押しといても、
しんどいわ。
あんた見かけん顔やのう」
辻本は気さくに
幸平の世界に
踏み込んできた。
幸平は抵抗なく
彼との会話に入った。
「どや、
食品売り場に
行ってみぃーへんか?」
辻本はスマートフォンで
時間を確かめると
誘った。
「四時になったら、
弁当が半額になりよる」
ひょこひょこ
カートを押し歩く
辻本を追った。
半額弁当が気になる。
これまで
買う機会はなかった。
どういうものなのだろう?
「あちゃ!
ちょっと早かったわ。
まだシール貼ってないのう」
辻本が
のぞき込む弁当の陳列棚に、
二十パーセントの
値引きシールが貼られた
とんかつ弁当が五個ある。
「早い時もあるねんけど、
今日は遅れとるわ」
「へえ?」
すべてが目新しかった。
働き蜂だった幸平に、
スーパーの買い物など
殆ど縁はなかった。
食品売り場は
男が
足を踏み入れるところではないと
固く信じていた。
その封建的な思考は、
田舎で育った団塊世代に
多くみられる。
幸平も例外ではなかった。
「ちょっと
時間待ちしょうか」
辻本が向かったのは
レジ前の休憩コーナー。
そんなコーナーを、
幸平は知らなかった。
「半額の弁当買い始めたら、
もう辞められん。
味もなんも
変わらんのに、
半額やど、
半額」
独断的な辻本の
アピールに頷いた。
他人の意見に逆らいがちな
幸平の珍しい反応だった。
「惣菜かて
半額やったら、
タダみたいなもんやがな」
タダではない。
それでも納得はできる。