「おい。
あのこの目。
吊り上がっとるど」
レジを通った辻本は
性急に報告した。
まるで鬼の首を
取ったかのように
顔を輝かせている。
また
対抗心がムクムクと
頭をもたげた。
「そない吊り上がってないで。
可愛いキツネ目や」
「ほうけ。
わしの好きなタヌキに
あんたのキツネやな。
こらええわ」
辻本は笑った。
幸平もつられて
相好を崩した。
イオンは
幸平の息抜きと刺激の
スペースとなった。
行けば、
必ず辻本と会える。
半額弁当のお得感も
自分のものにできた。
そのうえ
レジの彼女に会えるのが
最高に楽しい。
正確にいえば、
遠くから眺めるだけの
高嶺の花なのだ。
……キツネ目の女……!
頭の中で
逞しくなる想像が、
青春を取り戻してくれる。
「はん、
うれしそうやな」
「ああ。
彼女、
今日はしあわせそうな顔しとる。
なんぞ
ええことあったんやろ」
「あほらし!
それよか、
ええ情報あったど。
タヌキなあ、
結婚して
こども三人おる。
この間、
食品売り場を家族揃い
買い物しよったとこに
出くわしてのう。
イケメンの旦那やった」
「興味ないわ」
「ほなら、
キツネのこと
教えたろか」
「いらん!
なんも知らんほうがええ……」
幸平は思う。
白髪頭のおじいちゃんの
淡い片想い、
それでいいと。
目の前で
元気に働く姿を
見せてくれれば、
それでいい。
だいたい、
幸平自身が
いつまで
健康でいられるか
保障の限りではない。
お年寄りなのだ。
「……キツネは……のう……」
辻本の声が、
どんどん遠くなる。
キツネ目の彼女は、
きびきびと客をあしらっている。
いつも笑っているようで、
時々むっとなったり
怒ったりする。
まだ若いのだろう。
……結婚しているのかなあ?
幸平は頬笑んだ。
そろそろ半額の時間だ。
あのこの目。
吊り上がっとるど」
レジを通った辻本は
性急に報告した。
まるで鬼の首を
取ったかのように
顔を輝かせている。
また
対抗心がムクムクと
頭をもたげた。
「そない吊り上がってないで。
可愛いキツネ目や」
「ほうけ。
わしの好きなタヌキに
あんたのキツネやな。
こらええわ」
辻本は笑った。
幸平もつられて
相好を崩した。
イオンは
幸平の息抜きと刺激の
スペースとなった。
行けば、
必ず辻本と会える。
半額弁当のお得感も
自分のものにできた。
そのうえ
レジの彼女に会えるのが
最高に楽しい。
正確にいえば、
遠くから眺めるだけの
高嶺の花なのだ。
……キツネ目の女……!
頭の中で
逞しくなる想像が、
青春を取り戻してくれる。
「はん、
うれしそうやな」
「ああ。
彼女、
今日はしあわせそうな顔しとる。
なんぞ
ええことあったんやろ」
「あほらし!
それよか、
ええ情報あったど。
タヌキなあ、
結婚して
こども三人おる。
この間、
食品売り場を家族揃い
買い物しよったとこに
出くわしてのう。
イケメンの旦那やった」
「興味ないわ」
「ほなら、
キツネのこと
教えたろか」
「いらん!
なんも知らんほうがええ……」
幸平は思う。
白髪頭のおじいちゃんの
淡い片想い、
それでいいと。
目の前で
元気に働く姿を
見せてくれれば、
それでいい。
だいたい、
幸平自身が
いつまで
健康でいられるか
保障の限りではない。
お年寄りなのだ。
「……キツネは……のう……」
辻本の声が、
どんどん遠くなる。
キツネ目の彼女は、
きびきびと客をあしらっている。
いつも笑っているようで、
時々むっとなったり
怒ったりする。
まだ若いのだろう。
……結婚しているのかなあ?
幸平は頬笑んだ。
そろそろ半額の時間だ。