広くガラーンとした駐車場。
田舎にある公園専用の駐車場だが、
平日の昼間で、
駐車する車は一台も見当たらない。
先週下見した通りだった。
人目を気にせず遊べる。
実は
初めての恋愛相手との
デートだった。
テニスラケットを手に
向かい合った。
彼女が打つ。
懸命に走って打ち返そうと思うが、
ずぶの素人、
しかも運動神経は全くないわたし。
ボールの来る地点まで
走ることさえおぼつかない。
それでも懸命に走り回った。
初めて付き合う彼女は、
小学校教師を目指す教育大生。
しかも高校からテニス部。
その彼女に合わせるのに
必死になった。
デートはすべて彼女の思うがまま。
プールに卓球、
ボーリングと活動的なものばかり。
テニスはその象徴ともいえた。
なんとか
上辺のカッコ付けはしたものの、
その実態は超がつく運痴!
結局、無理を続けた交際は
実を結ぶことはなかった。
妻になった女性は
同じ趣味を通じた出会い。
13の年齢差があっても、
だまくらかすために
必死になる必要のない相手だった。
デートは
私のリードか、
二人の合議で決まった。
そのデートは楽しかった。
ひとつも苦しい思いを
することはなかった。
結果は結婚に至り、
もう30年以上連れ添っている。
自分と極端に違うタイプの女性に
惹かれる心理は
イヤになるほど体験したが、
無理をして結ばれたとしても、
結婚生活は
きっと長続きしなかったと
容易に想像がつく。
もし自分の幸せを考えるなら、
決して無理する必要がなく
一緒にいて癒し合える相手を
選ぶのが正解だと結論を得た。
悲しき思い出の公園で
行われたウォーキング。
記憶にある駐車場に立ったとき、
あのデートが
どれほどしんどくてつらかったかを
改めて思い描いた。
あの彼女は
念願の教師になったと聞いているが、
その後の消息は全く知らない。