こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

は~るよ来い

2018年01月26日 03時50分47秒 | Weblog
 厳しい冬の寒さも峠を越えるころに、実施される恒例の畔焼き。今も昔も、直前になると妙に高揚感を覚える。快感めいていた。
 最近は草刈りバーナーが主流で影の薄くなった竹さおのタイマツだが、あれを用意するのも、また楽しみのひとつだった。
 竹やぶから見繕った青竹を切り出すのが第一段階。雑草に火を点けて歩くのに梃子摺らない長さで、節を抜く。燃料をたくさん入れたければ二節も三節も金棒で貫き、そこへ灯油を満たす。ねじ込んだぼろ布は栓にするだけではなく、灯油が染みて火が点く仕組みだった。昔の人の知恵は、さすがに見事である。
 時間になると、各圃場に分かれて一斉に雑草焼きが始まる。各所に白煙は立ち上り、しだいに真っ白な煙が集落を包み込む。なんとも壮大な光景の展開に、しばし我を忘れる。
 春を迎える直前の恒例行事である畔焼きの目的は、越冬する害虫駆除のはずが、いつしか日本の文化を代表する風物詩になっていた。
 近年、大気汚染が騒がれるなか、中止に至る地域は激増している。わが集落も、その運命から逃れるのは、どうやら無理らしい。
「畔焼きは意味がないと役員会で意見が上がり、当集落も来年から中止と決まりました」
 世代交代を象徴する若い役員。合理性で何もかも片付ける時代を担う主役たちの容赦ない言葉に、古き良き日本よ、サヨナラである。
 最期の畔焼きを前に、竹やぶに入った。ラストを飾る竹を念入りに選ぶつもりである。
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