難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

成人の人工内耳の適応基準が変更されています。

2018年09月16日 23時13分20秒 | 人工内耳
人工内耳の適応基準が昨年変更になっています。純音聴力90dB以上が、平均聴力70dB以上で最高語音明瞭度が50%以下となっています。
中等度難聴者も対象に。


中等度難聴者も聞き取りが良くない場合は、人工内耳の対象になります。
これは、欧米の動向を踏まえたものです。
「海外の成人人工内耳適応基準は,国もしくはメーカー ごとに細かく異なっている.純音聴力検査の閾値は, 70dB 以上が主流となってきており,アメリカ,中国,ドイツ,オーストリアなどがこれに当てはまる.」

「4 .1998年と2017年適応基準の違い 最も大きな違いは,
聴力および補聴器装用効果の適応 基準が拡大,明確化したことである(表2).
「純音聴力 90dB 以上」が「平均聴力レベル 70dB 以上」となり,
「補聴器の装用効果の少ないもの」という抽象的な表記 が,「適切な補聴器装用を行った上で,装用下の最高語 音明瞭度が50%以下」と明確化された.
注意が必要なの は,「平均聴力レベルが 70dB 以上,90dB 未満」の場合 は,「補聴器装用下の最高語音明瞭度50%以下」が必須 なことで,高度難聴者に対する語音聴力検査の重要性を再認識いただきたい.」


詳しくは、以下をご覧ください。
成人人工内耳の新適応基準(2017年版)
愛媛大学医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科 羽藤直人
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/121/8/121_1114/_pdf

自分の人工内耳の聞こえの特徴

2018年09月16日 22時34分42秒 | 人工内耳
乳幼児からの難聴、補聴器は14歳から装用。左の人工内耳は2007年(平成19年)11月施術、右は2013年(平成25年)2月19日。66歳。

【人工内耳の聞こえの特徴】
1.現在両耳30dBの音環境にいます。生まれてから聞いたことのない音や声を聞いているので、リハビリテーション(能力の再獲得)ではなくハビリテーション(新規獲得)のステージと言えます。

2.いろいろな音が聞こえてもそれが何か分からない間は音のイメージができません。

ベランダから何か工事の音が聞こえて、休日なのにおかしいなと思っていたのですが、「いよー、シャンシャンシャン」という一本締めの声が聞こえ、一昨夜見た祭礼ののぼりと提灯の記憶と合わさって、神輿担ぎの掛け声の「エイサ、エイサ」とわかりました。下に降りると町内会の子供神輿でした。

後ろで「ギーギー」と何か聞こえるなと振り返ると犬が吠えていて、とたんに「ワン、ワン」と聞こえたということもありました。

3.自分の声の発声に気をつける必要があります。
最近自分の話すことに相手が耳を傾けるので、職場は普段手話なので発音が曖昧になってしまったと思っていたのですが、そうではなく気づかないうちに人工内耳で自分の声が大きく聞こえるので小さくなっていました。自分の声がボソボソ声となって分からなかったのです。

人工内耳は小さい音も聞こえますし、大きい音もうるさくないように聞こえます。ダイナミックレンジは補聴器時代よりはるかに広いです。自分の声が相手にはっきり伝わる大きさを体得することが必要です。

4.積極的に「聴く」姿勢が必要です。
聞こうとしても聞こえない補聴器の生活が長かったので、どうせ聞こえないと聴くことに集中しなくなってしまっています。聞こえているのに何を言っているか分からないという状態、いわば聴覚情報処理障害APDに似た状況になってしまっています。

人工内耳でも耳をすませて相手の声を聞いたり、周囲の音や音楽に耳を傾けるという努力が不可欠です。

5.周囲の騒音、ノイズ、環境音は聞こえる人以上に大きな影響を受けます。

家の中のファン、テレビ、食器を洗う音、水の流れる音など会話を妨げます。居酒屋の歓声、笑い声、音楽は離れた席であっても目の前の会話にとても支障があります。

人工内耳の機能で自動的に周囲の騒音レベルを抑える機能もありますが状態が不安定で必ずしも常に聞こえるとは限らないです。

効果的で相手も納得する周囲への働きかけ方、様々な補聴援助システムの特徴の理解と利用などヒアリング・リテラシーが必要です。