難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

中途失聴者が主要人物の小説「レインツリーの国」が発売

2006年09月30日 16時58分50秒 | 生活
060930_0021~001.jpg中途失聴者自身が書いた手記や評伝などはあるが、中途失聴者が登場する小説はあまり聞かない。
昨日29日、新潮社から有川浩の「レインツリーの国」が発売された。
http://www.shinchosha.co.jp/book/301871/

出版社から、中途失聴、難聴に関係する全難聴の会員にアンケートの依頼があった。どのくらいの回答があったのか分からないが、アンケートは書きやすい構成になっていたこともあり、多かったのではないだろうか。
著者が、このアンケートなどをどの程度取り入れてくれたのか分からないが、早速読んでみよう。

全国の書店だけでなく、図書館などで手にする人もいるだろう。大手出版社から、このような本が出されたことは、私たちの障害の理解につながると思われる。

新潮社の広報誌「波」10月号に著書の書評がある。
http://www.shinchosha.co.jp/nami/
  ↑
 毎月変更になるようで、見る時期によっては10月号が表示されないかもしれない。

ラビット 記




我邦ニ生レタル不幸

2006年09月29日 20時47分02秒 | 福祉サービス
060928_2241~001.jpg前の投稿の「この国に生まれたる不幸」というのは、東京手話通訳等派遣センターのブックレット「手話通訳技術基礎講座」に日本障害者協議会常務理事の藤井克徳氏が講義された中に紹介されている。

日本の先進的な精神科医の呉秀三が日本の座敷牢の実態を報告した本の中に
「我邦十何万の精神病者ハ実ニ比病ヲ受ケタル不幸ノ外ニ、我邦に生マレタル不幸ヲ重ヌルモノト云ウベシ」
と一行記してあると。

確かに、同じ障害者でも、国により自治体により、支援サービスも社会の理解度が丸きり違う。

この国は、一体何が価値基準なのだろうか。国民の一人一人に生きる活力を与えるのが政治だが、憲法と教育基本法の改定を施政方針の最初に掲げる首相は戦争こそが障害者を生み出す一番の要因であることなどまるで念頭にないかのようだ。

新しい文部科学大臣は四年前の全難聴の全国大会の式典の挨拶に来たが、式典の始まる前に控え室で他の来賓もいる中で「聞こえない位、たいしたことがない、皆甘えている」と言い放った人物だ。この人をある県の身連の会長に抱いている団体も団体だ。

私は、この国に生まれたる幸福をもたらしたい

ラビット 記




障害者「自立」支援法の地域生活支援事業の施行

2006年09月27日 08時02分56秒 | 福祉サービス

調布2
調布広報1障害者自立支援法が昨年10月に成立して、4月から個人給付事業はスタートし、この10月から地域生活支援事業が開始する。

障害者自立支援法は、その成立過程で指摘されたように障害者の自己負担が10%生じることで必要なサービスを受けられない人たちが発生する。施設に入所すればサービスの自己負担以外にも食費等を負担しなければならない。
たましろの郷の短期入所では、食事、排泄、入浴等生活全般を援助するが利用者から食費日額1750円、送迎費200円、光熱費100円、日用品費実額が徴収される。1日2000円以上だ。
問題は障害者にそれだけの収入がないので、障害年金等から支払うことになる。施設で自立支援サービスを受ければ収入以上の負担がかかるのでは自宅に居るしかない。必然的に家族の負担が増え、障害者の自立どころではない。将来を悲観した親子の自殺まで発生した。与党ですら、そんなに負担が大きいと思わなかったと言う始末だ。

こうした矛盾を障害者団体が強く要望した結果、自治体が負担することを決めるところが増えている。
コミュニケーション支援事業を有料化しようとする動きが各地である。これも、都道府県レベルでは無償で派遣されていたが、市町村レベルになると有料化を口にする。福祉とか障害者の権利とかを考えずに、「コスト」を考えるからだ。あまつさえ、介護給付を受ける障害者と聴覚障害者の障害の「重さ」を理由にする。聴覚障害者より「重度」の障害者が1割負担するのだから、(それより軽い)聴覚障害者は負担すべきだという論理だ。
聴覚障害者はみな、一度は自殺を考える。コミュニケーション障害は人として生きるかの自尊心がずたずたになるのだ。

本当に、障害を持った不幸より、この国に生まれた不幸という人がいたが、そのとおりだ。
新しい厚生労働大臣の言動に注目したい。

ラビット 記



出版のユニバーサルデザインフォーラム2006  

2006年09月25日 15時50分09秒 | 生活

電車の紅葉広告リハビリテーション協会から以下の情報提供があった。

聴覚障害者のユニバーサルデザインは?

ラビット
写真は、紅葉の造花をあしらった電車の立体吊り広告。
…………………………………
リハビリテーション協会 原田

(ここから)
出版のユニバーサルデザインフォーラム2006
~だれでも読める・楽しめる本づくりをめざして~
http://www.d-kobo.jp/ud-pub.htm

日時:10月21日(土)13:00~19:00(受付開始12:00~)
会場:東京しごとセンター地下講堂(定員300人)
    東京都千代田区飯田橋3-10-3
交通機関:JR中央線「飯田橋駅東口」より徒歩10分。都営地下鉄
      大江戸線・東京メトロ有楽町線・南北線「飯田橋駅A2
      出口」より徒歩7分。東京メトロ東西線「飯田橋駅A5出口」
      より徒歩5分。
      http://www.shigotozaidan.jp/map.html
主催:出版UD研究会
【イベントの概要】
本は、「いつでも」「どこでも」 手軽に読めるすぐれたメディアです。しかし、読

自身のもつニーズや環境などによって、読みたいと思っている本が読めない・
読みにくい人が、じつはたくさんいることが知られています。また、ユニバーサル
デザインという視点から、まったく新しい出版ビジネスの可能性が発見できるかも
しれません。出版UD研究会は、昨年7月から出版・デザイン・図書館・電子
書籍メーカー関係者と、障害当事者・支援者・研究者などが一緒になって、
定期的に勉強会を開催してきました。このイベントでは、研究会で取り上げて
きたテーマの一部を報告するとともに、出版UDを必要としている読者、できる
ところからはじめてみたい著者や出版関係者へ、そのてがかりやとっかかりとなる
事例や技術などを紹介します。

【イベントの内容】
※内容・出演者・タイムスケジュールなどは、一部変更になる場合があります。
*主催者挨拶、来賓ご挨拶(13:00~13:20)
 肥田美代子(財団法人出版文化産業振興財団理事長・童話作家)
1──みんなが使える教科書をめざして(13:20~14:30)
 「拡大教科書のデータ提供実現へ」宇野和博(筑波大学附属盲学校)
 「音声も使える教科書への期待」井上芳郎(LD親の会)
2──広がる読書スタイル~オーディオブックの可能性(14:30~15:30)
 「広がるオーディオブック出版」木村福夫(株式会社AIR)
 「視覚障害者以外にもデジタル録音図書を」服部敦司(近畿視覚障害者
 情報サービス研究協議会)
 「iPod、合成音声で楽しむ耳からの読書」松井 進(バリアフリー資料リソース
 センター)
*休憩20分:オーディオブック、音声読書器、電子書籍、UDツールなどの
 デモを行います。
3──色と書体から考えるUD(15:50~16:40)
 「カラーユニバーサルデザイン」伊藤 啓(カラーユニバーサルデザイン機構)
 「UDフォント開発のプロセス」水野 昭(株式会社イワタ)
*休憩20分:オーディオブック、音声読書器、電子書籍、UDツールなどの
 デモを行います。
4──パネルディスカッション「みんなが使える本の出版をめざして」(17:00~18:
50)
 パネリスト(順不同):金子和弘(講談社)、岡山将也(日立製作所)、
             萩野正昭(ボイジャー)、武田 徹(ジャーナリス
ト)、
             成松一郎(読書工房)
●参加費:500円(資料代込)※当日、受付でお願いいたします。
●イベント終了後、会場近くで懇親会を開催いたします。
(19:30~21:30予定。会費4,500円)
●このイベントは予約制です。
参加ご希望の方は、10月18日(水)までに、メール、ファックス、郵便で「UD
フォーラム2006参加希望」と明記のうえ、お名前、ふりがな、所属先(勤務先、
学校名など)、連絡先(メールアドレス、ファックス番号など)、懇親会参加希望
の有無を必ず書いてお申し込みください。お知らせいただいた連絡先にメール、
ファックス、郵便で、受付完了のご連絡をいたします。
*メールアドレス:ud2006@dokusho.org
*ファックス:03-5988-9161
*郵便:〒171-0031 東京都豊島区目白3-21-6-101 読書工房内 
 出版UD研究会事務局宛
※定員になり次第、〆切とさせていただきますので、何卒ご了承ください。
※当日はレジュメを用意いたしますが、そのままでは読めない・読みにくい方のため
に、
 事前にテキストデータを送付することが可能です。必要な方は申し込みの際に
 「テキストデータ希望」とお書き添えください。
※聴覚などに障害のある方で、情報保障をご希望の方はあらかじめご相談ください。
追記:出版UD研究会(1回~13回)の講演内容を再編集した『出版のユニバーサル
デザインを考える』というタイトルの書籍(テキストデータ収録のCD付)を10月21

発売予定です。予定価2,520円、発行・発売:読書工房。
以上

(ここまで)




赤ん坊や子供を難聴から守るために

2006年09月23日 10時54分03秒 | 生活

DTIMlogo






イギリスの王立聴覚障害研究所RNIDから毎月、ニュースレターが送られてくる。
RNIDは、聴覚障害に関する医学的な研究から補聴援助システムの開発、販売まで幅広く行っている族室の寄付を受けている民間の研究所だ。国立リハビリテーションセンターとワールドパイオニア、全難聴を一緒にしたような機関のようだ。電話リレーサービスまでやっているので、もっと大きな団体だ。

この記事の中に、音楽から耳を守るキャンペーンの記事があったが、赤ん坊が防音用のヘッドフォンをしている写真を見て驚いた。確かに、イギリスはパンクの発祥の地だから、ロッカーの赤ん坊や子供の耳を難聴から守ることに注意を喚起するのは当然か。
http://www.dontlosethemusic.com/home/
http://www.dontlosethemusic.com/VirtualContent/91168/Flea_and_SunnyBebop_261114.jpg
多分、ロックコンサートだと思われるが聴衆が抱いている女の子は指をしゃぶっている位小さな小さな子供だが、耳にはピンクのヘッドホンが付けられている。
http://www.dontlosethemusic.com/home/areyouatrisk/protectingyourself/children_babies/

うーむ、ここまでやるかと思うが、記事を読むと子供の聴覚は発達途上で、大人の耳よりもダメージを受けやすいとか、子供は騒音を避けたり、騒音のしない場所を選ぶことが出来ない、大きな音のするおもちゃを使うのは止めさせなければならないというのを読むともっともだ。

自分も長男が赤ん坊のとき、電車の出発時の騒音が補聴器をしていなくても耳が痛くなるくらい相当大きな音だったので、思わず子供の耳を押さえたことを思い出した。

ラビット 記




第29 回総合リハビリテーション研究大会開催のご案内

2006年09月22日 08時06分24秒 | 福祉サービス
060728_0845~001.jpg国連の障害者の権利条約の草案の採決に伴って、今後国内で様々な議論がわき起こるだろう。特に我が国とって、教育のインクルーシブ(統合)教育への施策転換は大きな変化だ。
日本障害者リハビリテーション協会から、シンポジウムの案内が届いた。
国連で、積極的に発言した外務省の首席事務官の鈴木誉里子氏やこれまでのわが国における議論を引っ張ってきた人々が報告される。
http://www.normanet.ne.jp/~rehab/program.html

ラビット 記

--以下、紹介文(転載自由)--

第29回総合リハビリテーション研究大会
 -障害者の権利保障確立に向けて-

現在国連で審議が進められている「障害者権利条約」をはじめとする国際的動向や、転換期にあるわが国の障害者施策と実践のあり方について、さまざまな分野から討論します。

テーマ    障害者の権利保障確立に向けて
とき     2006年10月27日(金)・28日(土)
ところ    全社協・灘尾ホール (新霞ヶ関ビル)
       (千代田区霞が関3-3-2 TEL: 03-3580-0988)
       http://www.shakyo.or.jp/aramasi/access.html
定員     400名
大会参加費  5,000円 (懇親会を除く全プログラム)
懇親会費   2,000円 (10月27日夕方)
主催     第29回総合リハビリテーション研究大会実行委員会
       財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
後援(順不同)   内閣府、厚生労働省、文部科学省、東京都、社会福祉法人 全国社会福祉協議会、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構

■申込方法 下記ホームページから参加申込みができます。
       http://www.normanet.ne.jp/~rehab/
      (申込締切 2006年10月2日(月))
■主なプログラム(敬称略)
○10月27日(金)
開会  10:00
[ 1 ] 基調講演  10:15~11:20 
 「障害者の国際人権保障 -その歴史と課題-」
    川島 聡 (新潟大学大学院博士研究員)
[ 2 ] 特別報告  11:30~12:00 
 「障害者権利条約アドホック委員会第8回会合について」
    鈴木 誉里子 (外務省国際社会協力部人権人道課首席事務官)
[ 3 ] シンポジウム  13:00~16:30
 「障害者権利条約とわが国の課題」
 コーディネーター
    藤井 克徳 (日本障害者協議会)
 シンポジスト 
    金 政玉  (日本障害フォーラム権利条約推進委員会/DPI日本会議) 
    小宮 英美 (NHK解説委員)
    関 宏之  (広島国際大学医療福祉学部)
    長門 利明 (内閣府障害者施策担当) 
    野村 茂樹 (日本弁護士連合会/
           障害のある人に対する差別を禁止する法律調査研究委員会)
[ 4 ] 懇親会  17:00 ~18:30 (会費制)

○10月28日(土)
[ 5 ] 分科会  10:00 ~ 12:00
    「インクルーシブな地域社会実現に向けて」

 <グループ1>「重度障害者と地域生活」
   座長 石渡 和実 (東洋英和女学院大学人間科学部)
 <グループ2>「情報コミュニケーションの平等を目指して
         ~だれもがいつでも安心して利用できる
          情報機器と支援サービス~ 」
   座長 八藤後 猛 (日本大学理工学部建築学科)
 <グループ3>「地域で働く」
   座長 指田 忠司 (高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター/
               日本盲人会連合 )
 <グループ4>「世界のインクルーシブ教育とわが国の障害児教育」
   座長 飯島 勤  (全日本手をつなぐ育成会)
-昼休み-
[ 6 ] 総括シンポジウム  13:00~15:20
    「障害者の権利確立とインクルーシブな地域社会実現に向けて」
 コーディネーター
    伊藤 利之 (横浜市リハビリテーション事業団顧問)
 シンポジスト
    各分科会座長およびコメンテーター
閉会  15:40
※プログラムは変更することがあります。
■申込先・問合せ
    第29回総合ハビリテーション研究大会事務局
    162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
    財団法人日本障害者リハビリテーション協会内
    TEL:03-5273-0601 FAX:03-5292-7630
    E-mail: rehab@dinf.ne.jp
    http://www.normanet.ne.jp/~rehab/




スクリーンリーダーJAWS version7.1をリリースします

2006年09月22日 08時05分52秒 | 生活
060812_1828~001.jpg静岡県立大学石川准先生から、スクリーンリーダーのJAWS(ジョーズ)Ver7.1の案内が届いた。
視覚障害者がインターネットのwebをアクセスするだけではなく、ワードやエクセルまでも読み上げると言う。
どんなふうに読み上げられるのか聞いたことがないが、視覚障害者に送るメールでは改行が単語を分けないように気をつけているが、メールソフトにもそうした対応が必要だ。
元のアプリケーションソフトに読み上げられることを前提にした機能が備えていれば、この種のスクリーンリーダーの開発も楽になるのではないか。

ラビット 記
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9月28日に、エクストラがJAWSの最新版7.1の日本語版をリリースします。詳しくは、
http://www.extra.co.jp/jaws/
をご覧ください。

6.2からの大きな改良点は、

* 日本語ヘルプ搭載
* 処理の高速化
* 独自開発のDOMサーバによる動的HTMLへの対応
* PDF、Flash対応の強化
* FireFox対応
* ドキュメントプレゼンテーションモードによりブラウザ表示の画面レイアウト理解が可能
* Word、Excel、Outlook対応の強化
* Windows Live Messenger対応
* 点字PDAブレイルセンス対応
* 文字の識別機能の強化

と言ったところです。これらに加えて細かい改良は多岐に及びます。




難聴者のエンパワメントはクリーム入りドーナツ(3)

2006年09月21日 17時11分18秒 | エンパワメント

キバナコスモスサンフランシスコの風さんから

ラビット 記

写真はキバナコスモス
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まず紙に大きな二重円を書いてください。内側の小さな円は難聴者個人を指します。外側の円は環境です。内側の円は内的資源(個人がもともと持っている力)、外側の円は外的資源(リソース)といえます。
そして、二重円ごと時計でいえば正午、3時、6時、9時のところで4分割する十字を入れてください。これで8部分のスペースができましたね。正午から3時までは(二重円ごと)医学・健康面、3時から6時までは心理面、6時から9時までは社会面、9時から12までは精神面の資源(リソース)です。

繰り返しますが内側の円は個人がもともと持っているもの、外側のドーナツ部分は外的資源です。自分に対して健全で正しいイメージを持っている(セルフ・エスティームがある)ほどその人のありようは、しっかりした内側の円と外側の円が調和しています外側の円も大きいです。
外的資源を探ろうとしない、あることすら知らない難聴者は内側の小さな円どまりか、下手すると健康を害したり、友達を失ったり、うつ病などに陥って小さいほうの円も縮小していきます。
カウンセリングやセルフヘルプグループの働きは心理面と社会面の外側のドーナツ部分にあって、難聴個人の小さな輪をさらに強固に大きくし、将来はドーナツの縁よりも大きくなることを助けます。間接的にはその人の体の健康にも影響しますね。

医学面ももともと健康な人はさらに健康に、そうでない人は身体のお医者や心理カウンセラーを頼ることで健康に(ドーナツ部分を大きく)することができます。
4つのパイは互いに連鎖しあうので、はっきり切れているわけじゃありません。ひとつのパイに影響がいけば、他のパイにも影響がうつります。
9時から12時の精神面は日本人には一番分かりにくいのですが、欧米ではSpiritualityといい、人間のもっとも奥深いところで人間を人間たらしめる信仰や宗教のような心のよりどころになるものです。何かをありがたく思う気持ち、自然に対する畏怖や謙遜の気持ちのようなものでもいいかも知れません。それからパイは他にももっとあるかもしれません。
社会面のパイの基本は家族と学校です。大人になったら大学や会社。もうお気づきかも知れませんが、内的資源がもともと強い人はちょっと外的資源が加わるだけで飛躍できます。逆に元の円が小さくても外の資源に恵まれれば大きく成長することができます。どっちにも恵まれない、自分から求める力がないともともと小さい円も縮小して点になってしまいます。これは避けねばなりません。

おんぶばった1それから自分個人が全く空虚で外側ばかり求めているドーナツさんも危険です。ドーナツの空洞を埋める努力をしなければなりません(ミスタードーナツでいえば中にクリームが入っているアンパン型がいいです)。
わたし個人のイメージするエンパワメントのモデルはこの4分割(なん分割でもいいのです)されたクリーム入り(アンパンでもいい)ドーナツです。4分割されてもそれぞれが味わいあるドーナツです。



難聴者のエンパワメントはクリーム入りドーナツ(2)

2006年09月21日 12時14分40秒 | エンパワメント

木の実?サンフランシスコの風さんから。


ラビット 記
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わたしもラビットさんが考えられているように、エンパワメントの制度化にあたっては個人とグループでのサポート体制が両立するのが好ましいと思います。
個人のエンパワメントについては、ギャローデット大学のアレン・サスマン教授がもう20年も前に「社会的に好適応できる聾者の特徴」という有名な論文を書いていて、なんとなくこれが今でも聴覚障害者一般のメンタル・ヘルス(カウンセリング)のモデルになっているようです。下に彼の理論を抜粋しました。

Allen E. Sussman,Ph.D. on the characteristics of a well Adjusted Deaf Person. He states, "The well-adjusted deaf person possesses a positive self-concept and a healthy level of self-esteem. She does not think she is less of a person because of her deafness. She does not evaluate her worth as a person according to her English or oral skills. Hence, the development, fostering and enhancement of positive self-concepts and high levels of self-esteem laced with opportunities to experience success and achievement, begins with parents and then in school."

つまり、「健全な自己のセルフ・エスティーム(自己イメージ)をしっかりともった聾者は社会に適応しやすい。それには親や学校の教え方が大きく影響...」ということです。
自己の健全なイメージを育てるために、個人カウンセリングと手話講習会などのグループ形式のセルフヘルプ組織の両方が制度化されることが大事です。
健全な自己イメージを持った聴覚障害者を見極めるためには以下のようなモデルをわたしはイメージしています(大学やプロになってから学んだことから影響を受けています)。

(続く)


難聴者のエンパワメントはクリーム入りドーナツ

2006年09月20日 21時59分40秒 | エンパワメント
060728_0846~001.jpgサンフランシスコの風さんからです

………………………………………
メールをいただいて、エンパワメントについていろいろと考えました。
おそらくこの用語はアメリカよりも日本で定着した感じがありますが(ビジネス関係に多い?)、英語では、Empowerment だけでなく、Self-advocacy (自分の権利を理にかなった方で主張する)、 Assertiveness(理に叶った説得力のある主張をする能力)、Self-esteem(的確で健全な自己イメージ、自分を大事にする能力)など、様々な類似用語が飛び交い一定しませんが、いずれも個人主義アメリカで生まれた基本的人権を支える重要な概念です。
日本では、まずある程度個人主義(自分勝手という意味ではなく、周りにも調和した理にかなった個人の主張)をある程度築いてから(というか同時に)、「自己能力開発支援(エンパワメント)サービス」をやっていかないと、砂上の楼閣になってしまう気がします。

さて、エンパワメントの社会福祉制度化は難聴個人の自己啓発援助サービス(カウンセリング)と同時なら非常に効果が高いと思います。というか、エンパワメント社会福祉制度化のモデルは、個人対象のカウンセリングと、セルフヘルプグループのようなグループモデルが共存するのが理想です。
おっしゃるとおり、中途失聴・難聴者の手話講習会は、他に代わる枠組みがないところでは、大いにエンパワメントのグループモデルを提供していると思います。
ただし、リーダー層が個人カウンセリングの基本的知識と経験がないままこのグループを統率しようとするのは非常に危険ですね。せめてピアカウンセリングの講習を受けるとかある程度資格化をきちんとすることが重要でしょう。こうすべき、こうあるべきという、「べき」とか「すまじき」というような押し付けの言葉を使う人は、たとえそれが経験則に基づく善意のアドバイスであってもカウンセリングをしているとはいえません。
まあ、こうすべき、とずばっ、いわれないとカウンセリングに行った気がしないと思う人がいるかも知れません。他者依存、協調志向の強い日本人だからというのはありえます。
その場合でもその難聴来談者の様子をみながら違った応答が使い分けられるのがいいカウンセラーですね。

(続く)





聴覚障害者の胃部X線検査の無料検診実施中

2006年09月20日 20時54分49秒 | 生活

夜の花2聴覚障害者は、医師や看護士、受付、薬局などでコミュニケーションの問題のため、なかなか診察に行きたがらない。特に、顔も見えない個室で行われるX線検査は鬼門だ。

東京都中途失聴・難聴者協会は、昭和大学医学部高橋英孝教授と日立製作所の聴覚障害者向け胃部X線検査システムの開発に、2002年からアンケートやモニター、被検査など積極的に協力して来た。同年11月24日には「東京都中途失聴・難聴者の集い」にて、始めてこのシステムを搭載した移動検診車による検診が行われた。


http://www.tonancyo.org/info/iryou.html
http://www.fukushi.com/news/2003/04/030402-a.html
http://www.englink21.com/i-eng/column2/clm058/clm000.html

同システムを導入した、東京予防医学協会の御好意で無料検診を行っている。
2005年11月、12月、2006年10月、11月。
http://tonancyoinfo.seesaa.net/article/21794440.html
http://tonancyoinfo.seesaa.net/article/9385237.html

実際に検診した方の中から、かなり重要な病気が発見されており、聴覚障害者の早期検査が重要なことが示されている。
企業の検診や自治体による検診でもこの聴覚障害者向け検査システムを導入したり、このシステムのあるところで受診できるようにして欲しい。

ラビット 記



難聴者のエンパワメント

2006年09月20日 11時25分45秒 | エンパワメント

ソメイヨシノ2
ソメイヨシノ1サンフランシスコの風 様

聞こえの支援の社会学という、一文を書こうと思っているんですが、エンパワメントというのは、最近の聴覚障害者サポートの中では、どのように使われているのでしょうか。
久保耕造さんのエンパワメントという言葉の紹介があります。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n193/n193_037.htm

また、別途「中途失聴・難聴者のリハビリテーション」というコラムを書く(320字)のですが、その中にもエンパワメントという言葉を使います。
私は、自己能力開発みたいな意味でとらえていますが、これを社会的につまり社会福祉の制度としてサポートする仕組みが必要だと思います。
中途失聴・難聴者のリハビリテーションには、バリアフリーな環境整備、自己能力開発支援(エンパワメント)サービス、相談支援(コンサルティング)が必要です。中途失聴・難聴者の手話講習会は、この一部を代行しているとは考えられませんか。

エンパワメントの専門性を考えると疑問かもしれませんが、中途失聴・難聴者向け手話講習会は、
1)手話の学習(自己表現としてのコミュニケーション手段の獲得)
2)同じ障害者との交流(障害認識、障害受容の前提)
3)中途失聴・難聴者のコミュニケーション問題、聴覚障害、各種支援サービス等社会福祉制度の学習(自立のための知識獲得)
の要素があり、全体として、エンパワメントの場となっています。
ただ、手話指導者がそうした意味を十分理解していないの場合、お友達や先輩感覚でその人の自立や手話の可能性を摘んでいるかもしれない危惧はあります(こうしたいけれどもどうかしら→それはまだ無理よ、ちょっと待った方が良いわ)。

エンパワメントについて、高山亨太氏が的確な説明をしていると思いました。経歴を見ると聴覚障害者の精神保健福祉士です。今年の9月から、ギャローデッド大学に留学されています。
http://takayama.alohashore.com/?eid=119418
(このブログは、昔のマックのファインダー風なデザインですね)
このブログの推薦書に「Inner Lives of Deaf Children: Interviews and Analysis」が出ていますが、難聴者のソーシャルワークのための本が読みたいです。

ラビット 記

写真は通勤途上のソメイヨシノです


全難聴が自立支援法のパブコメに意見提出

2006年09月19日 13時12分25秒 | 福祉サービス

木の実?9月15日、全難聴は障害者自立支援法のパブリックコメントに以下の意見を提出した。

ラビット 記



………………………
障害者自立支援法に対するパブリックコメントの提出報告

全難聴は9月15日付けで以下の内容で提出いたしました。
該当サイト:http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public

ここから----------------------
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 御中

「障害者自立支援法に係る省令・告示で定める事項等」についての意見を
提出させていただきます。

法人名:社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
(代表者):理事長  高岡 正
所在地:東京都新宿区市谷台町14番5号 MSビル市ケ谷台1階

(意見1)
障害者自立支援法の施行にあたり、省令で要約筆記を定めること。
8月1日付けで出された「地域生活支援事業の実施について」
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)には、コミュニケーション支援事業について、手話通訳、要約筆記者の派遣をするとあります。
身体障害者福祉法第4条の二に「手話通訳事業」とは、聴覚、言語機能叉は音声機能の障害のため、音声言語におり意思疎通を図ることに支障のある身体障害者(以下この項において「聴覚障害者等」という。)につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により聴覚障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをい
う。第三十四条において同じ。)に関する便宜を供与する事業をいうとされております。
要約筆記は、身体障害者福祉法施行規則第1条の七に「法第四条の二第十一項に規定する厚生労働省令で定める方法は、要約筆記とする」とされています。
障害者自立支援法の施行にあたり、厚生労働省令で要約筆記を手話通訳等にあたる方法として定めて下さい。

(意見2)
障害者の雇用に係る関係法令で、聴覚障害者に対する「障害者介助等助成金」の対象が手話通訳のみとされているが、要約筆記等を加えて下さい。

(意見3)
第77条第3項 市町村が実施することが出来るその他の事業に、中途失聴・難聴者の手話学習を加えてください。

理由:
第77条第3項「その他の事業」の実施要綱では、「生活支援事業」、「社会参加促進事業」として、障害者の自立のための様々な事業が規定されています。しかし、中途失聴・難聴者にとって直接的なコミュニケーション手段である手話学習が全く記載されていません。
ろう者と異なり、中途失聴・難聴者にとっては手話の学習は新たな言語の学習です。そのためには系統だった学習が必要です。
中途失聴・難聴者にとってのコミュニケーション回復の重要性を認識頂き、市町村での中途失聴・難聴者の手話学習の事業化を要望します。

(意見4)
第78条第2項 都道府県が実施することが出来るその他の事業に、中途失聴・難聴者の手話学習を加えてください。

理由:
1項同様。

(意見5)
第95条第2項(2)で市町村、都道府県の行う地域生活支援事業は、国の予算内で行う(裁量的経費)旨規定されていますが、これを義務的経費とするよう改めてください。

理由:
地域生活支援事業は、障害者の毎日の生活に必要な事業です。毎日の生活に欠かせない事業が当初予算の範囲内でしか実施されないことは、障害者の死活に関わります。地域生活支援事業が障害者のセーフティ・ネットであることを認識頂き、義務的経費での事業実施を要望します。

以上




ADAとエンパワメントなど

2006年09月18日 19時31分13秒 | エンパワメント

都スローガンADAの成立した時は、日本の障害者運動にも大きなインパクトを与えた。
東京都中途失聴・難聴者協会は、アイ・ビー・エムウェルフェア・セミナー「中途失聴、難聴者のリハビリテーション」で故大阪府立大学社会福祉学部・定藤丈弘教授を招いて、成立したばかりのADAの内容について、報告してもらったことを思い出した。
ADAは別名、コミュニケーション法といわれるくらい、公共建築物のアクセスにも聴覚障害者に分かるような機器の設置や通信のアクセスにも電話リレーサービスなどを義務つけるなど聴覚障害者サービスを規定している。

先日、アメリカの障害者雇用均等機会委員会のQ&Aが出されたことを報告したが、ADAが成立して2年後その当時の状況が報告されたものがある。
筆者の久保構造氏は、ADAの成立に大きな力となった全米障害者協議会の議長のフランク・ボウ氏の日本招聘に力を果たした。フランク・ボウ氏は、1981年の国連国際障害者年の有名なスローガンである「障害者の社会への完全参加と平等」に、聴覚障害者にとって「完全」が必要であると主張した人としても知られる。彼は難聴者だ。
http://www.normanet.ne.jp/~ww100136/ada-shakaifukushikenkyu.htm
久保耕三氏は、エンパワメント研究所の主宰メンバーでもある。障害者福祉専門の出版社・書店である有限会社スペース96も経営する。
http://www.normanet.ne.jp/~ww100136/index.htm
各種文献は国連特別委員会で採択された障害者権利条約案などを考える際にも役立つだろう。

ラビット 記


交通と建築物のバリアフリーを統合した法律(2)

2006年09月18日 14時29分26秒 | 生活

おんぶばった2この「高齢者、障害者等」とはについて、以下のような定義がされている。
「高齢者、障害者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるものその他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者をいうものとする」
とある。
分かりにくい構文だが、高齢者と障害者以外が「等」で、高齢者・身体障害者と同じように日常生活などに支障がある人々が含まれる。これが、怪我した人や妊婦などがあたる。子供がつり革につかまれないという問題もその他に当たるのだろう。
しかし、見て分からないという障害では、聴覚障害者も知的障害者、精神障害者、内部障害者も同じだ。円滑な移動等には、それぞれの障害にあわせた対策が必要になる。情報を受けることが出来ない、受けにくい障害者には音声の替わりに文字やピクトグラム(絵、図など)が必要だろう。色盲の方には適切な配色が求められる。すべての障害者を対象にするという意味が重いということだ。

社団法人に本知的障害福祉連盟のWEBには、当初の法案には身体の障害と会ったことに強く反発して、適切な表現を求めたことが書かれているがさもありなん。
http://www.gtid.net/jp/news/20060405145605/

ラビット 記

写真はオンブバッタ