そうなんだ。

外国語で知ったこと。

旅の醍醐味    エッセイ

2016-03-11 11:07:36 | エッセイ
『公募ガイド』という雑誌に、4月号から新コーナーが誕生しました。
“エッセイ & エクササイズ” とタイトルで
毎回出題される“テーマ”に沿ったエッセイを募集します。
第1回のテーマは、“疲労困憊”。 本文600字以内。
私の投稿したエッセイが佳作に選ばれたので
僭越ながら、このブログで発表させて頂きます。

「そうなんだ。 外国語」はお休みです。

私の友人の皆さんにとっては、何度か私から聞かされた話でしょうけど
おつきあい下さいね。
その他の皆さまには、テーマである疲労困憊ぶりに笑っていただけると
ありがたいです。


    「旅の醍醐味」   ふーちゃん

 
 若い頃、海外ツアー添乗業務中の事である。
カナダ国内移動のため、トロント空港にて搭乗手続き時だ。
一行21名(添乗員1名を含む)の席は確保されているはずだった。
 ところが20名しか乗れぬと告げられる。
海外ではありがちな“オーバーブック”いわゆる航空会社側の予約過剰だった。
1名分は30分後の別便を薦められた。

 私は “旅慣れない客が参加するツアーの添乗員” である。
その辺りの事情を説明して全員が同便に乗れるように交渉するも、
「キャンセル待ちの手段もあるが、じきに次便の席も埋まるだろう」
に話が戻る。
 私は同一行動をあきらめて、ツアー客に添乗員である自分が別便に乗る事情
を説明した。

 20名の搭乗を確認後、次便のゲートに走るも、まさかのキャンセル待ち7番目。
「話が違う」 と必死で職員に食い下がりながら、気付くと私は泣いていた。
添乗員とはいえ20代女性の涙が、功を奏したのかもしれない。
最優先で搭乗できた。
 
 一難去ってまた一難。
カルガリー空港では待っているはずの一行が見当たらない。
 彼らを乗せた便がエンジントラブルの疑いで別の空港に降りていたとわかる。
観光用チャーターバスを待機させたまま、成り行きを見守る1時間半は
動悸がしていた。
 客は気楽なものだ。
ロビーに現れた彼らは 「トラブルは旅の醍醐味だよ」 とはしゃぐ。
ツアー後半にはパスポートを紛失した客の対応も加わり、
“旅の醍醐味”とやらは続いた。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする