「難関古墳をあるく」の第二弾は、奈良県の御所市にある巨勢山古墳群の一つ、巨勢山323号墳。巨勢山古墳群は、巨勢山丘陵全体に渡って、総数800基に及ぶとされる日本有数の群集墳である。その築造された時期も古く、4世紀末から築造が始まり、群形成のピークは6世紀中ごろと考えられ、最終的には7世紀の中ごろまで築造が続いている。今回の巨勢山323号墳は、この古墳群の最終段階に築かれた古墳である。
かつては、「大和の古墳を語る」という本に「ウサギ狩りのハンターが多いので誤射されないように鈴をつけるとよい。」と非常に物騒なことが書かれており、難関古墳の一つとして著名であったが、近年、行きやすくなっている(といってもかなり大変な道を歩くのだが)という情報もあり、今回、チャレンジしてみることにした。
まず近鉄御所駅からバスに乗って、寺田橋というバス停で下車し、国道24号線を南に向かう。
山本商事と書かれた看板の下を入っていく。すぐに六地蔵の石仏が立っており、その道を奥に進んでいく。
しばらく歩いていくと村墓地があるが、その横をする抜けるようにして丘陵を登っていく。少しずつ傾斜がきつくなる。
写真の細いモルタルの道を登っていくが、途中から地道になる。
山道になる。だんだんと難関古墳にアクセスという雰囲気が漂ってくる。
中野家の墓にでる。このお墓が巨勢山323号墳を訪ねる時にランドマークになっている。(当のご本人にはご迷惑な話ではありますが・・・。)
この中野家の墓の石段を登ってから、墓石の前を右へ曲がり、生垣の破れたところから山道に入っていく。
そして、すぐに左に曲がり、急な斜面を這うように登っていくことになる。ここからは、ピンク色にビニール紐が道案内をしてくれる。道があるんだかないんだかわからないような急な勾配をなんとか周りの木の枝などにつかまって、レンジャー部隊さながらに登る。ここが唯一の難所。しばらく登ると道(?)が緩やかになる。ちょっとしたハイキング道みたいな感じかな。
ずっと歩いていくと、おもむろに右手に巨勢山323号墳の姿が少し平坦になった地面の奥に姿を現した。窮に道が歩きやすくなったので、調子よく歩いていたら、突然の出現したのでちょっとびっくり。思わず行き過ぎる所だった。
よく見たら、こんなパウチで作った手作り感満載の案内があった。
いよいよ巨勢山323号墳の登場である。ばっちし南向きに石室を開口させていた。
巨勢山323号墳は、一辺約14.8mの方墳であり、写真のように横口式石槨が開口している。ちなみに奈良県の遺跡地図では、16D-0042にあたる。
中に入ってみると、羨道は大きな幅の狭い石を用いて造られており、天井石は一部破壊されて崩落していたようだ。(一応波板で補修されている。)
ちょっとビビりってしまう。(笑)
その奥に、石槨があるのだが、6個の切石を使ったもので、高さも1mを越えるぐらいのもので、しゃがんで入るしかない。
中は綺麗に加工されており、石の隙間には漆喰が使われていたようである。また、入り口に扉石が落とし込まれていたような溝が残っている。
築造されたのは、7世紀の中ごろと想定され、巨勢山古墳群では、一番最後に造られたものと考えられている。巨勢山古墳群の数多くある古墳の中で唯一横口式石槨を持った古墳である。
この精巧な作りは、ちょっと感動モノ、ここまで来てよかったあと実感。
古墳の周辺に、石材の破片がゴロゴロと草むらの中に落ちており、もしかしたら古墳と関係のあるものなのかもしれない。
この巨勢山323号墳と書かれたパウチのすぐそばに今度は、巨勢山769号墳と書かれたパウチがあり、周辺をうろつきまわるもそれらしきものは見つからなかった。
調べてみるとどうやら、巨勢山323号墳は、先行する769号墳を破壊して、その上に造られた古墳であるようだ。ちなみに巨勢山323号墳の周りを一周することはできる。裏側には堀切が残っている。
そこで、思うのだが、巨勢山古墳群については、おそらく葛城氏と深く関係のあった一族の奥つ城であったと考えられそうである。ではその奥つ城の古墳を破壊して、造られた古墳はどういった意味があるのであろう?同じ一族ではないような気がするのだがいかがであろう?
この後、ハイキング道をたどっていくと元に戻れるのではと思い、前に進んでみたのだが、道は、途中で谷をおりて、工場(?)の裏手に出たのだが、そこからフェンスで遮られて前に進むことができなかったので、再び元来た道を引き返すことになった。
途中、古墳らしき高まりをいくつか見つけた。(遺跡地図では、44か45になると思う。)
巨勢山古墳群も、御所市の計画では、ハイキング道など整備計画があるようである。できればハイキング道の整備ぐらいで留めておいてほしいなあ。飛鳥の牽牛子塚古墳みたいな残念な整備はほんとやめてほしい。
下まで降りて、視界が開けると向こうに室宮山古墳の雄大な姿が見えた。
この後、室宮山古墳へ向かうことにした。
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