WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

クリフォードの想い出

2006年12月16日 | 今日の一枚(K-L)

●今日の一枚 99●

Lee Morgan    

The Best Of Lee Morgan

Watercolors0001_3  周知のごとく、リー・モーガンは、1972年、14歳年上の恋人に射殺された。彼は33歳だった。そのことによって彼は、ジャズの物語しばしば登場する夭折の天才の一人に数えられることになった。麻薬や病気や自殺でなく、女に殺されたというところが、彼らしい。実際彼は女にはよくもてたらしいが、女たらしの「尻軽」なイメージが彼らしいのだ。クリフォード・ブラウンの再来といわれた艶やかな音色と抜群のテクニックに裏打ちされた彼の演奏はもちろん素晴らしいものだが、サウンドがどこかチープな感じがすると感じるのは私だけだろうか。むしろ、そのところが、彼の魅力だとも思うのだ。

 さて、リー・モーガンのベスト盤である。私はベスト盤はほとんど買わないか゛、Blue Note のこのアルバムは便利である。聴きたい曲がほとんど入っている。それぞれの入ったアルバムも所有しているのだが、なぜかこのCDを一番よく聴く。

 ① The Sidewinder

 ② Psychedelic

 ③ Ceora  

 ④ Candy

 ⑤ I Remember Clifford

 ⑥ Desert Moonlight

 ⑦ Anti Climax

 ⑧ Lover Man

 ⑨ Cornbread

 どれも興味深く、かっこいい演奏だが、やはり、名曲 I Remember Clifford (クリフォードの想い出)は出色だ。ベニー・ゴルソンが、自動車事故のため25歳という若さで死んでしまった天才トランペッター、クリフォードブラウンを偲んで書いたこの曲は、何度聴いても、美しい・・・・。あまりにも美しく、万感胸にせまるものがある。この時、リー・モーガンがわずか18歳であったなんて、信じられない。やはり天才というべきなのだろう。

 この曲にジョン・ヘンドリックスのつけた歌詞は、次のように歌っている。

彼を決して忘れない。彼は無冠の帝王だった。彼のサウンドのあたたかさをいつも思い浮かべる。

 リー・モーガンのトランペットは、 この歌詞を歌っているようだ。