●今日の一枚 265●
Ray Bryant
Ray Bryant Plays
もう春だ。私にとって、春は「ホヤ」の季節でもある。私の住む三陸海岸でも「ホヤ」が普通にスーパーに並ぶようになった。「ホヤ」はグリコーゲンが豊富で、海のパイナップルなどともいわれ、私の住む地方ではメジャーな食べ物であるが、他の地方ではほとんど知られておらず、大学生の頃にそのことを知って愕然としたものだ。私にとっては、この季節になると、どうしても食べたくなる食材のひとつだ。若い時分、愛知県で働いていた頃には、名古屋の市場でやせた「ホヤ」を見つけて買ったものの美味しくなく、どうしても美味い「ホヤ」を食べたくなって、新幹線料金を払って仙台までUターンで「ホヤ」を買いにやってきたこともある程だ。
「ホヤ」を食べると、次に飲んだものに甘みがでてくる。昔、伊達の殿様が「ホヤ」を食した後に水を飲み、この名水はいったいどこの水だと聞いたというのは地元では有名な話だ。「ホヤ」を食しながら飲む日本酒は本当に美味い。私自身、現在のように日本酒にはまった理由のひとつは「ホヤ」にある。
GWの最終日ということもあり、ゆっくり日本酒を飲みたいと考え、近所のスーパーで「ホヤ」を5つ買ってさばき、半分を実家におすそ分け、もう半分を日本酒の「おしばて」とした。「ホヤ」ももう1ケ88円になっており、本格的な「ホヤ」の季節である。今日の日本酒は、金紋両国の「福宿 無濾過原酒 あらばしり 吟醸酒」だ。地酒である。「ホヤ」とともに飲む酒はさすがにうまい。雑味が消し去られまろやかな風味になる。また、楽しみな季節がはじまる。
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今日の2枚目である。レイ・ブライアントの1959年録音作品『レイ・ブライアント・プレイズ』である。原盤が超マイナーなレーベルSignatureだったため、かつては"幻の名盤"と呼ばれたらしいが、CD時代の近年はピアノトリオの定番として大人気を博している。いつも思うのだが、レイ・ブライアントの作品は、基本的に上品である。彼の演奏を聴くといつも「端正」ということばを思い出す。清く正しく美しくとまではいかないが、良くも悪くも下品なところがなく、ソフィストケートされている。それが退屈に感じることもあるが、無性に恋しくなり、じっくり聴きたくなることもある。私にとって、ピアノトリオといわれて、まず思い浮かべる「基本の」ピアニストの1人である。
あまり休めなかったが、GW最後の夜だ。今夜はレイ・ブライアントの端正なピアノを聴きながら、「ホヤ」と日本酒をじっくり味わいたい。