WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

全身麻酔で時間が消えた!

2021年08月03日 | 今日の一枚(S-T)
◎今日の一枚 525◎
Tom Waits & Crystal Gayle
One From The Heart

 開腹手術をした。全身麻酔である。初めてである。すごい。私の人生の時間の一部が、きれいさっぱり消え去ってしまった気分だ。
 麻酔は点滴で入れた。手術台に寝て何か話しているうちに眠ってしまったようだ。いつどのように眠りに着いたかわからない。眠りに着く過程も全く記憶にない。名前を呼ばれて目を覚ますと、もうすべて終わったとの事だった。この間、時間の感覚はまったくない。数分あるいは数秒間眠ってしまったら、もうすべて終わっていたのだ。実際には2〜3時間あったようだ。
 私の人生の時間が消え去ってしまったという感覚だ。

 今日の一枚は、トム・ウェイツとクリスタル・ゲイルの『ワン・フロム・ざ・ハート』である。1982年作品、映画のサウンドトラックである。
 大学生の頃、同郷の、学生としてはやや高価なオーディオセットをもっている友人の下宿でこのアルバムのLPを聴いた。内容もさることながら、冒頭のコインが転がる音が実に印象的だった。ところが、自分の下宿帰って聴いてみると、その頃の私の、チープなステレオセットでは、その鮮度のいい音はでなかった。
 後年、高価ではないがそれなりのステレオを手に入れた私は、このアルバムを聴いてみよう思ったこだが、タイトルを忘れてしまっていた。
 今回の入院でアップルミュージックをいじっていて、偶然にもこのアルバムに再会することになったのである。今、傷口の痛みに耐えながら、およそ40年ぶりに、『ワン・フロム・ざ・ハート』を聴いている。
 今夜は、眠れそうもない。