WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

USA LIVEを通して聴いてみた

2021年08月21日 | 今日の一枚(W-X)
◎今日の一枚 534◎
Wings
Over America
 入院中である。術後の経過はいい。点滴も昨日で終わったようだ。
 退屈だ。ネット動画もつまらない。第一、そんなに見たら制限を超えてしまう。やはり、本を読むか、音楽を聴くかしかないようだ。次に入院するときはkindleを持参しよう。もう購入してあるのだが、今回は間に合わなかったのだ。病室に居ながらにして、本を手に入れることができるのは魅力である。apple musicが大活躍である。ChillやFavorites, Mixのほか、ステーションの機能も利用して楽しんである。ただ、コンピレーションもいいが、時間があるのだから、やはりアルバムをじっくり聴きたい、と思った私はやはり古いタイプのおじさんなのだろう。そんな訳で、昨日の午後から夜にかけて、いくつかの古いロックのアルバムをダウンロードして聴いてみた。病室のベッドに横になり、ただ目をつぶってステレオイヤホンでじっと聴いた。

 今日の一枚は、ポール・マッカートニー&ウイングスのWings Over Americaである。1976年リリース作品である。同時代には、「USAライブ」と呼ばれていたように思う。中学生の頃、手に入れたかったアルバムだったが、3枚組という高価なものでとても手が出なかった。たまたま買うことができた友人からテープに録音してもらい、そのうちエアチェックしたりして、とりあえず満足してしまった。だから、今日に至るまで所有していないし、恐らくは購入することはないだろう。その意味でも、apple musicはありがたい。
 全28曲通して聴いたのは、恐らく初めてだと思う。ジミー・マッカロクの加入によって、よりロック色が濃くなったサウンドは好ましい。このギタリストがヘロイン中毒で亡くなってしまったのは本当に残念だ。オープニングから期待感がこみ上げてくるようなワクワクする演奏が続く。中盤はオベーションを使ったアコースティックな演奏である。やはり、ポール・マッカートニーはアコースティックギターが上手い。Bluebirdには聴き入ってしまった。BlackbirdやYesterdayといったビートルズナンバーが効果的に配されているのもいい。単なる懐メロではなく、新しい演奏として聴くに値するものだ。その優しい響きに、早く退院して自分でギターを弾きたくなった。後半に入っても、「マイ・ラブ」「あの娘におせっかい」と佳曲が続き聴き飽きしない。ただ、最後の数曲がややパワーダウンのような気がした。名曲Band On The Runは、精緻を尽くした構成のオリジナル盤の演奏を水で薄めたようで、ライブの清新さがうまく表出されていなかった気がする。最後の2曲も不完全燃焼で、えっ、これで終わっちゃうの、といった感じだった。

 いずれにしても、アルバム数枚を聴いて、退屈な時間があっという間に過ぎてしまった。入院しているという状況がなければ、経験できなかったことかもしれない。Apple musicにも感謝である。