何だか今日は蒸し暑いね、相変わらず仕事は暇だし
ジメジメした夏が近づくとたま~に昔の事が思い出される
遠い昔、もう何年前かも忘れたような昔、忘れてしまいそうな記憶
10代最後の2年間は大阪に住んでた
阪急京都線の各駅停車の止まる小さな駅、駅前にはパチンコ屋に立ち食いソバ屋
どちらの店も常連だった
駅から歩いて7~8分の文化住宅の立ち並ぶ路地裏に、築年数もわからないぐらいのボロアパートがあって
裏には小さなどぶ川が流れていてアパートの隣には有刺鉄線を張り巡らした広大な空地があった
そのボロアパートの2階角部屋、三畳間が僕の部屋だった
その頃でも家賃は破格の8000円で
夏の暑い盛りにはどぶ川から饐えた様な匂いが漂って
路地からは文化住宅の子供たちの遊び声で暑苦しさに拍車をかけた
それでも角部屋をいい事に入口のドアを開け放してパンツとランニングシャツで過ごした
部屋の中には古い扇風機がただ熱風をかきまぜて
格子入りの鉄枠のガラス窓を開けるとビニールのトタンで窓の雨避けがしてあって
外の景色を見るのに頭をずらしてトタンの切れ目から眺めなくてはいけなくて
そこでの暮らしは傍から見るとまるで刑務所だった
その頃はまだ自宅にクーラーを設ける家はまだ無かったが
だいたいの職場や学校、お店にはもうクーラーが設けられていた
学校も職場も無かった僕がクーラーの冷気に触れるのは必然パチンコ屋だった
でも一時のオアシスの恩恵にあずかるにはその代償も大きかった
一時涼しい思いはしてもお金は続かず
一日の大部分はあの暑苦しいアパートの三畳間で過ごさざるを得ず
お金も無くてジュースも飲めなかった
窓に面した小さな台所の蛇口に口を付けて生ぬるい水道水を飲んだ
風呂屋にも行かず着たきりの汗臭いパンツとランニングシャツ
トタンの切れ目から空地の向こうの鉄橋を渡る茶色い阪急電車をいつも眺めてた
あの電車に乗ってる人達はどう言う暮らしをしてるんだろうと
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