藤沢周平短編集、「夜消える」の中の夜消える
下駄職人の兼七は腕のいい職人だったが酒におぼれ
家で飲み、外で飲み、終いには仕事をしながら茶碗酒をあおるようになった
家に置いてある一升徳利に酒が詰まって無いと承知しなかった・・
(わしと同じじゃ)
しまいには酒の合間に仕事をするようになった
(わしはまだそこまでじゃ無いな)
女房のおのぶが内職で家計を支えていた
(同じじゃ)
とうとう娘の奉公先にまで酒代をせびりに行った
(近いな)
兼七は飯を食うのを嫌い、風呂もいやがり、近寄ると異臭が匂うようになった
(アル中の典型だな・・わしも風呂より酒が先じゃ)
ある日、兼七が娘のおきみの奉公先に小遣いをせびりに行った所をおきみの許嫁に
見られてしまった
それで許嫁は乞食のような男がおきみの父親と分かっておきみとの祝言をためらってしまう
「おとっつぁんなんか、死んでくれればいいんだわ」
「おとっつぁんがいるうちは、お嫁になんか行けやしない」
(かなしいのぅ~)
兼七は土間の片隅で娘の言葉をそっと聞いてしまう
その夜から兼七は姿を消してしまった
その後おきみはめでたく許嫁と所帯を持って幸せな暮らしを送っている
おきみの幸せは兼七の失踪で購われたのである・・
(わしも失踪した方が家族が喜んでくれるんやなかろうか)
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