皆さんお疲れさまです。
先週はこの道庁前行動をお休みさせていただく代わり、福岡で、九州電力本社前行動に参加してきました。その報告を兼ねて、今日は少し九州の情勢をお話しします。
九州電力の本社は、福岡市の中心部・天神から少し離れた渡辺通という場所にあります。九州の主要企業の本社・支社が集まっており、札幌で言えば大通のような場所といえばいいでしょうか。福岡市営地下鉄の渡辺通という駅を降りてすぐ、九電の本社はあります。「電気ビル」と呼ばれる本社ビルの前で、市民団体がテント広場を作っています。かつては毎日テントを張っていましたが、今は週2回、朝10時頃に来てテントを張り、夕方3時頃テントを畳んで撤収するという形で行動を続けています。かつて東京・経産省前にあったテント広場は撤去されてしまったため、今、実際にテントを張って行動している場所はここだけかもしれません。
先週金曜日は10月26日で、偶然にも「原子力の日」でした。1963年、茨城県東海村で日本最初の原子力発電が行われたのがこの日だったために定められた記念日ですが、福島原発事故後は原子力の火を消すための決意を新たにする日として各地の行動が取り組まれています。小雨の降るあいにくの天気の中、10人ほどが集まり、元気に脱原発を訴えました。宣伝カーは脱原発の団体ではなく地域労働組合が出しており、地域労働組合の人が元気に組合式シュプレヒコールをしていきました。最近はあまり聞かれなくなりましたが、昔ながらのシュプレヒコールもたまにはいいと思いました。
九州では、今、北海道と真逆で、電気が余りすぎて大停電が起きかねないため、九電が太陽光発電事業者に発電をやめるよう要請せざるを得ないという事態になっています。福島第1原発事故後に自然エネルギーを普及させようと、FIT(固定価格買取制度)が導入され、その買い取り価格も高めに設定されました。温暖な気候で日照時間も長い九州では太陽光発電が急速に普及し、冷暖房の要らない春秋の晴れた日の昼間には、電力使用量の8割まで太陽光でまかなえるようになったのです。ところが、福島原発事故前に決められた古いルールで、電気が余りそうになった場合は原発より先に自然エネルギーの電気を止めることになっており、そのために原発を動かしたまま太陽光発電が止められるという本末転倒な事態が進行しています。人類が10万年かけて管理しなければならず、膨大な管理コストを生み、処理方法も決まらない核のごみを生み出す原発を優先し、再生不可能なごみを出さず燃料費も要らない自然エネルギーが止められる。こんな愚かな電力政策を採っている国は地球規模で見渡してもそうそうないでしょう。「こんなばかげた政策ばかり採っているから原発事故を起こすんだ」と途上国からも笑われていると思います。
そもそも、この狭い日本で電力不足のため節電を強いられる地域と、電力が余りすぎて自然エネルギー事業者が発電をやめなければならない地域が同時発生していること自体、日本の電力政策の最終的破たんを意味しています。電力が余っている九州から、不足している北海道へ送電しようにも送電線が貧弱すぎてできない。およそ先進国の電力政策とはとても思えませんが、九州と本州との間、関門海峡を通る連系線は550万kwもの送電ができる能力があるのだそうです。北電管内の年間の電力ピーク時でも510万kwといわれていますから、北海道と本州の間、津軽海峡にも関門海峡並みの送電能力を持つ連系線があれば、北電の発電能力がゼロになっても他の地域が頑張れば停電を起こさずにすむことになります。それを怠ってきたのは国であり、私はむしろ国の責任が大きいと思っています。
九電本社前の行動に話を戻しましょう。被災地から遠い九州では、福島の生の話を聞く機会が少ないため、反原発運動もどうしても理屈から入ることが多くなります。私はむしろ、九州の人たちにも福島の空気を肌感覚で体験してほしいと思い、福島の話をしてきました。帰還困難区域の人たちが一時帰宅さえ許されていないこと、賠償金をもらえるかどうかで地域や住民が分断され、深い爪痕を残したことを報告しました。玄海原発は佐賀県なので福岡からは遠いイメージがありますが、実は50km程度しか離れていません。そして50kmといえば、福島第1原発から郡山市までの距離とほとんど変わりません。その郡山市が、チェルノブイリでは強制避難地域に匹敵する汚染に見舞われたことを話し、福岡市が同じ目に遭うのが嫌ならみんなで原発を止めようと訴えました。
残念なことがひとつあります。実は、九州電力本社への申し入れ行動をやろうと心に決めていて、「再エネ止めるな、原発止めろ」という内容の申し入れ書まで作っていたのですが、九電の営業時間中に九州入りすることができずに申し入れは幻に終わりました。しかし、せっかく作った申し入れ書がもったいないので、九電本社に送ることで私たちの気持ちを伝えることにしたいと思います。最後にその申し入れ書の内容を読み上げ、今日の発言を終えたいと思います。
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2018年10月26日
九州電力株式会社
代表取締役会長 瓜生 道明 殿
太陽光発電の接続制限を直ちに中止し、脱原発を求める要請書
私たちは、関西地方を中心として、主に北陸地方や四国地方の原子力発電所の即時停止・廃炉を求めて活動を続ける団体です。これまで、福井県内や愛媛県内での原発現地行動、自治体要請・交渉、国に放射能健康診断の実施を求める署名、福島からの避難者支援、原発関連の裁判傍聴・支援などの活動を行ってきました。
福島第1原発事故による避難者は今も5万7千人に上り、そのうち関西地方には約2500人、九州・沖縄にも約2000人が生活しています(9月11日現在、復興庁調べ)。帰還困難区域の人々はこの7年半、一時帰宅も許されず、逆にこれ以外の区域からの避難者は避難先で満足な住宅支援も得られないまま、健康不安のある福島への望まない帰還か避難継続による生活困窮かの厳しい二者択一を迫られてきました。子どもの甲状腺がんは200人に上ります。
福島とその周辺地域の罪のない人々にこのような過酷な運命を強いたのが2011年の福島第1原発事故であることは論を待ちません。多くの人々から「ふるさと」と健康で文化的な生活を奪い去り、人類に解決不能な核のごみと被曝労働を日々生み出し、自然環境を破壊するばかりか、高いコストによって経済的にも不合理な原発の運転をこれ以上継続することは、すべての生命と地球環境に対する重大な犯罪であり断じて許されません。福島の惨禍を経験した日本こそ即時脱原発を実現すべきであり、私たちは今後も世界中のあらゆる原子力施設を即時撤去するよう求め続けていきます。
温暖な気候と豊富な日照に恵まれた九州で、急速に普及した太陽光発電は、好天時には全九州の8割の電力をまかなえるまでに成長しました。ところが九州電力は、燃料コストがかからず生命にも地球環境にも優しい太陽光発電の電力の送電線接続を制限し、圧倒的多数の国民の反対の中で再稼働を強行した原発の電気を優先的に供給しています。このような暴挙は直ちにやめるべきです。私たちは九州電力に対し、下記のことを求めます。
記
1.電力の送電線への接続に当たっては、太陽光発電はじめ、自然エネルギー、再生可能エネルギーを優先し、必要のない原発の運転は直ちにやめること。
2.九州電力として、直ちに脱原発を表明すること。
3.福島原発事故以前に作られた「原発優先、再エネ後回し」の送電線接続ルールを再エネ優先に改めるよう国に要請を行うこと。
以 上