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【福島原発事故刑事裁判第2回公判】鮮やかに覆された「想定外」

2018-01-29 22:48:47 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
東京検察審査会の2度にわたる「起訴相当」議決を受け、勝俣恒久・元東京電力会長ら3人の旧役員が強制起訴された刑事訴訟。昨年6月、3役員が無罪を主張した第1回公判の後、裁判は一時休廷となっていたが、年明けから再開することが決まった。同時に、今後6月15日までに計17回にわたって集中審理が行われること、この集中審理で20人を超える証人を尋問することも決まった。今後の裁判の展開は早く、2018年度内にも東京地裁で判決となることも予想される。今後の公判期日は以下の通りとなる。

・2月8日(木)、28日(水)
・4月10日(火)、11日(水)、17日(火)、24日(火)、27日(金)
・5月8日(火)、9日(水)、29日(火)、30日(水)
・6月1日(金)、12日(火)、13日(水)、15日(金)

第2回公判は1月26日に行われた。この裁判の経過に関心を抱き、精力的に取材を続けている科学ジャーナリスト、添田孝史さんから傍聴記が寄せられたので、福島原発告訴団の了解を得て掲載する。なお、適宜改行を入れることとした。

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 2018年1月26日、都心の気温は午前7時前にマイナス3.1度まで下がっていた。

 東京地裁で7か月ぶりに開かれたこの日の第2回公判から、証人を呼んで指定弁護士(検察側)、元東電3幹部の弁護側が尋問する形で裁判が進められた。

 この日の証人である上津原勉氏は、事故当時は原発の安全対策を担う原子力設備管理部の部長代理。事故後は、東京電力自身による事故調査の報告書の作成に関わり、データを集めたり、原案をまとめたりする仕事を担当していたという。

 昨年6月の初公判を私は傍聴できなかったので、今回初めて、被告人や弁護士などを見ることができた。

 「ああ、この人が強制起訴を決めた検察審査会で補助員をしていた山内久光弁護士か」などと思いながら法廷に並ぶ顔ぶれを眺めていた。法廷左手の弁護側席の後ろの列に、被告人の武藤氏、勝俣氏、武黒氏が並んで座っていた。武黒氏は、やや顔色が悪いようにも見えたが、勝俣、武藤両氏は元気そうだった。勝俣氏は右手で頬杖をついて、証人の方に強い視線を向けているときもあった。

 公判の午前中は事故に関する基礎的な事実関係のおさらい。原発の説明の現場で良く見かける日本原子力文化財団の資料などを使い、原発の仕組みや、東電福島事故の経過などを上津原氏が説明した。

 その後、法廷で進められたやりとりでは、ポイントは二つあったように見えた。

 ●「想定超え対策」は後知恵なのか

 一つは、海辺に建設する防潮堤、敷地上に作る防潮壁、重要機器の水密化、発電機を高台に設置するなどの対策を事前に行えば、事故を防ぐことができたのかどうかだ。弁護側の宮村啓太弁護士は、そのような対策をする発想は事故後の「後知恵」であって、事故前には、どこも検討さえしていなかったと証人から引き出そうと、質問の仕方を様々に変えながら繰り返した。

 それに応じて上津原氏は「想定を超える津波への対策を検討したことはない」という趣旨のことを述べた。「それは事実と異なっているな」と思っていたら、傍聴席右手の指定弁護士側席の後ろの列から、石田省三郎弁護士がムクリと立ち上がった。そして、上津原氏に東電社内の福島地点津波対策ワーキング会議で2010年8月以降、想定超え津波に対する検討が実施されていたことを指摘。上津原氏は「それは知っている」と答えた。

 「想定超えを検討したことはない」という上津原氏の前言が鮮やかにひっくり返され、オセロゲームを見ているような感覚だった。

 ●「防潮壁は南側だけ」のわかりにくさ

 もう一点、宮村弁護士が強調しようとしていたのは「地震本部の長期評価にもとづいて防潮壁を作るとしても敷地南側だけになった。だから今回の津波は防げなかった」という従来からの東電側の主張だ。

 津波シミュレーションを時系列で並べた図、敷地内の津波水位分布図などのカラー図版(弁護側資料3)を証言台横の書画カメラで映し出し、「この図からどんなことがわかるか」と、上津原氏に説明を求めた。

 宮村弁護士は、敷地南側の前面で水位が高いので、南側だけに防潮壁を作ることを検討することになっただろうという証言を期待していたように見えた。しかし、そもそも図の意味が説明されていないので、傍聴者には、法廷でのやりとりの内容が、とてもわかりづらかった。

 カラー図版のうち、いくつかは東電株主代表訴訟ですでに提出されているものと同じに見えたが、見たことのない水位分布図もあったからだ。公判後に海渡弁護士らに図の意味を教えてもらって、弁護側の「防潮壁は南側だけになる」という主張に、相当無理があることが、ようやく理解できた。

 今後の公判でも、証拠書類の詳細が示されないまま法廷で専門的なやりとりがなされれば、傍聴する人が理解するのは、とても難しいだろうな、と予感させられる出来事だった。これから、さらに専門的な証人が続くので心配である。

 ●2008年6月10日の会合

 上津原氏は、2008年6月10日に、武藤氏に15.7mの津波高さが報告された重要な会合にも出席していた。その時の記憶を尋ねられると、「当事者としての記憶と、事故調とりまとめにおける記憶とが重なっている」という趣旨の発言を繰り返した。そもそも上津原氏は、機械のメンテナンスなどが専門であり、津波予測の信頼性についての証言に重みがあるとは思えない。しかし事故に関わる重要な会合に当事者として参加していた人物に、事故調査報告をとりまとめさせていたとは、東電の事故調査に対する姿勢が疑われる。

 今後の公判で、20人以上登場する証人は、より事件の核心に近い人に近づいていくようだ。これまで隠されてきた事実が、明るみに出されることを期待する。

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リニア新幹線建設めぐる談合疑惑で強制捜査 「世紀の愚策」リニア建設を今すぐ中止せよ

2018-01-28 23:47:16 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2018年2月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 2014年10月に事業認可され、長大トンネルや駅の非常口など難航が予想される部分から工事が始まったリニア中央新幹線。昨年12月、工事を受注した大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン4社が東京地検特捜部・公正取引委員会の強制捜査を受けた。4大ゼネコン(総合建設業社)の間で工事契約の「受注調整」(談合)をしていた疑いである。だが事業認可以前からリニアの問題点を追ってきた安全問題研究会にとって、談合は起こるべくして起きたものであり驚きはない。なぜならリニア新幹線事業は初めから安倍首相と「お友達」らによる利権事業として始まったからである。

 ●WTO「政府調達協定」からの突然のJR離脱

 大手ゼネコン4社すべてに均等に仕事を割り振ることは事業認可当初からの既定路線であり、むしろこの談合はそれに沿って政府が周到にお膳立てした官製談合なのではないだろうか。もちろん現時点で確証があるわけではない。だが単なる憶測では片付けられない官製談合の「状況証拠」ともいうべき情報を筆者は得ている。今日は、その驚愕すべき情報を皆さんにお伝えしておきたい。

 1995年、それまでのGATT(関税と貿易に関する一般協定)に代わる国際間貿易ルールとして、各国間合意によってWTO協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定)が発効した。そのWTO協定に基づいて締結された関連協定のひとつに「政府調達に関する協定」がある。加盟国の中央政府や地方政府、政府関係機関などが基準額以上の高額の契約を締結する場合、外国企業の参加も可能となるような形で国際競争入札により業者選定しなければならないことを定めたものだ。協定の内容を詳述する余裕はないが、基準額は物品調達・役務調達・工事など契約の種類ごとに決められており、工事の場合、それは日本円で20億円である。協定の適用対象となる「政府関係機関」も、加盟国間で紛争にならないよう、協定の附属書に名称を列挙する形で具体的に取り決められている。言うまでもないが、JR各社は旧国鉄を引き継いだ企業であり、民営化後もしばらくは国が全額を出資する国鉄清算事業団(その後の日本鉄道建設公団~現在の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が全株式を保有していたことから、政府関係機関として協定の適用対象になっていた。

 このうち、JR東日本、東海、西日本の本州3社に関しては、2001年までに鉄建公団が保有していた全株式を放出し、完全民営化された。政府関係機関でなくなった本州3社は、本来であればこの時点で政府調達協定の適用から除外されるはずだった。だが、国内(域内)企業の日本の鉄道工事への参入を狙っていた米国、カナダ、EU(欧州連合)がWTOに対して異議を申し立てたため、JR本州3社は完全民営化後も政府調達協定からの離脱ができない事態に陥った。米国とカナダは2006年に異議を撤回するものの、EUはその後も撤回しなかった。異議申立の撤回に向けた日本政府からEUへの再三にわたる働きかけも実らず、JR本州3社の政府調達協定からの離脱交渉は暗礁に乗り上げたかに見えた。
ところが事態は急転する。2014年10月28日になって、EUが異議申立の撤回に同意したのだ。完全民営化から13年も経過して、ようやく「純粋な民間企業」と認められたJR本州3社は政府調達協定の適用から除外。20億円以上の大規模工事を発注する場合であっても、外国企業の参加も可能となるような形での国際競争入札により業者選定を行う必要がなくなったのである。総額9兆円ものビッグプロジェクトを推進する政府・JR東海にとって最大の障害が取り除かれたのだ。

 日本政府はこれを「EUに対する長年の外交上の働きかけが結実した結果」(2014年10月28日付け外務大臣談話)と自賛した。だが、ここでもう一度皆さんには思い出してほしい。リニア中央新幹線計画が事業認可されたのは2014年10月17日。EUによる異議撤回の、わずか11日前の出来事だ。

 あまりにも出来すぎたタイミングといえる。これを偶然の一致と思えるほど筆者はお人好しではない。どこをどう見ても、外国企業を排除し日本企業だけで「談合」できるよう、日本政府が政府調達協定からのJR東海の離脱を待ってリニア中央新幹線の事業認可をしたと勘ぐられても仕方のないタイミングだ。談合へのレールは最初から敷かれていたのではないか。

 李下に冠を正さずということわざもある。もしそうではないと言うのであれば、なぜわざわざ痛くもない腹を探られるような時期を選んで事業認可に踏み切ったのか。政府にはそのことに対する説明責任がある。

 ●アベ友右翼が君臨

 自分の存命中にリニアの完成を――そう執念を燃やす葛西敬之JR東海代表取締役名誉会長は国鉄分割民営化によってJR東海の取締役となった。国鉄時代は職員局長として分割民営化に反対していた国労組合員らの首切りに直接関与。2008年6月、被解雇者が起こした裁判では「規律違反を犯した国労組合員の採用率は低くて当然」だと言い放った。警察を監督する国家公安委員在任中には、差別集団・在特会を「新しい市民運動」などと持ち上げた。経済界内部の「アベ友財界人」による安倍氏支援組織「四季の会」の立ち上げにも関わった。一貫して安倍首相を支え「首相の後見人」を自認。自他共に認める「アベ友」右翼だ。国鉄「改革」を推進し、改革派三羽ガラスと呼ばれた松田昌士JR東日本元社長、井手正敬JR西日本元社長が引退する中、今もJR東海に君臨し恐怖支配を続ける。創業者社長が長期間君臨しワンマン体制を敷く田舎の中小企業のようだ。このような前近代的経営体制の企業が東海道新幹線という交通の大動脈を握っていること、リニア新幹線工事を通じて日本の国土まで改変しようとしていることには恐怖心を覚える。

 リニア新幹線は当初、建設費を全額JR東海が負担する民間事業とされた。だが1988年、葛西常務(当時)はすでに「建設費の3分の1は国費が必要。ナショナルプロジェクトとして実施しなければならない」と述べている。

 安倍首相と葛西名誉会長が初めからリニアを国策にするつもりだったことは、2014年の事業認可が全国新幹線鉄道整備法に基づいて行われたことからも明らかだ。この法律は、国が建設主体となる「整備新幹線」建設のために制定されたからである。

 政府はその後、リニアの大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資(財投、注)資金の投入を目指す。だが、JR東海は財投の引き受け機関でないため法整備が必要だった。2016年11月、鉄道・運輸機構を財投機関にできるよう鉄道・運輸機構法が改定される。財投機関となった鉄道・運輸機構が資金を国から受け入れ、JR東海に又貸しする手法が採られた。投入された財投資金は3兆円で、JR東海が見積もった建設費9兆円の3分の1。葛西名誉会長の狙い通りになった。森友・加計学園問題と同じ国政私物化でも金額はケタ外れだ。

 ネット上では、「リニアは大手ゼネコンの高い技術力が必要だから高額でも仕方ない」「財投は融資でいずれ返済されるから問題ない」と、安倍首相を擁護するコメントがあふれる。だが高い技術力が必要なら何をしてもいいわけではないし、リニアは当時の山田佳臣JR東海社長(現会長)自身「絶対にペイしない」と認めたいわく付きの事業なのだ。事業失敗で財投が返済できなくなれば、税金か運賃値上げでツケは市民に回される。

 注)かつての財投は郵便貯金などを原資として借り入れた資金を大蔵省資金運用部が公共事業などで運用、利益が上がり始めれば郵貯などに返済していく制度だった。郵政民営化で郵貯が国の資金でなくなって以降は国債の一種である「財投債」発行で国が資金調達する制度に改められたが、原資が借金であり返済する必要がある点は変わりがない。このため、制度運用上「採算性が見込めるものに限定」して融資することになっているが、今回のリニア事業に当たって、国が採算性を精査した形跡は見られない。

 ●世紀の愚策、事故も

 反対運動の市民らが懸念していた事故も起き始めた。12月15日、長野県中川村の県道59号線で道路脇の斜面が崩れた。迂回路は県道22号線の1本のみ。リニア走行ルートに当たる大鹿村の村民は、村内外を結ぶ重要道路が寸断され不便な遠回りを強いられている。原因はトンネル工事に伴う発破作業だ。この程度のこともまともにできないゼネコンのどこに談合を正当化できるほどの「高い技術力」があるのか。

 「リニアは少し軌道がずれただけでも走行できなくなる。完成などするわけがないし、できたとしても地震が起きれば新幹線より先にリニアが止まる可能性もある」。公共事業の融資審査の経験もある政府系金融機関OBはこう証言する。

 東日本大震災当時、太平洋側の路線がすべて寸断される中で、根岸製油所(横浜市)から東北への燃料輸送の大役を担ったのは新潟など日本海側の在来線だった。災害時に鉄道が輸送ルートとして機能するためには既存の路線とつながっていることが重要だ。災害に弱いばかりか既存のどの路線ともつながらず、貨物輸送もできないリニアが非常時の輸送ルートとして機能することは絶対にない。「東海道新幹線が災害で寸断された際の代替路線としてリニアが必要」というJR東海の説明はすでに崩れているのだ。

 東海道新幹線の代替路線が本当に必要なら、現在、金沢まで開通している北陸新幹線を関西(京都または大阪)まで延伸すればよい。金沢~大阪と聞くと遠いイメージがあるが、在来線の営業キロを当てはめれば267.6km。東海道新幹線・東京~新大阪間(552.6km)の約半分だ。1964年東京五輪に間に合わせる必要があったとはいえ、当時の技術力でこの区間をわずか5年で建設していることを考えると、当時より技術が進歩し、距離も半分しかない金沢~大阪間は2~3年あれば十分建設できるだろう。所要時間面で見ても、北陸新幹線は東京~金沢間を2時間半程度で走破している。金沢~大阪間の所要時間は1時間程度であることを考えると、東京~大阪間を北陸新幹線回りでも3時間半程度で行けることになる。おまけに新幹線なら山陽・九州新幹線(新大阪~鹿児島中央)にもそのまま乗り入れできるし、大宮駅に連絡線を設ければ、東京を経由せず東北方面とも新幹線で直通させることができる。現在、東海道本線で「スーパーレールカーゴ」(電車方式による貨物列車)がすでに営業運転していることを考えると、新幹線を利用した貨物輸送も数年の社会実験を経れば実用化できる水準にある。いざというときの代替路線としてはこのほうがはるかに有効だろう。本来、鉄道とはこのようなネットワーク、「面」として活用するものだ。

 にもかかわらず、北陸新幹線の福井延伸でさえ現段階では20年後というかなり遠い未来の計画になっている。2~3年で実現できるはずの北陸新幹線大阪延伸がなぜ今ではなく20年後なのか。理由は簡単だ。ここがリニアより先に開通した場合、「東海道新幹線が寸断された場合の代替ルートは北陸新幹線で十分だ」ということになり、リニア不要論に一気に火がつく。また、北陸新幹線がJR東日本・西日本両社の営業区域内のみを走行し、「アベ友」葛西名誉会長が君臨するJR東海の営業区域内をまったく通らないことも影響しているに違いない。

 ●こんな予算の使い方でいいのか?

 東海道新幹線は、当初1972億円と見積もられていた建設費が最終的に2倍の3800億円まで膨れあがった。しかも国鉄は当初からこれを知りながら隠蔽。国会で予算不足を追及された十河信二国鉄総裁は開業日を待たず辞任に追い込まれた。

 今回のリニア談合も、そもそもJR東海の示した予定価格が安すぎることが背景にある。リニアにとって最初の大規模工事だった品川駅建設から早くも入札不調(全業者が落札できず)になっている。建設費が9兆円で収まる保証はどこにもなく、東海道新幹線と同様、2倍と考えると最終的に20兆円ほどに膨れあがることも容易に予想できる。

 そうでなくても、当研究会の活動拠点である北海道では、JR北海道が10路線13線区を「自社単独では維持困難」と公表、上下分離や路線廃止~バス転換も含めた地元との協議が始まろうとしている。実際のところ、JR北海道が維持困難と表明している路線を守るためには年に数百億程度の国の支援があれば足りる。地方の生活のための路線が危機を迎えているのに見向きもせず、それより2桁も多い金額をリニアに投入、今でも十分便利なところをさらに便利にして地域間格差を広げた挙げ句、ゼネコンが談合でつり上げたリニアの建設費のツケを利用者が支払わされるのでは踏んだり蹴ったりだ。

 リニア建設は始まったばかりで本体工事には着手していない。違法談合、莫大な国費投入による市民への負担転嫁、環境破壊、地震への安全対策。問題だらけのリニア中央新幹線工事は今すぐ中止すべきだ。

(黒鉄好・2018年1月28日)

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【管理人よりお知らせ】北海道の鉄道維持のための全道署名及び啓発リーフレット「こんなにおかしい! ニッポンの鉄道政策」を公開しました

2018-01-27 13:30:00 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人より、安全問題研究会公式サイト「深刻化するJRローカル線問題を考える」コーナーに以下の資料を公開しましたのでお知らせします。いずれもPDF版のみです。

1.「こんなにおかしい! ニッポンの鉄道政策」リーフレット

 「あの道路(空港)は赤字だから廃止してしまえ」なんて言う人は誰もいないのに、どうして鉄道だけ「赤字なのに残せと求めるのは地域エゴ」なんて言われるの? 同じ公共交通機関なのにおかしくない? と思っている皆さま、お待たせしました。安全問題研究会がこのたび作成したのは、そんな皆さんのためのリーフレットです。鉄道を残さなければ地元がもっと大変なことになってしまう、でも周りの人にそのことを話しても「仕方ないよ」と言われ、わかってもらえない――そんな悩みを抱えている方は、ぜひこのリーフレットをお使いください。きっと「言われてみると、おかしい気がするよね」と仲間を増やせると思います。

2.北海道の鉄道の存続・再生を求める道民署名

 JR北海道が「維持困難」路線・線区を公表して以降、JRと地元との協議はほぼ1年間膠着状態が続いていますが、本来、JR北海道の株主は国であり、北海道の鉄路は国民共有の財産です。地元とJRとの協議だけで存廃を論じてよいものではありません。一方、北海道が国に対し、鉄道・運輸機構の剰余金(特定業務勘定)を活用したJR北海道への支援策を国に要望し、ようやく北海道の鉄路をどのようにして残すかの議論が始まろうとしています。

 「北海道の鉄道の再生と地域の発展をめざす全道連絡会」では、このたび「北海道の鉄道の存続・再生を求める道民署名」を始めることにしました。早速、署名用紙をアップロードしますので、ダウンロードの上ご活用ください。もちろん、道外の方でも署名いただいてかまいません。なお、署名用紙は道知事宛て、道議会議長宛ての2種類です。

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福岡県・赤村村長との会話

2018-01-18 21:38:47 | 鉄道・公共交通/交通政策
正月休みに、鉄道関係で色々ネット検索をしていたところ、福岡県田川郡赤村の村長選の結果が掲載されているのを偶然、見つけた(赤村長選挙――選挙ドットコム)。選挙自体は昨年7月9日に投開票され、すでに半年近く経過している。私の目に留まったのは、現職だった春本武男氏をダブルスコアに近い大差で破り、新村長となった道広幸(みち・ひろゆき)氏の名前だ。

私はこの名前に記憶があったが、思い出すのにそれほど時間はかからなかった。私と赤村との関わりは1996年9月に開催された「トロッコフェスタin赤村」以外にないからだ。国鉄再建法制定によって工事が中止され、未成線のまま日の目を見ずに終わった「幻の線路」旧国鉄油須原線の線路跡を使ったイベントだった。当時、赤村役場の総務課長として、このイベント当日「開会宣言」をしたのが、新しく村長になった道さんだったのだ。

ちなみに、この日のイベントの模様は当ブログの親サイト「汽車旅と温泉を愛する会」に掲載している(イワハシ3号よ、ありがとう!悲劇の未成線に舞い降りた奇跡~そしてついに「列車」は走った)。まさに若気の至りとも言うべき、踊った文体で、恥ずかしい限りだ。

道さんの村長当選を知った私は、イベント当日の思い出話のほか、最近の北海道ローカル線をめぐる厳しい状況や、JR九州の完全民営化後、九州でもローカル線の大幅な減便が始まっている状況から「いずれ九州でも北海道と同じ問題が起きるでしょう。その際はお互いに協力しあいましょう」との内容をしたためた手紙を1月9日付で村役場宛てに郵送していた。

驚くことに、1月17日、道村長から私の携帯に直接電話がかかってきた。「トロッコフェスタin赤村」はもう21年半も前のことになるが、道さんは今もはっきりそのことを記憶していた。赤村トロッコの会によって今もトロッコの定期運行が行われていること(冬季除く)、2017年に未成線を抱える全国5自治体が未成線跡の活用に向けた会議を奈良県で開催し、赤村も参加したこと(後述)、平成筑豊鉄道の経営が苦しいが何とかやっていること等、道さんは矢継ぎ早にお話しされた。

「線路跡を活用したイベントは全国各地でやっていて、なかなか苦しいですが、現職をダブルスコアで破っての初当選は村民からの期待の証です。もう一度「トロッコフェスタin赤村」を開催した当時の初心に返って村おこしをやりたいと思っています。「源じいの森」もかれこれオープンから25年になりますがなかなか好評なので、地元に帰ってきた際はぜひお立ち寄りください。源じいの森の宿泊も、連絡くださればご用意したいと思っております」とのことだった。

国鉄末期の赤字ローカル線廃止政策の影響で、日本中が廃線跡だらけになり、廃線跡ビジネスも乱立状況になりつつある。これ以上廃線跡が増えれば過当競争で共倒れになりかねない。道さんの言葉からはそうした現状に対する危機感も垣間見えた。現役の鉄道には国の支援がほとんどなく、維持は地元と鉄道会社に丸投げされる形で放置され、乗客もまばらなのに、廃線になると跡地に税金で立派な記念公園が整備され、現役時代には考えられなかったほどの客が訪れる。つくづく日本の鉄道政策は歪でおかしいと思う。

今、北海道では全営業キロの半分が「JR北海道単独では維持困難」と公表されているが、これでもし「維持困難10路線13線区」が新たに廃線に加わったらどうなるだろうか。もはや廃線跡ビジネスさえ成り立たないだろう。今ある鉄道をいかにして維持していくか、これほど地元の知恵と熱意が試されているときはないと、改めて実感した。せっかく、道村長とこうして直接お話しもさせてもらったことだし、道さんの在任中に、必ず一度は赤村を訪れたいと思っている。

なお、2017年3月4日に奈良県五條市で開催された「全国鉄道サミット」については、以下の記事の通り。

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鉄道全国サミット きょう、「未成線」活用考える あす、五新線路盤におもちゃ列車 五條/奈良(「毎日」2017年3月4日)

 計画や建設が中止になった鉄道「未成線」の活用を考える全国サミットが4日午後1時半、五條市西吉野町八ツ川、西吉野コミュニティセンターで開かれる。

 五條市には五條~和歌山県新宮市を結ぶ「五新線」構想があったが建設が中止され、一部路盤や橋などの跡が残る。サミットにはNPO法人五新線再生推進会議のメンバーのほか、今福線(島根)▽佐久間線(静岡)▽岩日北線(山口)▽油須原線(福岡)▽高千穂線(宮崎)--の関係者が参加。奈良先端科学技術大学院大の新名惇彦名誉教授が「負の産業遺産・未成線で地方創生」と題して基調講演し、近畿大の岡田昌彰教授らも交えてディスカッションする。

 5日午前11時~午後3時、西吉野町城戸の五新線路盤で約1000メートルの木製レール上でおもちゃの列車を走らせるイベントもある。【栗栖健】
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【訃報】反原発学者・吉岡斉さん死去

2018-01-15 00:13:55 | 原発問題/一般
<訃報>吉岡斉さん64歳=九州大教授 脱原発けん引(毎日)

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 東京電力福島第1原発事故に関する政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)委員を務め、脱原発運動をけん引してきた九州大教授の吉岡斉(よしおか・ひとし)さんが14日午前8時すぎ、肝神経内分泌腫瘍のため、福岡市の九州大病院で死去した。64歳。葬儀は未定。

 富山県生まれ。東大大学院修了。和歌山大助教授のほか、九州大では2010年4月から14年3月まで副学長も務めた。専門は科学史。日本の原子力導入の歴史を科学的に分析するアプローチで、原子力政策の問題点を検証してきた。

 福島事故後に発足した市民団体「原子力市民委員会」では座長を務め、政策提言書「原発ゼロ社会への道」をとりまとめるなど脱原発運動をけん引してきた。
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元九州大副学長の吉岡斉さんが死去した。内閣府原子力委員会専門委員、経済産業省エネルギー調査会臨時委員、また福島原発事故後は東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)委員などを歴任。当ブログが吉岡さんを初めて知ったのは福島原発事故後、「原子力市民委員会」座長としてだった。64歳、現役の九州大教授としてあまりにも早すぎる。当ブログはここに謹んでご冥福をお祈りする。

原子力市民委員会が発行している政策提言書「原発ゼロ社会への道~脱原子力政策実現のために~」はインターネットにも掲載されている。原子力の問題点とその克服策をあらゆる角度から検証したもので、他の追随を許さないほどの充実ぶりだが、300ページを超える内容では読むのが困難だ。紙版が1,500円で購入できるので、今後の原子力市民委員会の活動基盤を維持する上でもぜひ購入して読んでほしい(なお、1月いっぱいは最新の2017年版が1,000円で購入でき、購入者で希望する人には2014年版がサービスで1冊付いてくる特典もある)。

反原発・脱原発運動をけん引した人々の中でも、吉岡さんはいわゆる活動家タイプではなく、学者として一歩引いたスタンスで原子力政策の問題点を指摘する姿勢を貫いた。そのため、活動家タイプの人からは「物足りない」と評されることもあったようだが、このスタンスを貫いたことで、吉岡さんが行う脱原発の政策提言は地に足のついた着実なものとなり、かえって信頼性を増すことにつながった。私は直接お会いしたことはないが、核のごみ問題に対して「政府が進めている高レベル放射性廃棄物処分場の受け入れ地を絶対に決めさせてはならない。そうすれば日本の原発推進政策を破たんに追い込むことができる」と話していたことが印象に残っている。

「高レベル放射性廃棄物処分場の受け入れ地を決めさせるな」という指摘は、原発推進の人々や、原子力に不安を抱いているものの内実にあまり詳しくない人々から見ると無責任に聞こえるかもしれない。だが吉岡さんの名誉のために述べておくと、これは事実であり、原発推進の国策を変えたり、脱原発の政権に交代させたりする見通しが当面立たない現状では、おそらく日本の原発推進政策を実質的に破たんに追い込む最も効果的で、かつほとんど唯一の方法だと思う。高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定や、六ヶ所村の核燃料再処理工場の実質的破たん(すでに稼働開始は24回延期されている)により、搬出先が見つからないまま、各原発の使用済み燃料プールが燃料で満杯になりつつある。このまま推移すれば、各原発の使用済み燃料プールは6~10年程度で満杯になると試算する専門家もいる。原子炉内にある使用済み燃料も取り出せなくなって次々と原子炉が稼働停止に追い込まれていく、というシナリオが現実味を帯びてきている。政府・自民党がどんなに原発を稼働させたくても物理的に不可能となる状況が刻一刻と迫っているのである。もしここで1カ所でも処分地に名乗りを挙げる地域が現れれば、原子力ムラは永遠に原発を運転し続けられる。だからこそ吉岡さんが指摘したように「処分場の場所を決めさせない」ことが最も重要なのである。

無責任? もちろんである。だが核のごみの処分場の場所も、いやそれどころか処分方法さえ決めず、日本全国54基もの原発を「トイレのないマンション」状態のまま見切り発車で稼働させてきた人類史上最悪の無責任集団・原発推進派に吉岡さんを無責任呼ばわりする資格などあるわけがない。当ブログは、吉岡さんの遺志を受け継ぎ、核のごみの処分場を決めさせないための闘いに引き続き全力を尽くしていく。吉岡さんの墓前に「日本の原発の滅亡」を報告できる日は、おそらく私の存命中に必ずや訪れるであろう。

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2018年 新年目標

2018-01-14 17:11:48 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
さて、例年通り、今年も昨年(2017年)の目標達成度の点検と2018年の新年目標を発表します。新年早々、JR北海道本社への署名提出、要請行動の準備で忙しく、1月14日になってからの新年目標発表は、当ブログ史上最も遅いと思います。まずは昨年の結果からですが、12月30日付記事のとおり、2年連続の未達成でした。

続いて2018年目標です。

1.鉄道

JR線に関しては、日帰り可能な範囲内に未乗区間はありません。昨年に引き続き、今年も5線(ただし今年はJR・民鉄線合計で)を目標としますが、達成は昨年同様、厳しいと思います。4月以降も北海道勤務が続くのであれば、1線でも乗れればいいほうだと思っています。

2.その他

2016年夏の入院以来続けている断酒を今年も継続したいと思います。もともと断酒は、飲みたい欲求があるのに飲めない人のための目標だと思いますが、私はそもそも飲みたいという欲求自体がないので、それほど難しい目標だとは思いません。

今年も昨年同様、JR北海道問題とリニア建設問題が最優先課題になるものと思っています。今年も当ブログをよろしくお願い致します。

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日高線復旧求め、地元2団体がJR北海道本社に要請、署名提出行動を実施

2018-01-13 16:47:51 | 鉄道・公共交通/交通政策
不通から3年の日高線 2市民団体、JR北に要請書提出(苫小牧民報)

JR日高線が2015年新年の高波災害で不通になってから、早いもので3年が経過した。地元には北海道立静内高校があるが、列車通学を当て込んで2015年4月に入学した生徒達は、もしこのまま日高線が復旧しなければ、ついに一度も列車通学ができないまま卒業を迎えることになる。

しかし、安全問題研究会が昨年11月24日の講演会で指摘したように(資料)、鵡川~日高門別間は被災しておらずいつでも動かせる状態にある。法的にも物理的にも運行できる状態にある鉄道が、鉄道事業者の都合で一方的に運休させられている状況は、当ブログの知る限り戦時中くらいしか例がなく、日本鉄道史の中でこれほど情けない話もない。

12日の行動には、当研究会も休暇を取って参加した。冒頭、JR日高線を守る会、JR問題を考える苫小牧の会から、この間集約した署名4,988筆(記事では4,756筆となっているが、その後の集約でさらに増えた)を手渡し、交渉に臨んだ。

JR北海道は「列車を動かすだけでも年間180億円の経費がかかる中で、運行再開後も赤字確実な部分復旧にも応じられない」として私たちの要求を拒否した。だがそもそもJR北海道は新幹線を含め全線が赤字だ。JR北海道の言い分を認めるなら今すぐ北海道全線を止めなければならず、理由になっていない。

当然、提出後のぶら下がり会見では、「赤字というなら北海道は全線が赤字であり、日高線だけを復旧させないことに対しては納得できない」と抗議の意思を表明した。「今日の交渉を終えて感想は?」との質問に対しては「JRは鉄道会社として列車を動かすのが使命。動かせる線路があるのに動かさないのは社会的使命を担う公共交通企業として断じてあってはならない。今後も繰り返し運行再開を求める」と答えた。

両会が求めた代行バスの利便性向上、バスに乗れない障がい者のための低床車導入に対しては、地元議会でも質問が出ており、町当局の答弁も行われていることから「勉強させていただく」との回答だった。だがいわゆる「官僚用語」の世界では、勉強とは「検討」以前の段階に対して使われるものであり、不通から3年も経っている現状で使うべき言葉ではない。日高線を守る会としては、事実上の「ゼロ回答」と受け止めており、断固抗議する。

なお、当ブログ・安全問題研究会としても、今後、繰り返し運行再開を求めていく。署名も引き続き行うので、ぜひみなさまもお願いしたい。

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2018年、明けましておめでとうございます

2018-01-01 14:46:41 | 日記
元日も午後に入ってからのご挨拶になりますが、2018年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年、最も大きな課題はやはり東アジアで米朝間の戦争を阻止することです。核保有国の米国、核保有宣言をした北朝鮮の衝突という事態になれば、東アジアが灰塵に帰することになりかねません。

また、これと同時にこの米朝危機を利用した安倍政権による改憲もしっかり阻止していく必要があります。

JRをめぐっては、北海道のローカル線廃止を阻止することが課題ですが、この他にもリニア談合問題も引き続き重要だと思います。当ブログは、リニア工事をめぐる不正はいずれ明るみに出るだろうと予想していたものの、こんなに早いとは正直、思っていませんでした。

新幹線で2018年は事故が起きるのではないかとの予測もネットを中心に年末から飛び交っています。昨年末の台車亀裂の衝撃が大きかったことを物語っていますが、このような市民感覚は案外正しいものです。今年は安全問題でも正念場を迎える年になるかもしれません。

こうした問題にしっかり取り組む1年にしたいと思います。よろしくお願いいたします。

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