安全問題研究会は、山本太郎参議院議員を通じ、11月13日付で「
JR北海道の安全問題、ローカル線問題及びリニア中央新幹線に関する質問主意書」を提出したのでお知らせします。
なお、質問主意書の内容は以下の通りであり、政府は、質問書受領後7日以内に答弁しなければならないと定められています(国会法75条)。この質問主意書を政府は11月21日に受領しているので、11月28日までに答弁が行われることになります。
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<参考>国会法
第75条 議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に転送する。
○2 内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をすることができないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示することを要する。
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(参議院サイトより)
JR北海道の安全問題、ローカル線問題及びリニア中央新幹線に関する質問主意書
昨年から顕在化した北海道旅客鉄道株式会社(以下「JR北海道」という。)における事故は、最悪期を脱したものの、依然として完全には収束していない。本年一月には旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(以下「JR会社法」という。)に基づく史上初の監督命令が出される一方、レール検査データの改ざんが明らかになるなどJR北海道の安全管理体制が問われる事態が続いている。こうした中、ローカル線の経営が深刻化しており、災害で不通となった路線の復旧スキームを見直す声が野党のみならず与党にも出ている。また、東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)に対し、国土交通省が着工を認可した中央新幹線(東京都・名古屋市間)(以下「リニア中央新幹線」という。)は問題だらけの計画である。こうしたことを踏まえ、以下質問する。
一 レール検査データ改ざんや脱線事故等が続くJR北海道に対しては、国土交通省が今年一月二十四日、鉄道事業法に基づく事業改善命令に加え、JR会社法に基づく監督命令を出した。これを受け、JR北海道は、「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」における「二 第一歩の改善」について措置を講ずるための計画(以下「計画」という。)を策定し、今年七月二十三日付けで国土交通大臣宛の報告書を同省北海道運輸局へ提出している。
計画に対し、現在、国土交通省による検証・確認作業はどの程度進んでいるのか。また、不備な点があるとの認識は持っているか。持っている場合、追加でどのような対策を講じるのか、明らかにされたい。
二 JR北海道が現状の職員数のまま、提出した計画に基づいて安全性を向上させることが可能と考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。
三 新聞報道によれば、JR北海道におけるレール検査データの改ざん問題に関しては、一九九一年と一九九八年に会社と国鉄労働組合北海道本部(以下「国労」という。)との労使交渉の際、国労側が改ざんが行われている可能性を会社に指摘、調査を申し入れながら、会社が「法令に基づいて検査が行われているものと信じている」として何らの対策も講じなかったとされている。政府として、この事実を把握しているか。把握しているのであれば、当時、政府としてJR北海道に対し何らかの指導を行った事実はあるか。また、把握しながら何らの指導も行っていなかった場合、その理由を明らかにされたい。
四 私が、昨年十一月六日付けで提出した「JR北海道で発生した連続事故及び日本国有鉄道改革の見直しに関する質問主意書」(第百八十五回国会第四五号)の質問三に対する答弁書(内閣参質一八五第四五号)は、JR北海道に対して、「法第十二条に規定する経営安定基金の運用収入」、「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律(平成十年法律第百三十六号)附則第四条の規定に基づき独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)が発行する特別債券の引受けによる利子収入が得られる措置」、「同法附則第五条の規定に基づく機構の助成金等として、十年間で総額六百億円の支援」により「JR北海道は、平成二十五年三月期の子会社を連結しない単体の決算及び連結決算において、それぞれ約九億円及び約七十三億円の経常利益の計上を行っているところである」としているが、最も基本的なレール検査等の安全対策すら実施できないJR北海道の実態に目を向けることなく、「利益が出ているからいい」というのは著しく誠意、真摯さを欠いた不当な答弁であると言わざるを得ない。
鉄道事業者にとって、安全は最大の商品であり、安全輸送が確保できてこその利益でなければならないと考えるが、この点を踏まえ、再度、政府の見解を問うので、真摯に答弁されたい。
五 二〇〇一年九月に実施された規制緩和により、従来「三年(新車は使用開始から四年)または走行距離二十五万キロメートルを超えない期間」とされていた気動車の検査周期が「四年または走行距離五十万キロメートルを超えない期間」と改められた。一方、新聞報道によれば、二〇一三年四月に発火トラブルを起こした特急「北斗」用車両(キハ一八三系)は前回の検査からの走行距離が二十一万キロメートルであったほか、二〇一二年九月にも同様に直前の検査からの走行距離が二十一万キロメートルでトラブルを起こした例がある。
長距離列車が多く運行一回当たり走行距離が長いこと、力行運転(動力をかけた状態での運転)の時間が多いこと、寒冷地であることなど北海道特有の事情があるにせよ、このようなトラブルの事例から、二〇〇一年に行われた検査周期の緩和は全く不適切である。この規制緩和を見直し、少なくとも緩和前の基準に戻すことが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 自然災害で被災した鉄道事業者の路線復旧に対する国庫補助については、現在、鉄道軌道整備法第八条第四項において「その資力のみによつては当該災害復旧事業を施行することが著しく困難であると認めるとき」に限って国庫補助を行うことができるとされており、事実上、JR各社を含む黒字鉄道事業者に対しては国庫補助の道が閉ざされている。一方、二〇一一年七月の「新潟・福島豪雨」以来一部区間が運休したままになっているJR只見線(福島県)について、地元からは復旧への強い要望が出ており、今年七月には、自民党国会議員連盟が只見線復旧に対する国庫補助の道を開くため鉄道軌道整備法の改正を目指す方針を確認するなど、政権与党内部からも法改正への動きがみられる。
国鉄改革関連法案が審議されていた参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会において、一九八六年十一月二十八日、「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」を含む附帯決議が可決されるとともに、当時の橋本龍太郎運輸大臣、葉梨信行自治大臣が決議の趣旨を尊重する旨表明している。国民の公共交通としての国鉄を引き継いだJR各社線の災害復旧に国が責任を持つことは、国会からの要請であると同時に、国民の基本的人権の一つである交通権を確保する見地からも必要不可欠のものである。
東日本大震災という未曾有の大災害により、東北地方のローカル線の多くが被災しており、いまだ復旧に至らない路線もある。資金力を有するJR各社であっても、災害の規模によっては復旧費の捻出が困難な状況が起こり得ることを示している。国民の交通権を確保するため、基幹交通であるJR各社の災害復旧には、鉄道事業者の経営状態にかかわらず国による資金拠出の道を開くため、鉄道軌道整備法の改正が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
七 リニア中央新幹線の建設については、今年六月五日、国土交通大臣宛てに提出された「中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見」(以下「環境大臣意見」という。)において「本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」、「本事業のほとんどの区間はトンネルで通過することとなっているが、多くの水系を横切ることとなることから、地下水がトンネル湧水として発生し、地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」として懸念が示されている。国土交通省は、環境大臣意見を踏まえた対応にJR東海が万全を期しているとは言えない中で、なぜこのような拙速な認可をしたのか。
八 JR東海は、リニア中央新幹線建設費として九兆円を見込んでいるが、東海道新幹線建設の際も、当初、千九百七十二億円と試算されていた建設費は、一九六三年三月になって二千九百二十六億円に上方修正されている。最近の石油・資材価格及び職人の人件費の高騰に鑑みれば、リニア中央新幹線の建設費も高騰が予想される。リニア中央新幹線の建設費について、JR東海が試算した九兆円に収まると考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。