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暴言大王・今村雅弘前復興相が働いてきた悪事~「国鉄労働者の首切り、追い出しに従事」の過去

2017-04-30 18:19:30 | 鉄道・公共交通/交通政策
東日本大震災に関し、自民党二階派が主催したパーティの席上「これがまだ東北で、あっちの方だったから良かった」という発言をして辞任に追い込まれた今村雅弘前復興相。4月4日には原発事故の「自主」避難者を「自己責任」「訴訟でも何でもやればいい」と切り捨てる発言で批判を浴びたばかりなのに、またこの暴言だ。東北被災地の復興に関わる身でありながら、加害企業・東京電力の株を8,000株も保有、佐賀県出身(当選は比例九州)でありながら九州電力株を4,000株保有している「利益相反」もひどいものだが、当ブログが調査した結果、今村前復興相に関し、驚くべき事実が浮かび上がった。

もちろん当ブログは、これほどの重大な事実をつかみながら、「墓場まで持って行く」などという美徳は持ち合わせていない。むしろ市民の知る権利に応えるため、つかんだ事実を積極的に知らせることが使命だと考えている。

その「驚くべき事実」は、他ならぬ今村前復興相の個人ブログの片隅にひっそりと書かれていた。紹介しよう。

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今村前復興相の個人ブログ「今村雅弘活動日記」2013.5.6付け記事より

長島茂雄さんと松井秀喜さんの国民栄誉賞伝達式が行われました。……長島氏については私も特別の思い出があります。国鉄分割民営化の際には、千葉鉄道管理局の総務部長として成田空港反対の過激派等を向こうに回し、最前線で頑張っていました。全国唯一の大ストライキを実行されたり、自宅を焼かれたり大変な苦労をさせられましたが、現場長始め皆さんが心をひとつにして乗り切ることが出来ました。

その頃、銚子を舞台のNHK連続テレビドラマ「澪つくし」沢口靖子さんをモデルにオレンジカードというプリペイドカードを全国で初めて発行し話題になりました。その後、千葉県出身の長島茂雄さんに氏の野球関係先輩を通し恐る恐るお願いしましたら、皆さんのご労苦に少しでもお手伝い出来れば、ということで快く引き受けて頂きました。発売したら物凄い人気となり各駅長蛇の列、発売制限と後日お渡しということでお帰りいただきました。

その後、ショップでは五万円ものプレミアムが付いたとのことでした。厳しく殺伐とした当時の雰囲気の中、大いに士気上がり困難を乗り切ったものです。ご本人は覚えておられないでしょうが、国鉄改革が成功した陰の力として、改めて長島茂雄さんに深く感謝し益々のご健勝ご活躍をお祈り申し上げます。機会があればそのカードを持ってお礼とお祝いのご挨拶に行きたいものです。

長島茂雄さんのオレンジカードには後日談があります。超人気となったそのカードを名刺代わりに持参し、最大の課題であった余剰人員対策として、公的部門や民間企業に採用してもらうべく関係者がお願いに回りました。その効果は絶大、暴れん坊の千葉動労組合員まで採用してもらい無事に新しい職場で働かせてもらうことが出来、スムーズに新生JR誕生となりました。……こうした皆様のお陰で今日のJRの大発展があることを私は片時も忘れてはいません。
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今年は奇しくも国鉄分割民営化~JR発足から30年。

10万人を超える労働者が国鉄を去り、当局による卑劣な国労脱退工作の結果、100人を超える労働者がみずから命を絶ち、最終的に1047名が解雇となった国鉄「改革」。今村復興相は、なんと、当時、千葉鉄道管理局総務部長として直接、分割民営化反対派組合に属する労働者の首切り、追い出しの最前線にいた。しかもそのことを、自分のブログで「武勇伝」のごとく語っているのだ。労働者の生活を激変させ、時には破壊に追い込む首切りを、これほどまでに喜々として自慢している人物を、葛西敬之JR東海名誉会長の他に私は知らない。

今村前復興相は1947年生まれ。東大法学部卒業後、1970年、23歳の時に国鉄入社。1987年の分割民営化当時は40歳だったことになる。民営化後はその「論功行賞」としてJR九州に移り、経営管理室長や関連事業本部企画部長を歴任した。北海道・九州の多くの労働者が解雇され、JRに残る決断をした労働者の中にも、人によっては先祖代々の墓を処分してまで本州への広域異動に応じた人がいる。そうした中、労働者の首切り、人員整理を行う側だった今村氏が、数多くの労働者の犠牲の上に、地元JRに移り、のうのうと経営幹部を歴任していたのだ。

エリートの登竜門である東大法学部から国鉄へ。若くして国鉄幹部を歴任し、分割民営化当時は千葉鉄道管理局総務部長として労働者の首切り、追い出しに従事。その後は地元、JR九州で経営幹部を歴任。自民党から選挙に出馬し、国会議員へ……。

この今村氏の「華麗な経歴」を見て、度重なる被災地や原発「自主」避難者に対する数々の暴言の背景が理解できた。常に社会的強者の側にあった今村前復興相は、労働者、社会的弱者を路頭に迷わせ、痛めつけることを一貫して仕事にしてきた。それが今村氏の人生だった。こんな人物に「社会的弱者、避難者に寄り添え」と要求すること自体、無理というものだろう。

閣僚以前の問題として、当ブログはこのような人物に公職に関わってもらいたくない。社会的弱者、今村氏に首切りに遭った国鉄労働者、踏みつけられた原発「自主」避難者と東北の被災者たち……そのすべてに関わってきた当ブログは、今こそ声を上げたいと思う。

「今村前復興相よ、今すぐ議員もお辞めなさい」と。

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【転載記事】日本共産党が鉄道維持に関する政策(鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために)を発表

2017-04-29 23:02:48 | 鉄道・公共交通/交通政策
4月28日、JR北海道の赤字路線廃止問題をめぐって、日本共産党が「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために」を発表しました。重要な内容であるとともに、当ブログ・安全問題研究会のこれまでの主張と重なり合う部分も多いことから、以下、全文を転載します。

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鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために 国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす

2017年4月28日 日本共産党


 日本共産党の笠井亮政策委員長が28日の記者会見で発表した鉄道政策「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために――国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす」の全文は次のとおりです。

 住民の生活にも、地域社会にも大きな打撃となる鉄道路線の廃止が相次ぎ、2000年以降、全国で39路線、771・1キロが廃止されました。さらに、昨年11月には、JR北海道が全路線の半分以上にあたる10路線13区間、1237・2キロを、「自社単独での維持が困難」と発表し、北海道での大規模な路線廃止の不安がひろがっています。鉄道の廃止は、「通勤、通学ができない」「病院にいけなくなる」など住民の生活に深刻な影響を及ぼすとともに、人口流出を加速させ、地方の疲弊、大都市と地方の格差拡大に拍車をかけます。地域社会の崩壊にもつながりかねない深刻な問題です。

 “市場まかせ、民間まかせ”からの転換を…鉄道路線の廃止が相次ぐ根本には、国鉄分割民営化の矛盾があります。「本州3社は黒字、北海道、四国、九州は赤字」という大きな格差をもたらすことを前提とした分割と、鉄道事業を利益優先、市場まかせにする民営化によって、鉄道事業の公共性、鉄道会社の社会的責任は後景に追いやられました。“市場まかせ、民間まかせ”では、全国的な鉄道路線廃止に歯止めをかけることもできませんし、JR北海道が陥っている深刻な事態にまともに対応することもできません。

 しかも分割民営化から30年が経過し、大都市と地方の格差が大きく拡大するなど、わが国の社会、経済情勢は大きく変化しているにもかかわらず、政府は、1980年代に描いた「分割民営の設計図」に固執し“民営化したから市場にまかせる”という無責任な姿勢をとり続けています。人口減少や地域経済の衰退で苦しんでいる地方鉄道へのまともな支援も行わず、2000年には、鉄道路線廃止を認可制から事前届け出制に規制緩和し、国が鉄道路線廃止を加速させています。

 鉄道事業の公共性にふさわしく、国が公的に支えることが求められます…鉄道路線の維持は、住民の足を守り、「移動の権利・交通権」を保障するとともに、地方再生の資源を守り、大都市と地方の格差拡大に歯止めをかけるうえでも重要な課題です。また鉄道は、他の交通機関より環境負荷が小さいという特徴も持っています。全国鉄道路線網を維持し、未来に引き継ぐことは、今日の政治の重要な役割であり責任です。この立場から、日本共産党は、国として以下の施策に取り組むことを提案します。

1、JR北海道をはじめ、全国の鉄道網を維持するために国が乗り出す

(1)JR北海道の路線廃止を食い止める緊急対策を国の責任で行う


―国が、経営安定基金の取り崩しや積み増し、財政投融資の活用などの緊急支援を行い、JR北海道の路線を維持します。

 JR北海道の路線廃止の危機を回避することが緊急課題となっています。JR北海道は、道をはじめ関係自治体に一部路線の廃止と支援を要請していますが、自治体の支援には限界があります。こうした事態を招いたJR北海道経営陣の責任も重大ですが、もともと赤字になることが分かりきっていた分割民営を行った国にこそ、問題を解決する最大の責任があります。

 30年前の分割民営化時には、北海道、四国、九州の3社には国が経営安定基金を積んで、その運用益で赤字を補てんする仕組みがつくられました。当時は、北海道は6822億円の基金を金利7・3%で運用して約500億円の赤字を補てんする想定でした。JR北海道の鉄道事業の赤字額は現在も500億円程度ですが、その後の国と日銀による超低金利政策によって運用収益は大きく減り、2014年度は226億円と半減しています。

 政府内からも「(JRの分割は)商売のわからない人が考えた」「JR北海道をどうするかは、根本的なところを触らずしてやるのは無理」(麻生太郎副総理・財務相、衆院予算委員会)という発言も出ています。

 自治体に「後始末」を押し付けるのではなく、経営安定基金の取り崩しや積み増しを行う、財政投融資を活用するなど、当面の危機を回避するために国が責任を果たします。

(2)中長期的には、公共交通基金を創設し、全国鉄道網を維持するための安定的な財源を確保する

―公共交通基金を創設し、不採算地域での鉄道事業の赤字を適切に補てんしたり、老朽設備の更新などを支援します。その財源は、ガソリン税をはじめ自動車関連税、航空関連税などの一部を充てることや、大型事業や道路に偏重した公共事業のあり方の見直しでつくります。

―JR東日本、東海、西日本の3社の巨額利益の一部を公共交通基金に組み入れ、北海道や四国、九州に還流させます。

 当面の緊急策とともに、中長期的な展望をもって国が全国鉄道網を維持する財源確保のシステムを構築することを抜本的な対策として提案します。

 EU諸国では、地方鉄道路線を公共インフラ(社会基盤)として位置づけ、公的に支える制度が設けられています。フランスでは、地域の鉄道を維持するために、労働者の通勤などで受益がある地域内の事業者から約4000億円(2012年)の交通税を徴収し、鉄道事業に補てんしています。ドイツでは、エネルギー税(ガソリン、石油製品、石炭等に課税)を自動車分野だけでなく鉄道にも配分するなどして、ドイツ国鉄の民営化後も連邦政府として1兆円を超える財政援助を続けています。

 日本では、JR東海が「自力でやる」と始めたリニア新幹線建設に3兆円もの公的資金(財政投融資)を提供し、整備新幹線には、2兆7000億円の公共事業費を投入しながら、地方の民鉄や第三セクター鉄道には、わずかな補助金制度しかなく、JRの赤字路線廃止も放置しています。

 EU諸国で行われているように、公共交通体系を維持し、環境を守るという観点から、公共交通基金を創設して、全国の鉄道網を維持する財政的な基盤を整えます。

 また、本州3社の巨額の利益の一部を北海道や四国、九州に還流させ、分割民営化によってもたらされた大きな格差と不均衡を是正します。

 JR各社の鉄道事業の営業利益(2016年度3月期)は、東日本―3722億円、東海―5556億円、西日本―1242億円と、本州3社は大幅な黒字ですが、北海道―▲483億円、四国―▲109億円、九州―▲115億円と、本州3社と北海道、四国、九州の間で大きな格差が生まれています。JR九州は、鉄道事業以外の黒字と経営安定基金の取り崩しを行って、株式売却=完全民営化にむかっていますが、鉄道事業の不安定さは解消されていません。

 本州3社は、長期債務を国民負担に付け替えて、借金から「解放」されたうえに、ドル箱路線、黒字路線が多く配分される分割で「もうかる」事業として出発しました。その一方で、北海道などは、赤字の地方路線を多くかかえて出発したうえに、地方の疲弊が急速にすすみ、いっそう苦しい経営になっています。

 本州3社の大幅な黒字の一部を公共交通基金に組み入れることは、全国的な鉄道網として利用されているJRグループの社会的責任でもあります。

2、地方鉄道の廃止を防止するための国の支援制度を緊急に拡充する

 JRとともに地方の中小私鉄や第三セクター鉄道も、地域交通の重要な役割を担っていますが、96社中71社が鉄道事業で赤字経営となり、すでに廃線となった路線も少なくありません。また、JRを含め災害で不通になった鉄道路線が、復旧されないまま廃線に追い込まれるという事態も各地で起きています。中長期的には、前述の公共交通基金が設立されれば、こうした鉄道にも全面的な支援が可能になりますが、それを待つことなく、緊急に、地方鉄道廃止を防止する国としての対策を強化することが必要になっています。

1)鉄道災害復旧基金をつくり、災害を原因とする鉄路廃止をなくす

―「災害復旧基金」は、すべての鉄道事業者を対象に赤字路線等の災害復旧に必要な資金を提供します。「基金」には、すべての鉄道事業者が経営規模・実態に応じて拠出するとともに、国が出資します。

 災害で不通になった道路や橋が復旧されないことなど考えられませんが、鉄道は災害が廃止のきっかけとなっています。東日本大震災で被災した大船渡線、気仙沼線や台風・豪雨災害を受けた岩泉線、日高線、只見線、高千穂鉄道などでは、被災した鉄道の復旧工事に手が付けられないまま廃線になったり、「バス転換」が地元に提案されています。

 現在、災害復旧事業費補助金制度はありますが、「黒字会社」は対象にせず、補助は復旧工事費の半分(国25%、地方25%)以下にすぎません。苦しい経営を続けている中小私鉄や第三セクター鉄道にとっては、災害からの復旧は困難を伴う大事業であり、全面的な支援が必要です。また、復旧に必要な資金を供給するシステムをつくれば、JRのように災害を廃線の「口実」にすることもできなくなります。

 災害で不通となった鉄道を必ず復旧させる制度をつくることは、「災害列島」といわれる日本で、全国鉄道網を維持し未来に引き継ぐうえでも、被災地の復興を支える防災対策という点からも重要な課題です。

(2)中小私鉄、三セク鉄道の経営基盤を強化する支援を行う

―車両や安全設備をはじめ鉄道事業の基盤強化と赤字分を補てんする支援制度を抜本的に拡充します。

―自治体が行う地方鉄道への経営支援に対する国のバックアップを強化します。

 現行でも、老朽化対策、安全対策への補助制度はありますが、国と地方あわせて年に150億円程度であり、補助対象も、補助率も、きわめて不十分です。中小私鉄、第三セクター鉄道すべてを対象に、車両、レール、信号装置など老朽設備の更新や必要な設備投資への支援を抜本的に強化します。また、地方バス路線を維持するため赤字の半分を補てんする国の補助制度(地域公共交通確保改善事業)がありますが、鉄道には適用されていません。赤字の中小私鉄や第三セクター鉄道も補助対象にします。

 経営規模が小さい地方鉄道の支援には、大きな予算は必要ありません。中小私鉄や第三セクター鉄道の赤字額は全体でも100億円程度です。当面、現行の3倍程度500億円の規模の支援制度にしたとしても、道路や港湾などの公共事業費(国費)の0・8%程度であり、公共事業の見直しなどをすすめれば必要な支援は可能です。

 地方自治体は、苦しい財政の中でも地方鉄道を存続させるために、国の補助制度の地方負担分だけでなく、通学定期への補助など独自の経営支援を行っています。国として、自治体の支援をバックアップする補助制度の創設や地方交付税措置の引き上げをはかります。

 なお、前述の公共交通基金が創設されれば、これらの補助制度もさらに拡充することができます。

(3)鉄道廃止の手続きを「届け出制」から「認可制」に戻す

 以上のような支援策を講じたうえで、鉄道廃止の手続きを事前届け出制から認可制に戻します。住民や自治体関係者の声も無視した利益優先の鉄道路線廃止は許されません。鉄道事業者としての社会的責任を果たすことを求めていきます。

〈全国の鉄道網を未来に引き継ぐために、知恵と力をあわせることをよびかけます〉

 いま日本の鉄道は、大きな岐路にたっています。このまま地方の鉄道路線を廃止し続ける政治で良いのでしょうか。大都市と地方の格差拡大に拍車をかける鉄道路線廃止を放置しながら「地方再生」とか「地方創生」などと言う政治が許されるでしょうか。

 JRについては、分割民営化30年を機にメディアからも「明暗がはっきりした」という報道もされていますが、「暗」の部分を切り捨て続ける鉄道政策でいいのかが問われます。日本共産党は、分割民営化の総括と検証を行い、鉄道事業のもっている高い公共性にふさわしい経営形態を探求する国民的な検討と議論が必要だと考えます。

 同時に、緊急の課題となっている鉄道路線廃止の動きに歯止めをかけ、全国鉄道網を維持するために、分割民営化への賛否や評価の違いをこえて、利用者である国民と、自治体関係者、商工会や農林漁業団体など地方経済界、そして鉄道事業者をはじめ幅広い方々の知恵と力を集めることが必要だと考えます。

 国民の「移動する権利・交通権」を保障し、環境の面でも、地域再生の資源という面でも大切な全国の鉄道網を、未来に引き継ぐために、知恵と力を合わせる時ではないでしょうか。日本共産党は、国民的な討論と合意を広げ、この提案を実現するために力をつくします。

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ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」報告資料

2017-04-25 22:33:34 | 鉄道・公共交通/安全問題
4月22日、兵庫県尼崎市内で「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」が例年通り行われ、約130人が集まりました。今年の集会は「国鉄分割民営化30年を検証する」がメインテーマに、坂口智彦・国労中央執行委員長が記念講演。安全問題研究会もJR北海道の現状について報告を行いました。

以下、安全問題研究会が行った報告の内容をアップします。これ以外の主な内容は以下の資料の通りです。なお、JR福知山線脱線事故「遺族からの訴え」(藤崎光子さん)については、動画で録画していますが、youtubeへのアップが終わっていません。アップでき次第ご紹介します。

170422「ノーモア尼崎!生命と安全を守る4.22集会」配布資料

170422安全問題研究会報告のPDF版(以下の内容と同じものです)

170422記念講演・JR30年~坂口智彦国労委員長(音声ファイル・約35分)

集会参加者からの報告記事(レイバーネット日本)「重大事故の責任いまだ問われず~ノーモアJR尼崎事故!命と安全を守る4.22集会」

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ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」報告資料~全営業キロの半分が廃線の危機! JR北海道の経営破たんを招いた国鉄「改革」

2017.4.22 安全問題研究会

 JR北海道は、島田修社長が2016年11月18日に記者会見し、宗谷本線名寄~稚内間など計13区間について、同社単独では「維持が困難」になったことを公表した。対象区間のうち3区間(輸送密度200人未満)はバス転換が適当とし、残る10区間(輸送密度200人以上2000人未満)についても、上下分離方式などの地元負担が必要としている。



 廃止路線が旧産炭地の路線や盲腸線中心だった国鉄分割民営化当時と異なり、今回の13区間には、根室線帯広~釧路~根室間、釧網線東釧路~網走間など、主要都市間輸送を担う基幹路線のほとんどが含まれている。営業キロで見ても1,237kmと、JR北海道全体(約2,500km)の半分に相当する。もしこのすべてが廃止や地元負担となった場合、地元の社会経済に与える打撃は計り知れないものになる。

 すでに、JR北海道は2015年9月、「2015年度末までには社員の給与支払いに充てる資金がマイナスに陥る」として国から1,200億円の緊急支援を受けている。民間企業であれば、労働者の賃金が支払えない状態は事実上の倒産とされる。今回の発表は、実質的にはJR北海道の「破産宣言」に当たる。この際のJR北海道の試算では、同社が経営破たんに陥るのは「2018年度」となっていたが、試算よりはるかに早く破たんした。

 JR北海道は新幹線含む全線が赤字であり、経営破たんの原因が、北海道だけを単独の会社とした国鉄分割民営化の枠組み自体にあることは当然だ。民営化初年度(1987年度)決算で、JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合はわずかに2.5%、JR四国が1%、JR九州が3.6%に過ぎなかった。JR北海道全体の営業収入(919億円)は東京駅の収入(約1000億円)より少なく、JR東日本1社だけでJR7社の営業収入の43.1%を占めていた。

 2017年2月17日、衆院予算委で本村伸子議員(共産党)が行った質問によれば、JR東海の鉄道事業営業収益は5,556億円であるのに対し、JR北海道は-483億円。3島会社とJR貨物を合わせた4社の営業損失は741億円だが、本州3社で最も収益構造が脆弱なJR西日本でさえ1,242億円と、4社合計の営業損失を大幅に上回る営業収益を上げている。これは、3島+貨物の全体をJR西日本だけで救済でき、お釣りが来ることを示している。強い会社はより強く、弱い会社はより弱くなる格差拡大と弱肉強食こそ国鉄「改革」とJRの歴史であったことが鮮明になった。

 儲かる路線で儲からない路線を支えていた国鉄時代の内部補助制が分割で崩壊、儲かる路線の利益はJR本州3社の経営者が分捕り、北海道、四国、九州の損失は地元自治体・住民に押しつけられた。国鉄を葬った者、1047名の国鉄労働者を路頭に迷わせ、それ以外の多くの国鉄労働者を自殺に追い込んだ者、東京駅より少ない収入のJR北海道にできもしない「自立」を迫り、経営破たんに導いた者の責任を追及しなければならない。

 経営破たんの原因として、民営化に当たって政府が用意した経営安定基金の運用益が、低金利によって約4,000億円も減少したことに加え、2009年の「高速道路1,000円乗り放題」政策による乗客の逸走(自動車への転移)も大きい。JR北海道の経営を支えていた長距離旅客は、1,000円高速政策が終了後も今なお鉄道に戻っていない。

 長距離旅客減少による経営悪化は、安全崩壊となって表面化。2011年の石勝線トンネル内における特急列車火災事故、2013年の函館本線における貨物列車脱線事故と続いた。その後のレール検査データの組織的な改ざんは、JR会社法に基づく初の監督命令の発出に加え、当局の強制捜査、起訴によって刑事事件に発展した。この間、2人の社長が自殺している。

 JR北海道社内に設けられたJR北海道再生推進会議は、同社が民営化以降の30年にわたって、本来であれば安全投資に回すべき費用を、高速バスや航空機との競争の中で高速化に充てていたと指摘。2011~13年にかけ相次いだ事故やトラブルは、30年にわたった安全軽視と怠慢の明らかな帰結だ。再生推進会議は、こうしたJR北海道の安全軽視と怠慢を棚に上げ「安全か路線かの二者択一」を会社に迫る提言をまとめたが、地域公共交通、住民の足が守られるよう願う地元の意思を無視した一方的な提言であり、認めることはできない。

 北海道で生産された農産物は、全国津々浦々に鉄路で運ばれ消費されている。北海道から本州に向けて運ばれる鉄道貨物の4割は食料品輸送であり、ホクレン(農協)がみずからコンテナを製作、北海道新幹線の開業に伴って並行在来線が経営分離された第三セクター「道南いさりび鉄道」にも農協が出資しているほどである。この陰には保線や除雪などの莫大な経費を、北海道民が本州より高い運賃を通じて負担している事実もある。

 仮に道内の鉄路がなくなった場合、同じ輸送力を確保しようとするとどのようなことが起こるだろうか。青函トンネルを挟んだ青森~函館~札幌間に限っていえば、500t×51本(上下合わせて)の貨物列車で1日当たり25,500tもの貨物が運ばれている。仮にトラック(10t車)で置き換えるならば、1日当たり延べ2,550両もの車両と延べ2,550人もの運転手が新たに必要になる。ネット通販拡大による小口荷物の激増とトラック運転手の不足で首都圏などではすでに指定期日・時間通りに宅配便が届かないことが常態化しており、こんな時に大量輸送に適した鉄道を廃止してどうするのか。

 一方、北海道庁内に設けられた北海道鉄道ネットワークワーキングチームは、JR北海道が単独では維持困難とした13線区に関する鉄道網のあり方として、(1)札幌市と中核都市を結ぶ路線、(2)広域観光ルートを形成する路線、(3)国境周辺・北方領土隣接地域の路線、(4)広域物流ルートを形成する路線、(5)地域の生活を支える路線、(6)札幌市を中心とする都市圏路線――の6類型に分類。(1)については「維持すべき」、(2)及び(5)は地域で検討、(3)は鉄路の維持が必要、(4)は総合的に対策を検討、(6)は「道内全体の鉄道網維持に資する役割を果たすべき」――とそれぞれ位置づけ、6類型のうち「(1)が石北線、(3)に宗谷線が該当」とした。特に(2)と(5)については、地元との協議の結果次第では廃止~バス転換を容認するものであり、道が地元路線を守るどころか、一部線区の廃止に積極的に手を貸すものになっている。

 2002年の鉄道事業法「改悪」によって路線の廃止が許可制から届出制となり、鉄道会社は廃止届を出せば1年後に路線を廃止できるようになった。国交省には廃止を繰り上げる権限だけが与えられ、廃止を差し止める権限がないなど問題だらけの改悪であった。だが、ローカル線廃止のこれまでの例を見ると、地元自治体との協議が整うまでは廃止届を出さないという「紳士協定」はとりあえず守られており、2016年12月に行われた日高本線の廃線提起の席でも、JR北海道は「地元同意のない状態では廃止届は出せない」と、地元同意がないままの廃止届の強行提出を一応は否定している。

 2017年2月8日の衆院予算委で、松木謙公議員(民進党)の質問に対し、麻生太郎副総理兼財務相が「JR九州の全売上高がJR東日本品川駅の1日の売上高と同じ。JR四国は1日の売上高が田町駅と同じ」「貨物も入れて七分割して、これが黒字になるか。経営がわかっていない人がやるとこういうことになる。(JR北海道をどうするか)根本的なところをさわらずしてやるというのは無理」と答弁するなど、危機感は自民党内の一部にも広がりつつある。(参考資料――衆院予算委員会会議録 平成29年2月8日

 国民の公共交通であった国鉄を解体し、新自由主義を社会の隅々にまで浸透させ、絶望と対立と分断の淵に全国民を追いやる端緒となった国鉄「改革」。労働者、乗客・利用者、地方にすべての犠牲を押しつけ、利益はJR株主・経営者と財界が総取りしてきた「犠牲のシステム」――これこそ30年の歴史を通じて見えてきたJRの真実だ。

 2000年にハットフィールド脱線事故を起こした英国は線路保有部門を再国有化、民営でスタートした米国の鉄道アムトラックも国有化されるなど、鉄道の「民営から公共的企業形態へ」は国際的潮流である。国鉄「改革」から30年。耐用年数の切れた「民営JR」体制を根本的に改め、再国有化など、国民の足の復活を求める広範な闘いに今こそ踏み出すときである。

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JR可部線「復活」区間(可部~あき亀山)に乗車してきました&動画アップロードのお知らせ

2017-04-24 23:52:58 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
管理人よりお知らせです。

2003年に廃止された区間の一部(可部~あき亀山)がこの3月のダイヤ改正で「復活電化開業」したJR西日本・可部線。4月22日、兵庫県尼崎市で開催された「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る4.22集会」参加の翌日、その復活区間に乗車してきました。

この区間については、一度廃止になった区間の「復活」であり、当ブログ管理人は廃止前の横川~三段峡間の全線に完乗しています。今回の復活に当たっては、新規開業路線とみなして再度乗車すべきか、過去に乗車済として記録の整理のみにとどめるか、前例もルールもないためかなり迷いましたが、乗っておけば間違いないだろうと判断し、再乗車することにしたものです。

今回、復活開業とともに設けられた「あき亀山」は、廃止前は「安芸亀山」と漢字の駅名でした。当ブログ管理人はこの区間の乗車は廃止直前の2003年以来、14年ぶりになりますが、横川~可部間の電化区間も含め、廃止前は2両編成がほとんどだったこの区間のほとんどの列車が4両編成となっていました。沿線には当時はなかった大型ショッピングセンターが開店、住宅も大幅に増えるなど開発が進んでおり、14年間の時の流れを感じました。

【完乗達成(奪還)】可部線

復活前の可部線の貴重な写真をいくつかご紹介します。

三段峡駅に到着し、折り返し発車を待つキハ40系(1989年11月撮影)


上殿駅付近を通過するキハ40系(その1・1999年1月10日撮影)

この写真は、可部線存続を訴えていた加計町役場が当時、行っていた「がんばれ!可部線写真コンテスト」で佳作をいただいたものです。

上殿駅付近を通過するキハ40系(その2・1999年1月10日撮影)


可部線廃止直前に運行されていた臨時列車。三段峡~戸河内間にて(2003年11月撮影)


最後に、今回の乗車で撮影した動画を「証拠」としてアップロードしましたのでお知らせします。以下のリンクをクリックするとYoutube「タブレットのチャンネル」で動画を見ることができます(今回、サムネイル画像中に沿線住民が所有する自家用車のナンバーが写り込んでいるため、プライバシー保護の観点から、いつものようなサムネイル画像の表示を行っていませんのでご了承ください)。

170423可部線787M 可部~あき亀山

170423可部線796M あき亀山~可部

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分割民営化による「国鉄解体・JR発足」30年 破たんしたJRを清算し、再国有化を実現する議論と国民運動を/安全問題研究会

2017-04-01 22:03:32 | 鉄道・公共交通/交通政策
<安全問題研究会声明>
分割民営化による「国鉄解体・JR発足」30年 破たんしたJRを清算し、再国有化を実現する議論と国民運動を

 国鉄を民営7社に分割する1987年4月1日の国鉄「改革」から30年を迎えた。

 分割民営化に反対する国労組合員らを「人材活用センター」と称する労働者いじめ機関に送り込み、労働者から鉄道員としての誇りを奪い去ることで利益第一に変貌させようとする「新生」JRの枠組みを見て、反対派が危惧し、恐れていたことのすべてが、30年後の今日、最悪の形で現実になった。東中野駅事故、信楽高原鉄道事故、そしてJR最大の悲劇となった福知山線脱線事故で、乗客150人以上の命が奪われた。この間、自殺に追い込まれた国鉄労働者は200人に及んだ。物言う労働組合の解体は、日本の全労働者を「賃金定額制使い放題」のどん底に追い込む新自由主義「構造改革」の端緒となった。

 全路線キロの半分が維持困難と発表されたJR北海道で、自分たちの雇用・身分や職場の将来に関わる重大問題であるにもかかわらず、声明などの形で何らかの見解を発表したのは少数派であるJR連合-北海道労組のみ。道内で集会などの闘いを組織したのも道労連-建交労のみにとどまっている現実がある。無慈悲に実行された労働組合解体と、企業活動に対する監視・チェック役不在の深刻さ、罪深さを物語っている。

 JR東海の鉄道事業営業収益は5556億円であるのに対し、JR北海道はマイナス483億円。3島会社とJR貨物を合わせた4社の営業損失は741億円だが、本州3社で最も収益構造が脆弱なJR西日本でさえ1242億円と、4社合計の営業損失を大幅に上回る営業収益を上げている。これは、3島+貨物の全体をJR西日本だけで救済でき、お釣りが来ることを示している。これほどの凄まじい会社間格差を、心ある人なら誰も容認しないであろう。強い会社はより強く、弱い会社はより弱くなる格差拡大と弱肉強食こそJRの歴史であったことが鮮明になった。

 分割民営化から30年を迎えた1日、札幌市で「JR30年を検証する札幌集会」が、当研究会も参加して開催された。会場では、JRの減便で沿線の高校生の部活動がまともに成り立たなくなっている実態や、廃線・減便のため沿線住民が通院をあきらめざるを得ない深刻な事例が次々と報告された。国の政策の誤りによる被害が最も弱い立場の者から始まることは古今東西共通であり、ここで闘わなければ1%の支配層以外のすべての市民にとって明日は我が身となるであろう。

 会場で配布された1986年当時の資料「ペテン師たちの国鉄つぶし~分割・民営化のウソとホント」(国鉄の分割・民営化に反対する北海道共闘会議)には「分割・民営化されると北海道の国鉄路線はたったの5線に!」「国民の移動の権利を侵害」「大量首切り法案」「赤字のツケは国民に」「ローカル線はバッサリ切り捨て」との記述がある。30年後の今日、振り返ってみると、分割民営化反対派の「予言」は身震いするほど的確であった。

 農協労組の組合員からは、北海道と本州を結んで走る貨物列車の輸送の4割が農畜産物などの食料品であることも報告された。北海道は、昔も今も鉄道輸送を通じて全国各地の食料を支え、そのことに誇りを持ってきた。その北海道が、分割・民営化当時、全路線の3分の1を失うという大きな犠牲を強いられた。それから30年後の今日、再び残った路線の半分が廃線の危機に瀕している。食料輸送の根幹を支える鉄道の除雪や保線の費用をみずから負担しながら、全国で最も多くの国鉄労働者が解雇され、最も多くの路線を失い、最も早く地域衰退に直面し、最も高いJR運賃に耐えてきた北海道に、これ以上どのような犠牲が必要だというのか。もしこれ以上の犠牲を強いられるなら、北海道民は、国鉄分割民営化とそれを生み出した政府・自民党に対し、重大な決意をもって臨むことになる。北海道に拠点を置き、活動している当研究会は「食料自給率1%の東京が200%の北海道より豊かな暮らしをしている根拠は何か。そこに正当性はあるのか」を全国民に問いたいと考える。

 JR北海道に続き、JR四国も路線別の収支を公表する構えを見せている。北海道に続き四国でも路線維持問題が遠からず噴出するであろう。持続可能な範囲をはるかに超える会社間格差の拡大は、JR体制を崩壊に導く爆弾になりつつある。

 石破茂・元地方創生担当相が「JR北海道は誰が経営しても無理」と発言、麻生太郎副総理兼財務相までが「根本に手を付けずにこの問題を解決するのは無理」と国会で答弁するなど、自民党内の一部にも危機感を持つ人が出てきている。2000年にハットフィールド脱線事故を起こした英国は線路保有部門を再国有化、民営でスタートした米国の鉄道アムトラックも国有化されるなど、鉄道の「民営から公共的企業形態へ」は国際的潮流だ。この事実から目を背け、国民本位の公共交通再建に向けたJR改革を未だ拒み続ける最大の抵抗勢力は国交省である。

 国民の公共交通であった国鉄を解体し、新自由主義を社会の隅々にまで浸透させ、絶望と対立と分断の淵に全国民を追いやる端緒となった国鉄「改革」。労働者、乗客・利用者、地方にすべての犠牲を押しつけ、利益はJR株主・経営者と財界が総取りしてきた「犠牲のシステム」――これこそ30年の歴史を通じて見えてきたJRの真実だ。

 この巨大な犠牲のシステムと闘い、勝利するためには、これを単に地方や社会的弱者のための交通権の維持という課題にとどめることなく、みずからの生存権を確保する闘いにバージョンアップする必要がある。公共交通維持の社会的使命を失ったJRと、それをもたらした新自由主義の時代に終止符を打ち、全国の鉄道網が持続可能な新たな枠組みに向けた端緒を切り開くことは、今や日本の全市民に課せられた義務である。

 当研究会は国鉄分割民営化の検証と責任追及、JR再国有化を通じた国民本位の公共交通、国民の足の再建を、政治・行政に対して強く求める。全国全市民が叡智を結集してこの問題を議論し、国民運動を起こすよう改めて呼びかける。この目的を達するため、当研究会は、みずからの生存権をかけて、今後もあらゆる取り組みを続ける。

 2017年4月1日
 安全問題研究会

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第89回選抜高校野球大会を振り返って(大会講評)

2017-04-01 21:09:00 | 芸能・スポーツ
第89回選抜高校野球は、史上初の大阪勢同士の対戦となった結果、大阪桐蔭が8-3で履正社を破り優勝を果たした。大阪桐蔭は、昨秋の近畿大会では履正社に敗れており、リベンジを果たしたことになる。同じ都府県同士の決勝対決は1972年の日大桜丘-日大三(ともに東京)戦以来45年ぶり、史上5度目。

では、例年通り大会を振り返っておこう。

今年の大会は、開会式直後の1回戦第1試合(呉-至学館)がいきなり延長戦となったのを初めとして、2回戦までに6試合が延長になるなど、延長戦の多い大会だった。特筆すべきなのは、なんと言っても大会7日目の3試合のうち、第2試合の福岡大大濠(福岡)-滋賀学園(滋賀)、第3試合の福井工大福井(福井)-健大高崎(群馬)の2試合がいずれも延長15回で決着がつかず再試合にもつれ込んだことだ。「2試合連続の延長15回引き分け再試合」「1大会で2試合の延長15回引き分け再試合」は長い高校野球の歴史でも、春夏の大会通じて史上初という珍しい記録が生まれた。

大会2日目の報徳学園(兵庫)-多治見(岐阜)戦で21-0のような極端なワンサイドゲームもあったものの、これは例外といってよく、接戦が多かったのが今大会の特徴といえる。各校とも守備が堅く、エラーはしても得点に結びつくような決定的なものは少なかった印象だ。全体的に要所要所を好守で締めるチームが目立ったことも接戦の試合を増やした要因といえよう。

ただ、延長戦となった6試合も、データを詳細に検討すると違う側面が見えてくる。全体的に、2桁安打を放ちながら得点が安打数の半分以下というチームが多かった。チャンスにあと1本が出ず、本塁が遠いチームが多かったことも接戦、延長戦を増やした理由として指摘しておく必要がある。高校野球は「春は投手力・守備力、夏は総合力」と言われることが多いが、全般的に「守高打低」で、打撃より守備のチームが目立ったことはこの定石通りといってよいだろう。

同一都道府県から複数の高校が出場する「アベック出場」が多かったのも今年の大会の特徴だ。大阪2校に加え、盛岡大付、不来方(21世紀枠)はいずれも岩手。群馬からは前橋育英、健大高崎。東京から早稲田実、日大三。報徳学園、神戸国際大付(いずれも兵庫)、智弁学園、高田商(いずれも奈良)に明徳義塾、中村(21世紀枠)はいずれも高知。九州からも、福岡大大濠、東海大福岡の福岡勢に秀岳館、熊本工の熊本勢。出場全32校のうち、18校と実に半数以上がアベック出場だ。こんなにアベック出場が多かった大会は記憶にない。これが単なる偶然なのかどうかは今後の推移を見守る必要があるが、「強い都道府県はより強く、弱い都道府県はより弱く」の格差拡大の結果がアベック出場の続出だとしたら、手放しで喜ぶことはできない。

ここ10年ほど、高校野球では関東・東北勢が際立って強く、関西、九州勢が弱い「東高西低」が続いてきたが、今回の大会は、この流れを覆すように西日本勢が久しぶりの強さを発揮した。特に、近畿勢の強さは当ブログ管理人が球児だった往年を偲ばせるものがあった。8強に残ったのは、決勝で対決した大阪勢のほか、報徳学園の近畿勢3校。福岡大大濠、東海大福岡、秀岳館の九州勢3校。東日本勢は健大高崎と盛岡大付の2校にとどまった。4強は、大阪2校に報徳、秀岳館。東日本勢は1校も残れなかった。

ただ、顔ぶれを見ると、大阪桐蔭、履正社、報徳の「常連」校が強さを見せたに過ぎず、これをもって近畿勢全体の底上げといえるかどうかは、これまた推移を見守る必要があろう。東日本大震災以降の東北勢の強さは一時、目を見張るものがあったが、震災から6年目を迎え、そろそろ震災の「魔法」も切れてきたのだろうか。

印象に残った学校としては、21世紀枠での出場を果たした不来方を挙げたい。春の選抜大会は、1年生が不在で、新2、3年生のみのチーム構成となるため、ベンチ入り選手が少ない学校が出場権を得ることがしばしばあるが、当ブログが調べたところ、ベンチ入りの選手が10人での出場は、1987年の大成(和歌山)があるくらいでほとんど例がない。11人での出場であれば、高校野球史上に残る名将・蔦文也監督に率いられ、「さわやかイレブン」の愛称で甲子園に旋風を巻き起こした池田(徳島)の例がある。こうしたベンチ入り選手数の少ない学校がしばしば旋風を巻き起こすのも、夏の大会にはない春の選抜独特の醍醐味といえる。不来方は惜しくも初戦敗退したが、1年生を加えた新布陣で、また夏に戻ってきてほしい。

春はセンバツからと言われる。当ブログ管理人の住む北海道では、3月中旬になっても時折、大雪の降ることが珍しくないが、選抜が終わる4月初旬には大雪が降ることもなくなり、皮膚を突き刺すような痛く冷たい風からようやく解放される。草花の芽吹く春、敗退した球児たちも、頂点を極めた球児たちも、草花とともに成長し、夏を目指して大輪の花を咲かせてほしい。

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