人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

当ブログのご案内

当サイトは列車の旅と温泉をメインに鉄道・旅行を楽しみ、また社会を考えるサイトです。

「あなたがすることのほとんどは無意味でも、あなたはそれをしなくてはなりません。それは世界を変えるためではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためです」(マハトマ・ガンジーの言葉)を活動上の支えにしています。

<利用上のご注意>

当ブログの基本的な運営方針

●当ブログまたは当ブログ付属サイトのコンテンツの利用については、こちらをご覧ください。

●その他、当サイトにおける個人情報保護方針をご覧ください。

●当ブログ管理人に原稿執筆依頼をする場合は、masa710224*goo.jp(*を@に変えて送信してください)までお願いします。

●当ブログに記載している公共交通機関や観光・宿泊施設等のメニュー・料金等は、当ブログ管理人が利用した時点でのものです。ご利用の際は必ず運営事業者のサイト等でご確認ください。当ブログ記載の情報が元で損害を被った場合でも、当ブログはその責を負いかねます。

●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【緊急呼びかけ】緊急のお願いです。10月2日が収集期限の短期間署名へ、取組みご参加を呼びかけます

2019-09-24 00:49:00 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
【追記】以下の緊急署名行動については、目的を達成したため9月30日限りで終了しました。検察官役の指定弁護士が1審の無罪判決を不服として東京高裁に控訴したためです。

ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。

--------------------------------------------------

福島原発刑事訴訟支援団の会員・支援者のみなさまへ

緊急のお願いです。
10月2日までの判決直後2週間内の署名収集取り組みにご賛同・参加を呼びかけます


9月19日、東京地裁は東電元経営陣に無罪判決を下しました。
結論も内容も、酷い判決です。
福島原発刑事訴訟支援団では、検察官役の指定弁護士の皆さんに、控訴のお願いをする緊急署名をはじめました。

▼【緊急インターネット署名】東電刑事裁判元経営陣「無罪」判決に控訴してください!

控訴期間は2週間です。
10月2日までの短期間の署名です。
SNSでの拡散、MLへの転送、各自最大限の波状アクションをお願いします。

紙ベースの @署名用紙(PDF)も作りました。
印刷して、集めてください。
https://drive.google.com/file/d/1GMlD2ricwO2M9nIiAS2s8yi6YrDGAMHF/view?usp=sharing

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2019年9月19日、東京地方裁判所は、東京電力の元経営陣3名の福島原発事故における業務上過失致死傷の罪について「被告人らは、いずれも無罪とする」という判決を下しました。
この判決は、原発が過酷事故を起こさないための徹底的な安全確保は必要ないという、国の原子力政策と電力会社に忖度した誤ったメッセージであり、司法の堕落であるばかりか、次の過酷事故を招きかねない危険な判断です。

2016年2月29日の強制起訴から、検察官役として指定された5人の弁護士のみなさまは、この重大事故の責任を問うために大変なご苦労をされてきたということを、公判の傍聴を通じて感じており、心から感謝しております。裁判所が配布した判決要旨を読むにつけ、裁判所がこの原発事故の被害のあり方、被告人らの行いに対し、正当な評価をしたとは到底思えません。

私たちは、この判決では到底納得できず、あきらめることはできません。
どうか、指定弁護士のみなさまに、控訴をして頂いて、引き続き裁判を担当して頂きたくお願い申し上げます。

多大な仕事量とそのお働きに見合わない報酬しか、国からは支払われないと聞き及んでいるところを心苦しくはありますが、正当公平な裁判で未曾有の被害を引き起こした者たちの責任がきちんと問われるよう、再び検察官席にお立ち頂けますようお願い申し上げます。

=== 福島原発刑事訴訟支援団 ===
福島県田村市船引町芦沢字小倉140-1
https://shien-dan.org/
infoアットマークshien-dan.org
080-5739-7279

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【福島原発事故刑事裁判第38回公判】日本裁判史上に残る最低最悪の判決で日本の刑事司法は中世から原始時代へ

2019-09-22 22:19:04 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
福島原発事故をめぐって強制起訴された東京電力旧3役員の刑事訴訟。第38回公判(判決公判)の模様を伝える傍聴記についても、福島原発告訴団の了解を得たので、掲載する。執筆者はこれまでに引き続き、科学ジャーナリスト添田孝史さん。

----------------------------------------------------------
●「無罪」 証拠と矛盾多い忖度判決

 有罪は厳しいかもしれない、という予想はあった。しかし刑法上の責任を問うのが難しい結果になるとしても、ここまで判決内容が腑に落ちないものになるとは想像していなかった。唖然とした。

 開廷は2019年9月19日、午後1時15分。永渕健一裁判長は「被告人らはいずれも無罪」と言い渡し、それから午後4時半ごろまで、休憩を挟んで約3時間にわたって、とてもメモを取りきれない早口で判決要旨を読み上げ続けた。

 読み上げを聞いていると、「あの証拠と矛盾している」「そこまで言い切る根拠はどこにあるの」「なに言ってんだ、それ」という疑問が次から次へと頭に浮かんできた。この裁判では、証言だけでなく、電子メールや議事録など、事故を読み解く豊富な証拠を集めていたはずだ。よい素材はあったのに、どうしたこんなまずい判決になったのだろう。

 検察官役の指定弁護士を務める石田省三郎弁護士は「国の原子力行政を忖度した判決だ」と記者会見で語気を強めた。

 判決要旨を聞いて浮かんだ以下の疑問点を整理しておきたい。

・事故を避ける手段は、運転停止だけなのか
・「他社や専門家の意見を聞き、必要な対応を進めていた」?
・「外部から東電の対策について否定・再考の意見は出ていない」?
・「長期評価は取り入れるべき知見と考えられていなかった」?
・ずさんな確率計算で長期評価の信頼性を語る愚策
・原電と東電、どちらが合理的だったのか

●事故を避ける手段は、運転停止だけなのか

 判決要旨では、「本件事故を回避するためには、本件発電所の運転停止措置を講じるほかなかった」(p.13)としている。しかし、日本原子力発電が、東海第二原発で建屋への浸水防止、海沿いの盛り土などの工事に2008年に着手し、震災までに終えていた(注1)。日本原電の元幹部は、NHKの取材にこう述べている(注2)。

 「もし津波のリスクがあるなら、事前に対応しておいて万一津波が来ても、大丈夫なようにしておきたい」

 「長期評価などをもとに、津波がいつかくるというリスクは社内で共有されていたと思う。まずはできる対策をとっていき、大規模な工事は今後順次やっていけばいいという考えだった」

 東電も、運転停止しなくても、「まずはできる対策」から着手することは可能だったはずだ。

もともと、原子力安全・保安院が2008年9月に各電力会社に要請した耐震バックチェックは、従来想定を超える新知見があった場合でも運転停止は必要とされていない。運転しながら、3年以内に補強工事を終えることを求めていた。「新知見が見つかれば、即運転停止して対策工事」のような、強い結果回避策は、社会通念上も要求されていなかった。

 判決のこの点については、識者からも意見が多くだされている。

 山本紘之・大東文化大教授「事故を防ぐためには原子炉停止が必要だったとして有罪認定のハードルを不必要にあげている点にも疑問が残る」(東京新聞2019年9月20日朝刊2面) 

 松宮孝明・立命館大教授「事故を回避する方策として、影響が大きい運転停止だけを検討した点は疑問が残る」と語り、他の対策も認めれば、「予見可能性のハードルは相当低くなっていたはずだ」(朝日新聞2019年9月20日朝刊2面)。

 大塚裕史・明治大教授「事故回避の措置として指定弁護士は原発の運転停止の必要性に焦点を当てたが、実行するのは簡単ではなく、有罪のハードルを高めたといえる。控訴するのであれば、運転停止以外の対策でも事故を防げたと立証できるかが、カギとなるだろう」(読売新聞2019年9月20日朝刊38面)

●「他社や専門家の意見を聞き、必要な対応を進めていた」?

 「安全対策でも適宜社内で検討し、他社や研究者から意見を聴き、行政の考えも踏まえた上で必要と判断される対応を進めていた」(判決要旨p.23)

 しかし、実態は「意見を聴き」ではなく、「東電が決定した方針を了承させる根回し」だったことは、議事録や電子メールで明らかになっている。

 たとえば、東電の高尾誠氏が秋田大高橋先生に面談した時のメモには、以下のように書かれていた。

 「長期評価の見解を今すぐ取り入れないなら、その根拠が必要でないかとのコメントがあった」
 「非常に緊迫したムードだったが、(東電の方針を)繰り返し述べた」(注3)

 こんなやりとりを、「意見を聴いて必要と判断される対応を進めた」とする裁判所はおかしいだろう。

 東電は、東北電力が貞観津波の想定を進めていることを聞き、東北電力に圧力をかけて、その報告書を書き換えさせた事実もわかっている(注4)。裁判所は、こんな悪質な方法も「必要と判断される対応」と考えているのだろうか。

 東海第二で津波対策を進めた日本原電の元幹部が、NHKの取材に対して興味深い証言をしている(注5)。

 「他の電力のことも考えながら対策をやるというのが原則でして。東京電力とかに配慮をしながら、物事をすすめるという習慣が身についている。対策をやってしまえば、他の電力会社も住民や自治体の手前安全性を高めるため対策をとらないといけなくなる。波及するわけです。だから気をつけている」。東電の無策が福島の地元にばれてはいけないから、日本原電は、東電が先延ばしした長期評価津波への対策を、こっそり進めていたというのだ。

●「外部から東電の対策について否定・再考の意見は出ていない」?

 「東京電力の取ってきた本件発電所の安全対策に関する方針や対応について、行政機関や専門家も含め、東電の外部からこれを明確に否定したり、再考を促したりする意見が出たという事実も窺われない」(判決要旨p.24)

 外部から意見を言う前提には、東電の安全対策に関わる情報が開示されている必要がある。ところが、東電は高さ15.7mの津波計算結果(2008年)、高さ10mを超える津波は炉心溶融を引き起こすこと(2006年)など、重要な情報をずっと隠していた。

 専門家といっても、詳しい領域は限られている。地震や津波の専門家は、対策の専門家ではない。津波想定が10mを超えるとクリフエッジ的に被害が一気に拡大するという情報を持っていない。逆に、対策の専門家(プラントの機電側)は、従来想定を超える高い津波を地震学者がすでに予測されていることを知らなかった。そんな状況で、東電の安全対策を否定したり、再考を促したりすることは不可能なのだから、「専門家から意見が出たという事実は窺われない」という判決の指摘は的外れだ。

 保安院は2006年ごろ、東電と日本原電を名指しで「津波想定の余裕がない」「ハザード的に厳しい地点では弱い設備の対策を取るべきなど、厳しい意見が(保安院やJNESから)出ている」として対策を促していた(注6)。行政機関から意見は出ていたのだ。その後、日本原電は対策をしたが、東電は先延ばしを続けた。

●「長期評価は取り入れるべき知見と考えられていなかった」?

 「長期評価の見解は、本件地震発生前の時点において、他の電力会社がこれをそのまま取り入れることもないなど、原子炉の安全対策を含む防災対策を考えるに当たり、取り入れるべき知見であるとの評価を一般に受けていたわけではなかった」(p.30)

国の研究開発法人である日本原子力研究開発機構は、東海再処理工場の津波想定で、長期評価の見解そのままを「採用する」(2008)としていた(注7)。日本原電は、「そのまま」ではなく日本海溝沿いの北部と南部で地震の規模を分けたものの、前述のように長期評価の見解にもとづく対策工事を実施した。

 土木学会津波評価部会も、2009年以降進めていた津波評価技術の改訂作業で、「日本海溝沿いのどこでも津波地震が起こりうる」という長期評価の考え方を取り入れようとしていた。

 判決の指摘は、まったく的外れだ。

●ずさんな確率計算で長期評価の信頼性を語る愚

 「1〜4号機の津波ハザード曲線は、10mを超過する確率が10万年に1回よりやや低い頻度にとどまっており、これは通常設計事象としてとりこむべき頻度であるとまでは必ずしも考えられていない。津波ハザード解析の結果も、長期評価の信頼性が高いことを示していたとは言えない」(p.31)

 この津波ハザード解析は、津波評価部会メンバー(約半分は電力社員、地震の専門家はごく少数)へのアンケート結果をもとにしているから、その結果には限界がある。JNESが震災後に計算しなおしたら、一桁違う値が出ている(注8)。この程度の根拠しかない数値を根拠に長期評価の信頼性を判断するのは暴論だ。

●原電と東電、どちらが「合理的」だったのか

 「法の定める安全性は、どのようなことがあっても放射性物質が外部に放出されることは絶対にないといったレベル、あるいはそれとほぼ同じレベルの、極めて高度の安全性を言うものではなく、最新の科学的、専門的知見を踏まえて、合理的に予測される自然災害を想定した安全性であって、そのような安全性の確保が求められていたものと解される」(p.36)。

 「被告人3名がそれぞれ認識していた事情は、津波の襲来を合理的に予測させる程度に信頼性、具体性のある根拠を伴うものであったとは認められない」(p.39)

 「合理的に予測される」と考えたからこそ、日本原電や東北電力は、地震本部の長期評価や貞観地震への備えを進めたのだろう。東電もどちらかの地震を想定すれば、10mを超える津波への対策をしなければならなかったが、二つとも先送りし、大事故を引き起こした。

 地震本部の長期評価にもとづく高い津波を想定して「できることから」対策を進めた日本原電、一方2016年まで先送りすることにして事故時まで何も対策しなかった東電、どちらが「合理的」だったと裁判所は考えているのだろう。日本原電や東北電力の備えは「極めて高度な安全性」を求めた過剰なもので、運転停止どころか簡単な対策さえもしなかった東電こそが「合理的」とでも言うのだろうか。

注1)第23回公判(2018年7月27日) 日本原電で津波対策を担当していた社員の証言

注2)WEB特集東電裁判“見えた新事実”

注3)第6回公判(2018年4月11日)

注4)https://level7online.jp/2019/検察調書が明らかにした新事実/

注5)WEB特集東電裁判“見えた新事実”

注6)原子力安全・保安院 小野祐二氏の調書(刑事裁判甲B75)

注7)https://level7online.jp/2019/jaea、「明治三陸型」大津波を茨城沖で想定していた/

注8)国会事故調報告書p.93

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「無罪」に怒りあらわ 東電旧経営陣に判決

2019-09-20 22:07:37 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
「無罪」に怒りあらわ 東電旧経営陣に判決(岐阜新聞)

既報の通り、当研究会もずっと関わってきた東電の刑事訴訟は、争う余地のないと思われた予見可能性すら全否定する最低最悪の判決となった。

ただ判決は自己矛盾、自己崩壊のオンパレードで、義務教育を終えた普通の日本人でこの判決に納得できる人間は1人もいないと断言する。

以下は当研究会がレイバーネット日本に発表した当日レポートである。

1点の曇りもない不当判決~「原発事故無罪放免」に激しい怒り相次ぐ 東京地裁前9.19レポート

「企業免罪請負人裁判官」による白昼公然たる犯罪人釈放--9.19東京地裁判決をひと言で表するならそのようにいえよう。「この判決にも少しくらい評価すべき点があるのでは?」との質問に私は答えよう。「ゼロだ」と。東電経営陣のくだらない言い訳をそのままコピペした判決要旨なんて、配られたところで読む気もしない。おそらく今後も読まないだろう。

「9.19を日本の司法が死んだ日として長く心に留めよう」なんて陳腐なことを今さら書くつもりはない。この世界で長く生きてきて、司法の死なんてもう100回くらい見てきている。そんなことをしていたらカレンダーは1年中「司法死亡記念日」だらけになってしまうからだ。この間の経過を見てきた私からすれば、十分予想できる判決だったし、「また死ぬのかよ」「日本の司法は一体何回死ねば気が済むんだ」という以上の感想は持ち得なかった。うず高く積み上げられた司法という名の屍の上に、新たな1体が積み上げられた--私の認識はその程度のつもりだった。

しかし、地裁前では福島で今も生きる人、福島から避難した人たちの激しい怒りの声が続く。福島市在住の元原発作業員、今野寿美雄さんは「ここまでの事態を起こして誰も責任を取らないなんてことがあるか!」と声を張り上げて東電と裁判所を糾弾した。

私もスピーチを依頼され、マイクを握る。今野さんの怒りが乗り移ったのか、それとも今朝から影を潜めていた、真夏を思わせるような強い日差しが突然、照りつけてきたせいか、昨日から考えていたスピーチ内容が頭の中から飛んでしまった。

「判決に腹の底から怒りを感じます。今も数万の人たちが自分の家に帰れないでいるのに誰も責任を取らないんですか! 300人の子どもたちが甲状腺がんになっているのに誰も責任を取らないんですか。汚染水を流す流さないの議論が続いていますが、議論以前に汚染水を作り出したのは誰ですか? 作り出した者が責任を取らないで誰が取るんですか?」

気づけば国、東電、原子力ムラへの怒りをぶちまけていた。

腹の底から怒りをぶつけすぎたせいか、突然、マイクの音声が出なくなった。あいにく電池切れのようだ。代わりのマイクも混乱状態で来ない。「もう肉声でいいからやれ」という声がどこからか飛ぶ。覚悟を決め、大きな声を出せるよう深呼吸する。だがこの一瞬の中断でのおかげで冷静さが戻り、場の雰囲気も見えてきた。

「16日、代々木公園でのさようなら原発集会にも私は参加をしました。高校生平和大使の若い人たちが懸命に署名を集めている。私は、彼女たちに原発事故当時のことを話しながら署名をしました。『原発事故が起きると国、自治体、マスコミ、学者はもちろん、親兄弟、親戚や友人まですべてが信じられなくなる。最も身近にいる愛すべき人が信じられないとか、信じていたのに裏切られたとか、そんな言葉を福島で何度も聞いた。だから私は若いあなたたちが再びそんな言葉を使わなければならないような世の中にはしたくない。そんな世の中にしないのが大人だと思っている』と話しながら署名を書いたんです。それが、何ですかこの判決は! 一生懸命署名を集めている若者たち、甲状腺がんで苦しむ子どもたちに私はこの判決をどう報告したらいいんですか!」

抑えたはずの怒りが再びこみ上げてきた。

「信じられない、あり得ないと今、多くの人がここで話をしました。しかし私はこんな判決くらい何とも思っていません。敵よりも1日長く闘うだけです。敵が100年、原発を推進してくるなら私は100年と1日反対します。原子力ムラが1万年原発を推進するなら私は1万年と1日闘うでしょう。あきらめず最後まで闘い抜きます」

そう決意表明したところでマイクが戻ってきたが、肉声でも十分私の声はメディアに伝わったと思う。「腹の底から怒りを感じます」という私の訴えは、NHK「ニュース9」で放送された。絵になるシーンを作れば、案外、メディアは報じるものだ。そんなことも思った判決直後の地裁前だった。

午後2時から日本弁護士会館で始まった集会は、急遽、報告会から抗議集会に名称を変えて行われた。福島在住者、避難者たちが次々とマイクを握る。「日本の国がこんなに悪いことをしているのにマスコミは隣の国のことばかり。しかし、今日、私の話、苦しみに最も耳を傾けてくれたのは、隣の国のマスコミでした」という菅野みずえさん(浪江町から兵庫県に避難)の話には拍手が起きた。この国はメディアも腐りきっている。会場内でテレビカメラを回している関係者に目をやる。カメラマンがレンズから一瞬、目を背け、表情を曇らせるのを私は見逃さなかった。避難者からのストレートな批判はマスコミ関係者にはかなり堪えたようだ。

この集会では、10人以上の人が登壇し発言した。弁護士を除く一般参加者で、男性の発言者は今野さん、長谷川健一さん(静岡県への区域外避難者)、そして避難の協同センターの瀬戸大作事務局長のみ。後は全員が女性だった。原発事故は人々を平等には襲わない。いかに女性に集中的に被害が出ているかを象徴するシーンだ。

「今後、どうしたらいいか私はわかりませんが、それでもこのままというわけにいかない。右足、左足、とりあえず交互に出せば前には進む。そうやって再び歩き出すしかない」。菅野さんは自分自身を励ますように声を絞り出した。

抗議集会終了後は裁判所内の司法記者クラブに移動。指定弁護士の会見会場はメディアであふれ、会場外からはまったく声が聞き取れない。その後、同じ場所で行われた被害者代理人弁護士の記者会見で、福島原発刑事訴訟支援団の武藤類子副団長は「福島県民の誰ひとりこの判決に納得していない。指定弁護士には控訴を願っている」と述べた。海渡雄一弁護士は「指定弁護士側に有利な証拠を裁判長はことごとく黙殺、被告らに都合のいい部分のみつまみ食いして無罪放免した。どうせマスコミは判決要旨しか見ない、長い判決文は読まないと高を括って、都合よくつまみ食いした部分だけを判決要旨にまとめているので、みなさんも判決要旨の取り扱いには注意してほしい。その判決要旨がすべてだという報道はしないでほしい」とメディアに注文をつけた。

「裁判長は一貫して、原発事故の責任追及に立ち上がった我々をまるで暴民暴徒であるかのように敵視し続けた。女性傍聴者のスカートの中まで調べる徹底的な身体検査が毎回行われたのはその証拠といえる。こんな裁判長に無罪にされたからといって、気にすることはないですよ」。河合弘之弁護士が怒りにほどよく冗談をブレンドして解説すると笑いが起きた。

永渕健一裁判長は1990年任官の57歳。薬害エイズ事件の大阪高裁判決では1審判決をわざわざ破棄し、刑を軽くした「前科」もある。たいした業績もなく、この年齢になっても地裁判事というのは明らかに裁判官の昇任ペースとしては遅すぎる。仕事ぶりに対する裁判所内部での評価が高くないことは明らかで焦りもあったのだろう。私も指定弁護士による論告求刑、被告側最終弁論を相次いで傍聴したが、居眠りをする勝俣恒久元会長に対して怒りの声を上げた傍聴者を逆に怒鳴りつけるなど、市民敵視は明らかに度を超えていた。この間、この裁判長の人権侵害に対し、国賠訴訟を起こしたいと何度か思ったほどだ。だからこそ今回の判決は「想定内」だった。こんな訴訟指揮を続ける裁判長からまともな判決が聞けたらそれこそ奇跡というものだ。

永渕裁判長の「前科」を暴いたのは、原発推進御用紙であるはずの産経だ。敵性メディアと思っている媒体でも、現場レベルではよい働きをする記者がいるという事実も記しておきたい。

なぜ産経がこうした事実を暴いたのかはわからない。単純に記者の良心がそうさせたのだと好意的に解釈しておいてもよい。だが、3.11以降の産経の報道を注意深く観察すると、そこには原発と原子力ムラに対する危機感が見て取れる。「こんなずさんな状況を放置したら、原発事業が今後、日本では立ちゆかなくなる。原発推進を主張できなくなる」という、私たちとは正反対の意味での危機感だ。

その産経の危機感、そしてこの日、永渕裁判長が述べた「自然現象について、想定できるあらゆる可能性を考慮し、必要な措置を講じることが義務づけられれば、原発の運転はおよそ不可能になる」との懸念は当たっている! 実際、原子力規制委員会が原発にテロ対策工事を要求し、期限内に完成しなければ来春以降原発停止を命じる可能性をほのめかすなど、現実は推進派の懸念通りに進行している。「あらゆる可能性を考慮し、絶対に事故を起こさない原発を作れ」と要求し続けることこそ、遠回りに見えて最も確実な原発廃絶への道かもしれない。

「これでも罪を問えないのですか!」--福島原発告訴団が、発足以来、刑事告訴運動を続けるなかで掲げてきたスローガンだ。だが「これでも罪を問えなかった」今、私たちはどうすべきだろうか。抗議集会の中にそのヒントがある。「私たちが何か悪いことをしたのか」「何も悪いことをしていない私たちがなぜこんなに苦しみ、悪いことしかしていない人がのうのうと大手を振って生きているのか」という声を多くの人々から聞いたことだ。

筆者も、福島原発告訴団には第1次告訴から関わってきたが「私たちは何も悪いことをしていない」が立ち上がるきっかけであり原点だった。もう一度、被害者全員がこの原点に返るときだろう。政治、行政、司法、メディア。すべてが極限まで腐りきり浮上のきっかけすら見えないどん底の絶望ニッポンから這い上がるためには、どんな暗黒にあっても消えることのない一筋の光--「私たちは悪くない」にもう一度しっかり軸足を置き、そこから再び歩き始める以外にないのではないか。この日の会場からは、そんな決意の声も多く聞かれた。原子力ムラ住民たちは、福島県民、被害者のこの怒りを甘く見ないほうがいい。

(文責:黒鉄好)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日高本線存続に向け、7団体が共同で緊急集会

2019-09-05 06:48:34 | 鉄道・公共交通/交通政策
日高線存続へ7市民団体が緊急集会 札幌(北海道)

------------------------------------------------
 JR日高線鵡川―様似間の存続を求める市民団体による緊急集会が3日、札幌市内で開かれた。集まった86人が鉄路存続に向け活動の活性化を確認した。

 JR日高線を守る会、北の鉄路存続を求める会など道内七つの市民団体が初めて共同開催した。

 会場ではJR日高線を守る会の真壁悦夫事務局長が「バスの運転手不足が言われる中で、バス転換ありきの議論はありえない。最後まで戦い抜く必要がある」とあいさつ。JR北海道研究会の小田清・北海学園大名誉教授(地域開発政策論)は「鉄道は地方でもサービスを平等に受けられるもの。地方が育たなければ札幌もだめになる」と訴えた。

 鵡川―様似間について、沿線7町は早ければ24日に町長会議を開き、《1》全線復旧《2》鵡川―日高門別間の復旧、残りをバス転換《3》全線バス転換―のいずれかの方向性を出すとしている。(石垣総静)
------------------------------------------------

JR北海道が「維持困難」とした10路線13線区のうち、国にも道にも見捨てられ、孤立無援の中で廃線ありきの議論が続いている5線区。そのうち日高本線について、9月24日に予定されている沿線自治体町長会議でこれまでの(1)全線復旧、(2)全線バス転換、(3)一部転換の3案を、「1案に絞り込む」との報道されている。

そうした情勢を受けて、廃線を阻止するため、9月3日、札幌市内で集会が開催。緊急の呼びかけにもかかわらず、100人の会場が埋まった。当研究会代表が、「JR日高線を守る会」として発言を行った。その内容を以下、紹介する。

------------------------------------------------

 お疲れ様です。

 いわゆる維持困難線区の中で、日高本線――あえて「本線」であることを私は強調したいと思いますが、いま最も切迫した情勢にあるのがこの日高本線です。廃線が提案されている鵡川~様似で116km、苫小牧~様似の全線だと146.5kmもあります。九州でいえば、福岡市(博多駅)~長崎市(長崎駅)までが153.9kmですからほぼ同じ距離です。日高本線をなくすというのは、九州の人に向かって、福岡市から佐賀県を通って長崎まで、各駅停車の路線バスで行けというのと同じです。そんなやり方はまともな先進国の交通政策ではないということを、まず初めに強調したいと思います。

 2015年1月に不通になってから4年間以上経ち、静内高校など地元の学校では鉄道で通学した経験を持つ現役生徒がすでにいなくなっています。「列車が走らなくなると、優秀な生徒を集められなくなる。ますます地域の衰退に拍車がかかる」という校長先生の危惧が現実のものになりつつあります。鉄道で日帰りできた地域へ、代行バスでは泊まりがけになることで、行くのをあきらめた障がい者の方もいます。

 「たかが移動くらいで」というのは交通強者の発想です。先の参院選では、重度の障がいのある人でも、有権者の付託を受けて国会議員になれることが証明されました。「お前たちは少数派なのだから多数派の言うことを聞け」は民主主義ではありません。1人の弱者を守れない社会が一般市民を守ることができるとは私は思いません。多数派こそ1人の弱者に寄り添う社会、それを作ることができるかどうかが、今まさにこの日高沿線で試されているのです。沿線自治体協議会も、町村会やJRとの協議の場もすべて非公開。住民はおろか地元議員すら会場に入れないという密室状態で行われています。日高では民主主義が死につつあります。

 国鉄末期の特定地方交通線対策協議会では、自治体はもちろん、病院などの関係者、PTAなどの学校関係者も参加した場で話し合いが行われました。今の日高とは対照的です。協議が2年間まとまらなければ国鉄が勝手に廃止届を出してしまう。そんな時間的制約の中で、第三セクター鉄道、あるいはバス転換、各地でその地域の実情に見合う結論が出されました。83線区のうち約4割、38線区が第三セクター鉄道に転換した中で、国鉄分割民営化から32年経った今も廃止がわずか5線区だけというのは驚くべきことだと思います。第三セクター鉄道をみんなで支え、盛り上げ、存続させていこうという動きを作ることができたのも、みんなで徹底的に話し合い、民主的に導き出した結論だったからではないでしょうか。

 私たち、JR日高線を守る会は8月27日、日高町村会に申し入れをしました。私たちは町村会に結論を白紙委任したわけではない――申し入れ書にはそんな私たちの鉄路を守る決意が書き込まれています。浦河の池田町長は頑張っています。池田町長がいつまでも折れないから、バス転換を町村会で多数決で決めようという動きが毎回のように浮かんでは消えるというのが今の日高線をめぐる情勢です。多数決という暴挙を許してはなりません。もう一度繰り返しますが民主主義とは少数派が多数派に従うことではありません。最も困っている1人に寄り添うことが民主主義なのです。地動説を唱えているのは当時、世界でガリレオ1人でしたが、今、世界中の誰もが地動説が正しいことを知っています。100年後「やっぱりあなたたちのほうが正しかった」と言われるように頑張らなければいけない。そのためにも今が踏ん張りどころだと私は思っています。

 今日この集会で、日高沿線自治体に対するFAX行動などが提起されると聞いています。たとえ町村会で多数決による強行採決が行われたとしても悲観することはありません。整備新幹線の開業にあたって、並行在来線が第三セクター鉄道としてJRから切り離されるときも、沿線自治体の首長全員が同意書に印を押しています。整備新幹線建設に関する政府与党合意で『具体的なJRからの経営分離区間については、……沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定する』と決められているからです。九州新幹線長崎ルートでは、沿線自治体のうち鹿島市、江北町が在来線切り離しに「不同意」を表明したため、第三セクター鉄道として並行在来線を「厄介払い」しようとしたJR九州の野望を阻止しました。路線を廃止するときの地元同意の手続をどのようにすべきか定めた法律や文書はありません。法律上、地元同意は廃線の条件ではないからです。しかし、JRから第三セクター鉄道に変わるだけで、線路が残るときでさえ沿線自治体の首長全員が同意書に印鑑を押しています。線路が完全になくなってしまう廃線がこれより軽い手続でよいなどということは、常識的に考えてあり得ません。先日、地元が廃線に同意した札沼線沿線を見ても、沿線4町の町長全員が同意書に印鑑を押しています。ひとりでも印鑑を押さない首長がいれば地元同意とはならないと考えるべきです。池田町長をみんなで支え、盛り立てる。もう1人くらい廃線反対の首長を沿線に送り出す。そうすることで、廃線はいくらでも阻止できると私は考えます。町村会で採決されても、闘いはむしろこれからです。単に廃線を阻止するだけでは足りません。私は、死につつある日高の民主主義をこの闘いを通じて取り戻したいと思います。

 もうひとつ、重要な問題を指摘しておかなければなりません。今日の集会、冒頭からみなさん異口同音にバス、トラックなど大型車のドライバー不足の問題を指摘していますがそのことについてです。実は、今から11年も前の2008年、「輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の検討」という報告書を、他ならぬ国交省自動車交通局貨物課が取りまとめています。運転手の低賃金、重労働に対し、このまま国が何の手も打たなければ2015年には全国でトラックドライバーが14万人も不足するという試算結果がこの報告書では示されています。国交省は少なくとも2008年段階で、いずれこのような事態が起きることを知っていたにもかかわらず何もしませんでした。トラック物流に新規参入しやすくする規制緩和をしたのは国です。その結果過当競争が起き、トラック運賃も、運送会社の売り上げも利益も、その結果としてドライバーの賃金も、すべてダダ下がりになっていくのを傍観したまま何もせず、指摘されたとおりにドライバー不足という結果を招いた国交省。一事が万事、その場しのぎ、その日暮らしで行き当たりばったりの交通政策しか取れなかったからこそJR北海道問題もこれだけ大きくなったのです。そんな怠惰の限りを尽くしてきた国交省に私たち道民が「お前たちの地元路線は廃線だ」などと言われる筋合いはこれっぽっちもない。我々に廃線などという前に国交省にこそ反省してもらいたいと思いますし、私は国交省の責任を追及すべきだと思います。

 日高本線、そして維持困難10路線13線区、残るすべての路線を守るため、私は最後のひとりになっても頑張り抜く決意です。今日この場にいらっしゃるみなさんも同じ決意を固められていることと思います。ともに頑張りましょう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする