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東北新幹線「はやぶさ・こまち」分離事故について/安全問題研究会

2024-09-22 16:38:27 | 鉄道・公共交通/安全問題

(この記事は、当ブログ管理人がレイバーネット日本に投稿した記事をそのまま掲載しています。)

黒鉄好@安全問題研究会です。

東北新幹線で先日起きた「はやぶさ6号・こまち6号」の列車分離事故については、今後の調査や報告を待ちたいと思いますが、取り急ぎ、現時点でのコメントです。

「はやぶさ6号・こまち6号」の連結器が走行中に外れ、両列車が分離した事故に衝撃を受けています。この手の事故は、在来線では古くからあるものですが、高速走行中の新幹線では、報道されているように初の事態です。

鉄道車両のブレーキは、自動車でもバス・トラックなどの大型車に導入されているものと同じです。圧縮空気の力でブレーキパッドを車輪に押し当て、摩擦で止めます。圧縮空気は、機関車/先頭車からの操作によって、車両同士を結んでいるパイプを通じて後方の車両に順次、送られていきます。この圧縮空気の力で、ブレーキパッドを操作しています。

この状態で、連結器が走行中に外れると、圧縮空気のパイプも引きちぎられて外れます。パイプが外れると、圧縮空気が一気に抜け、ブレーキパッドが車輪の上に落ち、摩擦で急ブレーキがかかります。外れた連結器よりも後ろ側の車両はもちろん、それより前の車両も空気が抜け、すべて止まってしまいます。このようにすれば、全車両が駅間で停車してしまうため、外れた連結器より前の車両だけが先の駅・区間まで走り去ってしまう事態も避けることができます。

海外事情には詳しくありませんが、少なくとも日本の鉄道では、走行中の列車の連結器が外れた場合、このような形で自動的にブレーキがかかる仕組みになっています。今回もこの「フェイルセーフ」が安全側に作動したという意味では、長年の事故対策の取り組みが生きているといえますが、問題はフェイルセーフの作動を手放しで礼賛し、事故そのものを不問に付そうという動きが(特にネットを中心に)早くも出てきていることです。

安全問題研究会は、こうした「知ったかぶりの薄っぺらなフェイルセーフ礼賛論」とは当然ながら距離を置いています。フェイルセーフについて論じる場合は、それが確立された歴史的経緯にもっと目を向けるべきです。

鉄道の歴史を見ると、駅間には列車を検知する軌道回路がない時代が長く続きました。そのような区間では、定められた区間(閉塞区間)内のどこかに列車がいるものと推定する方式で列車のコントロールをしていました。この列車が次の閉塞区間に到達するまで、後続列車/反対方向の列車を発車させないという「最低ライン」さえ守れれば、少なくとも衝突は防げるので、それでいいという運行形態だったのです。

そんな時代に、ある列車の連結器が途中から外れ、機関士(機関車運転士)は「なんとなく列車が軽くなったような気がした」ものの、まさか連結器が外れたと思わず、そのまま走り去りました。外れた連結器より後ろの車両は、本線上に取り残されたままになっていますが、駅間に軌道回路がない区間では、取り残された車両を検知する手段がありません。そのため、別の列車が走ってきて、本線上に取り残されていた車両と衝突するという事故が、国鉄時代に実際に起きています。

全国のすべての駅間に車両検知装置を設置するには莫大な費用がかかり、当時の国鉄の予算では難しかったため、国鉄は「次善の策」として、連結器が外れると自動的にブレーキがかかるように車両を改造しました。

連結器が外れた場合に、自動的にブレーキがかかる仕組みは、このような経緯を経て確立されたものです。それを、さも初めから存在していたかのように「フェイルセーフ万歳」と礼賛することは、かえって事故原因の究明や再発防止策の決定を難しくしてしまうため、有害でしかありません。特にネット上では、企業批判と見るとすぐに絡んでくる人が多いのですが、こうした「贔屓の引き倒し」的行動が、かえって擁護しているはずの企業の寿命を縮めていることに、そろそろ気づくべきでしょう。

連結器が外れると、圧縮空気のパイプも外れ、空気が抜けてブレーキがかかる安全装置として出発した仕組みですが、当然ながら欠点もあります。それは、一度圧縮空気が抜けてしまうと、分離した車両を再び連結し、外れたパイプもつなぎ直した後、圧縮空気を充填するまでブレーキが解除できない点にあります。これにより復旧に時間がかかるため、最近では圧縮空気を抜く代わりに、電気信号でブレーキをかける方式に順次、取り替えられています。新幹線は初めからこの方式で出発している車両も多く、今回の「はやぶさ・こまち」もこの方式によっています。

そのため「異常な電気信号が送られ、連結が解除されたのではないか」との見解を述べる鉄道ジャーナリストもいますが、私は、現時点ではこの見解に疑問を持っています。というのも、「はやぶさ」用車両(E5系)は2011年3月改正、「こまち」用車両(E6系)は2013年3月改正から登場しており、両系統の連結運転はすでに11年の歴史を持ちます。(この車両に固有のトラブルであれば別ですが)電気系統の異常なら、もっと早い段階で今回のような事態が発生していてもおかしくなく、「なぜ今、この時期なのか」という疑問が拭えないからです。

これに対し、鉄道アナリスト川島令三氏は「老朽化で連結器を固定したピンが摩耗し外れたのではないか」とする見解を述べています。連結運転開始から11年という時間経過を考えると、現時点ではこちらのほうに説得力があります。

ところで、東北新幹線が自然災害以外のトラブルで止まるのは、今年に入ってからだけですでに5回目と報道されています。今年は、東海道新幹線でも、保線車両の衝突事故で新幹線が丸1日不通になるという事態も起きました。明らかにトラブルが激増しています。自然災害まで含めると、特に8月は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表により、東海道新幹線が1週間にわたって徐行運転となったほか、「ノロノロ台風」10号の影響もあり、8月はお盆の最繁忙期が含まれていたにもかかわらず、ダイヤ通りに動いた日は数えるほどしかなかったのではないでしょうか。

自然災害は仕方ありませんが、JR自身によるトラブルが激増しているのは気がかりです。新型コロナによって、旅行・出張が手控えられた結果、ガラガラ状態で出発する新幹線の映像は世界に衝撃を与えました。あの「緊急事態宣言」から4年――常時満席→コロナでガラガラ→再び常時満席という両極端な利用状況が繰り返された結果、JR各社の基礎体力が大きく削られ、それまでは当たり前にできていた多くのことができなくなっているのが、長年、公共交通専門家としてこの世界を見てきた私にはわかるのです。

ただ、JRをはじめとする鉄道会社の生命力に陰りが見えていることを、私はすでに「生命力尽きたJRグループ~新幹線殺人事件から見えたJRの「最終章」」という記事(2018.6.14付け)で明らかにしています。6年も前の記事ですが、表向きは巨大な黒字を計上していても、JR各社が衰退していく未来は、この時点で私にははっきり見えていました。

ここまで基礎体力を落とし、衰弱したJRの現在の6社体制をそのままにして、復活は難しいと私は思っています。労働安全の世界では、ハインリッヒの法則(1:29:300--1つの大事故の裏に29のヒヤリ・ハットと300の小さなトラブルがある)がよく知られています。今年に入ってからだけで6回も発生したトラブルは、明らかなヒヤリ・ハットの世界です。

こうした状況が続いているのに、今回の列車分離事故について、運輸安全委員会が「重大インシデントに当たらない」として早々に幕引きを図っているのが不思議でなりません。というのも、今回と同じように走行中の列車の連結器が外れた2023年11月の大井川鐵道(静岡県)の事例では、運輸安全委員会は直ちに「重大事故」として現地調査に入っているからです。速度の遅いローカル私鉄での「連結器外れ」が重大事故なのに、時速315kmで約1000人近い乗客を乗せて走っていた新幹線でのトラブルが重大事故はおろか、重大インシデントにも当たらないという判断は不公平で怒りを感じます。これでは、運輸安全委員会は「強い者には優しく、弱い者にだけ厳しい組織」「JRに不当な忖度をする組織」だと思われても仕方ありません。

直前に連結し直す作業したのに…連結器”外れ”は「重大事故」 国交省が調査を開始 静岡・大井川鉄道

いずれにせよ、「フェイルセーフが作動して良かったね」で済まさせるトラブルではありません。引き続き、推移を注意深く見守りたいと思いますが、この記事を読んでいるみなさんにだけこっそりとお教えします。

「トラブルが打ち続いているのに何ら有効な手を打てない」「トラブルの発生頻度が加速度的に増えている」という意味で、今のJRの状況からは、福知山線脱線事故が起きる直前のJR西日本と同じ薄気味悪さを感じます。誤解を恐れず言いましょう。このままでは、向こう数年以内に、新幹線で大事故が起きます。

(取材・文責:黒鉄好)


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【転載】<JAL被解雇者労働組合(JHU)声明>JAL123便(御巣鷹の尾根墜落)事故から39年にあたって~日本航空は負の歴史を繰り返してはならない~

2024-08-12 23:41:03 | 鉄道・公共交通/安全問題
JAL123便御巣鷹事故から39年目を迎えた12日、JHU(JAL被解雇者労働組合)が声明を発表しました。レイバーネットからの転載です。

なお、安全問題研究会では、JHU構成団体の1つ、ジャパンキャビンクルーユニオンが呼びかけている「客室乗務員を航空従事者に位置付け、全ての脱出扉に乗務員の配置を義務化する請願」に引き続き取り組んでいます。8月31日が第1次集約ですが、その後も継続して取り組みます。みなさんのご協力をお願いします。

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<声明> JAL123 便(御巣鷹の尾根墜落)事故から39年にあたって~日本航空は負の歴史を繰り返してはならない~

 1985年8月12日JAL123便が群馬県御巣鷹の尾根に墜落し、乗客乗員520名の尊い命が奪われた事故から39年が経過した。改めて亡くなられた方々に哀悼の意を捧げます。

 単独機として世界最悪の事故を起こした日本航空は、経営陣が刷新され、「絶対安全の確立」「現場第一主義」「公正明朗な人事」「労使関係の安定融和」の4方針が掲げられた。「機長の組合活動の自由」が認められ、「組合所属による客室乗務員の昇格差別の見直し」が行われたのは、労働組合が長年要求してきた“差別のない自由にモノが言える職場”の重要性が認識されたからであった。

 2005年に「事業改善命令」を受けた日本航空は、安全アドバイザリーグループ(座長: 柳田邦男氏)を立ち上げ、経営破綻直前の2009年に2回目の提言書「守れ、安全の砦!」 が提出された。その内容は、「コスト削減より安全の層を厚くすること。ベテラン社員の技術・ノウハウは無形の財産であり、次世代に継承していく日常的な生身の接触が重要である」など、今日そして未来に生かすべき空の安全にとって普遍的なものである。

<利益第一主義では安全は守れない>

 しかし、2010年の経営破綻後、日本航空の最高経営責任者となった故・稲盛和夫氏は「安全、安全と御巣鷹事故がトラウマになっている。利益なくして安全なし」と公言し、公共交通機関の使命とは相容れない「最少の費用で最大の利益を求める」経営理念を導入した。 結果、安全を守る基盤である職場環境の悪化は進み、整備の現場や客室乗務員の職場では中途退職者が後を断たず、人手不足は逼迫した状況になっている。

 JALは昨年末から続いている不安全事例(滑走路への誤侵入、飲酒問題、機体接触など)で国交省から「厳重注意」を受けた。これに対し、日本航空が報告した安全対策は、上意下達の管理強化と精神論であり、真の再発防止策とは言えない内容となっている。

 特に、1月2日に5名の犠牲者を出した海保機との衝突事故について、「何故、回避できなかったのか?」について社内での調査・分析は全く行われず、それどころか、日本航空は事故後の対応で被害者の如く振舞っている。

 私たちは30年以上の乗務経験があり多くの事故を社内で経験して来た。不安全事例が相次いでいる現状が、1970~80年代の連続事故当時の状況と酷似していることから、重大な危惧を抱いている。経営破綻を口実に“モノ言うベテラン乗務員”を中心に165名を解雇したことで、経験を尊重する風土がなくなり、連続事故の教訓が活かされていない今日の状況は、“いつか来た道”を辿ることになるのではないかと憂慮する。

 日本航空は負の歴史を繰り返してはならない。私たちは、日本航空が直ちに解雇争議を解決して、自由にモノの言える健全で明るい職場を取り戻し、安全運航を支える基盤を再構築することを強く求める。私たちは本日決意を新たに、解雇争議の早期全面解決に向け運動を更に強化していく。

2024年8月12日
JAL不当解雇撤回争議団・JAL被解雇者労働組合(JHU)

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航空管制官、増員へ 安全問題研究会の問題提起実る

2024-06-25 21:03:13 | 鉄道・公共交通/安全問題
羽田空港衝突事故、再発防止策を正式公表 滑走路誤進入に警報音(毎日)

 東京・羽田空港で今年1月に日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突した事故を巡り、国土交通省の対策検討委員会は24日、再発防止策の中間まとめを正式に公表した。滑走路への誤進入を知らせる警報音の導入や、管制官の増員など、ハードとソフトの両面から対策を進め、総合的に事故の防止を図る。

 航空安全の専門家らで作る検討委は中間まとめで、滑走路での衝突事故の多くは管制官やパイロットの思い込みや言い間違いなどに起因する誤進入によって起きていると指摘。ヒューマンエラー(人的ミス)が事故につながらないよう多重の対策を求めた。

 事故では1月2日夜、離陸のためC滑走路に進入した海保機に、着陸してきたJAL機が衝突。JALの乗員乗客は全員脱出したが、海保機では機長を除く5人が死亡した。

 海保機は管制の許可を得ず滑走路へ進んでいたが、管制官は気付かなかったとみられている。現在のシステムでは、管制官の手元のモニター画面に誤進入が表示されるが、検討委は警報音も追加するよう求めた。

 また、滑走路担当の管制官が監視業務に専念できるよう、主要空港には離着陸の調整を担当する管制官を新たに配置。管制官の中途採用を進め、欠員の解消を図る。

 航空機が離着陸する際に、滑走路へ入ろうとする別の機体に警告する「滑走路状態表示灯(RWSL)」についても、拡大する方針。現在は伊丹や羽田など5空港(代替設備を含む)で、滑走路を航空機が横切る場所を中心に整備しているが、今後は全国主要8空港へ広げる。

 一方、羽田の事故では、管制官が離陸順1番目であることを意味する「ナンバーワン」という言葉を伝え、海保機側が離陸許可を得たと勘違いした可能性が指摘されている。国交省は事故後、離陸順を伝えないようにしていたが、パイロット側から要望があるため、伝達の再開を検討する。

 国交省は運輸安全委員会による調査結果が出た後、最終まとめを出す方針。斉藤鉄夫国交相は24日、記者団に対し、岸田文雄首相から管制官増員などの対策を指示されたと明かし、「夏の繁忙期前までにしっかりとした体制を組みたい」と述べた。【原田啓之、安部志帆子】
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航空管制官の増員の可能性が出てきた。安全問題研究会がすでに徹底追及してきたとおり、国交省はこれまで航空機の発着回数が増えているにもかかわらず、一貫して航空管制官を減員してきた。それが事故の直接的原因ではないとしても、背景要因の1つであることは明らかだった。

特に、事故直後に相次いで掲載した記事「羽田衝突事故は羽田空港の強引な過密化による人災だ」(当ブログ2024.1.5レイバーネット2024.1.8)及び、「【羽田衝突事故 続報】航空機数は右肩上がり、管制官数は右肩下がり 日本の空を危険にさらした国交省の責任を追及せよ」(当ブログ2024.1.8レイバーネット2024.1.9)には強烈な反応があった。

安全問題研究会がレイバーネットに記事を連載してから、一般メディアが遅れてこの問題を報道し始めた。東京上空の過密化を指摘した記事「羽田事故背景に「過密ダイヤ」指摘も 世界3位の発着1分に1・5機」を産経ニュースが配信したのは1月9日。管制官不足問題を伝える記事「羽田で5人死亡の航空機事故、国交労組「人手不足で安全保てない」...遠因の指摘も」を「弁護士JPニュース」が配信したのは1月18日。「「ミスに気づいても指摘する余裕ない」…羽田事故の再発危機!現役管制官が激白「人員不足でもう限界」」を「フライデー」が配信したのは2月29日。いずれも当ブログ・安全問題研究会のほうが圧倒的に早く、初期の報道合戦は内容、スピードともに当研究会の圧勝だった。羽田事故後、管制官問題を世界で最初に報じたのは当ブログ・安全問題研究会だという自負を今でも持っている。

この間、2月6日には、国交省職員で作る労働組合、国土交通労働組合が記者会見し、航空管制官増員を求める声明を発表するなどの動きもあった(参考:当ブログ2月7日記事)。

一方、国交省は、航空局に「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」を設置して対策案を検討してきたが、今回、5回にわたる審議の結果、中間とりまとめが公表された。(概要版本文)。

中間とりまとめでは、航空管制官増員の必要性について、以下の通り述べている(「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会中間取りまとめ」15ページより)。

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3.管制業務の実施体制の強化

 飛行場管制では、現在、航空機の離着陸等に関する管制指示等を管制官が発出することで、高密度な運航を実現しているが、今後、航空需要の増加により離着陸回数が更に増加すれば、ヒューマンエラーによる滑走路誤進入のリスクが増大することも考えられる。

 このため、管制業務の実施体制に関して、以下の対策を講じる必要がある。

(1)管制官の人的体制の強化・拡充

 飛行場管制担当は、外部監視、パイロット等との交信、システム操作・入力に加え、関係管制官との調整業務も行うなど、常にマルチタスクの状態にある。このため、飛行場管制担当の基本業務である外部監視等への更なる注力が可能となるよう、管制業務を詳細に分析し、管制官の業務分担を見直した上で、関係管制官との調整業務を専属で行う「離着陸調整担当」を、主要空港に新設することを検討すべきである。

 また、羽田空港等においては、これまでも発着容量の拡大等に合わせて、管制官の増員等の体制強化が行われてきている。しかし、近年、中途退職、育児休業等の増加により多数の欠員が発生しており、また、現在の管制官の人員では、将来的な航空需要の増大に対応しつつ、滑走路上の安全確保に必要な体制の維持・充実を図ることは困難と考えられる。そのため、管制官の人的体制を計画的に強化・拡充する必要性があることから、航空保安大学校の採用枠拡大や中途採用の促進などを通じて、欠員の解消と増員等に係る対策を可及的速やかに講じるべきである。
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増加する一方の航空機発着回数と業務量に対し、航空管制官の必要数が満たされていないことを、報告書が正式に認めた形だ。安全問題研究会の粘り強い問題提起が実を結んだと言える。この間、多くのご支援をいただいた皆さんに感謝するとともに、現場から声を上げた国土交通労働組合の闘いにも敬意を表する。

安全問題研究会としては、今後とも粘り強くこの問題を訴えるとともに、国交省がこの報告をきちんと実行するよう、引き続きしっかり監視していきたいと考えている。

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レイバーネットTV : 日本の空は大丈夫か?−羽田衝突事故とJAL解雇争議

2024-05-18 18:42:46 | 鉄道・公共交通/安全問題
安全問題研究会代表・黒鉄好が、2024年5月15日放送のレイバーネットTV 「日本の空は大丈夫か?−羽田衝突事故とJAL解雇争議」に出演しました。

レイバーネットTV : 日本の空は大丈夫か?−羽田衝突事故とJAL解雇争議



なお、出演後、番組を振り返る記事「レイバーネットTV 第200回放送を終えて」をレイバーネット日本に寄稿しました。リンク先に飛べば全文を見ることができますが、以下、当ブログにも転載します。

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黒鉄好@安全問題研究会です。

レイバーネット第200回特集「日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議」の放送を無事終えホッとしています。私にとっては第187回「どうする?どうなる?今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る」(2023.6.28放送)以来、約11か月ぶりの出演でした。司会もそのとき以来ですが、1度や2度の経験で慣れるほど司会業は簡単ではありません。放送後のスタジオは熱気に包まれ、全身に汗をかいていたのも前回と同じでした。

司会に当たって心がけたのは主に以下の3点でした。

1.ゲストに自分より専門の方をお招きしている関係上、自分が出過ぎないようにする
2.いまだ謎の多い日航123便事故の話題が出た場合は事実ベースの解説に留め、憶測による発言は避ける
3.争議終結の道を選んだ2労組(日本航空乗員組合・日本航空キャビンクルーユニオン(CCU))に対する批判は避ける

3については私も最後まで悩みました。「争議が解決していないのに中途半端な和解案に応じた2労組は批判すべき」「労働者同士の分断を招けば喜ぶのは政府・自民党・財界だけ」という2つの考え方が労働運動内部にあることを感じたからです。ただ、ネットの文字媒体と異なりレイバーネットTVには「尺」(放送時間枠)という物理的制約があります。その制約の中で、何に重点を絞って打ち出すべきか。労働組合や労働者の立場、考え方の違いを超え、連帯していける「安全問題」を前面に打ち出すことに関しては、ゲスト・司会・スタッフの考えは一致しており迷いはありませんでした。

視聴者から「司会の方の博学にびっくり」したという身に余るご感想をいただいたことに関しては、この放送をやった甲斐があり疲れも吹き飛びました。ゲストから番組のテーマに沿った有益なコメントを引き出すためには、司会者自身が問題に精通まではしていなくても、要点をつかむ程度には知っていなければなりません。司会者が問題を知らない単なる聞き役、進行役では糸の切れた凧のように話がどこに行ってしまうかわからないからです。私自身は前回のリニア、今回いずれに関しても、安全含む公共交通問題に四半世紀近く取り組んできており、単なる司会者を超えた「3人目のコメンテーター」としても番組を進められるよう準備を進めてきました。とはいえ、本業含め非常に忙しく、放送前に「絶対に観ておくべき」だと言われたJAL青空チャンネル第21回「羽田衝突事故を考える」(2024.2.1放送)を観ることができたのは、放送出演のため北海道から羽田に向かう飛行機の中というギリギリの状態でした。

機長・山口宏弥さん(彼ら彼女らが職場復帰できる日が必ず来ると信じているので、あえて「元」はつけません)の発言内容は以前「あるくラジオ」第19回放送「たたかいなくして安全なし~山口宏弥さんに聞く」(2021.12.5)でお話しいただいた内容と重複する部分もありましたが、何度聞いても面白く、飽きることがありません。生きた牛を固定せず貨物室に乗せていたため、牛が暴れてバランスを崩し、墜落に至ったアンカレジ事故の話もそのひとつです。生体動物が輸出国から輸入国へ無事に送り届けられるのが当たり前のようであっても、それが当たり前でない時代があり、山口さんたちの闘いでその「当たり前」が作り上げられてきたことを次の世代に継承していかなければならないと感じました。

ちなみに、私は農業関係の仕事をしています。動物(特に牛)を生きたまま輸入する例は今でもありますが以前ほどではなくなりました。番組中でもお話ししましたが、外国で肥育された牛でも、生きたまま輸入し、国内で屠殺・解体した場合は国産牛として販売できるルールのため、畜産業界では生きたまま牛を輸入するのが主流の時代がありました。もちろん、パッケージに「輸入牛」より「国産牛」と書いた方が高く売れることが背景にありますが、ここ最近は急激に進む円安・ドル高のため米国産牛肉が急激に値上がりし、すでに一部小売店では国産のほうが米国産より安くなる「逆転現象」も起き始めていると聞いています。

JALは昔も今も、ベテランの安全運行への貢献を評価せず、ベテランから順に解雇するという宝地戸百合子さんのお話を聞き、JALは改めて怖い会社だと思いました。極端に言えば「物言う労働者を排除するか抑え込むことで労務対策が成功すれば、乗客が何人死のうが知ったことではない」と考えているかのようです。JALの社長は歴代、労務畑で「功績」をあげた人が就任してきました。今回、初めて労務畑でなくJAL生え抜きでもない(旧JAS~日本エアシステム出身)元客室乗務員の鳥取三津子さんが社長に就任しましたが、役員時代の「客室乗務員削減」の功績を買われての就任という報道も一部にあります。今回の事故を契機に、現場経験をいい意味で活かす方向に舵を切ることで「目先の刷新感を出すための女性起用」という声を跳ね返していただくことを望みます。

JAL123便事故の話題は、避けることはできないだろうと思ったらやはり話題に上りました。これに関しては上の2で書いたとおり、憶測に基づく発言は避けるという方針で臨みました。この事故から来年で40年になりますが、私は今も運輸省航空事故調査委員会(事故調、現在の運輸安全委員会)が公表した「圧力隔壁崩壊説」にはまったく納得していません。事実ベースで言えば、ドーンという大きな破裂音がして圧力隔壁に穴が空いたとされる1985年8月12日午後6時25分35秒以降に死亡した乗客が撮影していたとされる機内の写真が遺族によって公開されていますが、その写真ではほとんどの乗客が下りてきた酸素マスクを着用していないどころか、客室内で立ち歩く人もいたことが示されています。

これに対して、運輸安全委員会は「日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説」を2011年7月に公表しています。日本中が東日本大震災と福島第1原発事故で混乱の極致にあったこの時期に公表すること自体にも疑問を感じますが、それ以上に疑問なのはその内容です。「解説」は『「急減圧があったならばパイロットは酸素マスクを付けるように訓練されているのに付けていないのはなぜか」等の疑問が寄せられています』(解説i「はじめに」)とみずから認めつつ、その疑問に答えることを目的とした公表であるとしていますが、その内容は自己矛盾、支離滅裂そのものです。『酸素マスクの着用についての教育訓練を受けている運航乗務員が酸素マスクを着用しなかった理由を明らかにすることはできなかったとしながらも、同機に生じた程度の減圧では操縦操作を優先したものと考えられる』(解説P.13)と事故調報告を引用してその内容が正しいと強弁するだけです。「酸素マスクを着用するより他に優先すべきことがある」と操縦席が判断していたとすれば、これこそ「生死に直結するような大規模な減圧は起きていなかった」と運輸安全委員会みずから「告白」するに等しいものです。

総じて、この事故に関しては、国土交通省、運輸安全委員会が何か説明しようとすればするほど、ますます矛盾が露わになり、謎がかえって深まるということが繰り返されています。当研究会は改めて運輸安全委員会に聞きます。「ドーンという破裂音がしてからしばらくの間、123便は7000m近い高度で飛行しています。エベレストの山頂より少し低いくらいの高度です。こんな高度で機体に穴が空いているのに、乗務員はもちろん乗客ですら酸素マスクをつけていないなら、大規模な減圧はなかったのではないか?」と。国交省、運輸安全委はいつまでもくだらない言い訳ばかりしていないで質問に答えろ!

すみません、ついヒートアップしてしまいました。123便御巣鷹事故は私が飛行機に興味を持つようになった最初の出来事でした。この記事を読んでいる方でご存じの方がいるなら情報提供を求めたいことがひとつあります。1985年8月の事故直後、ある雑誌にこんな記事が掲載されていた記憶があります。「運輸省からJALに天下っていた社長か副社長(?)が、犠牲者の棺が何百人分も安置されていた群馬県・藤岡市立体育館を事故直後に訪問したとき、最初に発したひとことが犠牲者へのお悔やみでも反省でも再発防止への誓いでもなく『暑いな。ここにクーラーはないのか』だった」ーーというものです。「こんな会社に自分のひとつしかない命は預けられない。大人になってもJALなんて絶対に乗るか!」と当時、中学生だった私に固い決意を抱かせる出来事でした。

残念ながら当時は週刊誌を買う金がなく、立ち読みで済ませてしまったため、どの雑誌の何月号だったか思い出せません。国立国会図書館などで探し続けていますが、掲載誌名もタイトルも不明の状態ではお手上げで、行き詰まっています。この件に触れた当時の雑誌を「手元に持っている」「知っている」等の情報をお持ちの方がいましたら、私まで提供をお願いします。

今回は、レイバーネットTVとして200回の記念放送でした。この回に私の出演が決まったのはスケジュール上の偶然で、狙って出てきたわけではありません。普段は19:30~20:40の放送枠が19:30~21:00に20分(ダイジェスト映像を除けば実質、10分)延長されましたが、これでも羽田事故、御巣鷹事故に関して言いたいことの半分も言えませんでした。その多くをここで述べさせていただきました。

冒頭に流された200回記念ダイジェスト映像は好評で、200時間を優に超える映像の中から10分に編集した堀切さとみさんには改めて謝意を表します。ダイジェストに反映される映像は全体から見ればほんのわずかで、どれを選ぶかは苦悩の連続だったと想像します。

200回の放送で原発関係が33回あったとのことでこれには納得でした。大手メディアが政治や利権や数多の理由でこの問題に再び沈黙する中、レイバーネットが果敢に取り上げることで明らかにできた問題は多くあります。私自身、2011年3月には福島県に住んでいて、あの世紀末としか表現しようのない混乱ぶりをつぶさに見てきました。

私たちが生きている間にこの問題が終わることはありません。原発事故に人生を狂わされた元福島県民のひとりとして、今後も原発問題は徹底的に追及していきます。私の現在の人生目標は「自分の葬式が出る前に、原発の葬式を出すこと」です。ダイジェスト映像にも出てきた益永スミコさんの言葉を借りるなら、私に「死んどるヒマはない」のです。死んだ後はいくらでも休息を取れるので、生きている間は自分に悔いのないように走り続けたいと思います。

(文責:黒鉄好)

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【管理人よりお知らせ】安全問題研究会代表が「レイバーネットTV」(5/15放送)に出演します

2024-05-11 12:40:52 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

5/15(水)放送のレイバーネットTVに、管理人(安全問題研究会代表)が出演します。内容は、「日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議」です。詳細は番組予告(レイバーネット日本)をご覧下さい。レイバーネット・サブチャンネルにも同じ内容が掲載されていますが、以下、転載します。

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レイバーネットTV(5/15)放送 : 日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議

■レイバーネットTV・第200号放送
 みんなでつくる!みんなで変える!レイバーネットTV
  〜アクティブ、ラジカル、現場から〜

・放送日 2024年5月15日(水)19:30〜21:00(第200号/拡大放送)
・視聴サイト https://www.labornetjp2.org/labornet-tv/200/
<YouTube配信サイト> https://youtube.com/live/tsTPRUdUFzw?feature=share
・配信場所 郵政共同センター特設スタジオ(東京・末広町)

<テーマ 日本の空は大丈夫か?-羽田衝突事故とJAL解雇争議>

 ことし1月2日に起きた「羽田衝突事故」は衝撃的でした。海保機の5人は亡くなりましたが、JAL機は衝突後に激しい火災を起こしたものの、乗務員の誘導により搭乗者全員379人が脱出しました。「羽田の奇跡」とも言われました。

 では衝突事故の本当の原因・問題点は何だったのでしょうか? 「羽田の奇跡」を実現できたのはなぜだったのでしょうか?

 番組では、元機長の山口宏弥さんと元客室乗務員の宝地戸百合子さんが、「羽田衝突事故」について現場の眼から迫ります。また、国交省の航空行政をウォッチしてきた黒鉄好さんが、事故の背景を語ります。

 今回の「羽田衝突事故」は氷山の一角と言われています。以前から日本の空は、米軍や自衛隊がわがもの顔で飛び回っていましたが、近年では「民間空港の軍事利用」など軍事色がいっそう強まっています。2020年からは羽田新飛行ルートが始まりましたが、山口さんは「航空事故のほとんどは離着陸の11分間に起きていて、魔の11分と言われている。その時間帯がすっぽり都心に入っている。とても危ない」と警告しています。

 ベテラン乗務員のお二人は組合活動家で、安全よりも利潤を優先するJAL経営にしっかりものを言ってきました。チェック機能を果たしてきたのです。だからこそ嫌われ、2010年の「JAL165人整理解雇」でクビを切られました。この長期争議では、一部メンバーが2022年に闘争終結をしましたが、納得いかない33名がJAL被解雇者労働組合(JHU)に結集して、14年目のたたかいに挑んでいます。公共交通はどうあるべきなのか? そして労働組合の役割はどこにあるのか? 一緒に考えてみませんか。

 今号は記念すべき200号放送です。番組の冒頭で10分のダイジェスト映像を流します。お見逃しなく。

・企画 松原明
・出演 山口宏弥(元機長・JAL被解雇者労働組合委員長)
    宝地戸百合子(元客室乗務員・JAL被解雇者労働組合副委員長)
    黒鉄好(司会/安全問題研究会)   
・200号記念映像(解説/堀切さとみ)
*ジョニーと乱の5ミニッツあり

■ギャラリーは5名限定(要申込み)。ツイッターコメント歓迎。ハッシュタグは #labornettv。
 お問い合わせ=レイバーネットTV 070-5545-8662
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2024年は、物流業界の残業「年960時間上限」が適用される「2024年問題」に当たり、もともと公共交通と貨物輸送に焦点が当たる年になることは予測されていました。しかし、1月2日に起きた羽田空港事故や、リニア、北海道新幹線札幌延伸の相次ぐ「延期」がこれに加わり、年明け早々から安全問題研究会は多忙を極めています。

4月以降、「リニアの通る村」大鹿村での報告(4/13)、「ノーモア尼崎事故・生命と安全を守る4.27集会」での記念講演(4/27)と続いており、ほぼ半月に1度のペースで著述活動をするという状況になっています。これほどの多忙は、JR福知山線脱線事故が起きた2005年以来だと思います。

安全問題研究会のレイバーネットTV出演は、2023年6月28日放送の第187号「どうする? どうなる? 今世紀最悪の国策事業「リニア」を斬る」以来、約1年ぶりです。レイバーネットTVとしても通算200回の記念放送となります。ぜひご覧ください。

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【管理人よりお知らせ】「客室乗務員を航空従事者に位置付け、全ての脱出扉に乗務員の配置を義務化する請願」にご協力下さい!

2024-05-05 21:06:11 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

2024年1月2日、羽田空港でJAL機と海上保安庁機が衝突し、海上保安庁機の乗務員5名が死亡した事故は国内外に大きな衝撃を与えました。この事故では、JALの乗客・乗員は全員が炎上する機体からの脱出に成功しましたが、その背景として、旅客機のドア数と同じ人数の客室乗務員(CA)が配置されていたことが指摘されています。旅客機のどのドアを脱出に使用できるかを判断する際、1つのドアに1人の乗務員がついていれば、当該乗務員は自分が担当するドアの使用可否のみを判断すれば良いからです。

しかし、日本の現在の法制度では、ドア数以上の乗務員を客室内に配置することは運航上の絶対条件とはされていません。そのため、実際にはドア数に満たない客室乗務員数で運航されている航空便も多く見られるのが現状です。もしそのような状況の旅客機で同じような事故が起きた場合、今回のような“奇跡”はあり得ません。

これに加え、日本では客室乗務員は国家資格とはされておらず、一般の接客業従事者と法制度上は同じ扱いです。諸外国では客室乗務員を航空安全従事者に位置付け、国家資格の取得を就業条件としている国も多く見られます。この意味でも日本の航空行政は大きく立ち後れています。

この請願署名は、こうした現状を抜本的に改め、客室乗務員を航空従事者に位置付けること、全ての脱出扉に乗務員の配置を義務づけることを国に求めています。安全問題研究会でも、請願の趣旨は大いに理解できるとともに、正当なものであるため、協力することとしました。2024年1月2日の再来を避けるため、1人でも多くの方の署名をお願いします。

署名用紙ダウンロード
・第1次集約 2024年8月31日
・連絡先 ジャパンキャビンクルーユニオン jcuhonbu2018@gmail.com
・送付先 〒144-0043 東京都大田区羽田5丁目11-4 フェニックスビル 航空連気付 ジャパンキャビンクルーユニオン

 なお、上記の他、安全問題研究会宛てに連絡いただいてもかまいません。

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JR福知山線脱線事故遺族・藤崎光子さんに関する報道

2024-04-26 20:39:53 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR福知山線脱線事故から19年を迎える中、遺族のお一人で安全問題研究会とも長年にわたって交流のある藤崎光子さんに関する報道があったので、紹介する。

1人娘を失って19年 脳梗塞になり...今年は介護施設のベッドで『脱線事故発生時刻』を迎えた母「現場に行けず残念。娘はいつも一緒にいる気持ちではいる」【JR福知山線脱線事故】(2024年4月25日)

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レイバーネットTV : パワハラ横行!バス業界の闇

2024-03-01 22:28:47 | 鉄道・公共交通/安全問題
2月28日、レイバーネットTVで「パワハラ横行!バス業界の闇」が葬送された。現役のバス運転士が主演し、生々しいパワハラの実態を語った。

長時間労働とそれに見合わない低賃金、乗客らの理不尽なクレーム(カスタマーハラスメント)に加え、会社からのパワハラまで行われては、普通に勤務を続けられるほうがおかしいだろう。

レイバーネットTV : パワハラ横行!バス業界の闇


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<地方交通に未来を⑮>安全問題と物流問題~公共交通激動の2024年

2024-02-11 19:18:39 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 2024年は大変な年明けになった。元日の能登地震と1月2日に起きた羽田での日航機・海上保安庁機の衝突事故だ。羽田空港の事故は、いわば公共交通をめぐって今まで覆い隠されてきた問題が噴出した形で、私はいずれこんな事態になるだろうともう10年くらい前からずっと思っていた。ここまで極端な形は予想していなかったが。

 事故直後、「レイバーネット日本」に分析記事を書いた。特に、2004~2019年の15年間で全国の航空機数が1.5倍に増えているのに、航空管制官が逆に15%も減らされていること、結果として航空管制官1人が扱う航空機数が1.8倍に増えていることを指摘したら大きな反響があった。多くの東京都民の反対を押し切る形で、東京五輪のために強行された羽田新ルート(2020年4月から実施)によって1割近く飛行機の発着回数が増えたことを指摘した回もそれに劣らぬ反響があった。アフターコロナで2019年以前に近いところまで航空機の便数が戻った上に羽田新ルートによる増便を加えた形での航空管制業務は過去に経験のないもので、事故は起こるべくして起きたというべきだろう。

 国交省職員で構成する「国土交通労働組合」(国交労)はずっと以前から職員の定員削減をやめ要員を増やすよう求める署名運動を行ってきたが、関係者やそれに近い人に呼びかける程度であまり知られていなかった。ところが、私がレイバーネットで紹介したこともあって事故直後からメディア取材が殺到。2月6日、国交労はとうとう航空管制官の増員を求める声明を発表し記者会見まで開いた。安全確保のために必要な人員まで機械的に減らし続ける国交行政のあり方を問い直すとともに、国交労の闘いに一般市民・公共交通利用者からの支持があると伝えることが今のこの局面では重要である。

 航空業界は今、問題山積の状態だ。新千歳空港では、機材もパイロットも客室乗務員も足りているにもかかわらず、乗客の手荷物の積み卸しなどを扱う地上職(グランドハンドリング職)の人手が足りないため増便ができないという事態になっている。コロナ禍による大減便で離職したグランドハンドリング職員が他職種に転職したままアフターコロナになっても戻らず、残された労働者に負担が集中。激務に耐えられず辞職者が相次いでいるが、その補充もできず、「このままでは過労で死者が出てしまう」としてとうとう昨年末にはグランドハンドリング職の労働組合が2023年末限りでの36協定(労働基準法36条による残業協定)の破棄を会社側に通告した。2024年の年明け以降は残業をしないという意味であり、航空業界はますます人手不足に追い詰められている。

 公共交通は基本的に労働集約型産業で、シーズンとオフシーズンとで需要に極端な繁閑があるため人員調整に苦労してきた。それでも非正規労働者を雇用の調整弁に使うことで何とか持ちこたえてきたが、若年人口の減少でそうした綱渡りも次第に難しくなってきている。シルバー労働人口は増え続けているが、公共交通の現場は体力勝負の要素が強く、シルバー労働人口がいくら増えても若年労働者の代わりにはならないからだ。

 2024年、航空業界以上に追い詰められそうなのはバス・トラック業界だ。2019年に「働き方改革関連法」が成立し、残業規制(年960時間まで)が導入されたが建設・物流業界に限り「5年後に施行」と猶予期間が置かれた。その猶予期間がいよいよ終わる今年、運転手も年960時間を超えて残業ができなくなるため人手不足に拍車がかかるというわけだ。

 「残業制限などされたら手取り賃金が減り、食べていけなくなる」という規制反対の声が運転手の間から上がっていると聞くが本末転倒だ。年960時間といっても1か月に80時間で、これさえ厚労省が過労死ラインに指定する水準に当たる。声を上げるなら「死ぬまで働いても食べていけないような低賃金を何とかしろ!」であるべきで、過労死するまで働かせろという要求を、労働者の側からは口が裂けても言うべきではない。

 「働き方改革」に対しては、最低賃金引き上げなど実質的な内容の伴うことは何も行われていないという労働側からの批判はある。だが、ともかくも「残業=悪」というムードを日本社会に作り出したことは評価してもいい。問題は「労働時間を半分にするなら、2倍効率的に働こう」というのが安倍流「働き方改革」だったにもかかわらず、効率よく働く議論が置き去りにされたことだ。結局は残業時間を減らした分だけ仕事が積み残しになり、その不利益の押しつけ先を「今までと違う誰か」に変えるだけに終わる気配が濃厚になっている。端的にいえば、今までは「低賃金で死ぬまで働く労働者」が全犠牲を負っていたのが、今後は「いつまで経っても荷物が届かず途方に暮れる利用者」が全犠牲を負う形に変わるだけという結果がここに来てはっきりと見え始めているのである。かつて近江商人の間では「三方良し」(取引先、顧客、自分たちのすべてにとって良い結果であること)が商売の秘訣といわれたが、今は「泣く人の順番を定期的に変える」だけ。21世紀も5分の1が過ぎた2020年代とは思えず、近江商人に笑われるだろう。

 再配達の削減策やスマホアプリ活用による輸送効率化など、確かにやらないよりはマシだとは思う。だが物流危機は若年労働人口の減少という構造的要因が理由だ。物流そのもののあり方を変えるという抜本的な策なしには解決しないが、政府の動きは鈍く、打ち出される策も小手先のものばかりだ。

 一方、政府の対応を待っていられないと、自治体・民間レベルで「抜本的な動き」が出てきた。そのひとつがJR貨物による「レールゲート」構想だ。多くの物流企業が倉庫機能や荷役機能の拠点として使えるよう貨物ターミナルに併設されるもので「駅チカ倉庫」「駅ナカ倉庫」などと自称、東京・札幌では先行利用が始まっている。

 先進的な試み……と言いたいところだが私には「既視感」がある。これは結局、国鉄時代の「ヤード」の現代版なのではないか。かつて国鉄の貨物駅には広大なヤードがあり、トラックが直接乗り付け鉄道貨車に荷物を積み替えていた。ペリカン便事業も手がけていた日本通運は、もともとはこの目的のために旧鉄道省が設立した特殊会社で、終戦まで「日本通運株式会社法」という法律があった。日通が国鉄に委託されトラックで運んできた荷物を貨物駅の広大なヤードで貨車に積み替えていた。貨物の種類ごとに専用貨車を仕立てていた昔に対し、レールゲートはコンテナを使う点が違うだけだ。

 こうしてみると、国鉄のヤード系輸送を全廃し、コンテナと石油、セメント、石灰石の拠点間直行輸送だけに再編縮小した1984年の貨物ダイヤ改正を再検証しなければならない。日本の人口が若年中心でトラック運転手を集め放題だった当時と高齢化が進む今では社会状況が異なり単純比較はできないものの、「JR体制の見直しが始まるなら、それは貨物部門からになる」との、かねてからの私の予言通りに事態は動き始めたようだ。

(2024年2月10日)

<参考動画>運転士1人でドライバー65人分 トラック運転手不足で「鉄道貨物」復権へ 2024年問題で注目(2023/12/19 TNCテレビ西日本)

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【転載】羽田空港事故を受け、国土交通労働組合が航空管制官増員求める声明発表

2024-02-07 18:42:58 | 鉄道・公共交通/安全問題
羽田空港で1月2日に起きたJAL機と海上保安庁機の衝突事故を受け、国土交通省職員で作る「国土交通労働組合」が2月6日、航空管制官の増員を求める声明を発表しました。

以下、国土交通労働組合ホームページに掲載されている声明全文を転載します。同ホームページには、印刷用PDF版も掲載されています。

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2024年1月2日に発生した航空機同士の衝突事故を受けて (声明)

 2024年1月2日に東京国際空港で発生した日本航空516便と海上保安庁機の衝突事故で犠牲になられた海上保安庁職員5名の方々とそのご遺族の方々に対し、深い哀悼の意を表します。また、この事故で負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 今回の事故を受けて、一部の報道各社やSNSにおいて、断片的な情報や憶測による事故原因を推測する記事が多々見受けられます。なかでも、責任の所在につながるような論調は、この事故に直接関わった航空管制官のみならず、全国で日々懸命に奮闘する航空管制官やパイロットなど、多くの航空従事者に心理的負担を強いるものであり、彼らの業務遂行に多大な影響を及ぼしかねないことを強く懸念しています。今回のような痛ましい事故を繰り返さないためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが重要なことから、事実にもとづく情報のみの発信を望みます。

 国土交通省は、今回の事故を受けて、1月6日から羽田空港において、航空管制官による監視体制の強化として、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員を配置しました。同様のレーダーが設置されているほかの6空港(成田、中部、関西、大阪、福岡、那覇)においても順次配置するとしています。しかしながら、この人員は新規増員によらず、内部の役割分担の調整により捻出するとされており、国土交通労働組合は、航空管制官の疲労管理の側面から問題視しています。

 政府は、2014年に「国家公務員の総人件費に関する基本方針」および「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を定めており、これにより、新規増員が厳しく査定されていることにくわえて、一律機械的な定員削減を各府省に求めた結果、航空管制の現場では、管制取扱機数が急増する一方で、航空管制官の人数は2,000人前後から増加しておらず、その結果、一人当たりの業務負担が著しく増加しています。そのため、国土交通労働組合は、かねてから、「安全体制強化のための飛行監視席」の新規要員を要求してきました。しかし、2018年度からごく一部で新規定員が認められたものの、真の安全を構築するには全く足りていません。そのような要員事情において、今回の一時的措置は、当面の間とはいえ、現場が益々疲弊することは想像に難くなく、早急に航空管制官の大幅な増員の実現を強く求めます。

 くわえて、私たち国土交通労働組合は、2001年に発生した日本航空907便事故以降、「個人責任の追及を許さない」との立場で、強くとりくみをすすめてきました。航空事故は、その産業構造の複雑さから、明らかに犯罪性が認められるものを除き、様々な要因が重なった結果、発生に至る性質のものです。事故の再発防止のためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが、悲劇を繰り返さないための必要条件です。しかし、我が国においては、多くの諸外国と違って、事故の当事者個人に業務上過失の疑いがかけられ、司法による捜査を受けており、これはICAO Annex13(国際民間航空条約第13章)に抵触するものです。司法の捜査が介入することで、当事者が黙秘権を行使し、真実が闇に埋もれてしまえば、悲惨な事故が繰り返されかねません。

 これらのことから、私たち、国土交通労働組合は、利用者のより高度な安全確保の体制を構築するためにも、共闘組織はもとより、国民のみなさまとともに、個人責任の追及を許さず、事故の真の原因究明と再発防止にむけたとりくみを今後よりいっそう、強化することを表明します。

 2024年2月6日
 国土交通労働組合 中央執行委員長
 山﨑 正人

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