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懸念しているとおりの事態に~除染土仮置場、相次ぎ契約延長

2015-10-12 09:31:42 | 原発問題/一般
汚染土仮置場相次いで延長 福島県内 中間貯蔵施設建設遅れ 3年期限守れず(産経)

報道にあるとおり、福島県内の除染に伴い発生する中間貯蔵施設の建設が遅れているため、住宅地にある除染廃棄物の仮置場の借地契約を相次いで延長せざるを得ない状況に追い込まれている。

ついでに補足しておくと、福島県内では、このような住宅地の除染廃棄物仮置場を「仮仮置場」と呼んでいる。国は、「中間貯蔵施設」を最終処分場にはしないと福島県に約束しており(約束だけでなく、実際に法律に規定されている)、中間貯蔵施設がいわば「仮置場」。産経の記事が仮置場と呼んでいるものは、除染廃棄物が仮置場に運ばれるまでの仮置場、つまり仮仮置場なのだ。

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<参考>中間貯蔵施設を最終処分場にしないとの「約束」は以下の通り法律に明記されている。

中間貯蔵・環境安全事業株式会社法

(国の責務)
第三条 国は、中間貯蔵及びポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理の確実かつ適正な実施の確保を図るため、万全の措置を講ずるものとする。
2 国は、前項の措置として、特に、中間貯蔵を行うために必要な施設を整備し、及びその安全を確保するとともに、当該施設の周辺の地域の住民その他の関係者の理解と協力を得るために必要な措置を講ずるほか、中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする。

注)この法律は、もともとPCBの処理事業のため旧環境事業団を民営化した特殊会社、日本環境安全事業株式会社(JESCO)に関することを定めた法律である。その後の福島原発事故により、中間貯蔵施設の運営もこの会社が行うことになったため、社名が「中間貯蔵・環境安全事業株式会社」に変更になった。これと同時に、法律の題名も「日本環境安全事業株式会社法」から「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法」に変更されている。
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仮仮置場を巡って、いずれこのような事態になるだろうという声は、原発事故当初から福島県内で根強かった。これは、政治的な理由というよりは、福島県内で登記簿の記載がアテにならないという、まさに産経が記事に書いている理由によるものだ。

もともと、農業県の福島では、東京などの都市部のようには土地の流動性が高くない。先祖代代の土地を継承して、子へ孫へと農業を継いでいくケースが多かったから、もともと土地所有者が固定している。登記簿などという制度ができる近代以前からの土地を、ろくに測量もしないまま適当に区分けして所有者を決め、登記簿の制度ができる際にも、適当に土地境界を記載したというケースがある。これは福島に限らず、東北の農業県はおしなべて同じ傾向があり、宮城や岩手でも、東日本大震災にともなう津波で家屋が流されて、初めて登記簿上と実際の自分の土地が違っていることに気づいた、という話を結構あちこちで聞いたものだ。

東京など土地の流動性が高い都市部では、土地が転売などされるたびに、不動産業者が測量を行って登記簿の記載が間違っていないか確認するが、土地がめったに転売されない農村部にはそんな機会もない。かくして、多くの家屋が根こそぎ失われるような大災害の際、どこが誰の土地かわからず、わかっても本人と連絡がつかないため、再建も移転もできない、などという事態が起きるのである。

とはいえ、福島県内の状況を考えるとこのままにしておいてよいはずがない。行政が土地所有者を確定できないのであれば、あまり好ましくはないが、土地所有権を強制移転できるような何らかの措置が必要になる事態が、いずれ来ると思う。
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