ほしちゃんの「続・なるようにしか、ならん」。

安くてウマいもんと料理と旅行と音楽と競馬が好きなサラリーマンの暮らしを、ありのままに綴ります。

スタレビのニューアルバム、「年中模索」リリース。

2020-07-22 20:00:00 | No Music,No Life.

我が愛してやまないバンド、スターダスト・レビューの2年ぶりニューアルバム「年中模索」がリリースされた。
初回限定はDVDに加え、写真の不織布エコバッグも付いていた。

デビュー40周年、オリジナルメンバーがみな還暦前後となったのを感じさせない瑞々しさ。
それが、率直な第一印象だ。
今回も、プロデューサーにはおそらく日本一の売れっ子ギタリスト、佐橋佳幸氏を迎えている。
何も考えず、歌詞カードも見ずに音に身を任せるとオープニング「働きたい男のバラッド」はスタレビには珍しいタイプのハイスピードなロックンロール。
かと思えば次の「僕の中の君」は、アナログシンセにドキッとさせられるバラード。早くもジェットコースター状態。
「偶然の再会」は、前作「還暦少年」の「You're My Love」からつながる60年代アメリカン・ポップスの王道ともいえるコード進行と重厚なハーモニー、一転して「君は大丈夫!」はベースの4拍子が印象的な華やかなりし80年代前半の洋楽テイスト。
「センタクの人生」はエレピが爽やかなサルサで、おそらくスタレビの中でサルサアプローチは「I BELIEVE IN LOVE」以来かもしれない。
「ちょうどいい幸せ」は佐橋氏のアコギが冴え、はっぴいえんどに通じる滋味。
「おとなの背中」は「Style」「Heaven」の頃を思い出す粘りのビートで責任逃ればかりの政治家や経営者を皮肉り、「約束の地へ」は一転して危機に晒される地球環境への思いを歌う。
必ず1曲は入る柿沼氏ボーカルの「オ・マ・ジ・ナ・イ」は、見事なまでの癒やし、箸休め(笑)。
50・60代にはものすごく共感の持てる内容の「同級生」「メシでも食おうよ」は、片や「煙が身にしみる」に通じるコミカルなアレンジ、片や根本要氏曰く「スタイル・カウンシルっぽいメロディにトッド・ラングレンのサウンド」を意識したという、この振り幅の大きさ。
ラストを飾る「うしみつジャンボリー」はハモンドB-3を使った、最高に贅沢な言葉遊びロックンロールだ(笑)。

「ごった煮」という表現は、私はアルバムを語る上では最高の褒め言葉だと思っているが今回は特にリズム、サウンドのバラエティが豊かで、言わば極上のごった煮だ。
おそらく、プラス思考の佐橋氏がメンバーのいいところを引き出しまくり、レコーディングするうちにどんどん欲が出たのだろうがそれをしっかり1枚にまとめるメンバーと佐橋氏には恐れ入る。
そんなバラエティに富んだ音の一方で、歌われる主人公と歌詞の世界は、見事なまでに等身大の50・60代男性なのだ。
失礼を承知で言えば、スタレビは決してエリートなバンドではない。スワンのように優雅でも水面下は大騒ぎしてきたし、悩む事さえ楽しむしかないと自分に言い聞かせ、ファンと共に40年の苦難を乗り越えてきた稀有なバンドだ。
サラリーマンで言えば、社長や役員になるタイプではない。むしろ悲哀に満ちた管理職で損もさせられたが、持ち前の謙虚さ、人の良さと腰の低さでリタイヤ後も友達の減らない、愛されるタイプとでも言おうか。
一方で、持ち上げられる機会もそう多くなかっただけにどこか意識して自分を肯定してきた人生かもしれない。
冒頭の「働きたい男のバラッド」は、やる気に満ちた企業戦士がテーマでスタレビのイメージとは少々かけ離れる。根本氏はインタビューで
「この曲は90年代に作ったが、メンバーに大反対された」
との事。2020年の今、そんな主人公の曲を敢えて歌う事によって、かつて自分もこんな時代があったのだ、でも今の自分は間違いじゃないという自己肯定なのだと私は受け取った。
その意味では「君は大丈夫!」で歌われる「君」も、実は自分自身かもしれない。
なかなか自分に自信を持てる客観的な出来事もなかったが、自分にはちょうどいい幸せがあって、夜の新橋を歩けば同級生に会えて、またメシでも食おうよ、でもオレはカネないから君のおごりで…という、50・60代の等身大のオトコの背中が見えて激しく共感出来るのだ。
応援歌、という大層なものではないが、ましてこのコロナ禍で何もいい事がなかったとしてもとりあえず明日は前を向いて歩けそうな、そんなアルバムではなかろうか。

こんな素敵なアルバムを聴いてしまうと、やはりライブに行きたくて仕方なくなるのだが8/30(日)には日比谷野音で「こんなご時世、バラードでござーる」と題したライブが行われる。
さすがに東京へは行きにくいが、3,000円で配信してもらえるので興味のある人は是非!